著者
長澤 由季 猪村 剛史 今田 直樹 沖 修一 荒木 攻
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1885, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】脳梗塞の病態には,アテローム血栓性脳梗塞,ラクナ梗塞に加え,1989年にCaplanが提唱した脳血管穿通枝入口部のアテローム血栓性病変により閉塞が生じるbranch atheromatous disease(以下,BAD)が知られている。BADの好発部位にはレンズ核線条体動脈,傍正中橋動脈領域があり,進行性の運動麻痺が生じやすく,ラクナ梗塞と比較して,身体機能の予後は不良と報告されてきた。しかし,臨床での予後に関する報告数はまだ少なく,臨床像は明確ではない。本研究では,脳梗塞の病型の違いによる運動機能の変化や予後の差異について検討した。【方法】対象は,平成24年4月から平成26年9月までに脳梗塞の診断で当院に入院した120名とした。対象者はいずれも錐体路症状を呈し,除外規準は既往に脳血管障害を有する者,精神疾患を有する者,骨折・四肢欠損患者とした。運動機能評価には急性期病棟退院時のNIHSS運動項目を用いた。また,FIM効率(FIM利得/在院日数),在院日数についても評価した。統計解析には,一元配置分散分析を用いた。【結果】病型の内訳は,アテローム血栓性脳梗塞は67名,BADは24名,ラクナ梗塞は29名であった。急性期病棟退院時のNIHSS運動項目の合計点は,アテローム血栓性脳梗塞は2.1±2.8,BADは0.6±2.0,ラクナ梗塞は0.4±1.5で,一元配置分散分析の結果,病型に主効果がみられた(p<0.01)。群間比較の結果,NIHSSのスコアでは,アテローム血栓性脳梗塞でラクナ梗塞(p<0.01)およびBAD(p<0.05)と比較して有意に高かった。また,ラクナ梗塞とBADではNIHSSスコアに有意な差を認めなかった。FIM効率では,アテローム血栓性脳梗塞は1.3±1.7,BADは1.7±1.3,ラクナ梗塞は1.6±1.0で,アテローム血栓性脳梗塞はラクナ梗塞と比較して,有意に低値であった(p<0.01)。ラクナ梗塞とBADではFIM効率に有意な差は認めなかった。在院日数では,アテローム血栓性脳梗塞は71.0±70.1日,BADは39.1±43.6日,ラクナ梗塞は19.3±23.8日で,アテローム血栓性脳梗塞はラクナ梗塞と比較して有意に在院日数が長かった(p<0.01)。ラクナ梗塞とBADでは在院日数に有意な差は認めなかった。【考察】本研究では,脳梗塞の病型別における運動機能や予後予測因子の関連を調査した。結果より,NIHSSの得点,FIM効率,在院日数において,アテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞では有意な差を認めたが,BADとラクナ梗塞では有意差は認めなかった。従来,BADとラクナ梗塞の運動機能の比較を行った場合,進行性の運動麻痺はBADで多く認め,NIHSSやmRSの得点はBADの方が高いことが多く報告されている。一方で,BADはアテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞の中間の病態であり,BADとラクナ梗塞の重症度の差は少ないとの報告もある。BADには非進行性の病態もあり,発症部位によっても重症度は異なり,必ずしも予後不良でない可能性もある。理学療法介入を行う上で,病型の確認に加え,損傷部位・損傷の程度・画像所見などを比較しながら,予後について検討する必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】本研究を通し,理学療法介入を行う上で,従来の報告に加えて予後予測の一助となると考えられる。
著者
羽鳥 剛史 藤井 聡 小松 佳弘
出版者
人間環境学研究会
雑誌
人間環境学研究 (ISSN:13485253)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.17-24, 2017 (Released:2017-06-30)

