著者
稲垣 善之 深田 英久 倉本 惠生 三浦 覚
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.69-75, 2005-10-31

高知県の3地域(高知,大豊,津野)のヒノキ8林分において,落葉の季節性と窒素利用様式の関係を明らかにした。落葉が年間量の10%に達する開始時期(T_<10>)は,9月7日〜10月22日,50%に達する落葉時期(T_<50>)は,10月25日〜1月3日,10%から90%に達するまでの期間は30〜189日であった。これらのヒノキ林分における年平均気温は9.6〜16.7℃であったが,年平均気温と落葉の季節性には有意な相関関係はみられなかった。一方,T_<10>とリターフォールの窒素濃度には有意な負の相関関係がみられた。窒素の資源の乏しい環境では,ヒノキは長い間葉をつけるため生育期間が長くなると考えられた。T_<50>は樹高成長の指標が小さいほど早い傾向がみられた。樹高成長の小さい林分では水分ストレスが強いために落葉時期が早いと考えられた。以上の結果,ヒノキの落葉は水分ストレスが強いほど早く,窒素欠乏によって遅くなる傾向が示唆された。
著者
米倉 竜次 苅谷 哲治 藤井 亮吏 熊崎 博 斉藤 薫 熊崎 隆夫 桑田 知宣 原 徹 徳原 哲也 景山 哲史
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.839-843, 2007 (Released:2007-10-03)
参考文献数
20
被引用文献数
4 5

岐阜県の椛の湖に定着した外来魚ブルーギルの生息個体数が,釣りによる駆除により抑制されるかを検討した。調査期間中,総計 15966 個体を駆除した。標識再捕法による個体数推定の結果,ブルーギルの生息数は 24231 個体から 10092 個体まで減少した。また,体サイズ分布の変化から,繁殖に寄与するであろう大型個体が減少することや新規加入が抑制されていることが示唆された。これらの結果から,釣りによる駆除はブルーギルの個体群を抑制するうえで有効であると考えられた。
著者
古川 幸穂 寺本 晃冶 後藤 正司 元石 充 岩切 章太郎 藤本 利夫 岡崎 強 松倉 規 塙 健 山下 直己 松井 輝夫 桑原 正喜 松原 義人
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.524-528, 2003-05-15
参考文献数
7
被引用文献数
5 1

pleomorphic carcinomaの1例を経験した.症例は64歳.女性. 2000年9月頃から咳嗽が出現し,胸部レントゲン写真で,左下葉の著明な含気低下と左下葉に腫瘍陰影が認められ,2001年1月当科紹介人院となった.胸部CT写真では,左S^6に結節陰影が認められ,左主気管支がほぼ閉塞していた.気管支鏡検査では,左主気管支を閉塞する白色ポリープ状の腫瘤を認めた.鉗子生検を施行したが,正常気管支粘膜のみで確定診断は得られなかった.画像所見と内視鏡所見から肺癌を疑い,左肺全摘除術を施行した.切除標本の肉眼的所見は,腫瘍は左下葉から発生し,左下葉支から左主気管支,左上葉支までポリープ状に進展していたが,気管支粘膜には浸潤していなかった.病理組織学的所見では,腫瘍の大部分は腺癌であり,腫瘍の4分の1にspindle cell, giant cellを認め,pleomorphtc carcinomaと診断した.
著者
倉橋 孝夫 持田 圭介 小畠 正至
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.262-266, 2002-03-15
参考文献数
17
被引用文献数
2 1

カキ'西条'の抑制栽培の技術を確立するために, 蛍光ランプを用いて, 10a当たりの設置密度を500灯, 250灯, 125灯と無処理区を設定し, 8月27日&acd;12月8日まで日長時間が17時間±1時間になるようにして長日処理の効果と適正な電照ランプ密度について調べた.光強度の異なる長日処理を行うと, 光強度の強い区ほど葉色(SPAD値)が濃く, 新梢の二次生長量が多く, 落葉時期が遅れた.さらに, 果皮色の進行は光強度の強い区ほど遅く, 果皮色が3以上になるのは, 無処理区が11月上旬であったが, 電照区は11月下旬であった.また, 果肉硬度は光強度が強い区ほど硬く, 屈折計示度は低かった.以上より, カキ'西条'に長日処理を行うことによって, 果実の成熟が遅れ, 栄養生長は盛んになると考えられた.また, カキ'西条'の抑制栽培で適正なランプ設置密度は, 成熟遅延効果があり, 果実糖度の低下が少ない125灯/10aで, 樹冠表面PFDは1.5μmol・m^<-2>・sec^<-1>程度であると考えられた.
著者
中川 英元 岡崎 慎司 関本 慎二郎 朝倉 祝治 福田 健三 重盛 徹志 高橋 祥夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPM, 電子部品・材料
巻号頁・発行日
vol.98, no.154, pp.65-70, 1998-06-26
参考文献数
8

エバネッセント波吸収を応用してライン型水素センサを試作した。酸化タングステン(WO_3)が水素存在下でタングステンブロンズとなって青く発色する現象を感応膜として利用した。センサはWO_3粉末をシリコン樹脂中に分散させてクラッドとしたものと、ゾルゲル法でコア表面にWO_3薄膜を形成させたものを作成した。シリコン樹脂中に分散させたセンサは水素存在下で青く変色するにもかかわらず、光損失が減少した。ゾルゲル法で薄膜を形成したセンサは水素存在下で光損失が予想通り増大し、応答時間も常温で10分程度と比較的速く、ライン型センサとして有望であった。
著者
佐倉 統 福士 珠美
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.18-27, 2007-09-20
参考文献数
31
被引用文献数
1

