著者
小川 夏美 Chau Bui Thi Bao 小林 誠 草野 都 粉川 美踏 北村 豊
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-23-00044, (Released:2023-08-08)

本研究では電動石臼を用いた湿式微粉砕機により調製したスパイスペーストの特性と香気成分放出挙動を明らかにした. コリアンダーシードからペーストを調製し, 粉砕回数および固形分比が粒子径や分離率に及ぼす影響を調べたところ, 粉砕回数を増やすことで粒子径は小さくなり, 分離率も減少することがわかった. 固形分比は粒子径に対して有意な影響を及ぼさなかったが, 固形分が増えることで分離率が減少し, ペーストの安定性が向上した. ペーストの蛍光顕微鏡画像からは, ペースト中に油滴が分散していることがわかり, 湿式粉砕によりコリアンダーシード中の油分が放出されていることが明らかになった. コリアンダーシードペーストの香気成分放出挙動を明らかにするために, ペーストを加熱した際にヘッドスペースに放出されたβリナロールおよびカンファーを定量し, 乾式粉砕したコリアンダー粉末と水を混合した粉末液と比較した. ペーストからの香気成分放出量は粉末液と比べて少なく, また分離率が低く, 安定性の高いペーストほど香気成分の放出量が少なかった. これらの結果から固形分や油滴の分散性やペースト特性が香気成分の放出挙動に影響を与える可能性が示された.
著者
池浦 弘 北村 義信 藤巻 晴行
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.85, no.10, pp.953-958,a2, 2017 (Released:2021-01-14)
参考文献数
9

ヨルダンでは降水量が少ないことに加え,国際河川からの取水量の制限,さらに近年の人口の急増による水需要の増加などにより水資源が逼(ひっ)迫している。ヨルダンの農業はヨルダン渓谷および比較的降水量が多い北部の高地などを中心に行われているが,農業分野は水配分の優先順位が最も低く,限られた水資源で農業生産の増加を達成することが求められている。このような水資源の需給状況と,2015年に国連の持続的開発目標が定められたことを背景に,ヨルダンでは2025年に向けた水戦略の改定が行われた。本報では,ヨルダンの水資源と水戦略について灌漑に関する事項を中心に紹介する。また,著者らが同国で調査した灌漑農業の現状と課題を述べる。
著者
坂口 裕亮 田中 宏 北村 雅彦 松本 有紀 中垣 佳浩 松倉 将史 川辺 朋美 中山 正成
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.76, no.8, pp.e193-e196, 2023 (Released:2023-08-05)
参考文献数
9

CT検査により脊柱管内を大きく占拠する石灰化した椎間板物質を認めた椎間板ヘルニアのミニチュアダックスフンド2症例に遭遇した.2症例ともに脊髄造影検査を実施したところ,神経徴候が悪化した.片側椎弓切除術にて,椎間板物質の摘出を試みたが,周囲組織と癒着しており摘出は困難であった.このことから,CT検査で認められた石灰化した椎間板物質は,脊柱管内で時間経過を経たものと考えられ,脊柱管内を大きく占拠する椎間板物質に長い経過で圧迫されている脊髄に対し,造影剤を注入することで脊髄障害を悪化させた可能性が考えられた.以上より,CT検査によって脊柱管内を大きく占拠する石灰化した椎間板物質を認める症例に対し,脊髄造影検査を実施する際には悪化の可能性を考慮する必要があり,また,手術法やその適応など十分検討が必要であると考えられる.
著者
北村 壽朗
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.21-28, 2018-01-25 (Released:2021-08-13)
参考文献数
19

相模川水系を水源とする神奈川県営水道では,貯水池である相模湖(相模ダム)や津久井湖(城山ダム)で繁殖した藻類が,浄水処理や水質に悪影響を及ぼす「生物障害」が問題となっている.これらの生物障害のなかで最も深刻なのは,かび臭による異臭味障害である.近年このかび臭障害が,上流の水源湖沼だけでなく,相模川本川で発生する事例が観察されている.本報では,相模川水系における異臭味障害について概説し,さらに,相模川本川中流域における湖沼性障害生物の繁殖事例と河床着生・付着藻類の調査結果について報告する.
著者
北村 啓
出版者
東京歯科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

