著者
加藤 太郎 板東 杏太 有明 陽佑 勝田 若奈 近藤 夕騎 小笠原 悠 西田 大輔 髙橋 祐二 水野 勝広
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.326-332, 2021-03-18 (Released:2021-07-03)
参考文献数
18

目的:脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration:SCD)に対する短期集中リハビリテーション治療(SCD短期集中リハビリテーション)の効果が,先行研究により示されている.しかし,SCD短期集中リハビリテーションの効果検証は,Scale for the Assessment and Rating of Ataxia(SARA)の総得点により報告されており,SARAの下位項目による詳細な検証はなされていない.本研究は,歩行可能なSCD患者の運動失調に対するSCD短期集中リハビリテーションの効果を,SARAの総得点と下位項目得点から検証することを目的とした.方法:対象は,SARAの歩行項目3点以下に該当し,4週間のSCD集中リハビリテーション治療プログラム(SCD集中リハビリテーション)に参加したSCD患者23名(男15名,女8名)とした.評価項目はSARAとし,SCD集中リハビリテーション実施前後に評価を実施した.対象者のSCD集中リハビリテーション実施前後のSARAの総得点および各下位項目得点を,後方視的に解析した.統計はWilcoxonの符号付き順位検定を用いて分析検討し,有意水準は5%とした.結果:SCD集中リハビリテーション実施前後において,総得点および下位項目得点のうち,歩行,立位,踵-すね試験に有意な点数の改善を認めた(p<0.05).一方,下位項目得点で座位,言語障害,指追い試験,鼻-指試験,手の回内・回外運動は有意な点数の改善を認めなかった.結論:本研究の結果は,SCD集中リハビリテーションはSCD患者のSARAにおける総得点と,特に体幹と下肢の運動失調を有意に改善させることを示した.
著者
柏原 太郎 加藤 敏春 有馬 純治 毛利 信幸
出版者
一般社団法人 表面技術協会
雑誌
金属表面技術 (ISSN:00260614)
巻号頁・発行日
vol.24, no.9, pp.500-505, 1973-09-01 (Released:2009-10-30)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

The mechanism for formation of Cr6+ compounds which were produced by high temperature oxidation reaction of Cr-Ca and Cr(OH)3 systems was investigated. The following conclusions were drawn: (1) When Cr(OH)3-Ca(OH)2 system was burned, Cr6+ compounds were produced by two different mechanisms, which were distinguished by the boundary temperature of 300°C. At temperatures above 300°C, Cr6+ compounds were produced by the mechanism proposed by Nishino et al.; but at temperatures below 300°C, Cr6+ compounds were produced by the following reaction: 4Cr(OH)3+4Ca(OH)3+3O2→4CaCrO4+10H2O (2) CrO3 was prouced by burning of Cr(OH)3 including oxidable anions such as SO42+; and the amount of CrO3 compounds produced was maximum at 250°C. Therefore, it was impossible to prevent the production of Cr6+ compounds in the low temperature burning of real sludge. (3) When Cr-Ca system was burned, the amount of Cr6+ compounds produced became constant at a time at a temperature of 440-600°C; but, at temperatures above 700°C, the surface began to fuse and the reaction proceeded to the interior of particles so that the amount of Cr6+ compounds produced increased with the rise of temperature.
著者
白井 真理子 加藤 樹里 菊谷 まり子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.94.22206, (Released:2023-03-10)
参考文献数
44

Emotional crying has been described as the shedding of tears consequent to an emotional event, a universal and uniquely human behavior. The purpose of the present study was to develop the Japanese version of the Beliefs About Crying Scale (BACS), which assesses beliefs about whether crying is beneficial for gaining positive feelings in both individual and interpersonal contexts. In Study 1, we examined factor structure and re-test reliability. The results indicated that the factor structure of the Japanese version and original version of the BACS are similar and possess acceptable re-test reliability. In Study 2, we tested validity. The results revealed that the Japanese version of the BACS had theoretically reasonable correlations with assumed variables. These results suggest that the Japanese version of the BACS has similar properties as the original version and has acceptable validity and reliability.
著者
加藤 裕基
出版者
宇部工業高等専門学校
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

一般の左固有組み合わせ的かつ単体的なモデル圏についてモティヴィック導来代数幾何学の理論を定式化した. それらを応用して無限圏を用いてモティヴィック・スキームおよびスタックを構成する理論を与えた. 例えばモティヴィックスキームのベクトル束やThom空間を表現するモティヴィック・スタックを無限圏を用いて構成することができる. これらはモティヴィック導来代数幾何学がモジュライ問題に応用できる可能性があることを示している. 研究は論文「Motivic model categories and motivic derived algebraic geometry」にまとめた.
著者
加藤 泰奈 茂呂 順久 宮本 真 齋藤 康一郎
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.39-43, 2020 (Released:2021-03-31)
参考文献数
17

