著者
内藤 真理子 小森 万里
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.164, pp.1-16, 2016

<p> 学部留学生が書いたレポートの中に不要な語や表現の重複があることにより,読み手に稚拙な印象を与えることがある。重複を回避するためには,学生の気づきを促す指導を行うことが有効であると考える。しかし,作文教材を調査したところ,重複が十分には扱われていないことがわかった。このことから,アカデミック・ライティングの授業において重複が積極的に取り上げられていないことが推測される。そこで,重複回避を意識したライティングの指導ができるよう,その基礎研究として本研究を行うことにした。本稿では,まず,学部留学生のレポートから,複数の判定者によって重複と判定されたものを抽出し,次に,文レベル,談話レベル,およびその2つのレベルに関連する重複をみていくため,卓立性・結束性・論理性・一貫性の4つの観点を導入し,それぞれに関わる重複に分類し,分析・考察を行った。さらに,重複と判定されなかった文との比較も行った。</p>
著者
内藤 悦雄 黒田 泰弘
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

先天性高乳酸血症は有機酸代謝異常症の中で最も頻度の高い疾患であり、本症の確定診断のためにはピルビン酸代謝関連酵素活性の測定が不可欠である。先天性高乳酸血症の自験例および酵素診断を依頼された他施設例の中で、ビタミンB_1、大量投与により臨床症状の改善と血中および髄液中の乳酸値の低下をきたした13症例の培養細胞について、ピルビン酸脱水素酵素複合体(PDHC)活性の詳細な検討を行った。すなわち反応液中のTPP濃度を一般に用いられる高濃度から組織内の生理的濃度まで変化させてPDHC活性を測定した。そのTPP濃度とPDHC活性との曲線によりPDHCのTPPに対する親和性の低下、すなわちビタミンB_1、反応性の有無を判定した。その結果13例中7例をビタミンB_1反応性PDHC異常症と診断しえた。ビタミンB_1反応性PDHC異常症例はビタミンB_1反応性高乳酸血症例の半数を占めており、本症の頻度が高いことが判明した。さらにそのうち3例の遺伝子解析を行い、3例ともE_1α遺伝子のアミノ酸置換を伴う点変異であった。すなわち2例はエクソン3の変異であり、1例は44番目のヒスチジンがアルギニンに、他の1例は88番目のグリシンがセリンにアミノ酸置換していた。3例目はエクソン8の263番目のアルギニンがグリシンに変異していた。これらの変異に対してはPCRと制限酵素を用いた遺伝子診断が可能であった。これらの方法により、2例は突然変異であり、また1例は母親由来の変異遺伝子によることが判明した。PDHCのTPPに対する親和性が正常であったビタミンB_1反応性高乳酸血症の6例では、PDHCと同様にTPPを補酵素とするαケトグルタール酸脱水素酵素複合体および分岐鎖ケト酸脱水素酵素複合体の異常である可能性があり、今後これらの検討が必要である。
著者
内藤 大輔 若山 文規 静川 裕彦 中野渡 正行 飯田 道夫 福原 敬
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.85-89, 2020 (Released:2020-04-26)
参考文献数
18

Stiff-person syndrome(SPS)は,特徴的な筋硬直および有痛性痙攣により進行性に四肢軀幹筋の運動障害を引き起こす極めて稀な疾患であり,診断に苦慮することがある.SPSでは抗GAD抗体や抗amphiphysin抗体などの自己抗体が証明される場合があり,これらの抗体による中枢神経系でのGABA作動性ニューロンの障害が推測されている.今回われわれは,進行期乳がん患者に発症した傍腫瘍性SPSの症例を経験したので報告する.【症例】患者は52歳の女性で,両側肺転移,両側がん性胸膜炎,肝転移,がん性腹膜炎,両側卵巣転移を伴う進行期乳がんと診断された.全身状態不良のため抗がん治療の適応はなく,緩和ケア病棟入院にて酸素投与や胸腹水ドレナージを行ったが,嚥下障害に始まり筋硬直による上肢の運動障害や歩行障害が急速に進行し,脳神経内科にて傍腫瘍性SPSと診断された.ジアゼパム投与で若干効果が認められたが,傾眠となり投与量調整に難渋した.
著者
金澤 伸浩 田中 豊 小山 浩一 内藤 博敬 伊川 美保 中山 由美子
出版者
一般社団法人日本リスク学会
雑誌
日本リスク研究学会誌 (ISSN:09155465)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.243-249, 2020-05-25 (Released:2020-05-26)
参考文献数
35

