著者
山中 将 前田 英喜 井上 克己 張 新月
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.73, no.734, pp.2805-2810, 2007-10-25 (Released:2011-08-16)
参考文献数
11

This paper deals with the radiated noise of strain wave gearing, which is a kind of K-H-V type planetary gears having features of lightweight and high reduction ratio. The vibration of Flex Spline (F/S), which is the element of strain wave gearing and has a thin circular cup, is considered as a main factor of the noise. The magnitude of sound power is expected to become large in proportion to the square of the amplitude of displacement of F/S in the radial direction theoretically. The displacements of 3 kinds of models are calculated using FEM. The vibration of F/S and the sound power are measured using the F/S fixed type experiment apparatus. It is confirmed that the relation between the vibration of F/S and the sound power are agreed well to the theory and the vibration of the F/S causes the radiated noise mainly. Moreover, the radiated noise with changing a rotary speed, a loaded torque and an assembly error are measured and examined. The influence of rotary speed and torque is characterized by dependence of the deformation of F/S. The noise become large with the increase of the assembly error, but the amplitude of displacement is not increased. This is analyzed by a resonance between F/S and experiment apparatus.
著者
前田 恵利 河野 美穂 小川 千尋 大場 亜紀 高林 康江 藤井 美香 原本 久美子 日野 徳子 今野 理恵 堀尾 強
出版者
関西国際大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13455311)
巻号頁・発行日
no.19, pp.101-110, 2018-03-10

In this study, assistance for improving urinary incontinence based on bladder function evaluation was practically applied to four patients with voiding dysfunction. Analysis was then performed on actual verbal communication incorporating prompted voiding (PV) that was found to effectively motivate patients during assistance.Effective verbal communication fell into three categories: verbal communication of joy in expressing a desire to void and appreciation; verbal confirmation of recovery in urinary function and verbal praise; and verbal communication that respects behavior and pace during voiding. Voiding assistance based on bladder function evaluation and communication incorporating PV led to patients voluntarily asserting their desire to void and thereby to improvements in urinary incontinence. The findings suggest that in the course of improving voiding function, emphasizing respect for patients’ self-esteem in verbal communication is as important as adopting an individualized approach to voiding assistance during bladder training.
著者
前川 喜平
出版者
日本教育政策学会
雑誌
日本教育政策学会年報 (ISSN:24241474)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.68-71, 2019 (Released:2020-06-20)

In Japan there was no education decay equivalent to what took place in Britain. Japanese schools are not independent corporations like British schools. School choice is not allowed in Japanese compulsory education. These are the reasons why there is no Ofsted in Japan.
著者
市川 良平 五月女 淳 中島 満 前沢 嘉彰
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.S1-S9, 1994-02-20 (Released:2010-08-05)
参考文献数
9

