著者
荻原 直道 工内 毅郎 中務 真人
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム (ISSN:13487116)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.35-44, 2006 (Released:2017-02-15)
参考文献数
30

ヒトの精密把握能力の形態的基盤の進化を明らかにするためには, ヒトと最も近縁なチンパンジー手部構造の形態と機能の関係を理解することが不可欠である. このためCT および屍体解剖により取得した形態学的情報を元に, チンパンジーの手部筋骨格系の数理モデルを構築した. 本モデルを用いてチンパンジーの形態に規定される精密把握能力を生体力学的に推定し, ヒトの手と比較した結果, 特に第1背側骨間筋の付着位置の違いが, ヒトに特徴的な優れた把握能力に大きく寄与していることが示唆された.
著者
内田 遼介 釘原 直樹 手塚 洋介 國部 雅大 土屋 裕睦
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.33-43, 2016 (Released:2016-10-06)
参考文献数
26

先行研究では様々な情報源が集団全体の集合的効力感と関連することが明らかにされてきた。しかし,スポーツ集団内において成員1人1人がどのように集合的効力感を評価したのか,その基礎的な形成過程に関しては明らかではなかった。本研究の目的はスポーツ集団内における集合的効力感の評価形成過程について,特に課題遂行能力の異なる成員に着目して検討することであった。実験参加者は男子大学生23名であり,実験協力者2名とともに3名1組の集団に割り当てられた。実験課題はワイヤーロープを60秒間,あらかじめ定められた基準値以上の張力で維持し続ける張力維持課題であった。実験参加者はこの課題を実験協力者2名よりも課題遂行能力という点で劣っている劣位条件,優れている優位条件,そして参加者のみで行う単独条件の3条件で行った。その結果,特に劣位条件において他者の課題遂行能力を手がかりに集合的効力感を評価する傾向が認められた。そして,劣位条件では単独条件,優位条件よりも努力量が低下する社会的手抜きが生起した。最後に,これらの結果について他者に対する能力期待の観点から解釈した。
著者
引網 宏彰 柴原 直利 村井 政史 永田 豊 井上 博喜 八木 清貴 藤本 誠 後藤 博三 嶋田 豊
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.699-707, 2010 (Released:2010-10-30)
参考文献数
6

リウマチ性多発筋痛症(PMR)に対して,漢方治療が奏効した5症例について報告する。さらに,これら5症例を含む当科でのPMR治療例10例について検討した。その結果,有効症例は6症例であった。そのうち,1例はステロイド剤の投与を拒否した症例であったが,他の5症例は筋痛症状や炎症反応の出現により,ステロイド剤の減量が困難な症例であった。また,1例を除いて,CRPは3.0 mg/dl以下であった。一方,無効症例では高度の炎症反応を示しており,ステロイド剤の投与が必要であった。有効症例には駆瘀血剤(疎経活血湯,桃核承気湯,桂枝茯苓丸,腸癰湯加芍薬,薏苡附子敗醤散,当帰芍薬散)が投与されていた。以上より,PMRでステロイド剤の減量が困難な症例や炎症反応が軽度である症例には,漢方薬は治療の選択肢の一つとなりうると考えられた。さらに駆瘀血剤の積極的な使用がPMRの治療に有用である可能性が示唆された。
著者
柴原 直樹
出版者
福山大学大学教育センター
雑誌
大学教育論叢第2号 (ISSN:21893144)
巻号頁・発行日
no.2, pp.25-42, 2016-03

The MIYA clan, the most influential feudal lord in BINGO province, was given an important post as a "defensive wall" for the autonomous daimyo OHUCHI by the MUROMACHI shogunate.When OHUCHI YOSHITAKA destroyed the MIYA clan, MOHRI MOTONARI who became the commander of the MIYA clan attacked on orders from OHUCHI YOSHITAKA succeeded in strengthening the pledge with the local feudal lord in BINGO. MOHRI MOTONARI accomplished this transformation to SENGOKUDAIMYO is based on this alliance
著者
桑原 直己
出版者
筑波大学哲学・思想学系
雑誌
哲学・思想論集 (ISSN:02867648)
巻号頁・発行日
no.30, pp.174-159, 2004

【1】 はじめに 『神学大全 Summa Theologiae, 以下S.T.』の第II部は、一般にトマス・アクィナスの「倫理学」を構成する部分として理解されている。その第II部の序文において、トマスはまず「人間は神にかたどって ad imaginem Dei(=神のごとくに)つくられたとあるが、 ...
著者
曺 美庚 釘原 直樹
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.88.16322, (Released:2017-05-10)
参考文献数
34

心理学研究第88巻第3号掲載の曺 美庚・釘原 直樹著,「文化,性,パーソナリティがタッチ性向に及ぼす影響」論文は,著者により取下げられました。
著者
後藤 博三 嶋田 豊 引網 宏彰 小林 祥泰 山口 修平 松井 龍吉 下手 公一 三潴 忠道 新谷 卓弘 二宮 裕幸 新澤 敦 長坂 和彦 柴原 直利 寺澤 捷年
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.471-476, 2008 (Released:2008-11-13)
参考文献数
22
被引用文献数
1

