著者
北村 真理 中西 尋子 堀内 理恵
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.265-272, 2022-08-01 (Released:2022-09-17)
参考文献数
18

【目的】保育所から配付された印刷型,オンライン型の食育教材の家庭での活用状況を調べ,閲覧,活用に繋がる提供方法を検討する。【方法】A保育園に子どもが在籍する74家庭を対象とし,6種類の野菜の「含まれる栄養素」「保存方法」「新鮮さの見分け方」「レシピ」を紹介したオリジナルの食育教材をオンライン型と印刷型で配付した。介入期間は6週間とした。調査開始前にオリジナルの教材専用ホームページ(HP)へのアクセスに必要なQRコード,パスワードなどを記載した書面を園より配付し,閲覧をお願いした。1~3週目は前述のHPにオンライン型教材を1週間ごとに計3回アップした。4~6週目は印刷型教材を1週間ごとに計3回,園より配付した。介入終了後,配付した食育教材の活用状況についてのアンケート調査を実施した。【結果】教材の閲覧率は印刷型で93.7%,オンライン型で37.5%であった。印刷型教材の使用状況は理論値との間で有意な差がみられた。配付した食育教材の良かった点はオンライン型,印刷型ともに「閲覧のしやすさ」が一番多かった。印刷型教材の使いやすさは,紹介したすべての項目において,使いやすそう,使いやすかったと回答した人の割合が多く,理論値との間で有意な差がみられた。【結論】保育現場からの家庭向けに教材を作成し配付する際には,印刷型教材の利点を生かし提供することで,教材の閲覧率は高まると考えられた。
著者
酒向慎司 宮島千代美;徳田恵一 北村正
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.719-727, 2004-03-15

隠れマルコフモデルに基づく音声合成方式を歌声合成に拡張することにより構築した歌声合成システムについて述べる.本システムでは,歌い手の声の質と基本周波数パターンに関する特徴をモデル化するため,スペクトルと基本周波数パターンをHMMにより同時にモデル化している.特に,自然な歌声を合成するうえで重要な要素となる音符の音階や音長の基本周波数パターンへの影響を精度良くモデル化するため,楽譜から得られる音階と音長を考慮したコンテキスト依存モデルを構築している.これらのモデルに対して決定木によるコンテキストクラスタリングを行うことで,未知の楽曲からの歌声合成が可能となっている.実験から,歌い手の特徴を再現し歌声の合成が可能であることを示す.
著者
横山 友里 吉﨑 貴大 小手森 綾香 野藤 悠 清野 諭 西 真理子 天野 秀紀 成田 美紀 阿部 巧 新開 省二 北村 明彦 藤原 佳典
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.665-675, 2022-09-15 (Released:2022-09-10)
参考文献数
36

目的 食品摂取の多様性得点(DVS)は,日本人高齢者の食品摂取の多様性を評価する指標として,疫学研究や公衆衛生の現場において幅広く活用されている。一方,本指標は1990年代の開発以降,見直しが行われておらず,現在の日本人高齢者の食生活の実態を必ずしも十分に反映できていない可能性がある。本研究では,構成食品群の改訂による改訂版DVS(MDVS)の試作および妥当性の評価を行うことを目的とした。方法 鳩山コホート研究の2016年調査に参加した357人(年齢:76.2±4.6歳,男性:61.1%)を対象とした。DVSおよびMDVSは,各食品群の1週間の食品摂取頻度をもとに,ほぼ毎日食べる食品群の数を評価した。DVSの構成食品群は肉類,魚介類,卵類,牛乳,大豆製品,緑黄色野菜類,果物,海藻類,いも類,油脂類とし,MDVSの構成食品群は平成29年国民健康・栄養調査における65歳以上の食品群別摂取量のデータをもとに,主菜・副菜・汁物を構成する食品群の摂取重量および各栄養素の摂取量に対する各食品群の寄与率をもとに,その他の野菜,乳製品を追加することとした。栄養素等摂取量は,簡易型自記式食事歴法質問票を用いて調べた。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で推定平均必要量が定められている14の栄養素について,必要量を満たす確率およびそれらの平均を算出した。DVS,MDVSと各指標との相関分析および相関係数の差の検定を行った。結果 MDVSとたんぱく質エネルギー比率,脂質エネルギー比率,食物繊維,カリウム摂取量,改良版食事バランスガイド遵守得点との有意な正の関連がみられ(偏相関係数の範囲(r)=0.21-0.45),炭水化物エネルギー比率との有意な負の関連がみられた(r=−0.32)。また,MDVSと14の栄養素の必要量を満たす確率の平均との有意な正の関連がみられた(r=0.41)。これらの関連の程度はDVSとMDVSで同程度であり,相関係数の差は有意ではなかった。結論 栄養素摂取量や食事の質との関連からみた妥当性はDVSとMDVSで同程度であった。DVSの改訂にあたっては全国の大規模集団を対象に精度の高い食事調査を用いたさらなる研究が必要である。
著者
山本 条太郎 北村 朗 金城 政孝
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.125-131, 2019 (Released:2019-05-25)
参考文献数
34
被引用文献数
1