It is required to make risk education popular to improve risk literacy of citizens. Although several kinds of risk education programs have been developed, the effect of the education by those should be evaluated and the method to measure risk literacy was not established. Therefore, measurement scales of the risk literacy have been developed through web-based questionnaire research. As the result, measurement scales have been established consisting of six factors; zero-risk bias, trade-off on risk versus benefit, trade-off on risk versus risk, paradox on risk perception, basic knowledge on risk and risk perception bias. The scales consisted of four questions for each factor express the factors well. The scales are thought to be useful for improving risk education program and risk communication.
著者
麓 和善 鈴木 光雄 河田 克博 内藤 昌
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
no.490, pp.155-162, 1996-12-30

Design about the eaves is a very important factor to construct exterior on Japanese traditional architecture. In the Edo and Meiji era, many Japanese architectural books were written. But eaves camber design method was not written until Banshouke Kayaoisori Mitugousinri which was written by Tousai Kiko in 1864. After that, 12 books were written. We universalize these methods by functional equations, and attempt to make practicable by CAD. We examine the rate of application for architectural monuments by computer analyzing, and propose Formula of Eaves Camber for CAD as best formula.
著者
油井 健宏 加藤 久幸 岡田 達佳 櫻井 一生 山本 直樹 内藤 健晴
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.255-260, 2012 (Released:2013-11-01)
参考文献数
21

HPV 関連中咽頭癌は HPV 非関連癌に比べ、化学療法や放射線療法に高感受性で予後良好である。今後、HPV の検出が中咽頭癌の治療効果予測や治療方針決定に対する有用なバイオマーカーとなり得る。今回、68 例の未治療中咽頭癌のホルマリン固定パラフィン包埋ブロックからの最適な HPV 検出法とその手順の探索を行った。方法はリアルタイム PCR 法でハイリスク型 HPV の 7 亜型の検出、In situ hybridization 法 (ISH) で HPV 16/18 DNA の検出、免疫組織化学検査で p16 の発現を検討した。HPV 陽性率はPCR、ISH、p16 で各 37、32、44%、PCR で HPV 陽性 28 例の内訳は、16 型が 26 例 (93%)、56 型 1 例 ( 4%)、58 型 1 例 ( 4%) であった。3 種類の検出法のうち 2 種以上が陽性のものを真の HPV 陽性と仮定すると、感度と特異度は PCR (92%、93%)、ISH (92%、100%)、p16 (100%、86%)で、陽性的中率と陰性的中率は PCR (88%、95%)、ISH (100%、96%)、p16 (80%、100%) であった。HPV 検出法として、まず p16 でスクリーニングを行い、p16 陽性例に対し ISH で確定診断する方法が至適と考えられた。
著者
岡田 啓司 深谷 敦子 志賀 瀧郎 平田 統一 竹内 啓 内藤 善久
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.311-315, 2003-05-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

黒毛和種母牛5頭を分娩後低でんぷん飼料で飼養し, その後にデントコーンサイレージ3kg/日を追加給与した結果, 全頭の子牛は給与開始後1~3日に軽度の糞便性状の変化 (前駆症状) を示し, 5~7日に水様性白痢を発症した. この時, 母乳の乳脂肪率は前駆症状発現当日および白痢発症当日の朝に増加した. 母乳のpHは白痢発症前日に大きく変動した. 乳脂肪中パルミチン酸とステアリン酸は前駆症状発現前日から増加した. 子牛の血中トリグリセライドと遊離脂肪酸濃度は前駆症状発現当日に低下したが, 白痢発症前日には元の値に復した. このように母牛の飼料の変更は母乳成分を変化させ, それにより子牛の消化管での脂肪の吸収低下が引き起こされて白痢の発症した可能性が示唆された.
著者
岡嶋 雅史 常富 宏哉 内藤 光祐
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.28, 2012

