著者
矢野 裕理 内田 由紀子 増田 貴彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.464, pp.99-104, 2012-02-27

本研究では、表情認知への背景情報の影響とニート・ひきこもりリスクの関連を検討した。その結果、ニート・ひきこもりリスク高群は、中心にいるターゲット人物の表情と背景人物の表情が不一致な場合のターゲット人物の感情判断において、その判断がより背景情報に影響されており、その傾向はターゲット人物の表情がネガティブな場合に有意であった。この結果は、ニート・ひきこもりリスクの高い人々が、少なくとも複数人数でのコミュニケーション場面において、強い包括的認知傾向を持っている可能性を示唆するものである。
著者
内田 照久
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.414-423, 1993-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
21
被引用文献数
6

Many learners have difficulty in recognizing long vowels (LVs) and double consonants (DCs) in Japanese language. The purposes of this study are to investigate the characteristics of auditory perception of LVs and DCs in Japanese natives and to compare them with those of Chinese students. In the experiment I, 52 Japanese subjects were asked to judge 712 stimuli (human voices processed by a time expansion technique) whether they included LVs or DCs. The results show the threshold values are proportional to the speech speed and their judgements are the stablest in the range of natural speed. In the experiment II, threshold values were measured by the method of limits for four Japanese natives, four Chinese experts in Japanese language, and four Chinese novices. Threshold values in ascending series are longer than those in descending series for Japanese natives and Chinese novices, while the reverse is true for Chinese experts. This result suggests that Chinese experts use the different strategy in perceiving LVs and DCs to attain the same level of performance as Japanese natives.
著者
内田 智士
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

劇症肝炎、脳梗塞、心筋梗塞など様々な難治性疾患に過剰な細胞死が深く関わっている。遺伝子治療を用いることで、細胞死を抑制する因子を生体へ持続的に供給することが可能である。従来、遺伝子治療ではDNAの導入が行われてきたが、本研究ではより安全性の高い方法であるメッセンジャーRNA (mRNA)導入を用いて、細胞死を抑制する治療を行った。劇症肝炎モデルマウスを用いた実験で、mRNA導入がDNA導入と比べて高い治療効果を示したことから、本治療戦略の有効性が示された。
著者
荒瀬 輝夫 内田 泰三
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.7, pp.11-19, 2009-03

サルナシ(Actinidia arguta(Sieb.et Zucc.)Planch. ex Miq.)の地域産物化をはかるため,長野県中南部において系統収集を試みた。自生地の環境を把握するとともに,果実の形態および収量の系統間変異を分析した。得られた系統数は20,自生地の標高は770~1400m,地形は沢筋から尾根上まで様々で,落葉樹林が多かった。平均果実重は系統平均4.47±1.47g(1.87~6.89g)で,2山ないし3山の頻度分布を示した。果形にはAP型とCU型,着果型には鈴成り型と普通型という顕著な変異が認められた。果実における相対生長関係から,果実重と果実径との間に強い相関が認められたが,果実長との関係は不明瞭であった。採集効率(1時間あたり採集可能数の対数階級値)を用いて収量を求めたところ,1.4~2.8(25~630g・hr⁻¹)であった。自生地の標高と比較すると,平均果実重および収量は,いずれも標高1100m付近を最大値とする曲線関係を示した。
著者
内田 浩光 道下 尚文 陳 春平 大久保 賢祐 松本 公志 舟橋 祐紀 津留 正臣
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.446, pp.67-75, 2011-02-24

2010年9月26日から10月1日まで,フランス・パリにて開催されたヨーロッパマイクロ波会議(European Microwave Week 2010)の概要ならびに,アンテナ・伝播,フィルタ,メタマテリアル・伝送線路,電力合成器ほか受動回路,増幅器,発信器・ミクサ,無線システムの各個別テーマに関する会議報告内容をまとめて紹介する.
著者
松本 博之 内田 忠賢 高田 将志 吉田 容子 帯谷 博明 西村 雄一郎 相馬 秀廣
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,グローバル化と地域景観・地域環境の変容について、特に紀伊半島における近現代を中心に検討した。その結果以下の諸点があきらかとなった。(1)1960年代後半からの外材供給の増大にともなう国内材供給量の低下は、十津川流域における植林地の変化に大きな影響を及ぼし、植林地伐採後の落葉広葉二次林景観の出現をもたらしている。(2)生活基盤が脆弱な紀伊半島和歌山県沿岸部では、近代を通じてグローバル化の2度の波があることが明らかとなった.このうち2度目は最近10年ほどの動きであり,明治期以降第2次大戦前までの1度目のグローバル化を基盤とした歴史的な地域性を引き継いでいる。(3)経済的な面でグローバル化の進行が顕著な日本社会ではあるが、高齢者個々の「生きられた世界」の構築には、地理的要素や地域の特殊性といった地域間の差異が大きく影響している。
著者
内田 照章 毛利 孝之
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