歯性感染症が原因で深頸部膿瘍を形成した症例は多数報告されているが,側頭部に膿瘍を形成する症例はまれである.今回我々は下顎の歯周炎が原因で側頭窩および側頭下窩に膿瘍を形成した1症例を経験したので,その治療と臨床経過について報告する.症例は63歳女性で,左側頭部痛,開口時痛,開口障害を主訴に当科を紹介受診となった.造影CTにて左側頭部に膿瘍形成を認め,同日左側頭部に皮膚切開を加えて外科的ドレナージを行い,抗菌薬による加療を行った.膿瘍の治療として適切な切開排膿が重要であるが,今回側頭部の皮膚切開を工夫することで全ての膿瘍腔を開放できたことが早期治療につながったと考える.
著者
打田 智子 加藤 誠
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.1-15, 2023-04-14

情報検索システムのクエリ自動補完において,現在主流の手法では,クエリ補完候補を生成するため,過去に蓄積された膨大なクエリログを必要とする.本論文では,専門ドメイン検索システムなど,クエリログが入手しづらい状況下において,入手可能な他のクエリログおよびその文書コレクションと,ターゲットとする文書コレクションから,クエリ補完候補を生成するアプローチについて述べる.具体的にはまず,他のクエリログのクエリ中に出現する単語N-gramのN-gram確率と,対応する文書コレクション中のN-gram確率との比率(「クエリらしさ」を表現する係数)を推定する回帰モデルを構築する.次に,得られた回帰モデルをターゲットとする文書コレクションに適用することで,実際のクエリ補完候補を生成するN-gramモデルを構築する.実験により,提案手法は,他のクエリログのみ,またはターゲットとする文書コレクションのみを用いて構築したN-gramモデルよりも,ユーザクエリの予測タスクにおいて良い性能を与えることが示された.
著者
扇谷 昌宏 加藤 隆弘 細井 昌子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.390-393, 2022 (Released:2022-09-01)
参考文献数
17

脳細胞の一種であるミクログリアは,微小な環境変化に敏速に反応し,貪食やサイトカイン産生などを行うことで脳内免疫応答の中心として機能している.また,その機能不全や異常活性化がさまざまな病態に関与していることが示唆されている.慢性疼痛は,単なる痛みだけの疾患ではなく,人間(ヒト)に特有の多面的な疾患ともいえる.このヒト特有の疾患を研究するためには,当然ながらヒトの細胞を用いて実験する必要がある.しかし,そのハードルはきわめて高い.われわれは末梢血中の単球からミクログリア様細胞(induced microglia-like cells:iMG細胞)を作製する技術開発に成功した.iMG細胞は,単球にGM-CSFとIL-34の2種類のサイトカインを添加して2週間培養するだけで作製することが可能である.iPS細胞と異なり,遺伝子組み換えの操作を行わない化学誘導によって作製が可能なため,簡便で安全性が高く,一般臨床施設においても作製が容易である.われわれはこのiMG細胞を用いて那須・ハコラ病や双極性障害といった疾患におけるミクログリア異常を報告してきた.本稿では,われわれの開発したiMG細胞のトランスレーショナル研究ツールとしての有用性と可能性についてこれまでの結果を報告し,線維筋痛症を対象としたトランスレーショナル研究の実際を報告する.
著者
加藤 承彦 越智 真奈美 可知 悠子 須藤 茉衣子 大塚 美耶子 竹原 健二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.21-040, (Released:2022-03-16)
参考文献数
50
被引用文献数
2

