著者
久野 春奈 小谷 卓矢 武内 徹 和倉 大輔 和倉 玲子 兪 明寿 槇野 茂樹 森脇 真一 花房 俊昭
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.520-525, 2012 (Released:2012-12-31)
参考文献数
38
被引用文献数
1 1

症例は72歳男性.2008年11月より両肩・手指の関節炎が出現.手指関節のレントゲン検査で,傍関節骨粗鬆,関節裂隙狭小化,骨末端の嚢胞性変化を認め,手指関節の造影MRI検査で,造影された滑膜の増殖と骨融解の所見を得たため関節リウマチと診断した.関節リウマチに対し,2008年12月よりMTX 4 mg/週による治療を開始し,2009年2月よりAdalimumab(ADA)40 mg/2週を導入したところ,関節炎の著明な改善を得た.以後,関節リウマチは臨床的寛解を維持していたが,2010年4月より両手掌,足趾,四肢,鼠径部に水疱と鱗屑を伴う比較的境界明瞭な紅斑が出現した.皮膚生検により乾癬様皮疹と診断し,ADAを中止したところ4ヶ月の経過で皮疹は改善した.抗TNF剤による乾癬様皮疹は稀であるが,注意するべき副作用であり,文献的考察を加え報告する.
著者
倉橋 克
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.23-25, 1950 (Released:2010-07-16)
参考文献数
9

The writer made a study of the family line of a pseudologist and found that there were at least 18 persons with degenerative dispositions in the three generations investigated. The results may be summarized as follows:1st generation: 1 psychopath2nd generation: 2 “mehr” schizothymies3 alcoholics3 sexual anomalies1 psychosis3rd generation: 1 feebleminded6 psychopaths1 psychosisThe pseudologist in questicn belongs to the third generation in this family line, The investigation revealed further that his brather, father and aunt were also pseudologists. However, the writer failed to discover any environmental influences in this connection. It would seem that, since they all came from the same line of degenerative family, their disposition is hereditary and constiuttional in nature. It was impossible, on the other hand, to decide whether or not this tendency to make false statements were causally related to other degeneratine tendencies running throngh the same family line.
著者
米地 文夫一 一ノ倉 俊一 神田 雅章
雑誌
総合政策 = Journal of policy studies (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.49-63, 2013-11-01

筆者等は「北上平野にとって、南部北上山地西縁は東方の異界との境界として生き続けてきたという時空間認識」を賢治が持っていた、という仮説を立て検証を行なった。賢治が北上平野に対する南部北上山地を、中国の平野に対するチベット高原(賢治のトランスヒマラヤ高原)に見立てたその背景には、この地域がかつて大和朝廷勢力軍事首長下の西の平野、奥六郡に、東のエミシの地、閉伊が対峙した時代があり、アテルイや安倍貞任などの伝説や、様々な郷土芸能、祭礼などにその歴史が変容し伝承されてきたことがある。たとえば、南部北上山地西縁部に位置する兜跋毘沙門天像を祀る寺社の配列は東方に対する結界であり、その西方は谷権現(丹内社)信仰などを持つ異界となる。しかし西側が設けたこの結界はむしろ、後々東側の西に対する結界となった。賢治もその結界は中立的な境界線というより、むしろ異界の始まりであると感じていた。
著者
丹治 史弥 鍋倉 賢治
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
pp.17116, (Released:2018-07-12)
参考文献数
38

Step parameters are associated with running economy (RE), but the relationship between these longitudinal changes remains unclear. In the present study, we aimed to clarify the relationship between changes in step parameters and RE at intensities below and above the lactate threshold (LT) in well-trained middle to long-distance runners and to acquire knowledge applicable to coaching. A total of 29 male university students training in distance running (age, 19.4 ± 1.0 yr; height, 171.3 ± 4.5 cm; body weight, 57.1 ± 3.6 kg) participated in the study. Participants performed multistage incremental treadmill tests to measure step parameters (ground contact time: CT; step length: SL; step frequency: SF; leg stiffness: kleg) and RE before and after 4 months of training. Since the LT speed of participants was 16.6 ± 1.1 km・h−1, intensities below, near, and above the LT were set at 13.8 and 15.0 km・h−1, 16.2 km・h−1, and 17.4 and 18.6 km・h−1, respectively. No significant relationships were observed between changes in RE and any of the step parameters at intensities below and near the LT. Moreover, although no significant relationship was noted between changes in RE and both SL and SF, there was a significant positive and negative relationship between changes in RE and CT and kleg, respectively, at intensities above the LT. Changes in kleg showed a strong negative correlation with CT changes at each intensity. It can be concluded from these findings that shortening the CT improves the RE for high-intensity running and that this variation is partly attributable to the improvement in kleg.
著者
高橋 和宏 山路 雄彦 白倉 賢二
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cb0507, 2012

