著者
加藤 典子 市橋 則明 坪山 直生
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0110, 2004 (Released:2004-04-23)

【はじめに】股関節内転筋群は恥骨筋、薄筋、長内転筋、短内転筋、大内転筋で構成され、非常に大きな容量をもち、また外転筋群の1、5倍の仕事量をもつとされている。しかし、内転筋群の機能や歩行に与える影響など運動学的に検討した報告は少ない。内転筋群は全て閉鎖神経支配であり、恥骨筋は大腿神経との2重神経支配である。今回、閉鎖神経を切除された2症例を経験し、内転筋群が股・膝関節筋力に与える影響と歩行などのADLに及ぼす影響を検討したので報告する。【症例紹介】A氏42歳 H.11卵巣癌と診断される。手術・放射線治療されるも再発繰り返し、H.14.11骨盤内臓器と共に右閉鎖神経切除される。B氏55歳 H.6子宮頚癌と診断される。手術・放射線治療されるも再発し、H.14.12骨盤内臓器と共に右閉鎖神経切除される。理学療法はそれぞれ手術後5日、13日後から開始し、Closed Kinetic Chain トレーニングを中心に、退院時までそれぞれ11週・9週間施行した。【評価】手術後A氏10週、B氏8週後に両下肢筋力を測定した。Power track (NIHON MEDIX社製)を使用し等尺性筋力を測定した。以下A氏、B氏の順で健側に対する%(健側比)で表す。股関節90度屈曲位での股関節屈曲筋力は88・78%であったが、股関節0度伸展位(膝屈曲位)での屈曲筋力は58・53%と大きく低下した。股関節伸展筋力は61・48%であったが、外転筋力は90・87%と比較的保たれていた。股関節90度屈曲位での外旋筋力は29・25%と最も低下し、股関節0度伸展位での外旋筋力は59・46%であった。一方、股関節内旋筋力は股関節90度屈曲位94・95%、0度伸展位100・89%とほとんど影響なかった。膝関節伸展筋力は87・62%、屈曲筋力は48・38%と低下していた。内転は軽度屈曲位で重力除去肢位において可能(MMT2レベル)ではあったが、測定不可能であった。股関節伸展位からの屈曲は手術後それぞれ19日後、32日後まで不可能であった。膝屈曲位保持は不安定であり、患側片脚ブリッジは退院時においても困難であった。歩行に関しては理学療法開始初期においてはつたい歩きレベルであり、右立脚期の短縮がみられたが、退院時には屋外歩行獲得可能となった。B氏にwide baseがみとめられた以外の破行はみられなかった。他のADLにおいても退院時には全て自立していた。【考察】本2症例の検討により、閉鎖神経が切除されてもほとんどADLに支障はなく、他の筋で代償可能であると考えられる。各筋力評価から、股関節内転筋は内転以外の作用として、股関節外旋(外閉鎖筋の関与も考えられるが)と股関節伸展位からの屈曲に重要な作用があると考えられた。膝関節筋力の低下がみられたことより、膝関節屈伸時の近位関節の固定筋として内転筋群の役割も重要であることが示唆された。
著者
奥山 誠義 水野 敏典 河崎 衣美 北井 利幸 岡林 孝作 加藤 和歳
出版者
奈良県立橿原考古学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では古墳時代における繊維製品の材料学的・構造的研究方法の基礎的研究を行い、ヤマトにおける古墳時代繊維製品の具体的な変遷の把握を試みた。考古学および文化財科学における新たな価値を生み出す研究を大きな目標として研究を進めた。本研究では、ラミノグラフィおよびX線CTと呼ばれる非破壊調査法により非破壊的に織物の構造調査が可能であること、光音響赤外分光分析が非破壊的に素材を知る手段として有効であることが確認できた。考古学的には新沢千塚古墳群から出土した染織文化財を例として、統計分析をおこない織密度や織物の種類や古墳の墳形、規模との相関について研究した。
著者
渡邉 研人 阿部 祥子 後藤 隼人 石丸 裕美 加藤 彩夏 鈴木 篤 薄井 宙男 惠木 康壮 高澤 賢次
出版者
一般社団法人日本医療機器学会
雑誌
医療機器学 (ISSN:18824978)
巻号頁・発行日
vol.88, no.6, pp.589-596, 2018 (Released:2019-01-25)
参考文献数
8

Background: Remote monitoring of Cardiac implantable electronic devices (CIEDs) improves patient safety. However, operating such remote monitoring systems (RMS) has increased workload of medical staffs. Biotronik EHR DataSync® software supports medical staffs by integrating CIEDs information and data using international standards. The software has a potential to enhance clinical usefulness, reduce errors and lighten the workload. The aim of this study was to develop the automatic electronic medical record (EMR) system for CIEDs and to assess its effectiveness.Methods: We self-built the EMR system that automatically stores varied numericals and data from the RMS and its programmer. We examined accuracy of the automatic EMR system and reduction of the workload.Results: A total of 3,011 data was successfully collected and integrated, and the success rates of data collection were 99.8%. Moreover, the automatic EMR reduced 3 hours and 55 minutes per year of the workload for dealing CIEDs.Conclusion: The self-built automatic EMR system could integrate CIEDs data successfully. This could help to reduce the workload of medical staffs..
著者
門脇 一真 木村 泰知 加藤 誠 近藤 隆史 乙武 北斗
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.FIN-030, pp.100-105, 2023-03-04 (Released:2023-03-04)

