著者
水原 克敏
出版者
日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.519-526, 2002-12

Tohoku University System Committee completed an interim report on the new system plan in preparation for the new university administration system as an "Independent Administrative Institution".The report was submitted to Tohoku University Council on Septemper 24, 2002.The resposes to the interim report from all the departments are to be presented to the Tohoku University Counsil in October, and the final reprt is scheduled for completion by March 2003.University regulations will have been put together by May when the bill was laid bedore the Diet in May.The structure of this thesis is as follows:(1)the system of the decision making of the entire Tohoku University (the president, director association, counsil, management conference, and dean conference) and (2)the system of the decision making within each department (dean, management conference , and faculty meeting) and (3)the collective system of the clerical office staff and (4) the personnel management and the performance ralated payment, and (5)the prpblems to be solved.The emphasis is placed upon the integration of the following three elements:(1)the leadership of theoresident and the associated directors,(2)the democracy within Tohoku University, and (3)outsider's opinions.The approach to the issue of how best the above three elements are to be integrated will decide the course hat Tohoku Univeristy will follow to make its advancement.The second issue is the decision making orocess in each department.Whikr the management conference which assist the dean eill be newly established, the relation between the management conference and the faculty meeting is rather vague.It is likely that the that the management conference will take part in most of the decision making process within each department, which signifies that the role of the faculty meeting become less important.The third issue is the consolidation of the clerical work organization.On one hand the colletive clerical work organization will improve its efficiency.On the other, the the existing friendly relations between clerical staff and a department will be weakened.However, this kind of drawback is probably inevitable.The fourth issue is the personnel management, and the performance related payment.It is agreed that the system of deciding the payment in accordance with seniority has to be abolished.Neverthless, it is difficult to evaluate the performance in terms of research, which remains a problem to be solved.Above all the issues discussed in this paper however , what is important is the implementation of the new university administration based on the new principles.
著者
三好 隆行 石原 克之 中村 和哉 古賀 秀徳
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.277-282, 2006-10-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
16

A study was conducted to determine how frying slices of potato would enhance the antioxidative activity. The content per unit weight of such antioxidants as L-ascorbic acid and chlorogenic acid in raw potato was nearly doubled when the slices were fried. Ultrafiltration of the water-soluble extract taken from the potato chips revealed the medium moleculare weight fraction of 3,000 to 20,000 to have high anti-oxidative activity, although the amount was small. This medium moleculare weight fraction had a strong brown color, due to melanoidin. There was a large amount of the fraction with a molecular weight of less than 3,000, and this fraction contributed 91% of the total antioxidative activity. It appears that chlorogenic acid and melanoidin were responsible for the antioxidative activity of this low molecular weight fraction.The DPPH radical scavenging activity of 19 kinds of potato snack foods was compared. There was higher activity in the potato chips made from raw potato than in those that had been more highly processed.
著者
石原 克之 奈良 一寛 米澤 弥矢子 星野 文子 有馬 正巳 古賀 秀徳
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.32-37, 2009 (Released:2015-02-27)
参考文献数
14

炭水化物を多く含む食品を高温で加工された食品中からアクリルアミド(AAm)が検出されたと2002年4月にスウェーデンの研究者により発表された。その後,種々の加熱加工食品中に存在していることが明らかとなった。しかしながら,加工食品同様に食材に加熱加工を施す家庭での調理食品についての検討はあまりなされていない。そこで,家庭での調理食品に着目して調査を行った。種々の加熱調理食材にAAmが認められ,含有量の高かったのは,もやし,次いでにんにくであった。また,食材中のアスパラギン(Asn)含量と加熱後のAAm含量との間に強い相関(R2=0.66)が見られた。しかし,Asn含量が低くても加熱が強いとAAm含量が高くなる可能性があることが分かった。このことから,家庭での調理においても過度な加熱調理を避けることでアクリルアミド生成が抑制されることが示唆された。
著者
中川 博雄 松田 淳一 栁原 克紀 安岡 彰 北原 隆志 佐々木 均
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.8-12, 2011 (Released:2011-04-05)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