Fluorescence correlation spectroscopy (FCS) is a potential tool to measure the dynamics of fluorescent molecules, either in solution or in a cell. FCS can quantify the diffusion coefficient, the target molecule concentration, and brightness of a single molecule. These parameters allow estimations of the molecular size, the molecular shape, and the affinities of molecular interactions. Moreover, varieties of FCS methods have been developed on the concept of the fluorescence lifetime, triplet state, decrease of fluorescent intensity and toward two-dimensional imaging, in order to reveal the molecular interaction in live cell and molecular crowding.
著者
松井 照明 田島 巌 牧野 篤司 内藤 宙大 森山 達哉 渡邊 弥一郎 北村 勝誠 高里 良宏 杉浦 至郎 和泉 秀彦 伊藤 浩明
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.234-240, 2022-08-20 (Released:2022-08-22)
参考文献数
19

目的:ボンラクトⓇ iの原料である酵素分解分離大豆たんぱく(酵素分解SPI)は,熱処理と酵素処理により低アレルゲン化されている可能性があり,そのアレルゲン性を確認することを目的とした.方法:1.酵素分解SPI及びその原料のSPIのポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)及び免疫ブロッティングを行った.2.大豆アレルギー患者に対して皮膚プリックテスト(SPT),豆腐または豆乳とボンラクトⓇ iの経口負荷試験(OFC)の比較を行った.結果:1.SDS-PAGEではSPIよりも酵素分解SPIで全体に低分子化されたバンドが確認され,免疫ブロッティングではGly m Bd 28K及び30Kに特異的なバンドが検出されづらくなった.2.2/3例で,大豆と比較して酵素分解SPIのSPT膨疹径が小さかった.OFCでは3/4例でボンラクトⓇ iの症状誘発閾値たんぱく量が多く,全例で重症度が低かった.結語:ボンラクトⓇ iは低分子化されており,アレルゲン性が低いことが示唆された.
著者
北村 暁夫
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.291-319,343, 1993-07-25 (Released:2017-07-01)

From the 1870s to the beginning of the First World War, numerous emigrants left Calabria, southern Italy, for the American countries. A large number of them were young single men who had worked in the agrarian sector in Italy. This article examinens the causes of the peasant emigration and its effects on rural areas in Calabria, using emigration statistics and contemporary surveys of agrarian inquiries. The emigration began in the northern part of the mountains of Calabria. Tha peasants of these areas traditionally participated in a subsistence economy supplemented by domestic industry and seasonal employment, especially in the plains, where the cereal latifondo was under cultivation. But when the decline in domestic industry and the consequent decrease in employment opportunities was accelerated by the agrarian crisis of the 1880s, many peasants were compelled to emigrate abroad as an alternative to traditional employment. Most emigrants eventually returned home and purchased a piece of lands. This disproves the contention that the emigration led to a general proletarialization of the peasants. While returnees with a lot of savings were able to become independent farmers, those who had not saved enough were forced to emigrate again, often permanently. In this way, the emigration charged the traditional subsistence economy and polarized the peasant structure of the area.

1 0 0 0 OA ゆりわか大臣

著者
北村寿夫 文
出版者
講談社
巻号頁・発行日
1952
著者
山内 良太 北村 哲也 大西 史峻 渡邉 清孝 小西 克尚 大村 崇 太田 覚史 森 拓也 伊藤 正明
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.416-421, 2018-04-15 (Released:2019-05-09)
参考文献数
10

