著者
加藤 秋人
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.93, no.4, pp.276-296, 2020-07-01 (Released:2023-02-19)
参考文献数
24
被引用文献数
2

国内工業においては研究開発機能への資源集中が進み,それに応じて中小企業も試作・開発機能強化が進む.いくつかの集積地域では中小企業のネットワーク化による企業間連携の深化を通じ,試作・開発機能の強化を試みている.本稿は京都と四日市の2地域を事例に,中小企業ネットワーク参加企業を分析し,集積地域の質的変容,すなわち当該ネットワークが参加企業間の連携強化をいかにもたらしたか,比較により明らかにすることを目的とした.その結果,京都地域では100社以上が階層的な組織を構築し,各企業が緩やかにつながりさまざまな需要に対応していた.一方,四日市地域では参加16社が厚い信頼関係を構築して共同開発を行い,集積の深化につなげていた.その背景には,多様な受発注先が厚く集積する京都地域と,同地域に比べて集積の厚みに欠ける四日市地域という,両地域の特性が影響しており,それに応じた企業間連携と,試作・開発の取組みが行われていた.
著者
加藤 丈雄 土井 梅幸 米山 由紀子 杉本 勝之 中村 良
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.108-115, 1994-02-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
16
被引用文献数
4 4

発酵ソーセージなどの発酵肉製品を安全に製造するために,食肉及び食品加工品から低温発酵能を有する乳酸菌を分離し,スターターとしての適性と有害微生物の生育阻止について検討した.1) 市販牛肉より低温発酵能を有する乳酸菌Lactobacillus sp. SK-1001を分離した.2) Lactobacillus sp. SK-1001は発酵肉製品用スターターとしての基本的適性を有した.実験用のビーカーソーセージを用いて検討した結果, Lactobacillus sp. SK-1001は5℃及び10℃でソーセージを発酵できることが認められた.3) 低温発酵によって,ビーカーソーセージ中のS.aureus, E. coli, P. fluorescensは減少した.また, Lac-tobacillus sp. SK-1001の抗菌活性はその生産する乳酸と微量の酢酸によると推定された.4) 試作試験を行った結果, Lacbacillus sp. SK-1001は発酵ソーセージ及び発酵ハムの低温スターターとして使用できることが認められた.
著者
佐野 弘純 福島 啓太郎 矢野 道広 嘉数 真理子 篠田 邦大 加藤 陽子 新小田 雄一 森 尚子 石田 裕二 斎藤 雄弥 豊田 秀実 足立 壯一 大曽根 眞也
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.275-280, 2022 (Released:2022-10-25)
参考文献数
4

【背景】小児血液・腫瘍性疾患の長期にわたる治療に際し用いられる中心静脈カテーテル(Central Venous Catheter; CVC)について,全国的にどういった種類のCVCが使用され,どのように管理されているかについての情報は乏しい.そこで日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)参加施設でのCVCの使用・管理状況について調査した.【方法】JPLSG参加155施設に2016年2月から同年7月まで,CVCの使用・管理状況について,SurveyMonkey®を用いたWebアンケート調査を行った.【結果】98施設(63%)から回答を得た.以下,「%」は回答した施設数を母数とした回答比率を指すものとする.白血病・リンパ腫の患児に対しては97%の施設が基本的に全例にCVCを使用していると答えた.CVCのタイプ別にみると,長期留置型は86%の,短期留置型は16%の,ポートは7%の,末梢挿入型は44%の施設で使用されていた.皮膚刺入部の管理法,アクセスポートを含めた輸液ラインの管理法,カテーテル関連血流感染症が疑われた際の対応については施設ごとで差を認めた.【考察】施設の規模や診療体制の違いからCVCの使用や管理の状況は施設ごとに大きく異なっていた.今後はCVCを安全に使用し,感染を予防するための管理指針が必要と考えられた.
著者
加藤 義清 黒橋 禎夫 江本 浩
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.SWO-014, pp.01, 2006-11-21 (Released:2021-09-17)

従来は一部の機関,著者が特権的に有していた情報発信という機能が,ウェブの登場により一般の個人に開放されることとなった.特に,近年では消費者発信メディアの普及に伴いその傾向は顕著となっている.従来では得られなかった情報が得られるようになり,その利用価値は高まっている.その反面,信頼性という観点から情報を評価,選別し利活用することが難しくなっているのも事実である.本稿では,情報の信頼性について,関連する概念について整理し,ウェブ上の情報の信頼性評価を行う上での課題を挙げて要素技術をまとめる.
著者
加藤 百一
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.873-877, 1970-10-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
14

アイヌの手によってついに栽培されなかった米を原料とした酒が, どうしてアイヌ・モシリの人々になじまれ, さらに近世の (アイヌの酒) となったか, この課題を解決するためには16世紀中期以降の蝦夷地における和人の進出, 交易の姿から見極めねばならない。本稿においては蝦夷地に渡った和酒について記述されている。
著者
加藤 尚武
出版者
日本シェリング協会
雑誌
シェリング年報 (ISSN:09194622)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.4, 2003 (Released:2022-12-15)