消毒剤の効果の要因の1つは,微生物と薬液の接触時間に依存する.そのため,速乾性手指消毒剤のゲル製剤およびリキッド製剤をそれぞれ3 mL擦り込んだ場合,ゲル製剤の方が長い時間を要することから,ゲル製剤はリキッド製剤に比べ,少ない擦り込み量で十分な擦り込み時間と消毒効果が得られる可能性が考えられる.本研究では0.2 w/v%クロルヘキシジングルコン酸塩含有エタノールゲル製剤の擦り込み量を変えて,リキッド製剤と消毒効果を比較検討した.その結果,ゲル製剤は1 mLでリキッド製剤3 mLと同等の効果を示した.さらに16種類のゲル製剤およびリキッド製剤について,揮発による重量変化率を測定した.ゲル製剤はリキッド製剤に比べて重量変化率が低く,粘度との間に相関を示した.
著者
上田 泰之 田中 洋 亀田 淳 立花 孝 信原 克哉
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】投球障害肩の治療・予防を考える上で,投球動作中の肩関節に加わる力学的ストレスを3次元的に求め,それに関連する運動学的・動力学的因子を検討することが重要である。これまで投球動作中の肩関節に加わる圧縮力については検討されているが,それ以外の前後方向・上下方向への力学的ストレスついてもそれらに関連する因子を検討する必要がある。本研究の目的は,投球動作中の肩関節に加わる圧縮力,前後方向および上下方向の力学的ストレスに影響を与える運動学的・動力学的因子について明らかにすることである。【方法】対象は次の条件を満たす中学・高校生の野球投手81名とした(年齢15.0±1.4歳,身長172.0±9.8 cm,体重63.2±9.8 kg,右63名・左18名)。1)投球動作の測定時に疼痛がない,2)肩・肘関節の手術経験がない,3)測定より6カ月以内に肩・肘関節の疼痛や障害のために投球動作を禁止された期間がない。投球動作の測定にはモーションキャプチャ・システムを用いた。解剖学的骨特徴点の皮膚上に36個の赤外光反射マーカーを貼付し,投球マウンド周辺に設置した7台の高速CCDカメラ(ProReflex MCU-500+,Qualisys Inc., Sweden)と2台のハイスピードビデオカメラ(HSV500C<sup>3</sup>,nac Image Technology,Japan)を用いて測定を行った。運動学的・動力学的パラメータを算出するために,胸部,上腕及び前腕座標系を設定し,胸部に対する上腕座標系の回転,上腕に対する前腕座標系の回転をオイラー角で示し,それぞれを肩関節,肘関節角度とした。また,水平面上での両肩峰を結ぶベクトルV<sub>s</sub>,両上前腸骨棘を結ぶベクトルV<sub>p</sub>それぞれとマウンドプレートとの成す角度を肩甲帯回旋角度,骨盤回旋角度とした。さらにV<sub>s</sub>とV<sub>p</sub>との成す角度を体幹回旋角度とした。肩関節,肘関節に加わる関節間力ならびにトルクはニュートン・オイラー法を用いて推定した。統計学的解析には,SPSS 12.0J(エス・ピー・エス・エス社,日本)を使用し,ステップワイズ法による重回帰分析を行った。