著者
藤由 崇之 北村 充広 小田切 琢磨 蓮江 文男 神谷 光史郎 牧 聡 古矢 丈雄 大鳥 精司 国府田 正雄 山崎 正志 小西 宏昭
出版者
一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
雑誌
Journal of Spine Research (ISSN:18847137)
巻号頁・発行日
vol.11, no.10, pp.1163-1168, 2020-10-20 (Released:2020-10-20)
参考文献数
9

K-line(+/-/+)型OPLL症例に対し,椎弓形成術(LMP)に局所固定を最大圧迫高位レベルに追加する術式(sPDF)は有用であるかどうか調査するためにLMP群とsPDF群の術後成績を傾向スコアマッチング法にて比較検討した.全29症例中,それぞれ7例ずつマッチングした.JOA改善率と獲得点数はsPDF群で有意に高く,術後成績は改善していた.K-line(+/-/+)症例に対し,椎弓形成術に局所固定を最大圧迫高位レベルに追加する方法は有用な術式であると思われる.
著者
山田 玲子 石川 保茂 宮森 吉昌 山田 恒夫 山本 誠子 水口 志乃扶 立石 浩一 伊庭 みどり 北村 美里 江口 小夜子 楊 シュイ 飯野 義一
出版者
株式会社国際電気通信基礎技術研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

音韻、語彙、構文といった様々な要素に分けて外国語の学習実験を行う環境を構築し、要素間の相互関係、特に学習の順序効果を調査した。その結果、同一処理レベル内では順序効果はなかったが、処理レベルが異なる音韻学習と語彙学習の間で有意な順序効果があり、学習初期段階に低次処理を習得することの重要性が示された。この結果に基づき、低次から高次へと習得していく「ボトムアップメソッド」を学習モデルとして提案する。また、その学習モデルの効果を最適化するためのカリキュラムモデルとして「反転学習の概念モデル」を作成し、効果があることを確認した。さらに、学習解析の手法で個別に最適化する方略について整理、考察を行った。
著者
北村 陽子
出版者
政治経済学・経済史学会
雑誌
歴史と経済 (ISSN:13479660)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.2-11, 2018-04-30 (Released:2020-04-30)
参考文献数
37

This article focuses on the development of family relations in Germany during and after the Second World War in terms of care for war victims. Frankfurt am Main (Frankfurt) offers good case study because of its character as a commercial city and a city that had been industrialized (chemicals, metals) since the end of the nineteenth century.The Nazi‒government adopted the policy called “Lebensraum” (living space) to maintain sufficient food supplies for the Aryan Nation for the coming war. They occupied Europe from France to Ukraine and from Denmark to Greece, and seized food, materials and people in those areas as a labour force. Their policy on race caused the mass movement of people (especially Jews) from all over Europe to concentration camps and after 1942, to extermination camps. The Jewish prisoners and civil forced labourers were compelled to work in factories in German cities including Frankfurt.During the war, as Allied bombardment of German cities became more severe, children and mothers were evacuated from the cities. In many cases, each family member was alone in a different site - father at the front, children in the countryside, mother in the city, elder brothers and sisters in the suburbs working at munitions factories. Fathers who returned home with injuries could take a one‒year course to learn the skills needed for a new job. However, only a few disabled veterans acquired new jobs after their discharging. Fathers became deeply depressed when they found themselves without jobs. They became short‒tempered with other family members or withdrew into themselves, becoming unable to draw empathy from their children.After the Second World War, about 12 millions people were on the move across Europe, including forced labourers and concentration camp and extermination camp prisoners returning to their countries, the Volksdeutsch who'd been expelled from their homes, and refugees from Eastern Europe. With many people returning to their homes and many others going to new places, the population of German cities rose dramatically. Under these circumstances, the food supply was not functional and ration systems were still in place.Disabled veterans continued returning home until 1948. They had access to vocational training courses, though, as in the situation during the war, very few of them acquired new jobs. Since they could not communicate rery well with their family members after their long absence, the divorce rate rose until 1950. The war left invisible scars in people’s minds.
著者
春日 遥 大橋 真智子 山本 将隆 小西 祐輔 北村 春菜 池田 宥一郎 村井 貴
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1_30-1_35, 2021-03-31 (Released:2021-03-19)
参考文献数
11

