著者
松原 孝志 臼杵 正郎 杉山 公造 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.3174-3187, 2003-12-15
被引用文献数
16

本論文では,リフレッシュルームやラウンジといった共有インフォーマル空間におけるインフォーマルコミュニケーションを触発するシステムを構築し,その評価を行う.そのために,まず,組織において自然発生的にできた`溜まり場'でどのようなインフォーマルコミュニケーションが行われているかを知るために観察実験を行った.観察実験の結果,共有インフォーマル空間の利用者は,そこに行く理由や居るための理由として頻繁に`もの(オブジェクト)'に触れたり注視したりしていることが見出され,このことにより距離圧力を回避し「居心地」よくしていることが推定された.我々は,これをオブジェクトの持つ言い訳効果と考え,そのような`もの'を「言い訳オブジェクト」と呼ぶこととした.次に,観察実験の結果を考慮し,言い訳オブジェクト効果のあるシステムを実現するための要求分析を行い,伝統的な「囲炉裏」をメタファとして用いることにより,インフォーマルコミュニケーションを触発するシステムを構築し,これを「サイバー囲炉裏」と呼んだ.さらに,実現したシステムの予備的評価を行うため「サイバー囲炉裏」を含む3種類の実験環境を設定し,「居心地」の観点から被験者によるアンケートに基づき,「サイバー囲炉裏」における「居心地」に関するオブジェクトの言い訳効果を示唆する結果を得た.さらに,実運用による評価実験を行い,開発したシステムがインフォーマルコミュニケーションを触発するのに有効であるとの結果を得た.We propose a new concept, raison d'^etre objects, and a new ware, cyber-hearth,that affords snugness in face-to-face communication in a shared informal place such as a refreshing room or lounge.We carried out observation experiments on the behavior of individuals in such a place and found interesting tendencies:most people behave unconsciously to pay attention to physical objects by watching or handling as excuses for entering or staying there.This might be because participants are unusually close each other in terms of proxemics.We developed a prototype cyber-hearth IRORI that incorporated raison d'^etre objects with a facility for enhancing conversations,employing a metaphor `hearth' (`irori' in Japanese) as a total design principle since `irori' is well recognized as a snug,traditional informal place in Japan.We preliminarily evaluated IRORI by conducting a user experiment.The results of the experiment suggested that IRORI attained snugness and therefore were effective for catalyzing face-to-face informal communication.Then, we made evaluation experiments in the real environment and obtained results that IRORI was effective to catalyses face-to-face informal communication.
著者
熊谷 晋一郎 向谷地 生良 加藤 正晴 石原 孝二
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-06-28

当事者研究には、他の研究と同様、新しい知識を「発見」するための方法という側面と、生きやすさをもたらす「回復」の側面がある。まず発見については、自閉スペクトラム症のメカニズムに関して当事者研究の中で提案された「情報のまとめあげ困難説」を、他分野の専門家と協力しながら理論的に精緻化した。またその仮説を、発声制御、顔認知、パーソナルスペース、ボディイメージ、聴覚過敏や慢性疼痛などに適用して検証実験を行った。次に回復については、横断調査、追跡調査によって効果検証を行うとともに、当事者研究の方法をプロトコール化し、当事者主導型の臨床研究による介入研究を行った。
著者
三宅 康史 有賀 徹 井上 健一郎 奥寺 敬 北原 孝雄 島崎 修次 鶴田 良介 前川 剛志 横田 裕行
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.309-321, 2008-06-15 (Released:2009-07-25)
参考文献数
9
被引用文献数
7 10