目的 近年,父親の育児参加に対する社会の関心が高まりつつある。しかし,父親が積極的に育児参加することによってどのような影響があるのかあまり明らかになっていない。本研究では,我が国で主に2010年以降に報告されている父親の育児参加に関する研究の知見についてレビューを行い,日本社会において父親の育児参加が母親,子ども,父親自身に与える影響に関する知見をまとめた。さらに,今後の課題についても検討を行った。方法 医学中央雑誌文献データベース,JSTPlus,JMEDPlusを用いて,「乳幼児関連」,「父関連」,「育児関連」のキーワードで2010年以降に掲載された和文原著論文の検索を行った。また,PubMedを用いて,「father or paternal」,「childcare OR co-parenting OR involvement」で英文原著論文の検索を行った。また,日本国内の研究,乳幼児期がいる家庭を対象,質問紙を用いた量的研究,2010年以降に掲載などの条件を設定した。これらの条件を満たした26編の論文(和文22編,英文4編)について,対象者(母親,父親,両者),育児参加方法の内容,アウトカムの内容,得られた知見などについて検討を行った。結果 父親の育児参加の影響に関する過去10年間の和文論文および過去20年間の英文論文の文献レビューの結果,次の2点の傾向が見られた。第1点目として,母親が父親の積極的な育児参加を認知している場合,母親の育児負担感が低く,幸福度が高い傾向が見られた。また,子どもの成長においても,母親が父親の積極的な育児参加を認知している場合,子どもの健康や発達(怪我や肥満の予防)に良い影響を及ぼしている可能性が示唆された。しかし,第2点目として,父親が自分自身で評価した育児参加の度合いは,母親の負担感などとは直接に関連しない可能性が示唆された。父親の育児参加が父親自身に与える影響(QOL等)は,研究の数が少ないこともあり,一貫した傾向は見られなかった。また,父親の育児参加の評価の方法がそれぞれの研究で異なっていた。結論 今後,父親の育児参加が積極的に推奨されると同時に,その影響についても社会の関心が高まると推測される。今後の課題として,父親の育児参加の量および内容をどのように適切に評価するのかに関する議論を深める必要が示唆された。
著者
加藤 恵津子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.202-220, 2006-09-30 (Released:2017-08-28)

本稿では、ポストコロニアル研究隆盛のさなかで「日本人によるネイティヴ人類学」は何をするべきか、またその仕事にはどのような困難が伴うかを論じる。「日本人によるネイティヴ人類学」とは、日本人の人類学徒による自文化研究すべてを指すものではない。それは「ネイティヴ」という語の前提にある欧米中心的ヘゲモニーを、意識し批判することを必然的に含む。「日本人によるネイティヴ人類学」の主要な仕事は、自文化について日本語と欧米言語の両方で書くこと、そして欧米人類学による日本/人の表象に批判を加えることである。だがこれらの作業には、二つの異なる言語・読者の間で、記述内容や書き手の立場が不安定にならざるを得ないという困難や、巨大なヘゲモニーの中で自分の声を聞かせることの困難がつきまとう。これらについて、筆者の日英語での出版経験や、英語圏の研究者に向けた「異議申し立て」の学会発表の経験をもとに考察する。
著者
稲本 元 加藤 学
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.337-351, 2021 (Released:2021-07-28)
参考文献数
54

透析患者では食事制限,透析による水溶性ビタミンの喪失,代謝異常による要求量増加,治療薬の影響などにより水溶性ビタミンが不足する.水溶性ビタミンの必要量は健常人必要量より多く,食事では充足できず,水溶性ビタミンの補充が必要で,補充により生命予後が改善する.欧米ですでにできている補充用ガイドラインの日本版を日本透析医学会で作成し,総合水溶性ビタミン剤(経口薬,注射剤ともに)を製造,販売してもらい,治療に用いるべきである.
著者
杉本 耕一 佐藤 尚昭 加藤 徳之 佐藤 博明 長友 康 土田 幸広 冨岡 一幸 伴野 悠士 能勢 忠男
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.6, pp.538-542, 1995-11-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
15

当院脳神経外科入院患者の胆道系感染合併症につき検討した.829名のうち腹部エコーにて胆嚢炎・胆管炎と診断された12例を対象とした.男女比は11:1で,年齢は37〜73歳(平均57.8歳)であった.全例に発熱と肝胆道系酵素値の異常を認めた.腹部エコーにて胆嚢・胆管炎の診断が確定すると,ただちに抗生剤を投与した.11例は中等度以上の効果を示した.脳神経外科領域において胆道系合併症の存在はあまり注目されていない.発熱と肝胆道系酵素異常が診断上重要な指標となる胆嚢・胆管炎の合併は,頻度は低いが,腹部エコーによる早期診断と抗生剤による早期治療により,その予後も比較的よいといえる.
著者
山口 千仁 高橋 智紀 加藤 邦彦 新良 力也
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.174-181, 2021-04-05 (Released:2021-04-13)
参考文献数
19