先行研究(Hatori et al., 2016)において、オルテガが『大衆の反逆』の中で論じている人々の大衆性が社会的ジレンマ状況において非協力行動を促進することが指摘されている。この結果を受けて、本研究は、幼少期の家庭や地域コミュニティにおける社会的関係が大衆性の発達を緩和する効果について探索的に検討することを目的とした。この目的の下、全国の一般成人1000名を対象とした調査を実施した。その結果、幼少期における社会的関係と大衆性を構成する自己閉塞性との間に有意な関連性が確認された。具体的には、家庭内のしつけや地域コミュニティの連帯が自己閉塞性の発達を緩和することが示された。さらに、幼少期における社会的関係は、自己閉塞性への影響を介して、大衆性を構成するもう1つの因子である傲慢性の発達を抑制するという間接的な効果を持つ可能性も示唆された。
著者
森 正憲 山本 剛史 山本 裕
出版者
システム制御情報学会
雑誌
システム制御情報学会 研究発表講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.6, pp.307-307, 2006

本研究では無限次元システムに対するH∞制御問題の解をJ-スペクトル分解によって導出する.J-スペクトル分解は有限次元H∞制御問題の解法の1つであり,補償器の構造を安定な極零点消去を用いて記述できるという特徴を持つ.ことに入出力むだ時間系の場合,問題を有限次元のJ-スペクトル分解に帰着することで解が得られていたが,本研究ではそれを拡張し,高々有限個の不安定極を持つシステムに対しても同様の解法が適用可能であることを示す.
著者
羽鳥 剛史 片岡 由香 尾崎 誠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_407-I_414, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
13
被引用文献数
3

近年,地域社会の課題に対して,市民自身が自主的・自発的に取り組み,課題解決に貢献する様々な市民活動の事例が増えつつある.しかし,市民活動の中には,当初の理念や問題意識が薄れていき,その活動が長続きしない事例も少なからず見受けられる.本研究では,市民活動の持続可能性の規定要因を明らかにすることを目的として,一般市民を対象として,市民活動への参加状況やその活動期間の実態を調査した.それと同時に,市民活動の持続可能性に関わる要因として,地域愛着や文化資本等の諸項目を測定した.この調査の結果から,市民活動の持続可能性に寄与する心理要因やその心的プロセスについて検討し,市民の主体的かつ継続的な活動を支えるための方途について考察した.
著者
斎藤 剛史 大森 茂樹 河原 常郎 倉林 準 八並 光信
出版者
バイオフィリア リハビリテーション学会
雑誌
バイオフィリア リハビリテーション学会研究大会予稿集 (ISSN:18848699)
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.44-44, 2010

【目的】本研究は手関節と前腕における前腕回内外、手関節掌背屈の姿勢変化について、明らかにする事を目的とした.【対象】対象は前腕及び手関節に既往がない健常成人とした.【方法】前腕と手の姿勢変化について、3次元動作解析装置を用いて、6自由度で計測を行った.運動課題は肘関節90度屈曲位で、前腕回内外運動、前腕回内外中間位、最大回内位、最大回外位の各3肢位で手関節掌屈、背屈運動を施行した.【結果】前腕の回内位では、手関節背屈に比し、掌屈の方が明らかに大きいと言えた.また、手関節の掌屈角度は、前腕回内位に比して、回外位でより大きくなった.【考察】上肢全体の柔軟性を考える際には前腕の肢位を考慮した上で、日常生活動作や上肢機能の評価を行う必要があることが示唆された.
著者
山田 剛史
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.87-98, 2000-02-29 (Released:2017-06-28)

単一事例実験計画は、教育の幅広い領域で利用されている実験計画の手法である。そこで得られたデータの分析は主に視覚的判断(visual inspection)によって行われる。しかし、この方法の客観性、評定の信頼性といった問題から、単一事例実験データの評価に統計的方法を適用することが提案されるようになった。その中でも、ランダマイゼーション検定とC統計による処理効果の検定は、日米で多くの研究者からその利用が推奨されてきた。本研究では、この2種類の方法間の比較を検定力という視点から行う。モンテカルロ法によるコンピュータシミュレーション実験を行い、2つの方法の検定力を推定した。SAS / IMLによって1次の自己相関を持つ単一事例実験データ(35個のデータを持つABデザイン)を生成し、4種類の自己相関、6つの効果量のもとでそれぞれの方法の検定力を算出した。その結果、ランダマイゼーション検定は検定力が十分に高いとはいえないが、第1種の誤りの統制は良くできていることがわかった。一方、C統計による検定では、正の自己相関のあるデータでは第1種の誤りの統制ができず、逆に、負の自己相関のあるデータでは検定力が低すぎるということがわかった。これより、系列依存性がある単一事例実験データの分析にC統計による検定を用いるのはふさわしくないことがわかった。
著者
田爪 聡 榊 剛史 坂田 一郎 森 純一郎 大知 正直
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

