著者
橋本 博文 前田 楓 山崎 梨花子 佐藤 剛介
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.97-106, 2023-11-30 (Released:2023-11-30)
参考文献数
39

The “Help Mark,” a unique symbol that people with hidden disabilities wear to receive help from others, has been promoted nationwide in recent years as part of efforts to achieve a symbiotic society in Japan. However, awareness of the Help Mark has been insufficient, and some people with hidden disabilities have been reluctant to wear it. In this study, a web-based experiment was conducted to examine the factors that promote or hinder the intention to help those who wear the Help Mark, according to social and cultural psychology theories. To analyze the effects of wearing the Help Mark, the cost of helping, and the explicit solicitation of help, the experiment used scenarios that manipulated these factors. We also analyzed the effect of interdependent self-construal on participants’ intentions to help. Results showed that when the cost of helping is relatively low, intentions to help can be increased by the person with hidden disabilities wearing the mark, and intentions can be increased when solicitation is explicit. We also found that when it comes to helping those who wear the Help Mark, the rejection-avoidance tendency and being young may serve as inhibiting factors.
著者
古澤 力 岩澤 諄一郎 前田 智也
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.263-265, 2023 (Released:2023-11-25)
参考文献数
9

適応度地形を推定することは,進化過程の理解に大きく貢献する.しかしゲノム配列空間においてその推定を行うことには,膨大な実験データが必要となり困難が伴う.本稿では,大腸菌の抗生物質耐性進化の過程において,複数薬剤への耐性能を経時的に計測し,その表現型データに基づいて適応度地形を推定する手法を紹介する.
著者
星野 智 大川 真一郎 今井 保 久保木 謙二 千田 宏司 前田 茂 渡辺 千鶴子 嶋田 裕之 大坪 浩一郎 杉浦 昌也
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.130-135, 1992-02-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
17

悪性腫瘍の心転移はまれでないが生前診断は困難なことが多い.今回剖検例にて発見された転移性心腫瘍につき臨床病理学的検討を行った.1980年から1987年の連続剖検2,061例のうち肉眼的に転移性心腫瘍の認められた64例を対象とした.年齢は55歳から93歳(平均76.6歳),男39例,女25例であった.全悪性腫瘍は845例であり,心転移率は7.6%であった.原発巣は肺癌34例が最も多かった.心転移率は肺癌,胃癌などが高かったが,消化器癌では低かった.転移部位は心膜81.3%が最も多く,心内膜へ単独に転移した例はなかった.心膜へはリンパ行性転移が多く,心筋へは血行性転移が多かった.特に肺癌は心膜の転移,心房への転移が多い傾向にあった.心単独の転移はまれで55例は他の臓器へ転移が認められ,肺,肝,胸膜,骨に多かった.心電図異常所見は95%にみられたが,転移部位による特異性は認められなかった.しかし心膜転移例で心膜液量増加に伴い低電位差と洞頻脈が高率に出現してきた.悪性腫瘍を有する患者では常に心転移を念頭におき,注意深い臨床観察が必要である.
著者
岩下 具美 前田 保瑛 髙橋 詩乃 岡田 まゆみ 三山 浩 島田 遼太郎 栁谷 信之
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.24-30, 2023-02-28 (Released:2023-02-28)
参考文献数
16

背景:救急救命士が行う医行為の質を担保する体制として病院実習(実習)がある。 救急隊の生涯教育にかかわる長野赤十字病院救命救急センター(以下,センターと略す)の取り組みを報告する。改変前:対象はセンターを管内とする消防本部(本部)のみであった。実習は1日当たり1名を受け入れ,主な項目は静脈路確保であった。救急隊を対象とする勉強会(勉強会)は夕方に年2〜3回不定期に開催していた。改変後:対象は,実習が地域メディカルコントロール協議会に属する全3本部,勉強会はセンターが担当する医療圏にある全5本部とした。実習は1日当たり2〜3名/本部を受け入れ,救急車現場出動時の医師搭乗,他隊搬送事案の見学,救急科入院患者検討会の参加などを新規項目に加えた。病院救命士を調整役とした。勉強会は日勤帯に毎月定時開催とした。結語:実習・勉強会の刷新は救急隊活動の質向上と消防本部間格差の均等化に寄与した。
著者
生駒 栄喜 津本 定男 前坊 毅 竹田 純子
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.224-229, 1967 (Released:2008-02-26)
参考文献数
19
被引用文献数
2 3