航空散布における薬剤の分散に関与する主要な要因として, ヘリコプターのダウンウォッシュ, 横風および液滴粒子の大きさの三つを試験の対象にとらえ, ダウンウォッシュについてはヘリコプターから放出したトレーサー (バルーン) の軌跡を介して流れを画像化し, 流れの各部分の速度, 方向を示した.さらに, このダウンウォッシュの画像を基に, 横風の条件を0, 3, 5m/秒と変えた際の流れの状況を画像として示し, ダウンウォッシュに対する横風の影響の状態を明らかにした.次に, このような空気の流れの中に液滴粒子を噴射した場合の液滴粒子の流れについて, 実用的な散布液滴の粒子径に近い2例 (300および100μm径) を対象に諸条件を組合せた事例について検討し, 各液滴粒子の流れを画像として示した.以上の検討の結果, 散布された液滴粒子の多くの部分はダウンウォッシュの渦流の外辺部の流れに誘導されて動き, 当初は下方向に, 地表付近では横方向に流れ, この過程のなかで液滴の分散が進行すると考えられた. 横風は液滴の動きの速度に±の影響を与え, 分散の範囲の広狭, 飛行申心線からの最多付着点のずれの程度を決める重要な要因である.もし液滴を翼端近くで噴射し, ダウンウォッシュの渦流の内側に液滴を投入すれば, 液滴を含む流れは横方向ときには上方向の流れとなって液滴を高い位置にいつまでも留め, その高度の風速が地表付近より強いことも加わって, 液滴の分散幅は非常に広くなり, また液滴が目標に到達しない懸念が生ずることを図 (Fig. 6) は示している.しかし液滴の噴射位置を中央部のみに限定すれば, 液滴の分散幅は狭くなり, とくに風の弱い条件で散布幅が狭い範囲に限定されることもFig.6は示唆している.立毛中の水田を対象にした散布試験における微気象観測と液滴の分散調査の結果は, ダウンウォッシュの横方向への流れが立毛申の水田では株の直上付近でみられ, ダウンウォッシュ±風の流れの中で液滴の分散が進行することを示した.しかし株内ではこの液滴の横方向への流れは衰え, 液滴の動きは垂直方向 (沈降) が主となるため, 株の上下部位別の分散状況はきわめて似たものとなり, この過程のなかで上下部位別付着量は65:35の構成比を示した.
著者
光永 俊郎 安達 潤子 蔵前 栄子 荒堀 圭子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.217-221, 1982-12-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
15
被引用文献数
1

1)マカダミアナッツの可溶性タンパク質を,水,食塩水,アルコール溶液,水酸化ナトリウム溶液を用いて分別抽出した.抽出率は97%であり,主画分は,アルブミンで,総タンパク質の約70%を占めていた.次いで,グルテリン,グロブリン,プロラミンの順であった.2)各タンパク質画分の電気泳動像は,それぞれ特徴のあるパターンを示し,各画分とも多種類のポリペプチドよりなり,プロラミン,グルテリン画分は,高分子ポリペプチドを多く含んでいた.3)各画分のアミノ酸組成は,グルタミン酸,アルギニンの高含量,含硫アミノ酸の低含量を特徴とし,アミノ酸価は,17.1から51.4であった.全タンパク質は51.4でごまのタンパク質とほぼ同じ値を示した.4)アルブミン画分は,ゲル濾過により,6画分にわけられた.さらにこれらの画分の電気泳動像は,それぞれ3~10種のパンドが認められ,極めて多種類の構成ポリペブチドよりなることを示した.
著者
寺本 昌弘 曽根 岳大 高田 耕平 小縣 開 齋藤 啓太 和泉 拓野 高野 昂佑 長尾 茂輝 岡田 陽介 田地 規朗 河村 俊邦 加藤 章一郎 前川 隆彰 小林 彩香 小林 真一 佐藤 謙 木村 文彦
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.598-604, 2020 (Released:2020-07-03)
参考文献数
18

2011年1月から2018年2月までに再発indolent B-cell lymphomaに対し,当科で施行したrituximab併用bendamustine(BR)療法の治療成績を後方視的に解析した。病型は濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma, FL)42例(67%)が多く,FL症例で治療を完遂した群の無増悪生存期間(progression free survival, PFS)の中央値は未到達であった。また治療開始から5年間のCD4陽性T細胞数を解析したところ,長期にわたり200/µl前後を推移する症例が多かった。BR療法は再発indolent B-cell lymphomaに対し有用な治療であり,特にFLにおいてはBR療法を完遂することがPFSの改善に重要である。また治療後は細胞性免疫不全が顕在化するため,5年程度は感染症の発症に注意するべきかもしれない。
著者
北條 純一 前田 英明 加藤 昭夫
出版者
The Ceramic Society of Japan
雑誌
Journal of the Ceramic Society of Japan (日本セラミックス協会学術論文誌) (ISSN:09145400)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1116, pp.842-846, 1988-08-01 (Released:2010-08-06)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

