著者
角 大輝 佐藤 譲
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

複素多様体上の正則写像のなす半群の力学系と、正則写像の族によるランダム力学系の両者の理論を、互いに交錯させながら基礎から構築し、出来上がった理論を純粋数学にとどまらず非線形物理学や数理生物学などの他分野へ思想的・哲学的に訴えかけた。ランダム力学系におけるカオスと秩序の間のグラデーションなど、新しい世界観を提供した。具体的には、「協調原理」により大概のランダム複素多項式力学系において通常の複素力学系よりカオス性が弱まり、秩序性が生まれることを発見し、カオス性が弱まった中にもカオスと秩序の間のグラデ―ションが存在していることを発見して、マルチフラクタル解析などを用いて研究を深化させている。
著者
佐藤 慎一郎 根本 裕太 高橋 将記 武田 典子 松下 宗洋 北畠 義典 荒尾 孝
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.560-568, 2016 (Released:2016-11-04)
参考文献数
62
被引用文献数
1

目的 本研究は地域在住の自立高齢者を対象に,膝痛の包括的な関連要因を男女別に明らかにすることを目的とした。方法 山梨県都留市下谷地区在住の65歳以上の要介護認定を受けていないすべての高齢者1,133人を対象に,健康状態,生活習慣に関する調査を行った。調査内容は基本属性,健康状態,生活習慣,膝痛,身体活動であった。膝痛は,過去 2 週間の平地を歩く際の痛みの有無について調査した。身体活動は,国際身体活動質問紙短縮版の日本語版を用い,週あたりの総身体活動量と 1 日あたりの座位時間を算出した。世界保健機関による健康のための身体活動に関する国際勧告に基づき,週あたりの歩行および中等度強度以上の総身体活動量が150分以上を身体活動量充足群,150分未満を身体活動量非充足群の 2 群とした。座位時間は中央値を基準値とし,5 時間以上を長時間群,5 時間未満を短時間群の 2 群とした。基本属性は,年齢,性別,最終学歴,婚姻状態,健康状態は体格指数(Body mass index:BMI),現症歴,生活習慣は食生活,飲酒状況,喫煙状況を調査しそれぞれ 2 値に分類した。解析は,男女別に行い,膝痛の有無を従属変数とし,身体活動量,座位時間,食生活,飲酒状況,喫煙状況,BMI を独立変数とした。また,不可変変数である年齢,最終学歴,婚姻状態,現症歴を調整変数として一括投入した多重ロジスティック回帰分析を行った。結果 有効回答数は801人(有効回答率70.7%)であった。解析対象者801人のうち,男性は365人(74.9±6.9歳),女性は436人(74.9±6.9歳)であった。膝痛の関連要因を性別にて検討した結果,男性においては,身体活動量(P=0.035)のみが有意な関連要因であった。身体活動量非充足群に対する身体活動量充足群の膝痛のオッズ比は0.605,95%信頼区間は0.380-0.964であった。女性においては,BMI(P=0.023)と食生活(P=0.004)が有意な関連要因であった。BMI では25 kg/m2 以上群に対する25 kg/m2 未満群の膝痛のオッズ比は0.595,95%信頼区間は0.380-0.931であった。食生活は,食生活不良群に対する食生活良好群の膝痛のオッズ比は0.547,95%信頼区間は0.364-0.823であった。結論  本研究結果から,男性では身体活動量,女性では BMI と食生活がそれぞれ膝痛の関連要因であることが示唆された。
著者
佐藤 博則 山下 進介 宇津野 秀夫 松久 寛 山田 啓介 澤田 勝利
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集C編 (ISSN:18848354)
巻号頁・発行日
vol.77, no.775, pp.989-1003, 2011 (Released:2011-03-25)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