Cross sections of parietal hair of 1024 males and 2046 females of various ages were measured. The maximum and minimum diameters of the hair shaft and the hair index were statistically studied in terms of age and sex.The maximum and minimum diameters in the cross section of the hair shaft were very variable depending upon age.In males, both diameters change with a rather linear relationship to age, while in females they show a rather smooth curve relationship. In infancy and childhood, the diameters in males are larger than those in females, but in adults, they are smaller in males than in females.In females, a diameter to age correlationship shows two phases at 13 and 48 years of age respectively.Except infancy, in both sexes, the hair index in the cross section of the hair shaft is almost constant irrespective of age.It seems that studies of parietal hair on the cross section shoud not be made without a careful consideration of age and sex.
著者
高山 博之 黒木 英州 前田 憲二
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.127-134, 2007 (Released:2007-11-01)
参考文献数
15

すべり速度・状態依存摩擦構成則を平面および3次元の形状をしたプレート境界面に適用し,東南海および南海地震の発生順序に関するシミュレーションを行った。平面のプレート境界では,プレートの形状の影響がないので,東南海・南海地震のそれぞれのアスペリティの大きさおよび摩擦係数(a-b)の大きさの影響を調べた。アスペリティの大きさおよびa-bの絶対値が同じ場合(基本モデル)は,どちらかが先に起こる傾向は見られないことがわかった。アスペリティの大きさまたはa-bの絶対値が異なる場合は,いずれも小さい方が先に起きた。前者は応力の集中の早さの違いに起因し,後者は応力降下量の大きさの違いに起因する。プレート境界を3次元の形状にした場合についてもシミュレーションを行った。東南海と南海のアスペリティの大きさとa-bの大きさを同じにし,両アスペリティのa-bの絶対値を基本モデルと同じにした場合は東南海から先に起き,10%小さくすると南海から先に起こるようになった。これは東南海の東端からの応力の集中の早さと紀伊半島沖の安定すべりによる南海側での応力集中の早さの関係がa-bの値の大小で入れ替わるためと考えられる。
著者
前田 浩晶 森 啓太郎 革島 悟史 高野 義章 加藤 恭郎 若狹 朋子
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.1032-1037, 2018 (Released:2018-11-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

症例は55歳,男性.繰り返す腸閉塞にて当院へ入院した.PET-CT検査を含む精査では悪性疾患を疑う所見に乏しく,腸閉塞の原因検索および根治術目的に腹腔鏡下に手術を施行した.手術では,回腸末端より約50cmの回腸にMeckel憩室様の突出腫瘤および腹膜結節を認め,Meckel憩室癌・腹膜播種と診断し,回腸部分切除術および腹膜腫瘤生検を施行した.病理組織検査では高~中分化腺癌を検出したが,明らかな迷入組織は認めなかった.術後は化学療法を施行するも,術後約1年4カ月で癌性腹膜炎を併発し死亡した.Meckel憩室癌は画像診断が困難であり,進行癌の状態で発見されることが多く予後不良である.今回,診断に苦慮し,腹腔鏡下に診断しえたMeckel憩室癌の1例を経験したため,文献的考察を加え報告する.
著者
山下 裕代 前田 修作 坂谷 敏子 坂下 有
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.12-16, 2012 (Released:2012-02-09)
参考文献数
8