「アニマルめがねラボ」は小学3年生から中学3年生までを対象にした、バーチャル・リアリティ映像作品を用いたサイエンスコミュニケーションイベントである。子どもには難しい「動物の視覚」を題材に、バーチャル・リアリティによる直感的理解だけではなく、場のデザインにより教育効果を高める工夫を行った。多様な動物に実際に会える動物園という場の相乗効果を狙った開催場所の選定や、架空の研究所「アニマルめがねラボ」としてディティールにこだわった場の演出を行った。イベントに参加した子ども達は「リクガメとヌマガメの視力」、「イヌとネコの色覚」、「ヤモリとカエルの動体視力」の3つのブースを通して、多様性に富む生き物の視覚を学習し、更なる学習への意欲や動物への関心を得た。
著者
磯 直樹 香川 めい 北村 紗衣 笹島 秀晃 藤本 一男 藤原 翔 平石 貴士 森 薫 渡部 宏樹 知念 渉
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、現代日本における文化と不平等の関係を、「文化がもたらす不平等」と「文化へのアクセスの不平等」という観点から、理論的かつ経験的に社会学の観点から分析する。すなわち、①文化が原因となる不平等とは何か、②文化資源の不平等な配分とは何か、という2種類の問題を扱う。これらの問題を研究するために、理論的には社会分化論として文化資本概念を展開させる。社会調査としては、関東地方で郵送調査とインタビュー調査を実施し、調査で収集されるデータを、多重対応分析の特性を活かした混合研究法によって分析する。
著者
北村 宏 松村 任泰 中川 幹 松下 明正 荒井 正幸 小池 祥一郎 大谷 真紀 中澤 功
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1-7, 2021-01-01 (Released:2021-01-14)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

症例は66歳男性.大腸癌に対する5-FUをベースとした全身化学療法中(FOLFILI+パニツムマブ)に食欲不振,倦怠感と急激な腹水の貯留を認めた.血液生化学所見では肝逸脱酵素の上昇と低アルブミン血症,PTの低下を認めた.画像診断では著明な脂肪肝を認め薬物性の肝障害,脂肪肝と考えられた.薬物の中断,利尿剤の投与等を行ったところすみやかに症状,肝機能の改善,腹水の消失,画像上の脂肪肝の消失を認めた.発症1年前の肝切除標本においては背景肝に脂肪化,肝細胞障害,線維化,炎症所見等は認めなかった.発症2カ月前のCTにおいても肝臓に異常所見を認めなかった.3回の肝切除後の肝容積の回復は良好で5年9カ月の全経過の後,間質性肺炎で死亡するまで肝転移の再発は認めなかった.臨床経過からイリノテカンを被疑薬とする薬物性急性脂肪肝と考えられた.
著者
益田 快理 Le Van Lich 嶋田 隆広 北村 隆行
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.85, no.876, pp.19-00175, 2019 (Released:2019-08-25)
参考文献数
26

Ferroelectric behavior in mechanically strained SrTiO3 nanoporous is investigated using phase-field models. We find, in the paraelectric nanoporous, periodically arrayed ferroelectric nano-region is formed due to strain concentration, namely, polarization vortices emerge around each pore. Each ferroelectric region expands and connects each other with increasing strain, and ferroelectric network is finally formed. Since these ferroelectric regions can be regarded as a periodically arrayed ferroelectric nanomaterial embedded in a paraelectric material, this result means that periodically arrayed ferroelectric nanostructure, which may lead to novel functionalities, can be tailored through mechanical load. In addition, we find that the variation of load changes the geometrical characteristics of the ferroelectric structure such as shape and direction. Our finding provides a new concept to engineer future ferroelectric nanodevices by giving a new role to mechanical load.
著者
梅谷 智弘 的場 瞳 榎本 佐知子 陸 鳴宇 北村 達也
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集 2022 (ISSN:24243124)
巻号頁・発行日
pp.1P1-Q01, 2022 (Released:2022-12-25)

This paper describes a rapid development of a support robot system for a librarian service desk using a tabletop communication robot. It is important issues that the remote operation of the librarian service desk for the convenience of the visitors and the efficiency of the librarians. We developed a robot system that interacts with high accuracy and low latency in a short period of time using a cloud service for speech recognition and synthesis functions. We conducted participant experiments for tasks for the librarian service desk to evaluate the developed robot system. Experimental results showed the feasibility of the developed systems.
著者
星野 翔太 島居 傑 北村 伸哉
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.86-90, 2022-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
19

