著者
西島 啓二 鎌倉 稔成
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.23-35, 2010-01-31 (Released:2017-05-01)
参考文献数
10

本研究では,再発事象の発現が定常ポアソン過程に従うと仮定し,再発事象の発現頻度が変化する点(変化点)の存在に関する仮説検定を考え,検定統計量の帰無分布について考察した.再発事象がn件発現した場合の検定統計量の帰無分布は,互いに独立でないn-2個の自由度1のカイ2乗分布(χ^2_1分布)の最大値の分布で与えられる.しかしながら,その分布を導出することは難しいため,帰無分布の下界及び上界が,それぞれ,独立なn-2個のχ^2_1分布の最大値の分布及びχ^2_1分布で与えられることを理論的に示し,下界及び上界を用いた線形結合により,帰無分布を近似することを検討した.本研究で導出した下界及び上界を用いた近似は,必ずしも近似が十分でないこともあることから,さらに,経験分布関数による近似について検討した.シミュレーション研究の結果,検定統計量の帰無分布は,発現件数nに応じたガンマ分布による近似が可能であると考えられ,ガンマ分布のパラメータを,発現件数nに基づき決定する回帰式を求めた.このガンマ分布を用いた経験分布による近似は,全ての領域で帰無分布の良い近似を与え,また,検定における第1種の過誤確率を名目の有意水準に保つ観点からも,下界及び上界を用いた近似に比べて,帰無分布の良い近似を与えることがわかった.
著者
倉山 太一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1338, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】ヒトはある程度の騒音の中にいても,遠方から友人の声がすれば無意識的に反応し,注意を切り替えることができる。カクテルパーティ効果などと呼称されるこの能力は,外部刺激に対する自動的な脳内情報処理機構として動物が自然界で生き延びるための生来的な能力の一つと言われている。ミスマッチ陰性電位(Mismatch negativity:MMN)はこのような注意に関連した認知機能を反映する事象関連電位として,認知神経科学の分野で多く研究されている。本研究では二重課題歩行が,ヒトの注意機能に与える影響を明らかにすることを目的とし,歩行中のMMNについて検討した。【方法】対象は健常成人24名とした。計測課題はA1:坐位で無声動画を見ながらのMMN計測,A2:自由歩行にて無声動画を見ながらのMMN計測,およびB1:水運搬課題(水の入ったカップを把持し,こぼさず歩く)にてMMN計測,B2:粘土運搬課題(粘土の入ったカップを把持して歩く)にてMMN計測,の4つの課題を被験者ごとに擬似ランダムな順序で実施した(歩行速度は至適速度で統一した)。課題に先立ち5分以上の準備歩行を実施すると共に至適速度を定めた。カップは透明なものを用い,底部から上縁までの80%の高さまで水を入れ,左手で胸骨から真っ直ぐ前方へ30~50cmの持ちやすい位置で把持させた。粘土は水と同じ重さとした。歩行中は加速度計(TSND121,ATR-Promotions)を左手首・第三腰椎に装着し運動学的解析を行った。同時にヘッドフォンを通じて0.5秒間隔の音刺激(75ms)を通常音(1000Hz)と逸脱音(1000±100Hz)が5:1の割合となるよう1200回与え,脳波計(32ch Active-two system,Biosemi)によりMMNを計測した。実験終了後に各課題中に被験者が感じた難易度,覚醒度,集中度などについてvisual analog scale:VASを用いて質問した。脳波データは1-20Hzのデジタルバンドパスフィルターを適用後,音刺激をトリガーとして加算波形を作成した。統計解析は課題A1とA2の間でMMN振幅と頂点潜時,および課題B1とB2の間でMMN振幅と頂点潜時,および運動学的指標(躍度,歩幅,ケイデンス,歩行周期変動),またVASの平均値について,対応のあるt検定を実施した。MMN成分について有意差が認められた場合,Loreta解析を用いて脳活動部位の違いについて推定した。有意水準は5%とした。データ解析にはMatlab 2012aを,統計解析にはSPSS ver19.0のソフトウェアを用いた。【倫理的配慮・説明と同意】本研究は倫理審査会の承認を受けており,対象者への説明・同意の上,実施された。【結果】手先躍度,重心位置躍度,歩行変動性は水運搬課題に於いて自由歩行,粘土運搬課題に比べて有意に低下した。ケイデンスはほぼ一定であった。MMN振幅は,水運搬課題において粘土運搬課題に比べて有意に高い値となった。MMN潜時について有意差は認められなかった。課題中の主観的な難易度,覚醒度,集中度は水運搬課題で最も高かった。Loreta解析の結果,水運搬課題ではBrodmann area 6,32,24,4,8における有意な脳活動が推定された。【考察】MMN振幅は粘土運搬課題に比べ,水運搬課題で有意に高い値を示した。このことから二重課題歩行においては外部環境音に対する注意状態が高まることが示唆された。またLoreta解析により複雑運動に関与するとされるBrodmann6野,stroop課題など二重課題で活動する32野の活動が高まった。水運搬課題に於いては,水をこぼさないよう手先の制御に集中するほか,手先の位置を安定させるための滑らかな歩行が要請されたことが,被験者の感じる課題への集中度や覚醒状態が上がったことの要因と考えられた。なお水面の状態を常時確認するため,必然的に視線は水面に集中するが,このような状態で外部環境に対応するためには,聴覚的な注意機能を高める必要性が生じることも要因として考えられた。二重課題歩行(B1およびB2)にてMMNに差が生じた要因として以上のような注意・覚醒度の上昇,また視覚情報の制限などが挙げられた。【理学療法研究としての意義】脳波計測は非侵襲的で計測も簡便である一方,アーチファクトの問題により歩行中に実施することは難しく,これまで主に坐位,立位,歩行準備期など,静的な計測条件に限定されてきた。しかし近年,計器性能の向上により実用的なデータが得られることが示されてきており,臨床応用の可能性が広がっている。高齢者や各種疾患を有する人々に於いては,注意機能などの低下が転倒因子の一つと成ることが示されているが,これまで歩行中の注意機能について脳機能計測を用いた直接的な検討は非常に少ない。本研究は脳波計測を歩行中の脳機能評価として応用できる可能性を示した点に於いて意義があると考えている。
著者
杉下 佳辰 日下部 貴彦 朝倉 康夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_781-I_792, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
26