高血糖は免疫能低下・易感染性を招き,糖尿病は肺結核と同様に肺非結核性抗酸菌症(以下NTMLDと略す)の発症の危険因子と考えられるが,実際に関連があるか否かについては明らかでない.そこで,2005年1月から2007年12月の間にNTMLDの治療・精査目的で入院した患者103名を対象とし,糖尿病治療中あるいはHbA1c(JDS値)が6.1 %以上の糖尿病が強く疑われる患者の有病率とその特徴を調査した.患者全体の糖尿病有病率は26.2 %であったが,男性のみでは38.9 %,女性では14.8 %と男性で有意に高かった.男性の有病率は一般人口のHbA1c 6.1 %以上の糖尿病が疑われる人口よりも高く,男性では糖尿病がNTMLDと関連している可能性が示唆された.
著者
渡邉 はるか 前川 久男
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.351-359, 2011 (Released:2013-09-14)
参考文献数
10
被引用文献数
2

本研究では、通常の学級に在籍する362名の定型発達児と33名の特別な教育的ニーズ(Special Educational Needs; 以下SENとする)のある児童に対して、学業適応感、学校生活適応感に関する質問紙調査を実施した。本研究の目的は、渡邉(2009)の尺度を改訂し、学業適応感が学校生活適応感へ与える影響の再検討およびSENの有無が学校生活適応感へ与える影響を検討することである。学業適応感は、因子分析の結果、学業満足感と学業困難感の2因子が抽出された。学校生活適応感に対する学業適応感の影響を検討するために重回帰分析をした結果、学業満足感の影響が確認され、学業困難感の影響はみられなかった。また、学校生活適応感の要因として、特別な教育的ニーズがあることの影響が示唆された。以上より、学校生活適応感に影響を及ぼす要因として、学業満足感に注目することができ、あらためて児童の学習面のニーズに注目する必要性が指摘できる。
著者
前野 隆司 小林 一三 山崎 信寿
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.63, no.607, pp.881-888, 1997-03-25 (Released:2008-02-26)
参考文献数
14
被引用文献数
29 27

There are several tactile receptors at specific locations in the tissue of human fingers. In this study we calculate in detail the deformation of finger tissue when a finger comes into contact with a rigid plate using a FE (finite element) model in order to clarify the reason for the precise location of the receptors. The FE model is constructed using the measured geometry and properties. As a result, we found that the strain energy is concentrated at tactile receptor locations. When a frictional force is applied, the stress/strain is concentrated near the edge of the contact area. By calculating using models with/without epidermal ridges/papillae, we found that the shape of the epidermal ridges/papillae influences the stress/strain distribution near the tactile receptors.
著者
清水 健太郎 北村 哲久 前田 達也 小倉 裕司 嶋津 岳士
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.473-479, 2023-08-31 (Released:2023-08-31)
参考文献数
23

背景:高齢者の救急搬送におけるDNAR(do not attempt resuscitation)の影響を地域網羅的に検討した報告はほとんどない。方法:大阪市消防局の救急搬送記録を用いて,救急隊が医療機関を選定した65歳以上の心停止症例1,933例を対象に検討した。三次医療機関への搬送の有無を目的変数とし,年齢,初期心電図波形,発生場所,DNARなどを説明変数として多変量解析を行った。結果:心停止症例1,933例において,DNARの保持率は8.3%であった。DNARの有無は三次医療機関への搬送選定に関して有意差があった(DNAR有8.1% vs 無45.5%,p<0.05)。発生場所が老人ホームの372件に関しても同様に有意差があった(DNAR有7.2% vs 無33.0%,p<0.05)。三次医療機関への搬送を目的変数として多変量解析を行うと,年齢,初期心電図波形,発生場所,普段の生活状況,DNARに統計学的有意差があった。とくに,DNAR有のオッズ比は0.157(95%信頼区間(0.088-0.282)であった。考察:高齢者心停止症例の救急搬送時には,DNARに対する意思表明が三次医療機関への搬送を有意に減少させていた。心停止症例に対し適切な医療を提供するために,アドバンス・ケア・プランニング,地域と救急医療機関とのより密接な連携が重要と推察された。
著者
清水 敬行 小出 兼一郎 前沢 進 宮崎 俊行 三須 直志 田中 義弘
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2004年度精密工学会秋季大会
巻号頁・発行日
pp.458, 2004-09-15 (Released:2005-03-01)