近年、脳神経科学における高次脳機能画像の研究や脳-機械インターフェイス(BMI,BCI)などが普及することにより、極端に言えば「誰でも脳を研究できる」ようになった。その結果、非医療系研究者のおこなう実験において、脳に器質的な疾患が偶発的に発見される可能性が高まっている。医療行為に従事する資格を持たない研究者が直面するかもしれないそのような事態に備えて、非医療系基礎研究に関する倫理体制の整備が必要である。また、脳の情報はゲノム情報やその他の生理学的情報に比べると、一個人の精神活動に直接関係する度合いが高いという特徴をもつ。すなわち、社会においては脳といえば意識や自我、人格などと密接な関係にあるものとして位置づけられている。しかしこれらのトピックについて、そのような社会からのニーズに明解に応えるほどには科学的な解明は進んでいない。このような科学と社会の「はざま」に付け込むようにして、科学的に不正確な一般向け通俗脳科学書が氾濫している。マスメディアと科学の関係も含め、科学と社会の接点領域をデザインする展望が必要である。また、これらの諸課題に適切に対応するためには、省庁や学会の縦割り構造を超えて横断的に対応できる組織と指針の整備が必要である。
著者
花村 肇 子安 和弘 朝倉 昭子
出版者
成長談話会
雑誌
成長 (ISSN:02877775)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.175-183, 2002-12
被引用文献数
1
著者
小倉 義光
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.691-696, 2005-09
著者
小倉 義光 加藤 輝之 高野 功
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.869-876, 2005-11-30
参考文献数
4
被引用文献数
1
著者
奈倉 文二 千田 武志
出版者
獨協大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

日露戦争を契機とする海軍兵器国産化過程で、その中軸的担い手であった海軍工廠による艦船兵器類の製造・修理の実態を明らかにし、また、民間軍事関連企業の有機的連携がどのようにはかられたかを解明した。本研究では、英国からの「武器移転」と関連する日本の「軍器独立」過程として捉えた。また、兵器の供給に関わる商社の活動をも明らかにした。そうした試みはジーメンス事件を捉え直す上でも重要な意味を持った。第一次大戦は、日英関係にとって「分水嶺」となり、英国系兵器火薬会社においても「技術移転」は基本的に完了するに至った。
著者
福井 豊 武藤 浩史 石川 尚人 寺脇 良悟 小野 斉 家倉 博
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.33-41, 1982-11-25

本研究は,黒毛和種未経産牛57頭について,A群26頭は24時間連続観察,B群の31頭は1日30分の2回観察を22日間行った。調査項目は,1日の発情頭数,22日間の全発情頭数,発情開始時刻,発情持続時間,乗駕および被乗駕回数,1日の発情頭数による発情行動の変化(Sexually-Active Group),牛群内の社会的順位,天候および気温と発情行動との関係についてである。A群において,26頭中23頭(88.5%),延25例,B群において31頭中23頭(74.2%),延26例の発情が確認された。B群の発情観察時間で,A群の発情発見結果を24時間連続観察と比べると,1例見逃したのみであった。発情開始時刻は乗駕および被乗駕行動とも夜(18:00〜06:00)に開始したものが半数以上であった(乗駕行動:56.5%,被乗駕行動:52.0%)。発情行動は全例において乗駕行動で始まり乗駕または被乗駕行動で終了した。その内,乗駕-被乗駕-乗駕の発情行動パターンが観察されたのは23例中17例(73.9%)であった。乗駕行動から被乗駕行動へ移行する時間差は6時間03分±5時間26分であった。発情持続時間は,被乗駕行動の継続時間では19時間13分±6時間37分であり,全発情行動の継続時間では27時間06分±9時間47分であった。単独で発情を示した牛の発情持続時間は,同時に2頭似上発情を示した牛と比べて短く,乗駕および被乗駕回数も少なかった。牛群内の社会的順位と発情行動および発情持続時間との間には有意差は認められなかった。また,天候や気温についても明らかな関係は見られなかった。本研究から,1日30分の2回観察(06.00と18.00)の発情観察により,ほとんど全頭の発情牛を確認できた。しかし,発情開始時刻,発情持続時間,乗駕および被乗駕回数は個体やSexually-Active Groupの構成により変化すると思われた。
著者
小倉 義光
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.p439-465, 1990-07
被引用文献数
3
著者
佐藤 眞一 倉本 満 小野 勇一
出版者
The Herpetological Society of Japan
雑誌
爬虫両棲類学雑誌 (ISSN:02853191)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.119-125, 1994

九州の21地点から採集したブチサンショウウオ108個体の斑紋と体の大きさを比較した結果,地理的に隔てられた3型が区別された.九州北部に分布する北九州型は頭胴の背面に白斑をもたない.大分の中九州型と祖母山地以南の南九州型では白斑がよく発達しているが,前者は大形,後者は小形である.北九州型は中九州型に比して相対的に四肢が短く頭幅は大きい.これらの3タイプは系統的に異なり,九州の地史と関連して分化したものと考えられる.