Amorphous silicon nitride powder (particle size: 0.04μm) obtained by the vapor phase reaction of Si(CH3)4-NH3 system was compacted into pellet and heat-treated in N2 to investigate the crystallization behavior. The amorphous powder crystallized to 100% α-Si3N4 by the heat treatment for 1h at 1550°C. The equiaxed crystalline particles having the size of 1-2μm were obtained when powder was compacted, whereas acicular particles were produced when powder was not compacted. When Si3N4 powder was used as powder bed which covered pellet, the crystalline particles grew extensively and the crystallinity increased with a decrease in the packing fraction of particles in pellet. The heat-treated powder with a low crystallinity consisted of fine amorphous particles and coarse crystalline particles. The crystallization seemed to proceed by a vapor phase growth mechanism, in which SiO vapor takes part as silicon carrier between amorphous particles and crystalline ones. When BN powder was used as powder bed, the crystallization and grain growth were retarded, and the crystal phase contained a small amount of β-Si3N4. Crystallization inhibitor, e. g. boron oxide, may have penetrated into pellet from BN powder.
著者
田中 敬大 齋藤 剛史 吉村 翔 細沼 栞 堂前 伸 堀田 拓
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.E-189_1-E-189_1, 2019

<p>【はじめに】</p><p> 急性期における脳卒中罹患後の早期離床の有用性については様々な因子の検証が行われている. 先行研究では, 早期の離床は身体機能の向上に大きな影響を与えると重要視されている一方で, 脳卒中罹患後24時間以内の超早期に離床し, 通常群と比較した研究では, 3ヶ月後に良好な転帰を示さなかったとの報告もある. このように脳卒中罹患後の早期離床の是非に関しては統一された見解がない.</p><p> 脳卒中罹患後の歩行に関しては, 早期にリハビリテーション (以下リハビリ) が介入することで有意に歩行を獲得出来たという報告はあるが, 早期に離床することが直接歩行の獲得に有効かどうかの報告はない. そこで本研究は脳卒中罹患後の離床時期による差が, 歩行の獲得に関連するかを検証した.</p><p>【方法】</p><p> 対象は2014年1月1日から2016年12月31日の間, 東京歯科大学市川総合病院脳卒中センターに入院し, リハビリが介入した脳卒中患者724名のうち, 入院期間中に歩行を獲得した176名 (男性115名 女性61名 年齢70±11) と歩行を獲得出来なかった304名 (男性277名 女性127名 年齢74±12) を対象とした. 本研究の歩行獲得はFunctional Independence Measure (以下FIM) の移動の項目の歩行で5点以上とした. 除外基準はくも膜下出血の診断を受けた者, 入院前のFIMの移動の項目の歩行で5点未満の者とした. </p><p> 方法は, 超早期離床群 (脳卒中罹患後24時間以内に離床) , 早期離床群 (脳卒中罹患後24時間から72時間以内に離床) , 離床遅延群 (脳卒中罹患後72時間以降に離床) の各群で歩行を獲得した人数をフィッシャーの正確検定にて群間比較した. また離床時期と歩行獲得の可否を目的変数,Brunnstrom Recovery Stage (以下Br.stage) を説明変数として多変量解析した. また歩行には離床と運動麻痺のどちらが寄与するかを重回帰分析にて解析した. 統計解析にはR (Ver2.4.1)を使用した. </p><p>【結果】</p><p> 離床時期別に比較すると超早期離床群の方が他の2群と比較して有意に歩行を獲得できた割合が高かった (p<0.01) . また全ての離床時期の歩行獲得群と歩行未獲得群でBr.stageを比較した結果, 歩行未獲得群に比べ歩行獲得群の方がBr.stageの値が有意に高かった (p<0.01) . さらに歩行の獲得に離床時期とBr.stageのどちらが強く関連しているか比較した結果, 有意にBr.stageの方が関連した (B=0.68, p<0.01) . </p><p>【考察】</p><p> 本研究より脳卒中罹患後の歩行獲得は離床遅延群よりも超早期離床群が有意に高かったが, 離床時期と運動麻痺の程度を比較すると, 運動麻痺の方が歩行獲得に際し,より関連していることが示唆された. </p><p> 本研究では運動麻痺と離床時期の解析を行ったが, その他の因子についても今後検証していく必要がある.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は東京歯科大学市川総合病院倫理審査委員会 (承認番号Ⅰ17‐55) および東京歯科大学市川総合病院病院長の承認を得た.</p>
著者
前島 伸一郎 大沢 愛子 山根 文孝 栗田 浩樹 石原 正一郎 佐藤 章 棚橋 紀夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.98-105, 2011-01-25 (Released:2011-01-26)
参考文献数
25
被引用文献数
2