The word organism is made from organ. But organ means some types of mechanical instruments. Many dictionaries (Oxford, Ritter, Gehler) teach us the word Organism is not so old as the word life. Kant's comment on the words organ and organisiertes Wesen seems to reveal that he was sensitive to the new vocabulary. C. A. Eschenmayer: Die Philosophie in ihrem Uebergang zur Nichtphilosophie (1803) is a clear-cut picture of philosophical situations of the days. Philosophers of Romantic School supported so called chemitry-centric idea of organism that real basic process of organism can be explained as a chemical process. But Schelling rejected the chemitry-centric idea in his work: Die Methode des akademischen Studiums (1803).
著者
榎 裕美 苅部 康子 谷中 景子 堤 亮介 長谷川 未帆子 田中 和美 髙田 健人 古明地 夕佳 岡本 節子 遠又 靖丈 長瀬 香織 加藤 すみ子 大原 里子 小山 秀夫 杉山 みち子 三浦 公嗣
出版者
一般社団法人 日本健康・栄養システム学会
雑誌
日本健康・栄養システム学会誌 (ISSN:24323438)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.31-42, 2023 (Released:2023-02-14)
参考文献数
16

目的:栄養マネジメント強化加算による栄養ケア・マネジメントの体制と取り組み、併設の通所サービスおよ び認知症グループホームにおける管理栄養士の関わり等について、インタビュー調査を実施し、今後の栄養ケ ア・マネジメントの推進および質の向上についての課題の整理を行うことを目的とした。 方法:対象は、良好な栄養ケア・マネジメントの取り組みが為されている特別養護老人ホーム5施設、老人保 健施設5施設に所属する常勤の管理栄養士(責任者)とした。インタビューガイドを用いたWEB インタビュー を行い、逐語録から概要表を作成した。 結果:栄養マネジメント強化加算は、経営面および実務を担う管理栄養士から高く評価され、多職種による週 3 回以上のミールラウンドは、多職種間の連携が強化されていた。認知症グループホームにおける栄養管理体 制加算算定は、職員の意識付けとなっていた。見えてきた課題として、介護支援専門員との連携不足、介護保 険サービスにおける管理栄養士の人材確保および人材育成が挙げられた。 結論:令和3年度介護報酬改定は、あらゆる側面で、栄養ケア・マネジメントの向上に寄与していた一方で、 人材育成などの喫緊の課題も明らかとなった。
著者
小口 理恵 牧迫 飛雄馬 加藤 仁志 石井 芽久美 古名 丈人 島田 裕之
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.705-710, 2008 (Released:2009-01-28)
参考文献数
19
被引用文献数
8 3

[目的]本研究では,地域在住高齢者において定期的に実施している運動の種目により,身体組成,運動機能に違いがあるかを検討した。[対象]70歳以上の地域在住高齢者83名(平均年齢75.9±4.3歳)を対象にした。[方法]身体組成,運動機能,実施している運動種目,実施頻度,実施時間および過去半年間での転倒の有無を調査した。運動種目により,対象をスポーツ群と軽運動群とに分類し,調査項目の比較検討を行った。[結果]スポーツ群では,軽運動群よりもTimed Up & Go Testが有意に速い値を示し,過去半年間の転倒経験が少なかった。さらに,スポーツ群では運動実施頻度と骨格筋量(r=0.41),膝伸展筋力(r=0.42)に有意な相関関係が認められた。[結語]定期的にスポーツを実施している高齢者は,歩行機能が良好であり転倒経験も少なく,運動の実施頻度は下肢筋力や骨格筋量と関連があることが示された。
著者
加藤 大
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.77-87, 2015-02-05 (Released:2015-03-05)
参考文献数
48
被引用文献数
2 2

タンパク質の細胞内局所での機能に注目が集まる中で,これらの解析にタンパク質を内包した刺激応答性ナノ粒子が用いられ始めている.タンパク質は,ナノ粒子に内包されることで細胞内に導入され,刺激応答を受けるまでナノ粒子内に安定に留まり,非侵襲な刺激を与えることで,細胞内で放出され機能する.そのため,刺激応答性ナノ粒子を用いることで,様々なタンパク質について細胞内で機能発現する時空間を正確に制御することができる.細胞内でタンパク質を放出する刺激として,標的部位の細胞内環境(低pH,還元状態)や光などの外部刺激が利用されている.本論文では,タンパク質内包ナノ粒子と,それを用いた細胞内タンパク質の機能解析に関しての最近の研究を紹介する.
著者
加藤 武雄
出版者
THE TOHOKU GEOGRAPHICAL ASSOCIATION
雑誌
東北地理 (ISSN:03872777)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.164, 1971 (Released:2010-10-29)
参考文献数
4
被引用文献数
1