目的:日本救急医学会熱中症検討特別委員会は,全国の救命救急センター及び指導医指定施設に対し平成18年6-8月に診療した熱中症患者に関する調査を依頼し,66施設から収集された528症例につき分析を行った。結果:平均年齢は41.5歳(3-93歳),男女比413:113(不明2),日本神経救急学会の提唱する新分類でI° 62%,II° 18%,III° 20%であった。発生状況で,スポーツの若年男女(平均年齢25歳),肉体労働の中年男性(同47歳),日常生活中の高齢女性(同59歳)の 3 つのピークがあった。 7 月中旬と 8 月上旬に多く発生し,高い平均気温の時期と同期していた。 1 日の中では11時前後と15時頃に多かった。意識障害(Japan coma scale: JCS)の変化では現場0/JCS:43%(=I°),1/JCS:15%(=II°),2-300/JCS:42%(=III°)に対し,来院時では61%,12%,27%と応急処置による改善がみられた。外来診療のみで帰宅したのは285例(平均年齢38歳),入院は221例(同51歳)あり,収縮期血圧≤90mmHg,心拍数≥120/min,体温≥39°Cを示す症例は入院例で有意に多かった。入院例のALT平均値は240 IU/l(帰宅例は98 IU/l),DIC基準を満たすものは13例(5.9%)であった。入院例における最重症化は死亡例を除きほぼ入院当日に起こり,入院日数は重症度にかかわらず 2 日間が最も多かった。死亡例は13例(全症例の2.5%)あり,III° 生存例との比較では,深昏睡,収縮期血圧≤90mmHg,心拍数≥120/min,体温≥40°C,pH<7.35の症例数に有意差がみられた。日常生活,とくに屋内発症は屋外発症に比べ高齢かつ重症例が多く,既往歴に精神疾患,高血圧,糖尿病などを認め,死亡 8 例は全死亡の62%を占めた。考察:予後不良例では昏睡,ショック,高体温,代謝性アシドーシスが初期から存在し,多臓器不全で死亡する。高齢者,既往疾患のある場合には,日常から周囲の見守りが必要である。後遺症は中枢神経障害が主体である。重症化の回避は医療経済上も有利である。結語:熱中症は予防と早い認識が最も重要である。
著者
橋原 孝博 吉田 康成 吉田 雅行
出版者
日本バレーボール学会
雑誌
バレーボール研究 (ISSN:13449524)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.12-18, 2009-05

本研究の目的は,2006年バレーボール男子世界選手権の撮影ビデオを自作のプログラムにより解析し,世界トップレベルの男子チームが使用している戦術プレーを明らかにして今後の指導資料を得ることであった。サーブレシーブは,全ローテーションを通じて,リベロと後衛レフトと前衛レフトの3選手が横一列の隊形を敷いてレシーブしている。ブラジルは,サーブレシーブ返球がアタックライン上からでもコンビネーション攻撃を仕掛けてくる。コンビネーション攻撃は,セッターが前衛でも後衛でもポジションに関係なく,クイック,パイプ攻撃,両サイドの平行トスの4人攻撃を行う。ブラジルのコンビ攻撃のトス最高値は,従来報告されている値よりもおよそボール2個半(約50cm)低く,攻撃時間がスピードアップしている。アタックレシーブは,クイックとパイプ攻撃に対しては後衛の3選手が扇形に隊形を敷いてレシーブし,サイド攻撃に対してはクロス方向の打球に備えた隊形でレシーブしている。トスが高く上げられた時は,前衛の3選手がブロックに跳ぶ。これらの戦術プレーの分析データと同一競技場面の動画をスクリーン上に表示して選手に観察させることは,相手対応の準備など効果的な指導方法の一つとして役立つと考えられる。The purpose of this study was to clarify the playing system used by the international-class men's volleyball teams that participated in 2006 Men's World Championships held in Hiroshima, and to provide the scouting information with coaching volleyball. Through all rotation, a libero player and backward left player and forward left player stand in a row and receive a serve. Team Brazil challenges combination, even if serve receive ball was on the attack line. Whether a setter is forward player or not, they attack with four players, one plays quick, the other plays pipe attack, others attack parallel sets from both side. The height of sets used Brazilian combination attack is two and a half balls lower than ever known, so their attack speed rose. About attack receive for quick and pipe attacks, three players receive with a fan-shaped formation. For side attacks, they prepare for the ball from cross attacks. With high sets, three forward players block a ball. It's useful for players to observe moving image which is the same as the scene used as a data to analyze their tactics. It's one of the effective way of coaching to prepare for dealing with an opponent.
著者
山本 紳一郎 増田 卓 松山 斉久 佐藤 清貴 盛 虹明 北原 孝雄 大和 田隆
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.189-200, 1997-05-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
30
被引用文献数
2 1