我々は,有価証券報告書(有報)に含まれるさまざまなタイプの表の理解を目的に,表構造解析を行うタスクを計画している.有報にはタクソノミがテキストブロックとして定義された箇所があり,特に非財務情報を表現する表には様々なタイプが含まれる.既存研究を参考に有報の表の各セルをヘッダ,属性,データといったクラスに分類した結果,既存研究で分類された関係表,エンティティ表,行列表などのいずれのパターンにも分類されない複雑な構造の表が見られ,さらにそれらの構造がいくつかのパターンに分類できた.本稿ではまず,各セルの分類方法と,その結果発見された表構造のパターンについて報告する.これらのうちセルが正しく分類できた表については,NTCIR-17 UFOタスクの表データ抽出(TDE)サブタスクでアノテーションデータを公開し,評価型ワークショップとして取り組めるようにする予定である.本稿ではこのタスクのデータ形式,評価方法についても取り上げる.
著者
村岡 悠子 加藤 和人
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.37-45, 2021-09-28 (Released:2022-08-01)
参考文献数
40

昨今、民間保険会社において遺伝情報の利用規制に関する検討が重ねられている。本稿では、契約後に発病した被保険者の疾病が遺伝性疾患であることを理由に、支払査定時に「先天性条項」を適用して保険会社の免責を認めた裁判例から、遺伝情報の利用規制において検討すべき課題を明らかにする。同裁判例は、遺伝子検査によらず臨床診断に基づき遺伝性疾患と診断された場合、被保険者が当該疾患により不利益な取り扱いを受けても遺伝情報に基づく差別的取扱いと認識されないこと、そのため、遺伝情報の利用規制によっても不利益取扱いを回避できず、規制の趣旨を没却する可能性があることを示唆する。医療情報と遺伝情報の峻別が困難であることを前提に、利用規制が対象とする「遺伝情報」とは何なのか、議論を尽くす必要がある。さらに、遺伝性疾患を有する者に生じる本裁判例のような不利益に対しどのような介入が可能なのか、保険業界のみならず社会全体でのオープンな議論が望まれる。
著者
菱沼 典子 大久保 暢子 加藤木 真史 佐居 由美 伊東 美奈子 大橋 久美子 蜂ヶ崎 令子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.123-132, 2019 (Released:2019-12-20)
参考文献数
38

目的: 看護技術研究の成果が実践や教育に活かされているかどうかを検討する目的で, 言い伝えや経験知に基づく看護技術の使用の実態を調査した. 方法: 看護協会等の研修会に参加した看護実践家と看護教員計476人を対象に, 研究により①確立されている技術, ②確立には至っていない技術, ③疑問が呈されている技術・手技について, 自記式質問紙調査を行った. 結果: 458部を回収 (回収率96.2%)し, 有効回答は374部 (有効回答率81.7%) であった. ①の例では点滴漏れへの対処に適切な冷罨法の実施は21.4%であった. ②では採血時に親指を中にして手を握ることを90.1%が実施していた. ③では浣腸前の摘便を27.5%が実施していた. 考察: 確立している技術が使われず, 確立途中の技術は使われ, 疑問を呈されている技術も使われている実態は, 研究成果と実践や教育に隔たりがあることを示している. 研究成果の活用には容易なアクセスと共有が課題であると考察した.
著者
加藤 正信
出版者
The Linguistic Society of Japan
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.1962, no.42, pp.31-46, 1962-10-31 (Released:2010-11-26)