80歳代女性。最近の野山への外出歴あり。某日に発熱し, 近医受診のうえで経過観察となっていたが, 発症8日後に呼吸苦, 意識障害を呈したため, 当院救急搬送となった。来院時, ショック, 下顎呼吸, 昏睡を認め, 体幹部に皮疹と下肢に刺し口を疑う血疱も認めた。病歴と身体所見からリケッチア症を疑い, 塩酸ミノサイクリンを含む抗菌薬投与を開始した後, 集中治療室での治療を行った。しかし, 治療開始後も全身状態は不良であり, 電撃性紫斑病の合併も認め, 入室3日後に死亡した。同日, Rickettsia japonica PCR陽性が判明し, 本症例は日本紅斑熱であったことが確定した。同疾患は治療が遅れた場合, 本症例のように重篤な経過をたどる場合がある。日本紅斑熱患者の治療では, 適切な診断や早期治療が重要と考えられた。
著者
石井 僚 原田 雅也 松木 莉奈 川島 実紗 北村 紫織 高橋 麻緒 豊田 昂
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.457-466, 2020-03-20 (Released:2020-03-30)
参考文献数
57
被引用文献数
2

本研究の目的は,情報モラルの教示に合わせて集団もしくは個人アイデンティティを強化することが,SNS 上の否定的文脈への同調を抑制するか,パーソナリティ要因としての同調的対人態度を統制した上で検討することであった.実験協力者である大学生114名を情報モラルの教示と集団アイデンティティの強化を行う集団アイデンティティ強化群,情報モラルの教示と個人アイデンティティの強化を行う個人アイデンティティ強化群,教示や強化を行わない統制群に分け,場面想定法を用いた質問紙実験を行った.その結果,情報モラルの教示を行っても集団アイデンティティを強化された場合にはSNS における否定的文脈への同調は抑制されないこと,個人アイデンティティを強化された場合には場面によって同調が抑制されることが明らかとなった.情報モラル教育は,SNS の持つ状況的特徴が同調を抑制しづらくすることに配慮して行う必要があることが示唆された.
著者
北村 理依子
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2015-04-24

本年度は、人権の普遍性の議論を研究対象とした。人権の普遍性に関連する議論は複数あるが、そのうち本研究が扱うのは、普遍主義と文化相対主義の対立である。普遍主義は、人権の普遍性は人権それ自体に埋め込まれているものであり、その主たる理由は、人権の骨子である平等性から人権を持つ者は国・地域に拘らず同様の人権を持つことが導かれるため、というものである。その中核には、人間の尊厳、平等という概念が存在する。一方、文化相対主義は、国際文書に示された人権規則は、各国の歴史、宗教、文化および種族構造を考慮に入れた上で解釈・適用されなければならないとする。こうした対立は、人権の普遍主義が国際文書の形で登場したときから現実に看守できる。国際文書における人権の普遍性に関連する文書として挙げられるのが、1993年のウィーン宣言である。同宣言は人権の普遍性および不可分性を謳うものであり、多くの国に支持を受けて採択された。一方、この前後にバンコク宣言およびクアラルンプール人権宣言がそれぞれ採択され、アジアの基本的な人権観がまとめられた。人権の普遍性との関連でいえば、ここでは、人権は国家的及び地域的特殊性と、様々な歴史的、文化的、宗教的背景に留意しなければならない旨が述べられている。このように対立しているように見えるが、理論的にはこの対立は解消されている。すなわち、人権の普遍性はCONCEPTの段階では認められるが、CONCEPTIONおよびIMPLEMENTATIONの段階では相対性が認められるということである。CONCEPTの段階で普遍性を保つのは、機能的要請から、つまり脆弱な個人を組織的な社会の脅威から保護するために必要であるからであり、また現実に多くの国が人権という概念の存在を認めているからである。さらに、現実に内容が普遍的な人権もあると主張される。このように、両者が歩み寄る形での理論が優勢である。
著者
白山 靖彦 北村 美渚 伊賀上 舞 木戸 保秀
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.172-177, 2021-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
16

脳損傷により高次脳機能障害を呈した場合, 認知能力とともに, 意思決定能力も低下すると考えられている。意思決定能力とは, 自分の意思を伝えることができること, 関連する情報を理解していること, 選択した理由に合理性があることとされており, 医療同意能力や判断能力を包含する。しかし, 意思決定能力を定量・客観的に測定する指標は未だなく, 意思決定支援の定式化には及んでいない。したがって, 多職種による合意形成や, 質問方法の工夫といった支援者側のスキルが求められることになる。  本稿では, 高次脳機能障害者の医療と福祉における意思決定支援に関して, それぞれの立場におけるポイントを概説し, これまで行ってきた研究の一部を紹介する。
著者
大瀧 悠嗣 北村 勝誠 松井 照明 高里 良宏 杉浦 至郎 伊藤 浩明
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.490-498, 2022-12-20 (Released:2022-12-20)
参考文献数
15
被引用文献数
2