クモ膜下出血(SAH)急性期に認められる心電図異常を中枢性・末梢性交感神経系の活動および心筋障害の程度と対比し,心電図異常の成因について検討した。発症24時間以内の破裂脳動脈瘤によるSAH677例に対して,来院時より24時間の心電図モニターを行い,不整脈を認めなかった281例をA群,心室性期外収縮,心室性頻拍,心室細動の3種類以外の不整脈を認めた274例をB群,心室性不整脈として心室性期外収縮,心室性頻拍,心室細動のいずれかを認めた122例をC群とした。来院時に血圧,脈拍,意識状態,頭部CT検査を行い,心筋逸脱酵素,心筋収縮蛋白,カテコラミン,ノルアドレナリン代謝産物のMHPGを測定した後,脳動脈造影を施行した。3群間では年齢に有意差はなく,不整脈はSAH急性期の58%に出現し,不整脈として洞性頻脈,心室性期外収縮,上室性期外収縮などが多く認められた。来院時の血圧,心拍数はA群に比べB群あるいはC群で有意に上昇し,QTc間隔はA群に比べC群で有意に延長していた。また来院時の電解質濃度あるいは脳動脈瘤の部位には3群間で有意な差は認めなかった。不整脈はWFNS分類によるgrade 1V, Vの重症例に多く出現し,Fisher分類によるSAHの程度ではA群およびC群に比べB群でgroup 4の割合が高かった。血漿ノルアドレナリン,アドレナリン,MHPG濃度はA群と比較してB群およびC群でいずれも有意に上昇していた。血清CK-MB,ミオシン軽鎖およびトロポニンTの最高値は,A群およびB群に比較してC群で有意に高値を示した。SAH急性期の心電図異常は,交感神経系活動の亢進による機能的な変化から出現する場合と,カテコラミンによる心筋障害のために出現する場合があると考えられる。また,心室性不整脈を認める例ほど心筋障害を合併している可能性が高く,SAH急性期に認められる心肺機能停止との関連が示唆された。
著者
石原 孝二
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.17-32, 2014

Throughout the history of modern psychiatry, descriptive methods and operational definitions have featured prominently in endeavors to objectively refer to and classify mental disorders. An alternative to these descriptive approaches is the argument based on the concepts of "natural kinds" and "dysfunction" such as Wakefieldʼs "harmful dysfunction" model. However, none of these approaches seem promising for understanding the nature of mental disorders. This paper proposes that we abandon the prevalent tendency to objectively classify mental disorders, revert to the original meaning of psychiatry (Psychiaterie), a term coined by J. C. Reil, as a method of therapy, and reexamine the concept of mental disorder.
著者
松原 孝志 臼杵 正郎 杉山 公造 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 = Transactions of Information Processing Society of Japan
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.3174-3187, 2003-12