As an experiment in linguistc geography, the writer takes up in the present paper the distribution of a variety of forms denoting salix caprea in the Island of Sado. This word may not belong to the basic Japanes vocabulary, nor can its variation constitute such an important dialectological feature as the word for “bought”, which divides Japan into two areas, one (east) with the form katta and the other (west) with the form kota. Even the conclusion about the changes the word has undergone in that island may have little significance in itself. The writer's aim here is to present the procedures that have led him to his conclusion and invite critical comments from his colleagues.In actual field work, the writer was assisted by Mrs. Sadako Kato. They visited almost all the communities (160 communities in all) in the island except the northern region, from 1959 to 1962. In each community, they examined one informent, who was native to the community and born in the Meiji Era i. e. before 1912. As a result of the survey, 34 different forms have been recorded. If we represent these forms on the maps as they are, their distribution would look so complicated that it would be impossible to know where to draw a dividing line. Matters can be made much simpler, however, by classifying our forms into two groups, one containing the element inu ‘dog’ and one containing the element neko ‘cat’. Thus we find the ‘dog’ group distributed in the central part, and the ‘cat’ group along the seacoast.With respect to the history of the island, we know that it was the central part that was prosperous untill the sixteenth century, and, only later, important lines of communications developed along the coast. On the other hand, the ‘dog’ group contains certain forms affected by a law of vocalic change that must have been completed in the seventeenth or eighteenth century. These two considerations have led the writer to the conclusion that the ‘dog’ group belong to an older layer than the ‘cat’ group. If so, how did some forms of the ‘dog’ group come to be replaced by those of the ‘cat’ group? In order to answer this question, the writer reconstructs an approximate process of innovation on the basis of further material provided by his map, and considers factors involved in each case.
著者
上林 里絵 池村 健治 若井 恵里 杉本 浩子 平井 利典 加藤 秀雄 向原 里佳 石倉 健 今井 寛 岩本 卓也
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-9, 2023-02-28 (Released:2023-02-28)
参考文献数
20

集中治療室(intensive care unit,以下,ICU)入室患者の薬物治療は複雑であることが多く,処方の適正化には薬剤師の積極的な参画が求められる。三重大学医学部附属病院では,2019年2月よりICU専任薬剤師による翌日投与予定の注射処方発行前に処方鑑査を行う運用(注射処方発行前鑑査)を開始し,医師の指示や患者の病態に応じた薬物治療の適正化に介入してきた。本研究では,運用前後6カ月間における介入件数やその内容,注射薬の返品率に及ぼす注射処方発行前鑑査の影響について調査した。薬剤部にて注射薬の調剤・払い出しを行う薬剤師の全介入件数は,運用後に有意に減少し(p=0.030),ICU専任薬剤師の全介入件数は有意に増加した(p=0.002)。注射室と比較しICU専任薬剤師の注射オーダー反映率は運用後で有意に上昇し(p<0.001),未使用注射薬の返品率も有意に低下した(p<0.001)。以上より,ICU専任薬剤師による注射処方発行前鑑査の運用は,効率的な薬物治療の適正化に貢献したと考えられた。
著者
大野 浩史 菊池 雅彦 久保田 尚 小嶋 文 加藤 哲平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00064, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
10

東京一極集中緩和のため,地域との繋がりを構築する取り組みが重視されている.地域との繋がりの構築において注目される「関係人口」は,人々の地縁・血縁との関連があり,その地域との所縁がある住民意識を表す際に「故郷」がよく用いられる.しかし,「故郷」に対する住民意識の実態は十分には明らかになっていない.以上から本研究では,埼玉県在住者を対象にアンケート調査を実施し,居住履歴の分類から,「故郷」に関する意識,「故郷」のまちづくりへの参加意欲等を検証した. その結果,埼玉県で生まれ育った人々は,自身が生まれ育った埼玉県を「故郷」と意識する傾向があり,「明確な「故郷」を持たない」という人は少数であった.また,地方出身の1代目は現住所以外を「故郷」と意識し,まちづくりへの参加意欲が高い傾向が確認できた.
著者
加藤 真人 川端 祐一郎 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00052, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
16

COVID-19が感染拡大する中,国による緊急事態宣言等や自治体の独自施策によって飲食店営業時間の短縮や休業の要請及び「命令」が繰り返し行われてきた.こうした要請や命令は都市活動に甚大な影響を及ぼすため都市政策上極めて重大な要素であるにもかかわらず,そうした命令を正当化するのに十分なだけの効果があったか,また緊急事態宣言等の措置についても都市全体の感染拡大防止にどの程度有効であったか十分に検証・評価されてきたとは言い難い.本稿では,分析1で当該26店舗が東京都の「時短命令」に従ったことで防止されたと考えられる新規感染数を試算,分析2で緊急事態宣言等が,分析3で宣言等発令の根拠とされる人流抑制がそれぞれ東京都の実効再生産数に与えた影響を分析する.
著者
佐野 公俊 加藤 庸子 安部 雅人 笠間 睦 神野 哲夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.595-597, 1991-12-20 (Released:2012-10-29)
参考文献数
8
被引用文献数
3 2

In cases of difficult aneurysms the temporary occlusion of blood flow makes the operation easy; however, ischemic damage of the brain must always be considered. Temporary clipping of the parent artery is easy, but ischemic damage may be severe.On the other hand, a tentative clip which is put on the aneurysm either partially or totally, has the following merits:1) Preparation of the aneurysm is easy and safe.2) There is less ischemic damage.But there are the following demerits:1) The part of the aneurysm on which a tentative clip is put should be prepared.2) At the time of tentative clipping the back side of the aneurysm cannot be seen.Temporary clipping and tentative clipping, each has its own merits and demerits.We have to approach aneurysms on the base of sufficient knowledge.