近年の超高齢化に伴い、老化による運動機能低下が誤嚥を惹起する原因として問題になっている。申請者は献体を対象とした研究から、喉頭蓋谷の粘膜下が舌筋と喉頭蓋軟骨、それらを接合する腱により構成されていることを見い出した。この結果から、『老化による舌筋の器質的な変化 → 舌筋の筋力 低下による喉頭蓋の後傾 → 喉頭蓋谷後壁の平坦化』 という安静時の誤嚥の新たな 発症機序を考えた。本申請課題の目的は、加齢による舌筋ー腱ー喉頭蓋軟骨の形態変化が嚥下機能に与える影響を解明することである。また、喉頭蓋谷の加齢変化を基礎医学的に 解明することで誤嚥防止に貢献をし、健康寿命の延長にも波及効果があると考える。
著者
北村 俊郎
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.338-341, 2013 (Released:2019-10-31)
参考文献数
4

福島第一原発事故から2年が経過し,電力会社は防潮堤建設や非常用電源の増強などの対策を進めているが,それは主に直接的原因に対応するものである。国会事故調の委員長がいみじくも「メイドインジャパン型の災害」と評したが,今回の事故の背景には,日本社会に根ざす問題が多々存在する。事故は,この国の原子力開発の歴史の集大成であり,その過程でのさまざまな誤りの帰結と言ってよい。
著者
北村 新 大高 洋平
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.269-274, 2021-03-18 (Released:2021-07-03)
参考文献数
31
被引用文献数
1

リハビリテーション医療の過程では,活動量の増大と安全は常にトレードオフの関係にあり,いかに転倒を予防しながら患者の活動性を高めるかは重要な課題である.医療機関において,双方のバランスを保ちながら患者を支援していくうえでは,センサーやアセスメントツールを用いて未然に転倒や外傷を防ぐ「ブレーキ」の視点と,患者個人に起因する内因性リスクを調整しながら病棟単位で積極的に活動を促していく「アクセル」の視点が求められる.一方で,従来の医療安全対策の効果に関するエビデンスは少なく,機会費用を見直す必要があることも指摘されている.今後は,最新の科学技術を導入することで,より効率的な転倒予防の実現が期待される.
著者
白川 由佳 北 洋輔 鈴木 浩太 加賀 佳美 北村 柚葵 奥住 秀之 稲垣 真澄
出版者
日本生理心理学会
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
pp.2302si, (Released:2023-06-24)
参考文献数
59
被引用文献数
1

発達性協調運動障害(DCD)は,協調運動技能の獲得や遂行に著しい困難を示す神経発達症である。本研究では,DCDにおける協調運動障害の神経学的な機序の解明を目指し,遺伝子多型に基づく脳内DA濃度と,運動反応抑制に関わる神経活動の両者が,協調運動機能に及ぼす影響を検討した。成人97名を対象に,DA関連遺伝子多型,運動反応抑制にかかわる事象関連電位および協調運動機能を評価した。その結果,脳内DA濃度の高い場合には,協調運動機能の低下が認められなかった。一方で,脳内DA濃度の低さと運動反応抑制にかかる神経活動の低下が重畳する場合に,バランス機能の低下が認められた。これらの結果は,複数の要因が重畳した場合に,協調運動障害が顕在化する可能性を示唆するものである。
著者
須釜 淳子 石橋 みゆき 大田 えりか 鎌倉 やよい 才藤 栄一 真田 弘美 中山 健夫 野村 岳志 山田 雅子 仲上 豪二朗 佐藤 直子 柴田 斉子 長谷 剛志 深田 順子 三鬼 達人 有田 弥棋子 浦井 珠恵 大川 洋平 北村 言 臺 美佐子 高橋 聡明 玉井 奈緒 飛田 伊都子 野口 博史 松本 勝 三浦 由佳 向井 加奈恵 麦田 裕子 吉田 美香子 倉智 雅子 白坂 誉子 山根 由起子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.790-810, 2022 (Released:2023-03-10)
参考文献数
58

目的:本資料は,日本看護科学学会より公開した「看護ケアのための摂食嚥下時の誤嚥・咽頭残留アセスメントに関する診療ガイドライン」の要約版である.方法:本診療ガイドラインは,「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」に従い,研究エビデンスと益と害のバランス,患者の価値観などに基づき作成された.結果:身体診査技術を用いた系統的アセスメント,反復唾液嚥下テスト,改訂水飲みテスト,フードテスト,頸部聴診法,超音波診断装置による嚥下観察,内視鏡による嚥下観察に関するクリニカルクエスチョンをもとに,10の推奨が作成された.8つの推奨はGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)2Cとして評価され,残りの2つはGRADEなしとして評価された.結論:看護ケアのためのアセスメントに焦点を当て,最新の知見を盛り込んだ信頼性の高い診療ガイドラインが作成された.本資料は要約版であり,臨床実践への活用が期待される.
著者
水本 孝 北村 清明 高橋 裕子 為我 井道子 重森 恒雄 高田 久之 西島 克己 古川 裕夫 雑賀 興慶
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.283-289_1, 1983-02-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
22