本論文では、リフレッシュルームやラウンジといった共有インフォーマル空間におけるインフォーマルコミュニケーションを触発するシステムを構築し、その評価を行う。そのために、まず、組織において自然発生的にできた‘溜まり場’でどのようなインフォーマルコミュニケーションが行われているかを知るために観察実験を行った。観察実験の結果、共有インフォーマル空間の利用者は、そこに行く理由や居るための理由として頻繁に‘もの(オブジェクト)’に触れたり注視したりしていることが見出され、このことにより距離圧力を回避し「居心地」よくしていることが推定された。我々は、これをオブジェクトの持つ言い訳効果と考え、そのような‘もの’を「言い訳オブジェクト」と呼ぶこととした。次に、観察実験の結果を考慮し、言い訳オブジェクト効果のあるシステムを実現するための要求分析を行い、伝統的な「囲炉裏」をメタファとして用いることにより、インフォーマルコミュニケーションを触発するシステムを構築し、これを「サイバー囲炉裏」と呼んだ。さらに、実現したシステムの予備的評価を行うため「サイバー囲炉裏」を含む3種類の実験環境を設定し、「居心地」の観点から被験者によるアンケートに基づき、「サイバー囲炉裏」における「居心地」に関するオブジェクトの言い訳効果を示唆する結果を得た。さらに、実運用による評価実験を行い、開発したシステムがインフォーマルコミュニケーションを触発するのに有効であるとの結果を得た。 : We propose a new concept, raison d’etre objects, and a new ware, cyber-hearth, that affords snugness in face-to-face communication in a shared informal place such as a refreshing room or lounge. We carried out observation experiments on the behavior of individuals in such a place and found interesting tendencies: most people behave unconsciously to pay attention to physical objects by watching or handling as excuses for entering or staying there. This might be because participants are unusually close each other in terms of proxemics. We developed a prototype cyber-hearth IRORI that incorporated raison d’etre objects with a facility for enhancing conversations, employing a metaphor ‘hearth’ (‘irori’ in Japanese) as a total design principle since ‘irori’ is well recognized as a snug, traditional informal place in Japan. We preliminarily evaluated IRORI by conducting a user experiment. The results of the experiment suggested that IRORI attained snugness and therefore were effective for catalyzing face-to-face informal communication. Then, we made evaluation experiments in the real environment and obtained results that IRORI was effective to catalyses face-to-face informal communication.
著者
堀田 裕子 松崎 那奈子 萩原 孝泰 井上 康子 小川 博
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.33, pp.64, 2017

<p>スマトラオランウータンはIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危惧ⅠA類に指定される希少動物である。また,国内個体数が少ないことから,種の保存のために動物園で計画的に飼育下繁殖を進めていくことは重要である。そのために園間同士での個体の移動は必要なことである。一方で,動物の輸送には身体的および精神的ストレスが伴う。動物はストレス因子が極度の場合生理学的機能が激しく損なわれ死亡することがある。コルチゾールはストレスの指標となりうるホルモンであることから,尿を用いて非侵襲的にそれを測定した。昨年スマトラオランウータンの園内での新獣舎への移動,および園間またいでの移動が行われた。この際のストレスについて検証すべく,スマトラオランウータン雌1頭雄1頭を対象として,尿中コルチゾール濃度をEIA法を用いて測定し,その動態を追った。またそれと同時に行動観察を行い,行動と生理の面からそのストレスについて調べた。雌雄また園内と園間それぞれ,コルチゾール濃度および行動に変化がみられた。その結果からストレス要因およびストレス軽減要因について考察し報告する。</p>
著者
鰕原 孝康 吉川 茂
雑誌
研究報告 音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2011-MUS-89, no.3, pp.1-5, 2011-02-04

ホルンにおけるストップ奏法とは、右手の手のひらでベルをふさいで強く吹奏することで、鋭い金属的な音色を作る奏法である。この奏法において楽器の入力インピーダンスが変化することがこれまで研究されてきたが、その金属的な音色の原因については考えられてこなかった。本研究ではその原因として、(1) 伝達関数、(2) 唇の非線形振動と管内衝撃波、(3) 管壁振動の 3 つの可能性について検討し、数値シミュレーションと測定によって管壁振動がその音色の原因であることが明らかになった。
著者
吉岡 徹朗 向山 政志 内藤 雅喜 中西 道郎 原 祐介 森 潔 笠原 正登 横井 秀基 澤井 一智 越川 真男 齋藤 陽子 小川 喜久 〓原 孝成 川上 利香 深津 敦司 田中 芳徳 原田 昌樹 菅原 照 中尾 一和
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.609-615, 2007-07-28 (Released:2008-11-07)
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