At Daiichi Dam of the Tachiyazawa River, the amount of dissolved oxygen and the water temperature are observed throughout the day. The hourly observation reveals that the linear relationship (negative correlation) is found to exist between the two. Regarding this river, the following equation is obtained:DO=13, 98-0.367 Tw (r=-0.933), where DO is dissolved oxygen in ppm and Tw in °C.
著者
加藤 民夫
出版者
秋田大学史学会
雑誌
秋大史学 (ISSN:0386894X)
巻号頁・発行日
no.24, pp.p24-41, 1977-07
著者
川口 湊 加藤 義幸
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第40回, no.データ処理, pp.628-629, 1990-03-14

TEXや、PostScriptの出力処理を高速に行うための高解像度のレーザービーム・プリンタ・システム(LBPS)とそのファームウェア、およびドライバを開発した。文書の作成や編集のためにTEXや、日本語を処理できるTEXシステムであるNTT版JTEXおよびアスキー版日本語TEXを利用する機会が増えてきた。これらのシステムは最近Cバージョン化されて高速の処理が可能になってきた。それにひきかえ、最終出力である紙への出力処理には相変わらず時間がかかり、苦痛を強いられるという場合が少なくない。そこでインテリジェントなLBPSとデバイス・ドライバを開発し、その間でフォントのキャッシングを行うことにより高速で効率のよい出力を実現した。TEXが生成するdviファイルに記録されているフォントを全てキャッシングする。そして、キャッシングされたフォント・データをLBPS内部に保存する。したがって、出力の回数を重ねるほどヒット率が高くなるという特徴がある。また、TEXの出力だけでなくPostScriptを使って作成した図を出力したいとか、TEXの出力にPostScriptの図を挿入したいというときがしばしばある。そういった要求に応えるために、GhostScript(Free Software Fundation, Inc.から配布されているGNU版PostScript)をファームウェア化してPostScriptの高速の出力も可能にした。これらの処理を行うために開発したLBPSのハードウェアの主な仕様を表1に示す。
著者
丸田 雅樹 末盛 浩一郎 谷脇 真潮 村上 忍 福島 万奈 加藤 潤一 木原 久文 名部 彰悟 池田 祐一 越智 俊元 波呂 卓 谷本 一史 竹内 一人 山之内 純 宮本 仁志 竹中 克斗
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.96, no.4, pp.148-153, 2022-07-20 (Released:2022-07-20)
参考文献数
17

A 69-year-old male was admitted to Ehime University Hospital with bicytopenia. He was diagnosed with myelodysplastic syndrome (MDS) and was administered chemotherapy. He was a multimorbid patient with chronic kidney disease (CKD), chronic obstructive pulmonary disease (COPD), type 2 diabetes, and Sweet's disease resulting in a skin rash. The patient was treated with oral prednisolone for Sweet's syndrome, and cefepime infusions for pneumonia that arose during the first course of chemotherapy. Both of these complications were almost recovered on physical and image findings. During the second course of chemotherapy, he developed Kytococcus schroeteri bacteremia that was successfully treated with linezolid and meropenem infusions, but he died owing to Stenotrophomonas maltophilia bacteremia that occurred 6 h after the K. schroeteri bacteremia. Postmortem microbiology (PMM) proved his reservoir of S. maltophilia bacteremia as pneumonia. There are only 20 reports of K. schroeteri bacteremia in the Medline database. According to our knowledge, this is the first case that developed K. schroeteri and S. maltophilia bacteremia sequentially. In addition, this case highlights the importance of PMM in improving treatment of infectious diseases.
著者
木澤 敏毅 加藤 辰輔 重富 浩子 田中 藤樹 飯田 一樹 永井 和重 五十嵐 敬太 山本 雅樹 畠山 直樹 鈴木 信寛 堤 裕幸
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.150-155, 2012 (Released:2012-04-28)
参考文献数
13

約6カ月間にわたり移動性関節痛・骨痛,皮膚紅斑を呈し,血液検査ではCRP,赤沈値の持続的な上昇,軽度の貧血を認めた1女児例を経験した.当初は若年性特発性関節炎,慢性再発性多発骨髄炎を疑ったが,約6カ月後にLDH 573 U/mLと上昇し,また末梢血中に芽球が出現したため骨髄穿刺を行い急性リンパ性白血病と診断した.骨痛,関節痛を主訴とする慢性炎症性疾患には感染性骨髄炎,リウマチ性疾患,血液・悪性腫瘍,骨の自己炎症症候群(とくに慢性再発性多発骨髄炎)などが鑑別に挙げられるが,炎症所見の他には血液検査上の異常所見に乏しく,画像検査によっても一般小児科医にとって,診断の確定が困難な例が存在する.とくに小児白血病においては,画像検査を行い,特異な所見の検討を行った報告は少なく,また非特異的な画像所見を呈することも多く,鑑別に苦慮した.しかし今回の症例を通じて,小児放射線専門医によれば,早期の画像から白血病特有の所見が読み取れるとされ,画像を専門的に読影することが重要と思われた.また,小児の画像検査の蓄積により骨痛,関節痛を伴う急性リンパ性白血病の病態解明や早期診断につながることが期待された.