【はじめに、目的】 インピンジメント症候群の原因は様々であるが,インピンジメント症候群者を対象とした上肢挙上の研究では肩関節回旋筋腱板や肩甲胸郭関節での前鋸筋,僧帽筋の筋機能低下,肩甲骨運動異常などが報告されている.また,インピンジメント症候群のリスクとして,挙上速度の速い上肢挙上があげられている.臨床ではそれらに加え,体幹の機能低下を認めることも多い.腹部筋群の筋活動は,背臥位に比べ立位にて増大し,特に内腹斜筋や腹横筋で増大すると報告されている.上肢挙上に関する体幹機能としては,feedforwardに関する研究は多く報告されている一方,上肢挙上運動中に伴う腹部筋群の筋活動についての報告はあまりみられない.本研究では健常者を対象に,異なる挙上速度において上肢挙上中の腹部筋群の筋活動を調査し,安静立位時の腹部筋群の筋活動と比較検討することを目的としている.【方法】 神経学的および整形外科的に既往のない健常男性20名(平均年齢26.4±3.5歳)を対象とした.矢状面上での右上肢挙上を課題とし,測定には筋電図(WEB-5000)と三次元動作解析装置(VICON612)を用いて,サンプリング周波数1080Hzと60Hzとで同期させた.対象筋は,両側の外腹斜筋(EO),内腹斜筋(IO),腹直筋(RA)とした.赤外線反射マーカーは右肩峰,右肘頭に貼付した.挙上速度は,fast(最大速度),natural(至適速度),slow(6秒間かけての上肢挙上)の3段階とした.各挙上速度ともに3回ずつ測定を行った.筋電図の分析には安静時(rest)および各挙上速度での上肢挙上開始から挙上150°までの平均RMSを用い,各筋の最大等尺性収縮時のRMSを100%として正規化し,%RMSを求めた.統計学的検定にはDunnettの方法を用いて,restを対照群として,fast,natural,slowの各群との比較を行った.有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は群馬大学医学倫理委員会で承認を得て実施した.研究実施の際は,本研究の趣旨を書面にて対象者に説明し,同意書に署名を得たうえで行った.【結果】 右EOはrest7.4±5.3%,fast18.1±7.9%,左EOはrest7.4±4.8%,fast23.6±18.9%,右IOはrest10.2±5.0%,fast32.7±26.5%,左IOは11.0±6.6%,fast25.1±20.1%,右RAはrest6.2±3.5%,fast12.9±8.8%,左RAはrest6.8±4.5%,fast13.3±9.4%であった.両側EO,右IOにて,fastではrestに対し有意な差が認められた.一方,natural,slowではrestに対し有意な差は認められなかった.【考察】 Hodgesらは挙上速度の速い上肢挙上では,上肢運動による反力や姿勢変化による重心移動をコントロールするために,feedforwardとして体幹筋群が先行して働くことを報告している.今回,fastにおいて腹部筋群の筋活動が安静時に比べ有意に高くなっていた理由としては,上肢挙上中も身体への反力や重心移動が大きく生じ,それをコントロールするために,肩関節周囲筋群のみでなく腹部筋群の筋活動も必要となったと考えられる.一方,natural,slowでは腹部筋群の筋活動は安静時比べ差がないため,肩関節周囲筋群の筋活動がより重要であると考えられた.今回の結果より,速度の速い上肢挙上では,腹部筋群の筋活動が必要であることが示唆された.【理学療法学研究としての意義】 スポーツ動作など最大速度を必要とする際には,腹部筋群を含めたアプローチが重要となってくると考えられる.一方,至適速度での上肢挙上では,安静時と比べ腹部筋群の筋活動が変化しないため,肩関節や肩甲胸郭関節の局所的なアプローチが重要となると考えられる.
著者
厚見 育代 倉田 昌明 榊 秀之
出版者
比較眼科学会
雑誌
比較眼科研究 (ISSN:02867486)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.35-41, 2013-12-27 (Released:2015-03-28)
参考文献数
10
被引用文献数
2

眼球に関する比較解剖学的研究は古くから広く実施されている。実験動物の眼球に関する知見は、眼科用医薬製品開発の非臨床試験評価において必要不可欠である。しかしながら、これらの知見は散在しており、点眼や硝子体内投与といった眼局所投与の研究において汎用される動物種(ウサギ、ビーグル犬、カニクイザル)に関しても、比較実験成績はないか、あるいは容易に入手できない状況にある。そこで我々は、ウサギ、イヌ及びサルを対象として、眼球、水晶体及び硝子体の解剖学的特徴を比較検討することを目的として本研究を行った。今回の検討において、眼球の大きさ(眼軸長、重量及び容積)、水晶体の大きさ(厚み、重量及び容積)及び硝子体の大きさ(重量及び容積)を各動物種について計測した。3種間の比較結果では、眼球の大きさはイヌが最も大きく、サル、ウサギの順であった。眼球の大きさと体重の間に正の相関があった。水晶体の大きさについては、イヌが最も大きく、ウサギ、サルの順であり、眼球の大きさや体重とは相関しない結果であった。硝子体の大きさは眼球の大きさと同じ順であったが、その眼球に対する割合はサルが最も大きかった。以上、眼局所投与の研究に汎用されるウサギ、イヌ及びサルの眼球、水晶体及び硝子体の大きさを詳細に比較検討した。今回得られた知見は、非臨床試験の評価やヒトへの外挿性において重要かつ有益な情報に成り得るものと考えられる。
著者
山地 啓司 高山 史徳 鍋倉 賢治 YAMAJI Keiji TAKAYAMA Fuminori NABEKURA Yoshiharu
出版者
鹿屋体育大学
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 = Research journal of sports performance (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.375-387, 2016