症例は, 39歳男性. 36歳時に硝子体出血を機に初めて糖尿病を指摘され, 以後当科で加療されていたが, 糖尿病性腎症によるネフローゼ症候群加療のため入退院を繰り返し, 次第に腎機能が低下した. 2005年5月に腸炎症状を契機に乏尿, 労作時息切れ, 下腿浮腫, 体重増加をきたし, 血清クレアチニン5.8→13.0mg/dLと急激に上昇したため, 血液透析導入目的で当科入院となった. 透析開始後, 積極的な除水にもかかわらず, 心胸比は縮小せず, 透析導入後第6病日以降血圧が低値となり, 第10病日には収縮期血圧で70mmHg前後にまで低下した. 心エコー検査にて心タンポナーデを認め, 心膜穿刺にて多量の血性心嚢液を吸引除去した. 臨床経過, 穿刺液の検査所見, 血清学的検査所見, 画像検査所見から, 尿毒症性心外膜炎と診断し, 心嚢腔の持続ドレナージと連日の血液濾過透析を行い軽快した.尿毒症性心外膜炎は, 透析治療が発達した今日ではまれであるが, 急性腎不全, 慢性腎不全の透析導入期, あるいは透析不足の維持透析患者において, 心嚢液貯留を認める場合, 溢水のほか, 悪性疾患や感染症, 膠原病とともに考慮する必要がある.
著者
柳原 孝安
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.93-104, 2009 (Released:2021-07-01)

経験則に限づくアニメーション制作事例を元に、「アニメーション作業の軽減化」、及び「リアリティの再現」の視点からモーションキャプチャーの使用目的を明確にした。さらにモーションキャプチャーで得られた「リアリティの再現」を有効にしつつもデジタルゲーム特有の「デフォルメ」作業を行う必 要性と重要性についても解説を述べる。また、実機によるリアルタイム物理演算の使用についての難しさと可能性について現時点での解説を述べる。さらにフィンガーやフェイシャルアニメーションの効率化に対してはいかなる問題が介在するか、現状における問題点の洗い出しとその解消方法の可能性についても解説を述べていく。
著者
石原 孝二
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.17-32, 2014-12-20 (Released:2015-11-08)
参考文献数
42

Throughout the history of modern psychiatry, descriptive methods and operational definitions have featured prominently in endeavors to objectively refer to and classify mental disorders. An alternative to these descriptive approaches is the argument based on the concepts of “natural kinds” and “dysfunction” such as Wakefieldʼs “harmful dysfunction” model. However, none of these approaches seem promising for understanding the nature of mental disorders. This paper proposes that we abandon the prevalent tendency to objectively classify mental disorders, revert to the original meaning of psychiatry (Psychiaterie), a term coined by J. C. Reil, as a method of therapy, and reexamine the concept of mental disorder.
著者
松島 正浩 桑原 孝
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.104, no.4, pp.569-578, 2013-07-20 (Released:2014-08-04)
参考文献数
74
被引用文献数
1

(目的)我が国の職業性膀胱癌の歴史と現状,及び膀胱癌の化学発癌研究歴と現状について検討した.(対象と方法)化成品工業会の資料と厚生労働省労働基準局労災補償部の資料を中心に症例を検討し,更に文献的考察を行った.(結果)我が国では1920年頃より芳香族アミンの製造が開始され,1940年に最初の職業性膀胱癌症例が報告された.1955年に中共貿易による業界の起死回生策で芳香族アミンの最大生産量時期に到達した.1972年に安全衛生法発令によりbenzidine, 2-naphthylamineの製造・輸入が禁止された.この間に3,310名がこれらの物質に暴露し,1985年までに357名の職業性膀胱癌が発生した.労災補償が開始された1976年から2006年に認定された数はbenzidineに曝される業務による尿路系腫瘍341例,2-naphthylamineに曝される業務による尿路系腫瘍150例,o-dianisidineによる尿路腫瘍1例の合計492例である.職業性尿路癌患者はほぼ定年を迎えており,2025年頃に終焉を迎えると推測する.(結語)我が国における芳香族アミン暴露者3,310名より発生した職業性膀胱癌の歴史と現状を報告し,文献的考察で最近の職業性膀胱癌の動向について解説した.
著者
橋原 孝博
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.35-41, 2004-06-30