38歳男性.1998年(26歳)から意識消失発作,高血糖による入院歴がある.難聴や知能低下も認めたことから代謝性疾患が疑われ,乳酸値の高値とミトコンドリア遺伝子3243点変異からMELAS(Mitochondrial myopathy,Encephalopathy,Lactic Acidosis,Stroke-like episodes)の診断に至った.当初より心電図や心臓超音波検査では心肥大の所見を認め心筋症の合併が疑われていた.心肥大の精査のため施行された心内膜心筋生検で変性したミトコンドリアを認めたことからミトコンドリア心筋症と考えられた.明らかな心不全症状は認めなかったが,心臓MRI検査では前壁,側壁,下壁に遅延造影とT2強調画像で高信号を認めた.その後数年間にわたり画像検査でのMELASによるミトコンドリア心筋症の心肥大進行の経過を追うことができた.画像診断を用いた心不全を発症する前の早期からのミトコンドリア心筋症の報告は他に認めず報告する.
著者
和久井 健司 北村 真理 松田 蘭 小松 憲治 藤垣 順三
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.293-299, 2013-03 (Released:2013-12-26)

RAPD法により,日本圏内に自生のHemerocallis属内における種,変種および個体間の遺伝的変異を評価し,類縁関係を推定した。20種のランダムプライマーを用いたPCRで,248のバンドが検出され,そのうちの240(96.7%)のバンドで多型がみられた。多型データに基づくAMOVAの結果,遺伝的変異は種間に比べて変種間で小さく,同データによる主座標分析および平均距離法によるクラスター解析により,各変種について既知の分類を反映した配置が得られた。さらに,これらの分析によって,H.dumortieri var. esculenta内における低地タイプの個体群が遺伝的に区別可能であると共に,H.aurantiaca(ハマカンゾウ)およびH.fulva(ノカンゾウ,ヤブカンゾウ)の両種が遺伝的に近縁であることが示唆された。本研究は,DNAマーカーを用いて日本在来のHemerocallis属内における遺伝変異および類縁関係を示した最初の報告である。
著者
北村 敬
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.89-97, 1984-12-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
17
著者
増田 幸泰 中野 壮一郎 小玉 陽子 北村 智之
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101929, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに】 松葉杖は臨床において下肢骨折などにより免荷が必要な患者に多く用いられている歩行補助具の一つである.しかし,松葉杖免荷3点歩行(以下,松葉杖歩行)は不安定な歩行形態であり,臨床においても歩行獲得のための指導に苦慮するケースがみられる.松葉杖歩行には上肢筋力が関与しているとされ,動作解析やエネルギー消費など様々な検討が過去にもなされている.しかし,実際の臨床において松葉杖歩行を可能にするために必要な筋力以外の運動機能についての詳細な検討はあまりみられていない.そこで,本研究では松葉杖歩行に関与すると思われる運動機能として筋力に加えて,バランスや柔軟性,敏捷性などを検討することで,臨床における松葉杖歩行指導の一助とすることを目的とした.【方法】 対象は健常成人女性22名(29.0±5.5歳)とし,過去に松葉杖使用の経験がない者とした. 測定項目は松葉杖歩行,身長,体重,10m快適歩行と最大歩行の他に,筋力の指標として握力,等尺性膝伸展筋力,上体起し,柔軟性の指標として長座位体前屈,敏捷性の指標として棒反応テスト,バランスの指標として閉眼片脚立位時間とした.松葉杖3点歩行は利き足を免荷した状態での最大歩行を10m歩行路にて2回測定し,速度を算出した.快適・最大歩行速度についても同様に算出した.握力は握力計にて測定し,左右の平均値を体重にて補正した.等尺性膝伸展筋力はハンドヘルドダイナモメーターにて非利き足のみの測定を2回行い,最大値を体重で除した体重比(以下,下肢筋力)として算出した.上体起しは30秒間にできるだけはやく可能な回数を1回測定した.長座位体前屈は2回測定し,最大値を採用した.棒反応テストは5回の測定を実施し,最大と最小の値を除いた3回の平均値を算出した.閉眼片脚立位時間は非利き足が支持脚となるように立たせ,120秒を最大として2回測定し最大値を分析に用いた.統計学的分析にはピアソンの相関分析を用いて各項目の関連について検討をした.有意水準は5%未満とした.【説明と同意】 本研究の実施にあたり,事前に対象者に対して書面にて研究の目的,内容を説明し,同意の署名を得てから測定を実施した.【結果】 各項目の平均値は松葉杖歩行 76.4±22.0m/min,身長157.5±5.7cm,体重 49.2±4.5kg,握力0.6±0.1kg,上体起し16.4± 4.3回,下肢筋力 0.54± 0.14kgf/kg,長座位体前屈35.1±8.9cm,閉眼片脚立位時間55.6±43.5sec,快適歩行速度 83.8± 9.6m/min,最大歩行速度118.5±17.9m/min,棒反応テスト22.8±3.7cmであった.相関分析の結果,松葉杖歩行と握力r=0.59,上体起こしr=0.51,下肢筋力r=0.55,閉眼片脚立位時間r=0.52,最大歩行速度r=0.63の間で有意な正の相関を認めた(p<0.01).年齢r=-0.31,身長r=0.17,体重r=-0.36,長座位体前屈r=0.19,棒反応テストr=-0.33の間では相関を認めなかった.また,最大歩行速度との間では下肢筋力r=0.65,握力r=0.57,上体起こしr=0.54に有意な正の相関を認めた(p<0.01)が,その他の項目においては有意な相関を認めなかった.【考察】 本研究の結果,先行研究と同様に松葉杖歩行と上肢筋力の指標とした握力において有意な正の相関を認めた.また,上体起こしと下肢筋力の間においても有意な正の相関を認め,松葉杖歩行においては歩行に影響するとされる下肢筋力のほかに,体幹筋力の影響も考慮する必要があると考えられた.さらに,バランスの指標とした閉眼片脚立位時間においても松葉杖歩行との間で有意な正の相関を認めた.閉眼片脚立位時間は最大歩行速度との間では有意な相関を認めておらず,このことから,松葉杖歩行を安定してより速く行うためには筋力の他にバランス能力の影響を考慮する必要があると考えられた.これらのことから,松葉杖歩行を指導する前に,閉眼片脚立位時間や筋力の測定を行うことが有用ではないかと考えられた.しかし,今回の結果は健常成人女性のみの検討であり,今後は対象者の拡大や実際の患者での影響を検討していく必要がある.【理学療法学研究としての意義】 松葉杖歩行における筋力以外の運動機能の関係を示唆した結果となり,臨床において松葉杖歩行獲得の指標となる可能性を見出した.
著者
福嶌 教偉 藤田 知之 小川 真由子 北村 惣一郎
出版者
一般社団法人 日本臓器保存生物医学会
雑誌
Organ Biology (ISSN:13405152)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.29-36, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1