Life style related diseases such as hypertension and diabetes promote arteriosclerosis which causes circulatory diseases. It is important to evaluate arterial condition for prevention of circulatory diseases. The pulse wave velocity method has become familiar as a vascular test because it is easy and non-invasively. However, the accuracy of the method seems not to be high because it just compares two points ignoring the frequency dependence and reflection waves from peripheral vessels. In this study theory of pulse wave propagation considering such effects was formulated. A new method to identify the reflection ratio from peripheral vessels and pulse wave velocity was proposed. This method was verified by experiment using a silicon tube and applied to measure the pulse wave propagation of human arm as a case study. The results showed that this method has possibility to apply to measure the pulse wave propagation of human pulse wave.
著者
松下 貴史 佐藤 伸一
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 = Japanese journal of clinical immunology (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.333-342, 2005-10-31
参考文献数
63
被引用文献数
12

&nbsp;&nbsp;B細胞の生存・分化・抗体産生に重要な役割を果たすBAFF (B cell activating factor belonging to the tumor necrosis factor family)はTNFファミリーに属する分子で単球,マクロファージ,樹状細胞の細胞膜上に発現され,可溶型として分泌される.BAFFの受容体にはBAFF-R (BAFF receptor), BCMA (B-cell maturation antigen)およびTACI (transmembrane activator and calcium-modulator and cyclophilin ligand interactor)の3種類が知られておりいずれもB細胞の広範な分化段階において発現がみられる.BAFFシグナルは主にBAFF-Rを介して伝えられ,TACIは抑制性のシグナルを伝達している.BAFFはB細胞上の受容体との結合により未熟B細胞の生存と分化,成熟B細胞の増殖,自己反応性B細胞の生存を制御する.BAFF過剰発現マウスでは全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus ; SLE)やSj&ouml;gren症候群に類似した症状を呈する.さらにSLE自然発症モデルマウスや関節リウマチ(rheumatoid arthritis ; RA)モデルマウスであるコラーゲン誘導関節炎においてBAFFアンタゴニストの投与にて症状が改善することが明らかにされた.そしてSLEやRA,Sj&ouml;gren症候群,全身性強皮症の患者において血清BAFF濃度の上昇が報告されている.BAFFは末梢性B細胞の分化・生存に影響することから,BAFF/BAFF受容体の異常が末梢性トレランスの破綻を来たし,リウマチ性疾患の発症に関与していると推測される.近年SLEやRAにおいてB細胞をターゲットした治療が脚光を浴びており, BAFFが有望な治療標的となることが期待されている.<br>
著者
佐藤 直木
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.66, 2019

<p>「津田三省堂(つださんせいどう)」は、1909 年(明治42 年)に、津田伊三郎(つだ・いさぶろう)によって名古屋の地に創業された活字製造・販売会社である。かつて日本には、宋朝体の国産鋳造活字は存在しなかった。中国の宋朝体活字に源流を求め、苦心のうえ、津田三省堂により宋朝体活字がはじめて国産化されることとなった。筆者は「文字と書体のデザイン」を研究テーマに掲げて大学研究室を運営している。研究を進める中で、ふとした機会から古書を入手した。津田三省堂発行の「宋朝 各号 長体・方体 略見本 /二号 長体 総見本」である。書体見本帖を手にしてその内容に触れたときの衝撃は大きなものであった。その書体は「雄健にして典雅、活字面の鮮鋭明確なるは無比」とかつて称されたと伝えられるように、独特の風格と気品を漂わせる書体であった。文字をデザインする人間のひとりとして、偉大な先駆者である津田三省堂へのリスペクトを込めて、津田三省堂宋朝体のデジタル復刻に取り組むことを決意した。今回はその取り組みにおける成果のごく一部を紹介するものである。</p>
著者
佐藤 研一 今井 裕 石山 信之 小林 操 金沢 春幸
出版者
一般社団法人 日本口蓋裂学会
雑誌
日本口蓋裂学会雑誌 (ISSN:03865185)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.70-76, 1981-07-31 (Released:2013-02-19)
参考文献数
33