twitterを用いたマーケティング解析は広く行われているが、投稿数や感情分析が主流であり、テキストの内容に着目した解析は十分に行われていないのが現状である。そこで、本研究ではtwitterから得られたテキストデータに対しトピックモデル解析を行い、トピックの時間ごとの移り変わりを調べた。またそこから各トピックに関する投稿数を推定することで、各アニメーション作品の売り上げ予測の精度向上が確認された。
著者
小川 剛史 亀井 勇統
出版者
佐賀大学
雑誌
Coastal bioenvironment (ISSN:13487175)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.21-29, 2005

本研究では、一度形成されたシミ・ソバカスを消し去る新規美白化粧品の開発を目的に、2004年4月から2005年1月にかけて採取した海水、河川水、海底泥、および海洋生物から分離した微生物を対象にメラニン分解活性のスクリーニングを行った。その結果、屋久島沖にて採水した表層水並びに三重県沖にて採水した水深4,000mの深層水からメラニン分解菌と思われる菌を2株見出した。次に、これらの微生物が有するメラニン分解活性を、液体培地を用いて評価したところ、TM11-4000-1株がメラニン分解活性を有することが示唆された。また、顕微鏡下における形態観察によりTM11-4000-1株をPenicillium sp. として同定した。さらに、TM11-4000-1株より調製した組酵素を用いてメラニン分解活性を評価したところ、わずかな活性を示した。
著者
木村 朝子 柴田 史久 鶴田 剛史 酒井 理生 鬼柳 牧子 田村 秀行
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.1327-1339, 2006-04-15
参考文献数
21
被引用文献数
16

近未来社会のヒューマンインタフェースのあるべき姿として,映画『マイノリティ・リポート』に登場する広視野ディスプレイとジェスチャ操作の組合せを考える.本研究ではまず,広視野電子作業空間に適した作業の想定・分類から始め,これを実現する基幹システムと基本ジェスチャコマンドを開発した.そのうえで,このシステムに立体映像表示,実物体の導入,複合現実感へと発展する体系「MRキューブ」を提唱する.その試作実現例として.ビデオ映像編集と医用画像の閲覧・管理を題材としたシステムを開発し,その操作性と有用性について検証した.
著者
榊 剛史 鳥海 不二夫 吉田 光男
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

We are planning to develop information infrastructures for disaster management. As an example of those infrastructures,we develop a geographic information resource to assist digital volunteers who try to develop systems for disaster management. This system makes it possible to convert gps information and location name extracted from social media posts into administrative district information. In the final year of this session, we will evaluate the performance of the geographic information resource. Specifically, we verify how much improvement in performance can be obtained by applying the resource to the analysis we have performed in the past. Finally, we discuss the limits of the goals initially presented by this session and the efforts that will be needed in the future.
著者
丸井 淳己 則 のぞみ 榊 剛史 森 純一郎
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.28, 2014

近年Twitterのユーザは様々な年代・コミュニティに渡るようになった。ユーザの背景によって単語の使い方が違うと考えられるため、本研究ではTwitterのコミュニティ毎に使用される単語の違いを調べた。よく会話をするユーザ群をコミュニティとしてユーザのグループ分けを行った。さらにニューラルネットワークから計算した単語の分散表現を用いて単語の使われ方の違いを見た。
著者
樋口 宗史 山口 剛 仁木 剛史
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.127, no.2, pp.92-96, 2006 (Released:2006-04-01)
参考文献数
16
被引用文献数
2 3