これまで呼吸筋トレーニングが非運動時に一定のリズムで深くゆっくりした速さで繰り返す呼吸法で行われているが、必ずしも一致したトレーニング効果が得られていない。そこで、本研究はランニング中にノーズクリップを鼻部に装着して行う呼吸筋トレーニングが生理的機能の改善やランニングのパフォーマンスの向上に有効であるか否かを追究した。被験者はランニング習慣を有する大学生及び院生8名(男子3名、女子5名)とし、ノーズクリップを装着する4名(ノーズクリップ群)と装着しない(コントロール群)4名に区分し、4週間後に両群が交代してさらに4週間トレーニングを行うクロスオーバー実験を行った。トレーニング前・4週間後・8週間後の3回にわたり、トレッドミルを用いた漸増負荷テストを実施した。その結果、ノーズクリップ群にのみall-outに達した時の走速度が6m(2.4%)、持続時間が0.6分(4.8%)それぞれ延長し、さらに喚起性閾値の走速度が13m/min(7.6%)増加した(p<0.05)。しかし、有酸素的な生理的応答ではその増加を証明する原因を明らかにできなかった。今後は呼吸筋のトレーニング期間(1か月以上)を長くして、パフォーマンス向上の生理的メカニズムを究明する必要があろう。
著者
三宅 琢也 中島 淳 鬼倉 徳雄 古丸 明 河村 功一
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.1060-1067, 2008 (Released:2008-12-05)
参考文献数
34
被引用文献数
4 7

九州産ニッポンバラタナゴ(RoK)の保護に向けた知見を収集するため,遺伝子と形態分析により RoK の分布の把握を試みた。RoK の mtDNA は 46 集団中 41 集団で見られたが,13 集団においてはタイリクバラタナゴ(RoO)の mtDNA も確認された。RoK は九州中北部に広く分布していたものの RoO による遺伝子浸透は多所的に生じていた。平均側線有孔鱗数と RoO の mtDNA の頻度の間には正の相関が認められた。RoK の識別において側線有孔鱗数は,腹鰭前縁部の白色帯よりも優れた形質であると言える。
著者
増田 彰正 田中 剛 朝倉 純子 清水 洋 Akimasa MASUDA Tsuyoshi TANAKA Junko ASAKURA Hiroshi SHIMIZU
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.197-203, 1977-03

やまと隕石(j),(k)および(m)の中の希土類元素(REE),Ba,Rb,Srを安定同位体希釈法によって定量した.(j)については,任意に二つの部分をとって分析した(提供された試料は,やや粗い粉末試料だった).最も代表的な希土類元素相互存在度を示すと考えられるLeedeyコンドライトの値で規格化すると,(k)は最も小さい分化を示すが,Euによく見られる異常は別として,GdとDyとの間に不連続性が見られるのが特徴である.(m)と(k)は,成因的な関連が深いと判断された.(j)の二回の定量値の間には,興味深い,系統的な差がある.(m)と(k)との関連,および(j)の内部的分化は,共に,もとの母体小惑星内での溶融と結晶分化の効果を強く示唆すると解釈できる.
著者
倉片 憲治 久場 康良 口ノ町 康夫 松下 一馬
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.215-222, 1998-08-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
17
被引用文献数
5 3

高齢者の聴覚特性に適合した報知音を検討するために, 現在市販されている家電製品の報知音の測定を行った. その結果, 以下の3点が問題として明らかとなった: (1) 4000Hz付近の高い周波数の音が多用されている. これらの音は聴力の低下した高齢者にとって聞き取りにくいものであり, より低い周波数の音の使用が望まれる. ただし, 家庭内で生じる環境音は低域の成分が相対的に強いため, 報知音の周波数を下げることによって, それらの音にマスクされて聞き取りにくくならないよう注意する必要がある. (2) 非常に小さな音を用いた製品がある. 高齢者の聴力に合わせた, 適切な音量設定が必要と考えられる. (3) 互いに似通った音色や鳴らし方のパターンが多いため, どの製品の音が鳴ったのかが区別しにくい. そのために混乱をきたす可能性があると考えられる.