YAGレーザによる金属の大気中カラーマーキングを行った.試料としてステンレス鋼,純Tiを用い,照射出力,ビーム径,走査速度を変化させ,各条件と発色の関係を求めた.
著者
山下 和人 安達 洋平 久代 季子 Mohammed Ahmed UMAR 都築 圭子 前原 誠也 瀬野 貴弘 泉澤 康晴
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.715-720, 2004-11-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

犬臨床例にプロポフォール (P) とフェンタニル (F) を併用した全静脈麻酔 (PF-TIVA) を応用した. 麻酔前投薬としてプロピオニールプロマジン0.05mg/kg, ドロペリドール0.25mg/kg, ミダゾラム0.3mg/kg, またはメデトミジン5μg/kgを静脈内投与 (IV) し, Pで麻酔導入した. Fを2μg/kgIV後に0.2μg/kg/分で持続IVし, PのIV投与速度を調節して外科麻酔を維持した. 麻酔維持に要したP投与速度はメデトミジンの麻酔前投薬で0.2~0.3mg/kg/分, その他で0.3~0.4mg/kg/分であった. PF-TIVAでは呼吸抑制が強く調節呼吸の必要性が高かったが, 循環抑制は少なく, 外科手術も円滑に進行し, 麻酔回復も穏やかであった. PF-TIVAは犬の全身麻酔法として有用と考えられた.
著者
川島 史義 髙木 博 古屋 貴之 加藤 慎 佐藤 敦 前川 勝彦 浅井 聡司 中田 規之
出版者
日本関節病学会
雑誌
日本関節病学会誌 (ISSN:18832873)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.15-19, 2017 (Released:2018-03-31)
参考文献数
10

Introduction: Several methods have been proposed to determine proper femoral component rotation alignment in total knee arthroplasty (TKA). Usually the epicondylar axis, the posterior condylar axis and Whiteside’s line are used for landmarks. However, sometimes recognition of these landmarks is difficult intraoperatively. We decide on the rotation angle of the femoral component using the epicondylar view via a preoperative radiograph. The angle consists of the clinical epicondylar axis (CEA) and the posterior condyle line minus two degrees. We think the influence of the residual cartilage of the posterior lateral femoral condyle is about two degrees in varus osteoarthritis (OA).Objective: The objective of this study was to evaluate the rotation alignment of the femoral component after TKA, and the usefulness of our method for the decision of femoral component rotation alignment.Methods: There were 43 patients (7 males, 36 females) with varus OA who underwent primary TKA. The average age was 78.1 years (range, 64-87 years). The rotation angle of the femoral component was decided by the above-mentioned method. We evaluated the angle between the posterior border of the femoral component and the CEA, and the surgical epicondular axis (SEA) using postoperative computed tomography. These angles were expressed as∠CEA and∠SEA. External rotation was expressed as plus.Results: The mean∠CEA was−1.1 (−5-1)°. The mean∠SEA was 0.48 (−3-3)°. The mean angle of∠SEA−∠CEA was 1.5 (0-3)°. The femoral component was placed in internal rotation to CEA and parallel to SEA.Conclusion: Internal placement of the femoral component was considered to be caused abnormal patella tracking and dislocation and low value of Knee Society Knee scoring. We think that it can be difficult to recognize some landmarks intraoperatively. We decide on the rotation angle of the femoral component using the epicondylar view of preoperative radiographs. From the results of this study, the femoral component was placed in internal rotation to CEA and parallel to SEA. We conclude that our method for the decision of the femoral component rotation alignment is useful for TKA of varus OA of the knee.
著者
前田 拓真 大井川 秀聡 小野寺 康暉 佐藤 大樹 鈴木 海馬 栗田 浩樹
出版者
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.397-404, 2023 (Released:2023-10-04)
参考文献数
12