1.イエコウモリ精子は、子宮では上皮細胞の微絨毛を被うルテニウムレッド濃染の良く発達した微細な糖衣に精子頭部を接触させ、子宮卵管移行部では上皮細胞の細胞膜弯入部に精子頭部を嵌入させて長期貯蔵される。今回、子宮内膜上皮細胞の微絨毛糖衣は排卵と同調して失われ、そのために精子が上皮細胞から離脱すること、また精子貯蔵部位の上皮細胞にはグリコーゲン顆粒の他に、過蟻酸-燐タングステン酸に濃染する糖脂質様の分泌顆粒が多数認められることを明らかにした。2.イエコウモリ精子の貯蔵に関与する子宮卵管移行部の上皮細胞はまた、精子を貪食する機能を持つ。今回、これら上皮細胞の貪食能を更に確認するため、カチオン化フェリチンを用いて培養実験を行なった結果、貪食能の他に飲食能も認められ、そのために腔内が清澄に保たれることを実証した。一方、子宮内膜上皮細胞は精子を貪食せず、またフェリチンを取り込まなかった。3.今までに、雌性生殖道内に搬入された精子の受精能獲得に要する時間は50日以上であることを実験的に明らかにした。今回、更に既交尾雌の隔離実験と排卵促進剤の投与により、卵の賦活率と正常発生率を詳細に調べた結果、精子は少なくとも85日以上滞留しないと受精能を獲得し得ないことを明らかにした。4.ユビナガコウモリの遅滞着床機構を解明するため、冬眠前・中・後期における血漿プロゲステロン濃度を測定した結果、その濃度は非妊娠期に比して、冬眠前から始まる遅滞着床中は有意には上昇せず、その後の冬眠中の遅滞発生中には有意に低くなるが、冬眠覚醒後には有意に高くなることを知り得た。5.その他、モリアブラコウモリ、コウライアブラコウモリ、オオアブラコウモリ、クロアカコウモリ、テングコウモリなどの精子貯蔵様式を電顕的に比較検討すると共に、これらの受精過程をも観察中である。
著者
内田 みどり
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ウルグアイにおける1973年のクーデターと軍の人権侵害について、歴史家は一致して「少数派の大統領が軍に頼った末に生じた「国家テロリズム」とみなしている。だがゲリラと軍の双方に責任があるという「二つの悪魔」説が市民の間で生き残っているのは、合法政党に転身した元ゲリラを選挙戦で攻撃するために、自分たちは軍政の被害者だと考える政治家がこの説を利用してきたからだ。
著者
神野志 隆光 齋藤 希史 徳盛 誠 内田 賢徳 身崎 壽
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本プロジェクトは各国文学のパラダイムを脱却し、歴史的実態に即した上代文学研究の新たな枠組みを「東アジア古典学」として提起しその具体化を試みた。国内外の研究者と連携し、古代の文字使用の実態、類書・幼学書の活用、文選の受容、万葉集の捉え直し等、共同研究によって新たな知見を獲得した。そうした研究と相乗的に、新たな枠組みを活かした教育プログラムの構築をも推進した。主な成果は『東アジア古典学のために2007-2010』にまとめられている。
著者
並木 道義 松坂 幸彦 鳥海 道彦 内田 右武 平山 昇司 小松 俊郎 本田 秀之 井筒 直樹 齋藤 芳隆 太田 茂雄 山上 隆正 廣澤 春任 松本 敏雄 兒玉 康資 本間 容博
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.25-34, 2001-02