【目的】小脳出血急性期の臨床像と機能予後や転帰に及ぼす要因について検討した.【対象と方法】小脳出血45名(男性28,女性17)を対象に,初回評価時の神経症状に加え,嘔気・眩暈などの自覚症状,認知機能,嚥下機能,血腫量と退院時の日常生活活動,転帰先について検討した.なお,入院期間は平均24.6日であった.【結果】意識障害は11名に認めたが,いずれも血腫量が大きく,機能予後が不良で,自宅退院に至ったものはなかった.意識障害のない34名中,嘔気・眩暈を22名,四肢失調を19名,体幹失調を16名,嚥下障害を19名,構音障害を8名,認知機能障害を24名に認めた.自宅退院は12名で,日常生活活動が良好であると同時に認知機能と嚥下機能が保たれていた.【結語】急性期病院において,小脳出血の退院先を決定する要因には,意識障害や日常生活活動だけでなく,認知機能や嚥下機能も念頭におく必要がある.
著者
出口 英樹 大前 慶和 石走 知子
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学総合教育機構紀要
巻号頁・発行日
no.3, pp.13-25, 2020

大学の学部段階(学士課程)において、学位プログラムや学部横断型プログラムなど、新しい試みが始まっている。これは、ディシプリン(学問領域)に即して構築された学部・学科等に準拠する旧来の学士課程とは大きく異なるものである。だが、そのような取り組みの実効性については充分な検証がなされているとは言い難い。そこで本稿では、学部・学科におけるカリキュラムの標準的な履修モデルにおける学びを「縦の学び」、学部・学科を越えた領域横断的な(あるいはディシプリン横断型の)学びを「横の学び」と定義し、「『縦の学び』と『横の学び』には相乗効果が期待できるのではないか」との問いを立て、その検証を試みる。具体的には、2017年度より鹿児島大学が設置した「地域人材育成プラットフォーム」に着目する。これは同大学において地域人材を育成するために学部を横断して学びを展開する枠組みである。これに携わる学生は、それぞれの学部・学科等に所属しつつ、様々な地域の学びをも経験する。このような学生が、地域の学びとして得るものがあるのは勿論のこと、その地域の学びが自身の学部・学科等での学びに対してどのように影響するのか調査する。すなわち、これは学部横断型教育プログラムの意義を探ることのみを目的とするものではなく、むしろそのような学部横断型の学び(延いてはディシプリンを越えた学び)が、学士課程そのものにどう影響するのか、どのような意味があるのか、それを検証することが目的である。
著者
鴨藤 祐輔 宮前 珠子
雑誌
リハビリテーション科学ジャーナル = Journal of Rehabilitation Sciences
巻号頁・発行日
no.14, pp.13-28, 2019-03-31

背景と目的:自宅退院した脳血管障害者の中には,想定していた退院後生活と実生活との間にギャップを経験することがある.本研究の目的は,この要因を明らかにし,ギャップを小さくするための作業療法のあり方を検討することである. 方法:回復期リハビリテーション病棟における脳血管障害者7 名に対し想定していた退院後生活と退院後の実生活についてインタビューを行い,質的分析を行った. 結果と考察:退院後生活で想定通りの生活が出来た対象者と,ギャップを感じている対象者に分けられ,想定通りの生活が必ずしも良くないことや,ギャップがあってもポジティブに捉えていることがあった.この要因には,実際的なリハビリの不足と援助者への情報提供不足が考えられた.作業療法では,対象者や援助者と協働して退院後生活に合わせたプログラムを行い退院後も生活が拡大できるように調整することで,理想的な想定通りの生活に貢献できる可能性が示唆された.
著者
前田 拓志 藁谷 哲也
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100140, 2015 (Released:2015-04-13)