目的日本の小児における木の実類アレルギーの増加が報告されているが,小児の救急受診患者の背景や誘発症状を検討したものはなく,当センターにおける状況を分析した.方法2016年2月~2021年10月に木の実類の即時型症状で救急外来を受診した29例(27名)について,原因食物,患者背景,誘発症状,治療を診療録から後方視的に検討した.結果原因はクルミ12例(10名),カシューナッツ12例,マカダミアナッツ3例,アーモンド1例,ペカンナッツ1例で,年齢中央値は3歳であった.15例がアナフィラキシー,うち5例はアナフィラキシーショックであった.13例がアドレナリン筋肉注射,うち1例がアドレナリン持続静脈注射を要した.11例が入院し,うち3例は集中治療室へ入院した.初発は22例で,そのうち14例が他の食物に対する食物アレルギーを有していた.結語木の実類アレルギーの救急受診患者は,年少児がアナフィラキシーで初発した事例が多かった.予期せぬ重篤事例を未然に防ぐため,何らかの医学的及び社会的対策が望まれる.
著者
小久保 卓 小山 聡 山田 晃弘 北村 泰彦 石田 亨
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.1804-1813, 2002-06-15

いまやインターネットは現代社会の中に急速に浸透しており,そのサービスの中でも特にWWW(World Wide Web)は新しいメディアとしてその情報量を増大させている.しかしながら最も一般的なWWW情報検索手法である検索エンジンは,必要な情報を得るためにある程度の知識や経験が必要とされ,多くの初心者にとって使いこなすのは容易ではない.こうしたWWW情報検索における問題の解決法の1つとして,ドメインを限定した専門検索エンジンの提供があげられている.そこで本論文では専門検索エンジンを構築するための新しい手法として``検索隠し味''を用いた手法を提案する.これはユーザの入力クエリに対しある特定のキーワードを追加すると,汎用検索エンジンの出力のほとんどがドメインに関係するWebページとなるという経験則を利用したものである.そして機械学習の一種である決定木学習アルゴリズムを元にWebページ集合からキーワードのブール式の選言標準形として検索隠し味を抽出するアルゴリズムを開発した.さらに本手法を料理レシピ検索に適用し評価実験を行うことで,その有効性の確認を行った.
著者
福嶋 忠昭 北村 利夫 村山 秀樹 吉田 敏幸
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.685-694, 1991 (Released:2008-05-15)
参考文献数
19
被引用文献数
10 12

渋ガキ'平核無'を用い, エタノールによる脱渋機作を種々の観点から検討した. 結果は以下のとおりである.1. デシケータ内に果実を入れ, ふたをずらして開口部を設けて35%エタノールまたは5%アセトアルデヒド処理を施したところ, 両処理区とも果実内のアセトアルデヒド含量は4日目まで同じような値を示したにもかかわらず, エタノール処理の方がアセトアルデヒド処理より早く脱渋した。2. 乾熱果または煮沸果を種々の濃度のアセトアルデヒド溶液に2日間さらし, 果肉内のアセトアルデヒド含量と脱渋量の関係式を求めた. これをエタノール処理中の果実に適用すると, アセトアルデヒドの非酵素的作用だけで脱渋するには, 果実内に存在するアセトアルデヒドの量が著しく少なかった.3. エタノール処理の果肉組織の浸透圧と水不溶性物質の保水能は増加する傾向があった. その程度は脱渋速度が大きい処理2~4日で著しかった.4. 煮沸果を90°C下で乾燥すると, 目減りが増加するとともに浸透圧が増加し, 可溶性タンニン含量が減少し, 12時間後にはアセトアルデヒドの発生が認められなくても完全に脱渋した.5. エセホンやIAAを組織切片に与えても脱渋が認められ, IAAをへたに浸潰し放置して置くと果実は完全に脱渋した.以上の実験を踏まえて考察した結果, エタノールによる脱渋は, 処理によって生ずるアセトアルデヒドの非酵素的作用による水溶性タンニンの不溶化によるのみならず, エタノールによって誘導される細胞壁多糖類の分解がタンニン細胞周辺組織の浸透圧の上昇を招き, その結果タンニン細胞中の水が脱水され, 接近したタンニン分子が水素結合や疎水結合により巨大分子となって脱渋するものも相当あると推察された.
著者
北村 晃寿
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