今回,われわれは極めて稀れ(本邦で9例)な奇形とされている下顎正中裂および下口唇正中裂の症例を経験したので報告した.患児は生後3ケ月女児,2児中第2子で同胞に異常は認められない.両親に血縁関係はなく,家系中にも異常を認めない.母親は妊娠2ケ月頃,転倒により腰部を打撲したことを除き,妊娠経過は順調であった.全身的には栄養発育状態は良好で,他部合併奇形などの異常を認めない.局所的には下口唇が正中で縦裂し,さらにその破裂下端部より願部にいたる腫瘤が認められたという(但し出産病院で腫瘤は切除) .下顎骨も正中離開し,そのため左右の下顎は個別に可動性を有していた.また,舌尖は下顎離開部を越え,その前方に附着し固定されていた.X線的には下顎骨正中離開を示すも,歯胚数の異常や舌骨の欠損は認められなかった.両親ならびに患児の染色体数は正常で,生後4ケ月目にZ-plastyによる下口唇形成術および舌小帯伸展術を施行した.術後経過は良好で現在に至っている.下顎裂に対する処置は,今後充分な観察の下に,下顎の発育を待ったうえ行う予定であり,併せてその論拠にっいての考察を附して報告した.
著者
梁川 哲雄 吉田 秀夫 由良 義明 浦田 満 永峰 伸一 佐藤 光信
出版者
社団法人 日本口腔外科学会
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.32, no.8, pp.1516-1521, 1986
被引用文献数
1

The most effective treatment for adenoid cystic carcinomas arising from minor salivary glands is surgical removal of primary lesion including the wide safety margin. However, it is well known that the salivary gland tumors have poor prognosis and high frequency of metastasis. Therefore, the multidisciplinary therapy that prevents effectively recurrence and metastasis is needed.<BR>Two cases of adenoid cystic carcinoma of the maxillary sinus were treated according to the follwing multidisciplinary method. Case 1 (T3NOMO by JJC proposal): The patient had surgical removal of the affected maxilla and then radiation therapy. Four weeks later, adjuvant chemotherapy (Adriamycin and Cisplatin) was performed. In addition, UFT and OK-432 were administered continuously up to date from the onset of the treatment. Consequently, the patient remains be disease-free 24 months postoperation. Case 2 (T4NOMO by JJC proposeal): The patient was treated with the multidisciplinary methods such as surgical reduction of a tumor-burden, radiation therapy, intraarterial infusion of cisplatin and 5-FU into a superficial temporal artery and intradermal administration of OK-432. Thereafter, complete regression of the primary tumor was observed. However, metastasis was detected in the regional lymph nodes, which were subjected to radical neck dissection. The patient remains be disease free 8 months postoperation. These findings indicate that the multidisciplinary therapy may improve the prognosis of adenoid cystic carcinoma of the maxillary sinus.
著者
出口 哲生 佐藤 純 上西 慧理子
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.419-426, 2015-06-05 (Released:2019-08-21)