症例は20歳の女学生で,大量の粘血便と腹部激痛を主訴として緊急入院した. 入院する半年前より峻下剤(sennosideA・B,12mg/錠)を服用しはじめた.発症の2日前に上記の下剤を一度に3錠も服用したが,軽度の腹痛を生じただけで排便しえず,発症の約6時間前に更に2錠用いた. 入院2日目に,緊急大腸内視鏡検査を行ったが,直腸から横行結腸の左半分の部位には全く異常がなく,右半分より盲腸に至る部分には広範囲に浮腫及び出血を伴う潰瘍または,びらん形成が見られた.あたかも潰瘍性大腸炎の激症型に酷似していた. 1943年,Heilbrunは下剤を長期間乱用している患者で,上行結腸を中心とした右側半分の大腸に好発する特殊な大腸炎を始めて報告し,cathartic colon(以下c.c.)と命名した. その後,多数の症例報告があるが,腸管の神経叢や筋組織までが変性崩壊し広範囲の不可逆的な病変を生じているのが通常であった. このような症例には最終的に,やむを得ず右側大腸半切除術等の外科的処置も行われるが,それでも充分の効果はなく,なお長期間にわたって腹痛や腹部不快感を訴える上に,低蛋白血症や血清電解質異常を来すものが多い. 著者らの症例は一過性で,便秘薬の服用を禁止し,食餌療法と抗生物質の投与で症状は速やかに軽快しはじめ,三週後の大腸内視鏡検査ではほとんど正常に戻っていた. 一方,cathartic colonはmelanosis coliとの関連性が問題になっているが,われわれの症例でもこれを認めた.われわれのような例もある故,慢性便秘症の患者が安易に下剤を乱用しないように戒しめたい.
著者
北村 友一 阿部 翔太 服部 啓太 山下 洋正
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.76, no.7, pp.III_121-III_130, 2020 (Released:2021-03-17)
参考文献数
22

本研究では,二次処理水を用いてゼブラフィッシュの胚・仔魚期の曝露試験を行い,ふ化率,生存率と網羅的遺伝子発現への影響,さらに,希釈およびオゾン処理による遺伝子発現影響の低減効果を調査した.二次処理水,オゾン処理水の曝露による遺伝子発現への影響レベルは,河川水の同様の曝露結果と比較した.その結果,二次処理水最大濃度(80%)においてもふ化率や生存率に影響は見られなかったが,遺伝子発現への影響は見られた.二次処理水の割合が減少するに従い,発現変動遺伝子数も少なくなることが確認された.二次処理水曝露により免疫,代謝,ストレス応答,シグナル伝達など様々な影響を受けていることが示唆された.二次処理水は10倍希釈,または,オゾン処理により,遺伝子発現への影響を河川水レベルまで低減できることがわかった.
著者
佐々木 裕一 北村 智 山下 玲子
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.17-33, 2021-09-30 (Released:2021-11-10)
参考文献数
25

本稿では,YouTubeスマートフォンアプリ利用者のアーキテクチャ利用のパターンを明らかにした上で,アーキテクチャ利用のパターンとアプリでの視聴時間および動画ジャンルの視聴頻度の関係を明らかにした。この課題に取り組んだのは,(1)インターネットサービスにおいてアーキテクチャが利用者行動に対して影響力を持ちうる,(2)個人同定と情報推奨というアーキテクチャが接触情報内容の幅を狭めるのか広げるのかという議論には決着がついていない,(3)高選択メディアにおいては視聴動画ジャンルの分断が生じうる,という主として3つの先行研究との関わりゆえである。動画サービス利用が進む中で,動画ジャンルレベルでの利用者行動についての実証研究が乏しいという背景もある。YouTubeアプリを過去7日間に1回以上利用した15〜49歳までの男女604名に対するWebアンケート調査を分析した結果,アーキテクチャ利用のパターンとして5つが確認され,この中でアプリ視聴時間の長いものは「全アーキテクチャ高頻度」群と「登録チャンネル」群であった。また動画推奨アルゴリズムが機能するアーキテクチャを高い頻度で利用する者が高頻度で視聴する動画ジャンルは「音楽」であること,登録チャンネルに重きを置いて利用する者において「スポーツ・芸能・現場映像」,「学び・社会情報」,「エンタメ」の3ジャンルの視聴頻度が平均的な利用者よりも低いことを示した。論文の最後では,この結果について議論した。
著者
杉本 明日菜 赤澤 友基 河原林 啓太 宮嵜 彩 上田 公子 北村 尚正 岩本 勉
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-11, 2018-02-25 (Released:2019-02-25)
参考文献数
17
被引用文献数
6