神経外視鏡手術が脳神経外科臨床にも導入され,その有用性が報告されている.当科では2021年から脳血管外科手術を神経外視鏡化するプロジェクトに取り組み,2022年は大部分の手術を神経外視鏡下で行っている.今回,顕微鏡手術からの移行期における脳動脈瘤手術の治療成績を検討した.対象は2021年1月から2022年8月までに当院で開頭手術を行った未破裂脳動脈瘤連続134例のうち,開頭クリッピング術を行った132例とした.神経外視鏡と顕微鏡の両群間で患者背景,セットアップ時間,手術時間,周術期合併症の有無,退院時予後について後方視的に検討を行った.神経外視鏡は75例(55.1%)で選択された.両群間で年齢・性別などの患者背景に有意差を認めなかった.両群で専攻医の執刀率が最も高く(65.3% vs. 59.0%),セットアップ時間(63分 vs. 62分),手術時間(295分 vs. 304分),周術期合併症(5.3% vs. 3.3%),退院時予後良好(97.3% vs. 95.1%)は両群間で有意差を認めなかった.アンケート調査では,画質(78.9%),明るさ(84.2%),操作性(73.7%),教育(57.9%)などにおいて,神経外視鏡がより高い評価を得た.一方で,助手の操作性については課題も明らかとなった.神経外視鏡は高画質,デジタルズームによる従来以上の強拡大,head-up surgeryによる疲労軽減,接眼レンズをもたない小型なカメラで視軸の自由度が大きいなどのメリットを有する.神経外視鏡は開頭クリッピング術においても有用であり,trainer,traineeの経験がともに少ない初期経験においても,許容可能な治療成績であった.
著者
井坂 和一 豊田 透花 大前 周平 高橋 悠 大坂 利文 常田 聡
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.217-223, 2021-11-20 (Released:2021-11-20)
参考文献数
30
被引用文献数
1

高濃度窒素排水の処理方法として,嫌気性アンモニア酸化(アナモックス)反応を用いた排水処理システムの実用化が進められている.化学工場の排水や天然ガス採掘で発生するかん水などは,37°Cを超える高水温になる場合がある.さらに国内の夏季気温が40°Cを超えることがあることから,高温条件がアナモックスプロセスへおよぼす影響について,実排水処理を想定した長期的な影響評価が必要である.本研究では,アナモックス細菌を包括固定化担体と付着固定化した異なる2種類の担体を用いて連続試験を行い,高温条件がアナモックス活性へおよぼす影響を評価した.その結果,包括固定化担体を用いた試験系では,37°C条件とすると活性は徐々に低下し,窒素変換速度は1週間で37%低下した.また,38°C条件に設定すると,1週間で49%の窒素変換速度の低下が確認された.付着型担体を用いた試験系においても,37°C条件とすると活性の低下傾向が確認された.16S rRNA遺伝子に基づくアンプリコンシーケンシング解析により,アナモックス細菌の優占種は“Candidatus Kuenenia stuttgartiensis”であることが明らかとなった.これらの結果から“Candidatus Kuenenia stuttgartiensis”を優占とするアナモックスプロセスでは,37°C以上の運転は困難であり,36°C以下で運転する必要性が示された.さらに,高温条件下におけるアナモックス反応比について調査した結果,アンモニアの除去量(ΔNH4+)に対する硝酸の生成量(ΔNO3−)の比(ΔNO3−/ΔNH4+)およびアンモニアの除去量(ΔNH4+)に対する亜硝酸の除去量(ΔNO2−)の比(ΔNO2−/ΔNH4+)は,共に低下する傾向が確認され,高温による活性低下を検知する1つの指標が示された.