最近,孤立した量子多体系のダイナミクスが活発に研究されている.例えば,レーザーで閉じ込められた冷却原子系において,系の物理量が緩和する過程が実験で観察された.理論的にも相互作用クエンチなど,外場変数を急変化させた後に生じる量子多体系のダイナミクスに関心が集まっている.量子系におけるクエンチの問題は70年代はじめに可解系で最初に議論された.しかし,本格的に注目されるのは今世紀以降と比較的最近で,これは量子系のクエンチが実験で実現可能になったためと考えられる.孤立量子系のダイナミクスは最近,量子統計力学の基礎の視点からも興味を持たれている.量子多体系の純粋状態を任意に一つ選ぶと,ほとんどの場合,物理量の状態に関する期待値は,熱平衡状態における物理量の期待値に非常に近いことが明らかにされた.これを典型性(typicality)とよぶ.そして,初期純粋状態からのユニタリな時間発展の中で,局所演算子の期待値はある平衡状態のアンサンブル平均値に収束する,と予想されている.ここで局所演算子とは,全系と比べて十分に小さな部分系の中で定義可能な演算子のことである.コーヒーにクリームを加えた場合とは異なり,孤立量子系のエントロピーはユニタリな時間発展で全く変化しない.このため,孤立量子系の時間発展の様子を表すのに従来の意味での緩和を用いるのは,厳密に言えば正しくない.しかし,有限系でも自由度が大きい場合,再帰的振る舞いが起きるまでの時間は非常に長く,これと比べてはるかに短時間のうちに,緩和するような振る舞いが観察される.このため,言葉の意味を少し幅広く解釈して,孤立量子系における緩和(relaxation),と表現することが多くなった.最近では,平衡化(equilibration)あるいは初期値に依存しないときには熱化(thermalization)ともよばれる.非可積分な孤立量子多体系の時間発展では,局所物理量の期待値は漸近的にミクロカノニカル分布の値に収束すると予想され,多くの例で確かめられている.一方,可積分量子系にはハミルトニアンと交換する多数の保存量演算子が存在する.このため,可積分系の時間発展は非可積分系の場合とは異なり,一般化されたギブス分布に収束する,という予想が提案された.可積分量子系の非平衡ダイナミクスの特徴を明らかにすることは,冷却原子系の実験結果を理解する上でも興味深いであろう.また,孤立量子多体系のダイナミクスの特徴を研究する中から,量子多体系を制御する一般的方法が発展する可能性もある.このため,応用面からの興味も将来的には十分に考えられる.本解説では,最初に上記のような研究状況のおおよその説明をした後に,可積分量子系を分かりやすく紹介し,非平衡ダイナミクス特に1次元ボース気体での緩和の例を解説する.
著者
保地 真一 崔 龍鎬 Joachim W. BRAUN 佐藤 邦忠 小栗 紀彦
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
Japanese Journal of Equine Science (ISSN:09171967)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.145-150, 1994-03-31 (Released:2011-11-29)
参考文献数
21
被引用文献数
4 4

ウマの屠場卵巣からの卵子の採取効率,ならびにそれらの体外培養における第2減数分裂中期への成熟率に影響を及ぼす要因を検討した。卵胞吸引法では1年の試験期間を通して一定の卵子数(卵巣当たり1.3-1.6個)が採取されたが,卵胞吸引に続いて行った卵巣細切法では春季と冬季の卵巣から効率よく卵子が回収された。両法により採取された一卵巣当たり卵子数は,春季(3-5月)で平均5.8個,夏季(6-8月)で3.6個,秋季(9-ll月)で4.0個,冬季(12-2月)で5.1個となった。ウマの品種に関しては軽種馬よりも重種馬の卵巣から多くの卵子が採取された(卵巣一個当たりそれぞれ4.4個,7.6個)。いずれの品種においても屠殺時のウマの年齢は卵子の採取率に影響を及ぼさなかった。春季と冬季の体外成熟率(それぞれ55.5%,58.3%)は夏季や秋季のそれ(それぞれ64.4%,65.7%)とのあいだに有意な差はなかったが,若干低くなる傾向が認められた。軽種馬と重種馬から採取された卵子の体外成熟率には差は認められなかった(それぞれ53.7%,58.7%)。卵巣の保管時間についてはウマの屠殺から卵子採取までの時間が3時間のときの卵子の成熟率は62.3%であったのに対し,6時間で45.0%,9時間で30.4%に低下した。培養小滴当たりの卵子数はそれらの成熟率に影響を及ぼさなかった(卵子数が1-5個のとき55.1%,6-10個のとき56.3%,11-15個のとき50.8%)。ウシ胎子血清の存在下では58.1%の卵子が成熟したが,ウシ血清アルブミンや無血清下でさえそれぞれ62.1%,65.3%の成熟率が得られた。培養気相は成熟率に影響を及ぼさなかった(5%CO295%空気で60.6%に対し,5%CO2 5%02 90%N2 で53.6%)。
著者
五十嵐 善哉 座波 健仁 田中 規夫 佐藤 創 鳥田 宏行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_229-I_234, 2018 (Released:2018-11-10)
参考文献数
17