口腔筋機機能療法(Oral Myofunctional Therapy : MFT,以下MFT)は口腔周囲筋のバランスの調和をとることで,歯列・咬合の形態を正常に維持することや,咀嚼・嚥下・構音といった小児期の口腔機能の発達支援を目的として行われる治療法の1 つである。様々な訓練方法が提案されているが,個々の訓練の効果について検討された報告は少ない。そこで,今回当科で実施したMFT について一連の訓練を行い,かつ発表に際して同意の得られた20 名(男児15 名,女児5 名,平均年齢7 歳7 か月)についてその治療効果の検討を行った。 その結果,訓練前・後で比較して口唇閉鎖不全のある児は55%から35%,嚥下時舌突出のある児は100 %から50%,構音時舌突出のある児は95%から60%に減少し,改善がみられた。とくに嚥下時舌突出と訓練法の1 つである「スラープスワロー」との間に相関を認めた。しかし,訓練が達成できていても機能の改善が十分でない児もおり,さらなる訓練法や訓練時期の検討が必要であると考えられた。 様々な分野で口腔機能が注目されているが,とりわけ小児期での口腔機能の獲得は生涯を通じての健康に非常に重要な意味をもつ。本調査では20%の児は形態的な問題を有しておらず機能面の問題のみを呈していた。こうした児についても積極的に介入し口腔機能を向上させることは将来の健康寿命延伸に有意義である。そのため,小児の発育・発達に沿った訓練を構築し,口腔機能獲得の支援法として提案することが必要である。
著者
横山 友里 清野 諭 光武 誠吾 西 真理子 村山 洋史 成田 美紀 石崎 達郎 野藤 悠 北村 明彦 新開 省二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.752-762, 2020-10-15 (Released:2020-12-23)
参考文献数
38
被引用文献数
1

目的 「運動」「栄養」「心理・社会参加」を柱としたフレイル改善のための複合プログラムへの参加がその後の要介護・死亡発生リスクや介護費に及ぼす影響を,傾向スコアマッチングを用いた疑似実験的デザインにより検証した。方法 鳩山コホート研究参加者742人のうち,2011年度(47人)と2013年度(30人)に開催した3か月間のフレイル改善教室のいずれかの年度に参加したフレイルまたはプレフレイルの計77人を介入群とした。不参加群は,鳩山コホート研究参加者の中から,介入不参加者(介入対象外であった者のほか,介入対象であったものの,教室参加を拒否した者を含む)を対象に,傾向スコアを算出し,介入群との比を1:2としてマッチングすることにより,設定した。傾向スコアで完全にマッチングできた対象者は介入群70人,不参加群140人,計210人であった。住民異動情報・介護保険情報を突合し,32か月間(教室終了後24か月)の追跡による要介護(要支援含む)・死亡発生リスクをCoxの比例ハザードモデルを用いて算出した。また,ガンマ回帰モデルを用いて介護費の比較を行った。結果 要介護の発生率(対千人年)は介入群が不参加群に比し,有意ではないものの低い傾向を示し(介入群:1.8 vs.不参加群:3.6),不参加群に対する介入群の要介護認定のハザード比と95%信頼区間(95%CI)は0.51(0.17-1.54)であった。また,介入群と不参加群の間で介護費発生の有無に有意な差はみられなかったものの,介護費については,受給者1人あたりの追跡期間中の累積の費用,1か月あたりの費用の平均値はそれぞれ,介入群で375,308円,11,906円/月,不参加群で1,040,727円,33,460円/月と介入群では約1/3の低額を示し,累積の費用(コスト比=0.36, 95%CI=0.11-1.21, P=0.099),1か月あたりの費用(コスト比=0.36, 95%CI=0.11-1.12, P=0.076)ともに,不参加群に比べて介入群で低い傾向がみられた。結論 本研究では統計的な有意差は認められなかったものの,フレイル改善のための複合プログラムの実施により,その後の要介護発生リスクおよび介護費を抑制できる可能性が示された。今後,より厳密な研究デザインによるさらなる検証が必要である。