局所的な障害が要因となり,連鎖的障害がシステム全体へ波及する現象をカスケード故障(cascading failure)と呼ぶ.ネットワークとして表現できる現実の社会システムでは,ごく少数のノードやリンクで発生した障害がネットワーク全体に壊滅的な損害をもたらし得ることが確認されている.本研究では,カスケード故障による壊滅的損害を回避することを目的とした損害抑制策を提案する.具体的には,局所的障害の発生直後に,Collective-Influenceと呼ばれる指標値の低いノードを意図的に除去することでネットワークにかかる負荷を軽減し,障害の波及を抑制する策を提案する.数値計算によって耐久性の低いネットワークに対しても提案策が効果的に働くことを示すとともに,提案策によって既存の方策を上回る損害抑制効果が発揮される可能性を示唆する.
著者
倉本 真一
出版者
海洋理工学会
雑誌
海洋理工学会誌 (ISSN:13412752)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.39-44, 2018 (Released:2018-12-28)
参考文献数
4

Importance of scientific ocean drilling was becoming more widely known in the Japanese scientific community, based upon the results of DSDP/IPOD/ODP by late 80s. Many scientific and engineering discussions took place domestically and internationally, and finally those discussions led the Japanese government to decisively move forward with the construction of D/V Chikyu. Finally, Chikyu was delivered to the Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology (JAMSTEC) in July 2005. Chikyu was designed and built as a scientific ocean drilling vessel capable of riser drilling in water depths of 2,500 m (future target is 4,000 m class). Chikyu can drill in deeper water and to deeper sub sea floor depths than any other scientific drilling platforms. Chikyu’s large hull makes it possible for a large onboard laboratory, with space for large analytical instruments and facilities. Since the first scientific operation conducted in the Nankai Trough in 2007, Chikyu made significant scientific achievements by IODP Expeditions. Those results are briefly introduced and show a future operation challenge with introducing Chikyu’s general features.
著者
岩倉 成志 吉枝 春樹 小林 渉
出版者
芝浦工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

東京圏の都市鉄道は,極めて高い混雑率の路線が存在し,列車遅延も発生している.抜本的な輸送力増強が必要だが,予算の縮小や投資リスクで,大規模投資は困難である.わが国は運行間隔120秒程度が最小だが,海外では90秒で運行されている.わが国でも運行間隔90秒まで引き上げれば,混雑率180%を140%以下まで緩和できる.エージェントシミュレーションと運転曲線図の2種の検証で,既存ストックを最大限に活用した超高頻度運行の可能性を検討した.結果,移動閉そくシステムの導入で,田園都市線と半蔵門線で大幅に運行間隔を縮小できることが判明した.また,渋谷駅の容量増強で,運行間隔90秒を達成できることを示した.
著者
笹倉 理子
出版者
電気通信大学
雑誌
電気通信大学紀要 (ISSN:09150935)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.68-72, 2020-02-01