アブラナ科根こぶ病などの土壌病害の防除には弱アルカリ性(pH 7.5程度)への土壌pHの矯正が有効である.土壌によってアルカリ資材添加に応じたpH上昇程度は異なるため,矯正に必要なアルカリ資材添加量の把握は煩雑で,より簡易な推定法が求められる.本研究では,東日本および北海道の水田土壌約230点にアルカリ資材として転炉スラグまたは消石灰を加え,土壌pH緩衝曲線を描いた.そして,この曲線を簡易なシグモイド曲線として数式化し,土壌pH緩衝能の指標である定数部分を,土壌調査によって知ることができるパラメータで表すことを試みた.定数部分を粘土含有量と全炭素含有量で表した回帰式の決定係数は転炉スラグで0.333, 消石灰で0.429だった.両含有量から推定したpH緩衝曲線に資材添加量を代入し算出されるpH値と実測値との関係を調べた.転炉スラグの場合,資材投入量がアルカリ分換算量で0.025~0.25 g/10 g乾土のとき,回帰式の決定係数は0.609–0.810と高く,この時のpHは酸性~弱アルカリ性に相当した.消石灰の場合,回帰式の決定係数が0.5より高いのは資材投入量がアルカリ分換算量で0.025~0.05 g/10 g乾土のときであり,pHは酸性~弱アルカリ性に相当した.このことから,作成した推定式は酸性改良や弱アルカリ性への土壌pH矯正に用いることができると考えられた.
著者
井藤 賀操 加藤 由佳梨 川上 智 榊原 均
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.710-713, 2011-08-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
28

ヒョウタンゴケの原糸体細胞の成長パターンを調査し,潤沢な培養条件では指数増殖期が認められたことから,本種が裸地環境へいち早く適応し繁茂できる生存戦略をもつ種類である可能性について意見を述べた.本種の乾燥粉末を利用した金属回収方法は,一般にカーボンニュートラルなプロセスとして分類される.私たちはさまざまな環境制御要因条件で原糸体細胞を生産し,鉛吸着材としての品質評価を実施した.400L規模に大型化した装置で生産した原糸体細胞においても,鉛吸着材としての十分な性能があることが確かめられた.したがって,私たちは,原糸体細胞を鉛回収するための新素材として位置づけ,産業利用できることを提案した.
著者
諏訪 僚太 中村 崇 井口 亮 中村 雅子 守田 昌哉 加藤 亜記 藤田 和彦 井上 麻タ理 酒井 一彦 鈴木 淳 小池 勲夫 白山 義久 野尻 幸宏
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.21-40, 2010-01-05 (Released:2022-03-31)
参考文献数
103

産業革命以降の二酸化炭素(CO2)排出量の増加は,地球規模での様々な気候変動を引き起こし,夏季の異常高海水温は,サンゴ白化現象を引き起こすことでサンゴ礁生態系に悪影響を及ぼしたことが知られている。加えて,増加した大気中CO2が海水に溶け込み,酸として働くことで生じる海洋酸性化もまた,サンゴ礁生態系にとって大きな脅威であることが認識されつつある。本総説では,海洋酸性化が起こる仕組みと共に,海洋酸性化がサンゴ礁域の石灰化生物に与える影響についてのこれまでの知見を概説する。特に,サンゴ礁の主要な石灰化生物である造礁サンゴや紅藻サンゴモ,有孔虫に関しては,その石灰化機構を解説すると共に,海洋酸性化が及ぼす影響について調べた様々な研究例を取り上げる。また,これまでの研究から見えてきた海洋酸性化の生物への影響評価実験を行う上で注意すべき事項,そして今後必要となる研究の方向性についても述べたい。
著者
中崎 聡 村山 隆司 加藤 真一
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.88-94, 2011-06-30 (Released:2016-01-30)
参考文献数
17

目的:メトトレキサートと低用量ミゾリビンパルス療法併用の有効性と安全性について後ろ向き研究にて検討した. 対象:2006年12月から2009年6月までの間に,メトトレキサート効果不十分例に低用量ミゾリビンパルス療法を追加併用したRA患者37名を対象とした. 方法:メトトレキサート内服時,同時にミゾリビン1回100mgから始めて,症例によっては150mgまで増量した.効果判定はCRPによる4項目DAS28(DAS28)のEULAR改善基準で行なった.DAS28のEULAR改善基準のmoderate response以上を満たしている症例のLUNDEXを計算した.また,ミゾリビンが有効だった一症例を示した. 結果:最終観察日のミゾリビン1回投与量は,100mg2名(5%),150mg35名(95%)であった.評価できた症例の内,DAS28のEULAR改善基準のmoderate response以上を満たしている症例は,1か月32名中28%,2か月36名中36%,3か月22名中36%,4か月20名中35%,5か月14名中43%,6か月14名中43%であった.LUNDEXは1か月24%,2か月35%,3か月25%,4か月22%,5か月20%,6か月21%であった.有効例としてDAS28を悪化させずに,プレドニゾロン10mg/日を3mg/日に減量できた症例を提示した.副作用中止例はなかった. 結論:メトトレキサートに低用量ミゾリビンパルス療法を追加併用することは,安全に実施できており,メトトレキサート効果不十分で生物学的製剤使用不可例に対する治療の選択肢の一つであると考えられた.