本研究の目的は,バレーボールゲームにおけるサーブ距離とサーブレシーブ成績との関係を検討することにより,フローターサーブの技術指導に関する資料を得ることであった。大学女子バレーボールの試合71セットをビデオ撮影し,再生画像をパソコンに取り込んで分析した。サーブの位置データは2次元DLT法により算出し,サーブ効果は,相手サーブレシーブ成績をサービスエース,チャンスボール,二段攻撃,コンビ攻撃の4段階評価して求めた。サーブ効果有のサーブ回数が多かった打球距離は,17mと21m付近の二ヶ所あった。サーブの打球距離が長くなれば,ボールが臨界速度に達して空中で急激な変化を生じ,サーブレシーブが難しくなる。またジャンプフローターのような,打球方向が水平に近く,助走踏切中に生じた水平方向の運動量を利用した打球速度が速いサーブを用いれば,打球距離が短くてもボールは空中で変化を生じ,サーブ効果があげられると考えられた。
著者
井口 哲弘 笠原 孝一 金村 在哲
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.85-91, 2005 (Released:2007-12-14)
参考文献数
21

腰痛に対する薬物療法(特にNSAIDs,筋弛緩薬,抗うつ薬)のEBMについてCochrane Reviewを中心に調査した.まずNSAIDsは急性腰痛に対して効果があるが消化器系合併症が問題となる.NSAIDs間の効果に違いはなく,鎮痛剤より効果があるかは中等度のエビデンスがあった.慢性腰痛に対する効果は証明されていないが,これは絶対的なRCT量の不足による可能性が強い.筋弛緩薬は急性腰痛に対して強いエビデンスがあるが,長期効果は証明されていない.検討された筋弛緩薬には非ベンゾジアゼピン系薬剤が多く,中枢神経系の副作用はプラセボの約2倍であった.慢性腰痛に対する抗うつ薬はプラセボと比較して,疼痛は軽減させるが日常生活の改善度は差がなく,抗うつ薬使用群は有意に眠気,口内乾燥感,フラツキなどの副作用が多い結果であった.欧米と本邦では薬剤そのものや,その分類法が異なり国際的な分類の統一と本邦独自のメタアナリシスが必要と思われた.
著者
海老原 孝枝 大類 孝 海老原 覚 辻 一郎 佐々木 英忠 荒井 啓行
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.448-451, 2007 (Released:2007-09-06)
参考文献数
3
被引用文献数
2

Angiotensin converting enzyme (ACE) inhibitor plays an important role not only as an antihypertensive drug but also for prevention of various complications related to geriatric syndrome. Pneumonia in the disabled elderly is mostly due to silent aspiration of oropharyngeal bacterial pathogens to the lower respiratory tract. Aspiration is related to the dysfunction of dopaminergic neurons by cebrovascular disease, resulting in impairments in both the swallowing and cough reflexes. ACE inhibitor can increase in the sensitivity of the cough reflex particularly in older post-menopausal women, and improvement of the swallowing reflex. In a 2-year follow-up study in stroke patients, patients who did not receive ACE inhibitors had a higher risk of mortality due to pneumonia than in stroke patients who were treated with ACE inhibitor. Moreover, the mortality of pneumonia was significantly lower in older hypertensive patients given ACE inhibitors than in those treated with other antihypertensive drugs. On the other hand, we found a new benefit of ACE inhibitor on the central nervous system. The mortality in Alzheimer's disease patients who received brain-penetrating ACE inhibitor was lower than in those who received other antihypertensive drugs. In a 1-year follow-up study, cognitive decline was lower in patients receiving brain-penetrating ACE inhibitors than in patients receiving a non-brain-penetrating ACE inhibitor or a calcium channel blocker. Brain-penetrating ACE inhibitors may slow cognitive decline in patients with mild to moderate Alzheimer's disease. ACE inhibitor might be effective for the disabled elderly, resulting in the prevention of aspiration pneumonia and Alzheimer's disease for the elderly.
著者
橋本 毅彦 岡本 拓司 廣野 喜幸 鈴木 淳 梶 雅範 鈴木 晃仁 柿原 泰 金 凡性 石原 孝二
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

事故や災害の発生を防止したり緩和したりするために、様々な安全基準や規約が設けられている。本研究では、そのような各種の事故災害への対応と基準規約の制定に関して、航空・電力・防火・治水・保険・化学・医薬・医療などの工業医療分野において取り上げ、その歴史的過程を分析しようとした。産業社会を支えるそのような巨大な技術システムの基準・規約の全体を取り上げることはできないが、その顕著な側面やよく知られていないが重要な事例などを明らかにした。