1.目的 新第三紀から第四紀の堆積岩を基盤に持つ,房総半島および新潟県中越地域の河川において,近世以降人為的な蛇行切断が行われてきた.これらは,房総半島では「川廻し」,中越地域では「瀬替え」と呼称され,一般に蛇行頚状部を掘削して新たに直線的な流路をつける(曲流短絡する)ことで,廃棄河道を新田として開発する目的で行われた.曲流短絡による一連の地形(以下,曲流短絡地形)には以下のような特徴があると考えた.①切断された流路(旧流路)は,無能河川となり,その後下刻作用を受けない.つまり,旧流路の河床面(旧河床面)は短絡以前の地形面を保存している.②一方,旧河床面と対比される(かつて連続していた)現河床面は,その後も下刻作用を受ける.つまり,現河床面と旧河床面の比高を,曲流短絡以降の下刻による河床の低下量とみなすことができる.また,短絡以降の時間は,下刻作用継続期間とみなすことができる.そこで本研究では,現・旧河床面における比高をH ,下刻作用継続時間をTとして,短絡以降の平均下刻速度H/Tを求め,さらにそれを制約する要素を検討した.   2.研究方法 既存文献および史料より,房総丘陵と魚沼丘陵から流路の短絡時期が推定できた7地点を研究対象として選定した. 7地点はいずれも,おもに受食性の大きい新第三系の泥岩を基盤に持つ渓流部である.それぞれの地点において,現地調査のもと現・旧河床面の比高を測量した.また,下刻速度を制約する変数を考察するために河床勾配,流域面積,年降水量の情報を取得した.一方,河床を構成する岩石の力学的強度を求めるために,シュミットハンマーKS型を用いて反発強度を測定するとともに,岩石試料をもとに圧裂引張強度を測定した.   3.結果と考察 現・旧河床面の比高および下刻作用継続時間は,それぞれ0.11~2.05m,103~235年間であることがわかり,平均下刻速度1.08~15.89mm/yが得られた.下刻速度は,河床を構成する岩石の抵抗力Rに対する下刻侵食力Fの比に制約を受けると考えられる.そこでまず,下刻侵食力Fと侵食に対する抵抗力Rの変数について検討した.下刻侵食力Fは,流水が河床底面にあたえる力,すなわち流体の強さである掃流力として表すことができると考えられる.掃流力は,水深,河床勾配および流体の密度に比例して増大する.入手できた変数を用いて下刻侵食力Fを以下のように考えた. F ∝(γ,A,P,tanθ,W -1) ここで,γ:流水の単位体積重量(9810N/m3と仮定),A:流域面積,P:年間降水量,tanθ:河床勾配,W:河床幅員である.一方,侵食に対する抵抗力Rは,河床を構成する岩石の力学的強度によって表すことができると考えられる.流水によって,岩盤には河床に沿ってせん断力が作用する.したがって,侵食に対する抵抗力Rは,河床を構成する岩石のせん断強度(Ss)によって次のように表すことができると考えた. R ∝Ss 以上を整理すると,基盤岩石の抵抗力Rに対する下刻侵食力Fの比を表す変数が,以下に示す速度の次元をもつ指標(F/R index)として表される. F/R = γA P tanθ W -1 Ss-1 それぞれの地点についてF/R index値を計算し,下刻速度との関係を分析した.その結果,短絡区間の上流側では下刻速度とF/R indexとの間に関係性が認められないのに対して,下流側では両者の間に高い相関(r=0.92)が認められた.これは,短絡区間の上流側と下流側の地形条件の違いが,下刻速度に影響を与えたと推察される.曲流を短絡しているので短絡区間の河床勾配は,その前後の河床勾配に比べて大きくなり,遷急区間となる.したがって,短絡の下流側の下刻速度は,この遷急区間の河床勾配が優位に作用していることが示唆された.