投球動作時の肩関節に加わる最大圧縮力,最大前方関節間力および最大上方関節間力を従属変数とした。独立変数はトップ・ポジション(TOP),非投球側足部接地(FP),肩関節最大外旋位(MER),ボール・リリース(BR)時の肩関節および肘関節の関節角度,肩甲帯回旋角度,骨盤回旋角度,体幹回旋角度,肩関節および肘関節へ加わるトルクの最大値とした。【結果】最大肩関節圧縮力を従属変数とした場合,p<0.01でありR<sup>2</sup>=0.67であった。標準偏回帰係数はBRでの肩関節水平内転角度が0.60,BRでの体幹回旋角度が-0.51,MERでの骨盤回旋角度が-0.40,最大肩関節外旋トルクが-0.33,最大肘関節外反トルクが0.31,TOPでの肩関節水平内転角度が-0.23,最大肩関節内転トルクが-0.22,BRでの肘関節屈曲角度が-0.20,FPでの体幹回旋角度が0.17であった。肩関節最大前方関節間力を従属変数とした場合,p<0.01でありR<sup>2</sup>=0.63であった。標準偏回帰係数はFPでの肩関節水平内転角度が-0.84,最大肩関節水平内転トルクが0.41,FPでの肘屈曲角度が0.25,最大肩関節外旋トルクが-0.18,最大肩関節内転トルクが-0.16であった。肩関節最大上方関節間力を従属変数とした場合,p<0.01であり,R<sup>2</sup>=0.69であった。標準偏回帰係数は最大肩関節外転トルクが0.59,FPでの肩関節内転角度が0.55,FPでの肩関節外旋角度が-0.51,TOPでの肩関節内転角度が-0.36,BRでの肩関節内転角度が0.32,FPでの肘関節屈曲角度が0.32,FPでの骨盤回旋角度が-0.20,最大肩関節外旋トルクが-0.19,BRでの肩関節外旋角度が0.14であった。【考察】投球動作時に加わる力学的ストレスに影響する因子は,そのストレスの加わる方向により異なることが示された。肩関節の圧縮力にはBRでの肩関節水平内転やBRでの体幹回旋角度,肩関節最大前方関節間力にはFPでの肩関節水平外転や最大肩関節水平内転トルク,肩関節上方関節間力には,最大肩関節外転トルクやFPでの肩関節内転角度が影響を与える因子であった。また,それぞれの肩関節に加わるストレスに影響する因子として,FPでの肩・肘関節の関節角度が挙げられることから,この時点での投球動作に着目することは肩関節に加わる力学的ストレスを軽減させるために重要であることが定量的に確認された。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果は,投球障害肩の疼痛部位や病態に応じた理学療法の一助となると考える。また,投球動作を詳細に分析することで,今後起こりうる投球障害肩を予測し,予防するためにも有用である。
著者
中田 裕貴 松原 克弥 松本 亮介
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2020-OS-148, no.12, pp.1-8, 2020-02-20