宇宙科学研究所三陸大気球観測所では,スタティック放球方式の一種である立て上げ放球方式を用いて,数多くの大気球の放球を成功させてきた。近年,大型気球の需要が高まり,放球方法の改善と放球場の拡張が必要となっていた。1998年に我々は,新しい大型気球放球装置を用いた放球方法であるセミ・ダイナミック放球方式を開発した。この放球方式は,ガス注入後,ローラー車から気球を解放することによって一気に気球を立て上げ,気球が,観測器直上を固定している大型放球装置の直上にきたとき,大型放球装置から観測器を解放する,という手順で放球を行う。徐々に立てあげていた従来の方式と比べて,ローラーで立て上げて行くときに皮膜を傷つける心配がなくなること,放球作業の時間短縮ができることが利点である。1998年(平成10年)に,飛揚場の先端部分を20m延長し,その延長したほぼ中心部に直径 6 mの回転テーブルを備えた大型気球放球装置を製作した。本ランチャーは,回転テーブルに固定されており,放球時の風向きに合わせて旋回する事が出来る。また,ランチャーに備えた昇降装置により,地面から高さ5mまで観測装置を持ち上げることが可能である。これにより,B1000クラスの大型気球の放球が可能となった。1999年9月6日にこの大型気球放球装置を用いて,最初のテスト気球を放球することに成功し,放球方法および装置の有効性が確認された。
著者
谷藤 学 佐藤 多加之 内田 豪 大橋 一徳
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-06-28

本研究は、物体像表現の空間構造の解明(課題1)、物体像表現の空間構造と時間構造の統合理解(課題2)、脳における物体像のスパース表現の意味を解明する(課題3)の3課題から成る。そのそれぞれについて以下の進展があった。(課題1)前年の実績報告にある初期視覚野の3次元機能構造の可視化について、さらに、解析に検討を加え、論文として発表した。(課題2)物体像表現の時間構造の理解に関係した課題として、注視課題でトレーニングしたサルから様々な位置に提示した視覚刺激の対する高次視覚野の応答を記録し、視野のどこに提示されるかによって、応答の潜時が異なることを発見した。同様の記録を初期視覚に関連する領域でも行った結果、このような物体像の提示位置による潜時の違いは見られなかった。これらのことから、物体像の提示位置によって、異なる神経回路メカニズムで情報が低次から高次に送られていることが示唆された。この成果は論文として公表された。(課題3)自然画像の断片の中から高次視覚野の物体像応答を説明できる図形特徴を抽出するアルゴリズムについて交差検定など様々な方向から検討を行い、妥当性を明らかにした。研究の過程で大きな問題となったのは神経細胞の応答の試行毎のゆらぎである。一般にゆらぎの影響を除くためには、多くの試行について記録する必要がある。しかし、慣れによって試行を繰り返すと応答が次第に減弱するという問題点がある。我々は試行回数を増やす代わりに、より多くの物体像の応答を計測することで問題の解決をはかることができた。
著者
上野 広行 横田 久司 石井 康一郎 秋山 薫 内田 悠太 齊藤 伸治 名古屋 俊士
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.241-251, 2012-11-10 (Released:2013-03-12)
参考文献数
48
被引用文献数
2

加熱脱着GC/MS 装置を用いて、PM2.5 中のジカルボン酸、フタル酸、レボグルコサンを誘導体化して分析する迅速かつ簡便な手法を検討した。誘導体化条件を検討した結果、最適な条件として、温度320 ℃、ヘリウム流量20 mL/min、反応時間10 min、BSTFA+TMCS(99:1)とピリジンの混合比9:1、誘導体化試薬添加量10μLが得られた。添加回収試験の結果、過大な試料を用いると誘導体化成分のピーク形状が悪くなるため、試料量を制限する必要があった。非極性成分であるn-アルカン、17α(H), 21β(H)-ホパン、PAHs については、感度の点から試料量を多くする必要があり、極性成分との同時分析は困難であったものの、同じシステムで分析可能であった。この手法を東京都内の環境試料に適用して分析した結果、夏季と冬季では有機成分組成が大きく異なること、n-アルカンの濃度パターンは複数の発生源の影響を受けていることなどが示唆され、本手法は有機成分の発生源寄与等の検討に有効と考えられた。