防潮林は,津波に対して流体力低減や浮遊物捕捉などの効果を持つ.その一方で,樹木が破壊され流木化し家屋への被害を増長するリスクも有する.樹木が流木化せずその場にとどまる転倒破壊であれば,津波に対する抗力低減効果と捕捉効果は期待できる.樹木の胸高直径が太ければ破壊されにくくなるが,生育のためには定期的に密度を小さくする必要があり,間伐が行われる.本研究は,樹木破壊を高精度に取り入れたモデルを使用し,北海道のクロマツ間伐条件で生育した防潮林のデータにより,津波減勢効果と樹木破壊状況を評価することを目的とした.樹木破壊の観点では,間伐により樹木を十分に育てて胸高直径,枝下高を大きくした方が良いが,津波減勢の観点では,樹林帯の厚みが大きくなるように,ある程度密度があり,枝下が高くない条件が最もよい.
著者
佐藤 健太郎 小泉 源也
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.370-374, 2017-06-20 (Released:2017-07-20)
参考文献数
15

24カ月齢の黒毛和種肥育雌牛が慢性的な下痢を呈し,充実性組織塊が混在する水様性下痢,血液検査で栄養状態の低下と好酸球増多症を認めた.糞便より有意菌や寄生虫卵等は不検出であった.組織塊の細胞診で好酸球性炎による腸粘膜が剝離したものと推定し,好酸球性腸炎と診断した.また,当該牛は慢性的に高GGT血症を示し,16病日と47病日に下痢が再発した.粗飼料中のマイコトキシン検査では残飼稲ワラにおいて総アフラトキシンとして60病日に0.152mg/kg,120病日に0.300mg/kgが検出され,アフラトキシン中毒が示唆されたが,副腎皮質ホルモンを中心とした治療やマイコトキシン吸着剤の飼料添加後,栄養状態の改善が認められ,50病日以降の下痢の再発や好酸球数の増加は認められなかった.以上より,本例はアフラトキシン中毒を併発した好酸球性腸炎と考えられた.
著者
大山 一夫 佐藤 博保
出版者
農林省九州農業試験場
雑誌
九州農業試験場報告 (ISSN:03760685)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.p333-351, 1981-03
被引用文献数
1

暖地型牧草の越冬性について,熊本県西合志町において,1974年より1979年にかけて試験した。なお,試験期間中の気温は,年間で最も低い1月の月平均最低気温が-2.0℃であり,6年間を通じての最低気温は-10.3℃であった。結果は次の通りである。1. 暖地型牧草の種,品種(系統)によって,越冬性が顕著に異なることが認められた。1)ブルーステム,ウィーピングクロリス,バーミューダグラス,ラブグラス類,ブルーパニック,スィッチグラス,ダリスグラス,バヒアグラス,ベチベルなどは殆んど全個体が越冬した。2)ウーリーフィンガーグラス,カラードギニアグラスの一部系統,ベージイグラスなども暖冬年にはよく越冬したが,寒冬年には越冬歩合が低下した。3)マカリカリグラス,コロンブスグラスなどもある程度越冬した。4)セタリア,スプレンディダおよびマメ科牧草のシルバーリーフデスモディウムなどは少ししか越冬しなかった。5)シグナルグラス,ローズグラス,ギニアグラス,グリーンパニックなどのイネ科牧草及び大部分のマメ科牧草は越冬しなかった。2. 越冬性と耐霜性の間には密接な関連が認められたが,一部に例外(ブルーパニックやジョンソングラスなど)もあった。3. 耐霜性ならびに越冬性と植物体本来の大きさとの間には,一定の関連がみられなかった。4. 越冬性は種のみでなく,品種・系統によっても異なり,ローズグラスでは,越冬歩合と日長反応の間に密接な関係が認められた。5. 冬期間,ビニール被覆を行うことにより,越冬歩合をある程度向上させることが可能であった。6. 越冬した牧草の早春における生育を比較すると,種(品種・系統)間で顕著な差異が認められた。