1771年八重山地震に伴う八重山津波は,石垣島を中心に先島諸島全域にわたり,1万2千人の犠牲者と甚大なる被害を与えた.その最大遡上高は30mと推定され,2011年の東北地方太平洋沖地震の津波の発生まで,日本の歴史上,最大の津波とされていた.この八重山津波とそれ以前の大津波の痕跡として,「サンゴからなる津波石」や「遺跡を覆う石灰質の砂質津波堆積物」が報告されていた.最近,静岡大学防災総合センター客員教授の安藤雅孝氏が,石垣島の丘陵地で,人為改変から免れた砂質津波堆積物の“埋蔵地”を発見した.そこのトレンチ調査では, 4つの津波堆積物(上位から津波堆積物I,II,III,IV)が識別され,それらの年代は,西暦1950年を基準として,248年前以降,920–620年前,1670–1250年前,2700–2280 から1670–1250 年前である(Ando et al., 2018, Tectonophysics, 722, 265-276).I,II,IVは石灰質砂からなり,陸側末端まで追跡できたので,末端高度(それぞれ9 m,6 m,8 m)を確定できた.津波堆積物Iは1771年八重山津波の津波堆積物で,末端高度(9 m)は古文書と一致する.津波堆積物I直下の土壌層には,複数の地割れが発見され,八重山地震では激しい地震動のあったことが裏付けられた.津波堆積物I,II,IVは貝化石を産し,それらの種組成から津波発生時にサンゴ礁の礁嶺が存在していたことが分かった(Kitamura et al., submitted).津波堆積物IIIは埋没津波石で標高1 mに見られる.津波堆積物IVの年代値の確定が不十分などの問題があり,追加の調査が望まれる.
著者
三浦 要一 北村 眞一 花岡 利幸 清水 浩志郎 木村 一裕
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.499-504, 1990-10-25 (Released:2020-07-01)
参考文献数
13

THE STUDY DEALS WITH THE CASE OF THE COMPREHENSIVE DEVELOPMENT PLAN FOR THE CITY OF AKITA. THIS MASTER PLAN WAS MADE ORIGINALLY AND SYSTEMATICALLY IN 1954 FROM THE SURVEY OF THE ACTUAL CONDITION OF CITY WITHOUT USING STANDARDS OF THE CITY PLAN. THE PLANNING WAS SUCCEEDED IN REMOVING GOVERNMENT OFFICES FROM CENTRE TO SURBURBIA AND STRUCTURING THE CITY AXIS. BUT THE HOUSING AREAS HAS SPREAD OVER THE SURBURBIA OF AKITA.
著者
小泉 寛之 北原 孝雄 北村 律 中原 邦晶 今野 慎吾 相馬 一亥 隈部 俊宏
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.63-68, 2014-02-15 (Released:2014-06-10)
参考文献数
16

補助人工心臓(ventricular assist device: VAD)は,末期心不全症例に対して心臓移植までの橋渡しとして臨床的に有用であることが知られている。我々はVAD装着中に脳出血を合併した1例を経験したので,その管理と問題点について報告する。症例は41歳の女性。当院循環器内科で拡張型心筋症と診断され,内科的治療を受けるも心不全の増悪を認めたため,心臓移植までの橋渡しとして心臓血管外科にて体外型両心VAD装着が行われた。装着から約3か月後,嘔吐,軽度意識障害を認めた。頭部CTを施行したところ,左前頭葉皮質下出血を認めた。当院のVAD 患者の脳出血時のプロトコールに従い,ビタミンK10mgを静注し,新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma: FFP)5U,遺伝子組換え血液凝固第IX因子製剤(ノナコグアルファ)1,000IUを投与してプロトロンビン時間(PT)の国際標準比(international normalized ratio: INR)の正常化を行った。 しかし意識障害の悪化と右片麻痺を認めたため,緊急開頭血腫除去術および外減圧術を施行した。術後創部出血,頭蓋形成時の硬膜外血腫を合併したが,神経学的脱落症状は改善(modified Rankin Scale 0)し,心臓移植待機となった。本邦ではVAD症例は増加傾向にあり,それに伴うVAD装着中の脳出血も増加することが予想される。そのため脳神経外科医もVAD治療やそれに関する諸問題について正確な知識を持ち,脳血管イベント発生時には治療および患者家族への対応など関連科と協力して速やかに応じられる体制作りが求められる。