摂食行動は中枢視床下部摂食中枢の神経細胞に存在する10種あまりの摂食関連神経ペプチド遺伝子の発現により精密に調節されている.その主体をなすものは視床下部弓状核にある摂食誘導性のNPY/AgRP神経と摂食抑制性のα-MSHを産生するPOMC(proopiomelanocortin)神経の拮抗的支配であることが明らかになってきた.NPYは弓状核NPY-Y1とY5受容体を介して最も強い摂食誘導を引き起こす中枢内在性の神経活性ペプチドである.絶食負荷は摂食行動を強く誘導するが,これは末梢での血糖,インスリン,レプチンの低下が摂食中枢の神経ペプチドNPY/AgRP遺伝子転写を誘導し,逆に摂食抑制性のPOMC,CART遺伝子を抑制することに依る(血糖恒常説,脂肪恒常説).摂食関連ペプチド群の中でNPY遺伝子発現系が摂食調節にどのように関わるかを調べるために,NPY-Y5受容体ノックアウトマウスの摂食行動と脳内摂食関連ペプチド遺伝子発現の変化が調べられた.急性投与ではNPY受容体Y1,Y5アンタゴニストはそれぞれ摂食行動を有意に抑制するが,NPY-Y5受容体の生後よりの持続的遮断を反映するY5受容体ノックアウトマウスでは逆に特徴的な肥満と,それに伴う自由摂食時と絶食負荷時の摂食量の増加が認められた.自由摂食時の視床下部弓状核でのNPY遺伝子発現は著しく減少していたが,摂食抑制性のPOMC遺伝子発現は弓状核で有意に減少していた.絶食負荷時にはこれらの遺伝子発現の変化が増強された.NPY受容体ノックアウトを用いた実験から,NPY神経系が持続性遮断されるような状態では他の摂食関連遺伝子発現,特にPOMC遺伝子発現が視床下部摂食中枢で代償的に変化する代償機構の存在が明らかになった.
著者
新浪 剛史
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1727, pp.66-69, 2014-02-03

問 小売業界では、インターネット通販の影響も大きい。昨年はライバルのセブン&アイ・ホールディングスが「オムニチャネル」を掲げて、相次いで企業買収・出資に動きました。 答 セブンさんの立場ならあの戦略は正しいと思います。
著者
榊 剛史
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.855-858, 2017-03-01 (Released:2017-03-01)
参考文献数
6
著者
澤崎 貴則 藤井 聡 羽鳥 剛史 長谷川 大貴
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F5(土木技術者実践) (ISSN:21856613)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1-15, 2012 (Released:2012-05-18)
参考文献数
33

近年,中心市街地の活力低下等が問題となっている中で,町の活気を取り戻すというような事例も見られる.こうした成功事例に着目し,如何にしてその成功が導かれたのかについての一般的知見を得ることは,今後のまちづくりにおいて有益であると考えられる.その知見を得る方法として,これまでは定量的な分析を行う自然科学的な手法が多く用いられてきたが,まちづくりに関わった人々の思いを理解するためには,“物語”を解釈するという解釈学的な方法論を用いることが求められる.本研究では,まちづくりの成功事例として挙げられる埼玉県川越市を対象として,まちづくりの様々な関係者にインタビューを行う.そして,それらを通じて“物語”を構成し,その解釈によって「川越まちづくり」が成功に至った要因を論ずる.
著者
山崎 敏正 井上 勝裕 齊藤 剛史
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

以前の科研費(基盤研究(C)サイレントスピーチBCI、平成23年度~25年度)では、頭皮脳波を利用したsilent speech Brain-Computer Interface in Japanese(SSBCIJ)において、個々のサイレント母音とサイレントなひらがな2文字のdecodingにとどまっていた。本研究では、健常者において、日本語で、サイレントの3文字以上から成る単語および文節のdecodingを可能にするアルゴリズムの開発と、患者(脊髄性筋萎縮症Ⅰ型)への適用を目指した、real-time SSBCIJシステムの設計を検討した。