After the world first use of fresh aortic valve homografts transplanted into the descending thoracic aorta was reported in 1956, preservation methods have been investigated and the cryopreservation technique is currently used worldwide. In early 1990s, the cryopreservation technique for homograft was introduced to Japan and the local heart valve bank was established in Nara. Although organ procurement has been regulated by The Organ Transplantation Act (brain-dead donors since 1997, donors after cardiac death since 1979), there has been no law or governmental procurement network (except for cornea) in Japan. Since the late 1980s, some university hospitals have developed original banks. Finally, in 2001 guidelines for tissue procurement were established by The Japanese Society of Tissue Transplantation and Japan Tissue Transplant Network (JTTN) to coordinate tissue harvesting. Five tissue banks were joined to the tissue transplant network (skin in one, heart valves in two, and bone in two). In 2016, homograft implantation surgery was finally covered by insurance and the number of these surgery will increased in near future.
著者
北村 邦彦 喜多 威知郎
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.188, pp.315-322,a3, 1997-04-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
6

石川県内にある約3,000個のため池は, 大部分中山間地に分布しており, その80%が能登地域に占められている. そこで, この地域の4市町から17地区を抽出して水管理のアンケート調査を行った. その結果, ため池にはそれぞれ機能が定められており, 管理者はそれを有機的に結合して管理を行っている. 貯水容量高は平均231mm, ため池回転率は2~3回で集水流域からの流入に依存している. しかし, 渇水年では6月中旬までしか貯水を維持できない. 管理体制から平水年での利用水量を試算すると, それは需要量に相当する水量であり, 将来展望として新たに水源を確保する必要性のあることを提示した.
著者
谷口 葉子 加納 裕也 北村 太郎 三浦 敏靖 山田 健太郎
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001531, (Released:2021-03-25)
参考文献数
14
被引用文献数
5

症例は1ヶ月前に三叉神経第一枝領域の帯状疱疹をアメナメビル内服で治療された78歳女性.帯状疱疹後神経痛に対し入院治療中に左片麻痺が出現し,頭部MRIで右放線冠に急性期梗塞を認め転院した.発熱と意識障害がみられ,髄液検査と頭部造影MRIで帯状疱疹性髄膜脳炎と脳血管炎の合併と診断した.抗血栓療法に加えアシクロビル点滴とステロイドパルス療法で加療したが,意識障害が遷延した.アメナメビルは髄液移行性がほとんどないため,結果的に脳神経領域の帯状疱疹に対して不完全な治療となり,本例が重症化した経過に関連している可能性が示唆された.