近年,コンテナ型仮想化技術を用いて,マルチテナント向けクラウドコンピューティング基盤を実現する事例が増えている.コンテナ型仮想化システムでは,OS カーネルを共有しつつ,プロセス単位で OS リソースを多重化することで,各コンテナ環境を隔離する.しかし,隔離空間から抜けて,他コンテナに対しての攻撃が可能な OS リソースや機能が存在する.これらの利用は実行権限によって制限されているが,粒度が不十分である.従来,これらの OS リソースの制限をおこなうために,コンテナのセキュリティ機能を用いた制御,仮想マシンを用いた OS 多重化による隔離,ユーザランドにおけるネットワークスタックの再構築などの手法が提案されている.しかし,これらの手法は,設定が柔軟でなかったり,ネットワークのオーバヘッドを増大させる課題があった.本研究では,ハードウェア仮想化技術を用いつつ,OS を多重化せずに軽量かつ柔軟なネットワーク隔離手法を提案する.
著者
萩原 克宣 数井 美穂 栗原 厚 安東 治 泉 高司 池田 敏彦
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.454-464, 2015-11-25 (Released:2016-02-25)
参考文献数
30

プロントジルからサルファ剤が見つかったように、初期のプロドラッグは偶然発見されたものが多い。近年のプロドラッグ開発では、たとえば難吸収性薬物の脂溶性をあげることで消化管吸収率を改善し、酵素の働きでもとの薬物に戻して薬効を発揮させることが意図的に実施された。これは、エステラーゼなど、活性化酵素の特性が十分に解明されてきたからであるといえる。しかしながら、活性本体の化学構造および活性化メカニズムが不明な場合には、プロドラッグ開発においてこの方法を踏襲することはできない。チエノピリジン系抗血小板薬はその1例であり、臨床試験が先行し、後に活性体の構造が明らかとなった。本稿では、チエノピリジン系薬剤の臨床成績にインパクトを及ぼした代謝活性化メカニズムの違いについて紹介する。
著者
永井 陽太 松原 克弥
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2019-IOT-44, no.47, pp.1-6, 2019-02-28

筆者らは,教室 PC の余剰計算資源を活用するコンテナ型クラウドシステムの実現を目指している.本システムでは,授業での利用やクラウド管理者の意図しないシャットダウンによって,利用できる計算資源が動的かつ頻繁に変化することが想定される.この課題に対しては,実行中のコンテナを動的にマイグレーションすることによって再配置を行うことが有効である.しかし,任意ノードへの再配置を想定した既存コンテナマイグレーション機構は,インスタンス状態の保存や転送にかかるオーバヘッドが大きい.本研究では,コンテナマイグレーションの際,遷移元ノードにチェックポイント状態を一定期間保持しておき,再び再配置が必要となった際の遷移先ノードとして優先的にそのノードを選択し,さらに,過去のチェックポイントとの差分のみを抽出して転送することでネットワーク転送量を削減する 「残身型コンテナマイグレーション機構」 を提案する.本稿では,OCI 標準コンテナランタイムである runC を対象として,提案する残身型コンテナマイグレーション機構の実現手法について述べる.
著者
松原 克志 大辻 永
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.6, no.5, pp.27-28, 1992-04-04 (Released:2017-11-17)

本研究はSTS教育として科学の本性について構成主義的見地から講義方法を検討したものである. 科学の本性として「科学者杜会で観察事実 (データ) が帰納と演繹によって議論され、科学者杜会内の合意 (共通了解) が形成される. その合意が科学理論であり、科学理論を一般社会では知識と呼ぶ」を講義した後, KJ法の作業を経験させ, 科学の本性のモデルとKJ法のモデルとを提示した. そして演繹と帰納, 集団内の合意という観点から比較した課題作文を書かせた. その結果, 学習者は科学の本性を再定義した上で, 両者を学習者自身の観点から検討していた. このことは構成主義的な見地から科学の本性について学習者が理解していたことを示唆している。
著者
石川 裕一 宮城 匡彦 松本 知子 渡邊 奈津子 東條 靖 廣井 直樹 久保木 幸司 芳野 原 坪田 貴也 吉原 克則
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.10, pp.2552-2554, 2008-10-10
参考文献数
4
被引用文献数
1

34歳,女性,7月に起立困難で入院.心エコーにて著明な右心不全を認め,急激に呼吸状態の増悪を来たした.スワンガンツカテーテルにて全身血管抵抗低下を伴った高心拍出性心不全の所見を呈し衝心脚気と診断.フルスルチアミン投与したところ24時間以内に循環動態の改善が認められた.衝心脚気の原因として本人が2月から始めた健康食品ダイエットが原因と考えられた.現在では稀な疾患ではあるが,短期間で重症化し致命的な経過を辿る事がある為,注意が必要であると考える.<br>
著者
小林 潔司 石原 克治 田澤 龍三 徐 飛
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.130-147, 2008 (Released:2008-04-21)
参考文献数
31