“Since 2016 the global school for high school students has been held as an educational program conducted by three national universities in Western Tokyo(TUFS, TUAT, and UEC). In March 2019 the school took place with the theme of “SDG14”, “SDG15” and we designed the school program in UEC that covers environmental techniques from basics to practice. Here we report the teaching materials by using a CO2 sensor and micro:bit, and how our program was carried out.
著者
倉方 俊輔
出版者
早稲田大学
巻号頁・発行日
2004

制度:新 ; 文部省報告番号:乙1879号 ; 学位の種類:博士(工学) ; 授与年月日:2004/3/4 ; 早大学位記番号:新3802
著者
片倉 芳雄 Akiko KATAYAMA
雑誌
研究紀要 = Research Bulletin
巻号頁・発行日
no.36, pp.1-8, 2005-03

水耕液のAl濃度(0,1,2,4,6,8,10mM)がラビットアイ'ホームベル'(挿し木発根苗)の生育および養分吸収に及ぼす影響を検討した.1)水耕液Al濃度の上昇は樹体生育(乾物重)を著しく阻害した.Al 6mM以上では枝葉の生長は停止し,根は褐変・壊死が,葉ではクロロシスが認められた.2)水耕液Al濃度の上昇により,P含量は枝葉で低下,K含量はAl 6mM以上で根・枝葉で低下したが,N含量は根でわずかに影響を受けたのみであった.3)Ca・Mg含量は根ではAl 1mM以上で著しく低下し,枝葉でも同様の傾向であった.4)水耕液Al濃度の上昇は根のAl含量を著しく高め,枝葉でも増加傾向であった.5)水耕液Al濃度の上昇は根のFe含量を高めたが,枝葉,特に葉では低下させた.6)水耕液Al濃度の上昇は根・枝葉,特に枝葉のMn含量を低下させた.7)水耕栽培でのAl添加はラビットアイの生育を著しく阻害するとともに,養分の異常集積や吸収低下をもたらした.
著者
平 俊介 高須 航 山田 智隆 武居 直樹 西倉 祐太 石川 貴之 細井 理央 安田 昂樹 高橋 和司 齋藤 孝道
雑誌
第78回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, no.1, pp.601-602, 2016-03-10

JavaScriptを用いることで利用者のキー入力を秘密裏に採取する,所謂JavaScriptキーロガーがある.Webサイトの改ざんに伴うスクリプト挿入攻撃は数多く報告されており,攻撃者によりJavaScriptキーロガーが挿入された場合,利用者が認証に用いるIDやパスワードのパターンを採取されてしまうので,Webサイト運営者のみならず,利用者側でも対策を行うことが望ましい.本論文では,ブラウザ側での対策として,アクセスしたWebサイト上のHTMLやJavaScriptの解析,及び,疑わしいリクエストを特定し,JavaScriptキーロガーの検知を行うブラウザ拡張機能の提案及び実装を行う.
著者
治田 匡平 市田 裕之 石樋 康浩 宇髙 歩 日笠 真一 尾崎 淳子 大槻 真央 矢倉 裕輝 吉野 宗宏 古西 満 杉山 幸正
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.44-53, 2019-01-10 (Released:2020-01-10)
参考文献数
18

Pharmacists' interventions are considered to be important at the time of starting anti-HIV therapy or changing treatment in outpatient care for HIV infection. We conducted a questionnaire survey to clarify patients' assessments of pharmacists' interventions in outpatient care for HIV infection. The survey was conducted at seven AIDS treatment center hospitals in the Kinki region, and the analysis was performed on 112 patients receiving the initial treatment and 79 patients experiencing treatment change. Pharmacists' interventions were found to be helpful by 97.3% of the initial treatment patients and 96.2% of the treatment change patients; the former often found it helpful in understanding the “necessity of receiving drugs” and “failure in taking drugs and acquisition of resistance”, while the latter often found it helpful in understanding the “difference of the new drug from the previous one” and “side effects”. Pharmacists' interventions relieved anxiety in 89.3% of the initial treatment patients and 89.9% of the treatment change patients, and produced good overall effects such as “relieving anxiety as regards receiving drugs”, “facilitating communication with doctors”, and “reducing questions for doctors”. The survey results showed that pharmacists' interventions at the time of starting anti-HIV therapy or changing treatment met patients' needs and contributed to improving the quality of medical care, such as reducing patient anxiety and the burden on doctors.