<b>【目的】 </b>サンディング動作は主に上肢の筋力強化や関節可動域改善を目的に使用されているが、動作時の肩関節周囲筋の筋活動についての報告は少ない。そこで今回は肩の屈曲角度を規定してサンディング動作を行い、角度の違いが肩関節周囲筋に及ぼす影響を筋電図学的に分析することを目的とした。<br><b>【方法】 </b>対象は健常男性8名(平均年齢28.6±5.3歳)、測定筋は右の三角筋前部(AD)、上腕二頭筋長頭(BL)、上腕三頭筋長頭(TL)、棘下筋(IS)、前鋸筋(SA)の5筋とし、Noraxon社製筋電計TelemyoG2を用い、表面筋電図をサンプリング周波数1500Hzで記録した。測定肢位は椅子座位とし、テーブル高を上肢下垂位、肘屈曲90度での肘下端の高さとした。測定はテーブル傾斜角度0度、30度、肩屈曲角度60度、90度、120度の6条件とし、床にワイヤーで固定したハンドルを最大努力で、サンディング動作を行うように前方に進めるよう指示し、5秒間の等尺性収縮を行った。得られたデータは全波整流したのち中間3秒間の平均振幅を求め、MMTの肢位での最大等尺性収縮時の筋活動で正規化(%MVC)し、全対象者の平均値を平均%MVCとした。また、ハンドルとワイヤー間に同社製フォースセンサーEM-554を設置し、筋電図に同期して最大張力を測定した。統計学的処理はSPSS-Statistics18を用い、反復測定による一元配置分散分析及びTukeyの多重比較を行い、有意水準を5%未満とした。尚、対象者全員に本研究の目的と方法を説明し、同意を得た。<br><b>【結果】 </b>各測定筋の平均%MVCは、テーブル傾斜0度では肩屈曲角度間に有意差はなかった。テーブル傾斜30度ではSAを除いた4筋において肩屈曲60度と120度間に有意差を認めた(肩屈曲60度→120度の順に、AD:94.9→40.9%、BL:50.1→27.2%、TL:24.3→50.9%、IS:32.4→66.4%)。テーブル傾斜0度、30度ともに肩屈曲60度ではAD、SAの順に、肩屈曲120度ではSA、ISの順に平均%MVCが高く、いずれも50%以上を示した。また、肩屈曲角度の増加に伴い平均%MVCが減少する筋群(AD、BL)と、増加する筋群(SA、IS、TL)に分かれ、テーブル傾斜30度の方がその傾向が強かった。平均最大張力はテーブル傾斜0度における肩屈曲60度と90度間のみ有意差を生じ、その他の条件間では差はなかった。<br><b>【考察】 </b>サンディング動作は、肩屈曲60度では主にADによる肩屈曲とSAによる肩甲骨外転が、肩屈曲120度ではSAによる肩甲骨外転とTLによる肘伸展作用がハンドルを前方に推進する力源となっている事が考えられる。平均最大張力は肩屈曲60度と120度間に有意差はないため、肩屈曲120度ではADとBLの筋活動減少を代替してSA、TLの筋活動が増加し、加えてISによる関節窩への上腕骨頭引きつけ作用が増加し、肩屈曲をサポートしていることが推察された。また、テーブル傾斜角度を上げ抗重力位に近づける程、肩の屈曲角度間における筋活動の変化が大きくなることが示唆された。<br><b>【まとめ】 </b>サンディング動作は、肩屈曲60度ではAD、SAが、120度ではSA、IS、TLの筋活動が高く、肩の屈曲角度により力源となる筋が変化することが推察された。また、抗重力位で行う程その筋活動変化が大きくなることが示唆された。

1 0 0 0 OA 生ひ立ちの記

著者
内藤千代子 著
出版者
如山堂
巻号頁・発行日
1916
著者
内藤 孝
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.145-150, 2006 (Released:2008-11-19)
参考文献数
18
被引用文献数
1

症例は80歳,男性.空腹時血糖340 mg/dl, HbA1c 13.2%に及ぶコントロール不良の未治療2型糖尿病で,38°C台の発熱,咳,痰,体幹から四肢に広がる皮疹を主訴に入院したが入院直後に悪寒,チアノーゼ,頻呼吸が出現し不穏状態に陥り乳酸アシドーシス(pH 7.137, 血中乳酸値74 mg/dl)が明らかとなった.診断後速やかに厳格な血糖コントロール,脱水の補正,アルカリ化などの治療を行い代謝異常が順調に改善したにもかかわらず,腎不全増悪,肝機能障害,膵逸脱酵素上昇,心房細動など多臓器障害を引き起こした.乳酸アシドーシスから臓器障害を生じる例はこれまでにも多数報告されているが,これほど多彩な臓器障害の報告は見当たらない.また発症後早い時期から乳酸アシドーシスの経過を追うことができたという意味でも貴重な症例と考えられた.