本研究では,土壌汚染に関する表土調査の結果に基づいて,土壌汚染浄化費用リスクを評価するためのベイズニューラルネットワーク(以下,BNNと略す)モデルを提案する.具体的には,伝統的なニューラルネットワークモデルを用いて,土壌汚染浄化費用モデルを作成する.ついで,ニューラルネットワークモデルをベイズ推計することにより,重み係数の事後確率分布を求める.これにより,土壌汚染に関する表土調査の結果に基づいて,調査対象地点における土壌汚染処理費用の確率分布(土壌汚染浄化費用リスク)を求めるBNNモデルを提案する.さらに,新たに獲得した土壌汚染サンプルを用いて,BNNモデルを更新する方法論も提案する.最後に,土壌汚染浄化費用の実測サンプルを用いてBNNモデルの有効性について実証的に検証する.
著者
中村 浩志 北原 克宣 所 洋一
出版者
信州大学教育学部
雑誌
志賀自然教育研究施設研究業績 (ISSN:03899128)
巻号頁・発行日
no.40, pp.1-8, 2003
被引用文献数
1 1

The Mt. Hiuchi (2462m) is an isolated mountain from the North Alps (Hida Mountains). The Rock Ptarmigans on this mountain is the northernmost population in Japan. The distribution of territories and the number of the ptarmigans living on the mountain were examined on 23 and 24 June, 2002. A total of 8 territories were estimated. The estimated total number was 13 males and 8 females. Eight of 13 males were mated males with territory and the rest were single. The estimated number was about the same number estimated 35 years ago by Haneda et al. (1967). Why the small size population could continue so long time on the isolated mountaintop? The mechanism was discussed from the standpoints of carrying capacity, travel ability between mountains and the geographical location.
著者
櫛原 克哉
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.574-591, 2015

本稿は, 社会生活への適応に困難を感じたために, 精神医療機関を利用した経験のある人々の語りを考察した. 近年の精神薬理学や臨床心理学的治療の拡充を受け, 精神医学においては従来の心理的・内面的な要因を対象とした治療に代わり, 患者の脳を中心とする生物学的要因や可視的な行動の矯正といった「フラット」な領域の治療が推進されている. N. Roseは, このような管理技術の浸透を, 精神医学の統治の「フラット化」の現象として指摘する.統治のフラット化を被治療者の観点から考察すべく, 筆者は医療機関への通院経験がある6名を対象にインタビュー調査を実施した. その結果, 「全人格型の語り」と「場面型の語り」の2類型が導出された. 「全人格型の語り」は心理学的な因果関係の文脈から過去との連続性を有する自己を導出するのに対し, 「場面型の語り」は現在属する社会環境内で問題となる思考や行動を限局的に調整しようと試みる断片的な自己という性質を有した.2つの語りは, 精神医学の治療構造の分裂を反映し, 医学のフラット化が不均質に浸透したことにより, 治療対象となる自己も分裂して生起することが確認された. このことから, 精神医療における統治により, 社会環境に適合的な自己が「フラットに」産出される一方で, 心理学的な主題に回帰して「精神の深部」を参照するような自己が, フラットな統治を下支えし治療の求心力として作用していることが示唆された.
著者
萩原 克幸 戸田 尚宏 臼井 支朗
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.2058-2065, 1993-09-25
被引用文献数
35

階層型ニューラルネットワークの学習法としてバックプロパゲーションを用いる場合,ネットワーク構造が適切でないと,学習した入出力関係が獲得すべき入出力関係からずれてしまう.こうしたことから,情報量規準AIC(Akaike's Information Criterion)による構造決定が試みられているが,その有効性に関してAICの導出に立ち入った考察はなされていない.一方,最近,同じ出力を与える階層型ネットワークの結合重みは必ずしも一意性をもたないことが指摘されている.本論文では,3層階層型ネットワークを用いた非線形回帰モデルに対して,結合重みの非一意性のために,AICが導出できないことを示す.また,数値実験に基づき,3層階層型ネットワークを用いた非線形回帰モデルの複雑さに関して考察した.更に,AICを直接適用した場合,線形回帰モデルと比較して多めのパラメータ数(中間ユニット数)が選択される傾向にあることを数値的に確かめた.本論文の考察結果は,一般に,漸近展開による方法で構成された規準に対して,結合重みの非一意性が無視できないことを示したものである.ネットワークの構造決定規準を構成するためには,その統計的性質に関する考察がまだ不十分であるように思われる.