無症候性脳梗塞患者に対する桂枝茯苓丸を主体とした漢方薬の効果を3年間にわたり前向き研究により検討した。対象は富山大学附属病院ならびに関連病院を受診した無症候性脳梗塞患者93名で男性24名,女性69名,平均年齢70.0±0.8才である。桂枝茯苓丸エキスを1年あたり6カ月以上内服した51名をSK群,漢方薬を内服せずに経過を観察した42名をSC群とし,MRI上明らかな無症候性脳梗塞を認めない高齢者44名,平均年齢70.7±0.7才をNS群とした。3群間において,開始時と3年経過後の改訂版長谷川式痴呆スケール,やる気スコア(apathy scale),自己評価式うつ状態スコア(self-rating depression scale)を比較した。また,SK群とSC群においては自覚症状(頭重感,頭痛,めまい,肩凝り)の経過も比較検討した。その結果,3群間の比較では,自己評価式うつ状態スコアにおいて開始時のSK群とSC群は,NS群に比べて有意にスコアが高かった。しかし,3年経過後にはNS群は開始時に比較し有意に上昇したが,SK群は有意に減少した。さらに無症候性脳梗塞にしばしば合併する自覚症状の頭重感において桂枝茯苓丸は有効であった。以上の結果から,無症候性脳梗塞患者の精神症状と自覚症状に対して桂枝茯苓丸が有効である可能性が示唆された。
著者
清水 渉 大江 透 金子 敬子 高木 洋 相原 直彦 鎌倉 史郎 松久 茂久雄 佐藤 磐男 下村 克朗
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.8, no.6, pp.773-778, 1988-11-30 (Released:2010-09-09)
参考文献数
17
被引用文献数
3 1

同一心電図上でデルタ波の出現と消失を認める間歇性WPW症候群35例の臨床電気生理学的特徴を検討した.心房早期刺激法による房室伝導曲線パターンは一様でなく, 顕在性WPW症候群に類似するもの (I群) , 基本周期でデルタ波を認め, 早期刺激で一旦デルタ波が消失するが, さらに短くすると再び出現し, 最後に再び消失するもの (II群) , 潜在性WPW症候群に類似するもの (III群) , 基本周期でデルタ波を認めないが, 早期刺激でデルタ波が出現し, 最後に再び消失するもの (IV群) の4群に分類された.顕在性WPW症候群類似のI群や, いわゆるsupernormal conductionを認めたII, IV群の副伝導路順行性の有効不応期は長かった.III群は電気生理学的検査後にデルタ波の出現と消失を認めた症例もあり, 潜在性WPW症候群との関連については今後の検討が必要と思われた.以上の電気生理学的特徴がどのように臨床上のデルタ波の出現と消失に関与するかは今後さらに検討を要する問題である.
著者
関矢 信康 引網 宏彰 古田 一史 小尾 龍右 後藤 博三 柴原 直利 嶋田 豊 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.811-815, 2004-11-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

難治性の気管支喘息の3症例に対して咽喉不快感, 動悸, 自汗を目標として清暑益気湯を投与した。目標とした症状および所見は速やかに改善した。さらに発作の回数が著明に減少あるいは消失した。そのほか3症例に共通していた事柄は中年期であること, 発作が通年性であること, 心窩部不快感, 心下痞〓, 臍上悸を認めることであった。これまで清暑益気湯は夏やせ, 夏まけに対して用いられることが多かったが中年期の気管支喘息の長期管理薬 (コントローラー) としても認識されるべき処方であると考えられた。
著者
岸本 直之 古田 世子 藤原 直樹 井上 栄壮 馬場 大哉 武井 直子
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.69-75, 2023 (Released:2023-05-10)
参考文献数
29

マシジミ (Corbicula leana) と推定される琵琶湖産淡水シジミのろ水速度および呼吸速度の水温, 溶存酸素 (DO) 濃度依存性を実験や文献調査を通して明らかにし, その生育可能条件を評価した。殻長14.9 ± 1.2 mmの成貝を用いた実験の結果, ろ水速度は水温およびDO濃度に依存した。水温影響は高温阻害を有する指数型影響関数で表現でき, 至適水温は20.8 ℃であった。ろ水速度が低下し始める限界DO濃度は2.6~4.0 mg L-1の範囲にあった。琵琶湖南湖湖底直上における平均餌濃度を3 mg-C L-1と仮定した場合, DO濃度 ≥ 4 mg L-1の条件で成長可能な温度域は12.1~26.6 ℃と評価された。湖沼温暖化により水温が1 ℃上昇すると年間成長量は0.005~0.01 g-C y-1 個体-1低下すると推定され, 湖沼温暖化が琵琶湖におけるシジミの生育に負の影響を与えることが明らかとなった。
著者
原 直人
出版者
日本眼光学学会
雑誌
視覚の科学 (ISSN:09168273)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.47-51, 2012 (Released:2019-11-22)
参考文献数
28
被引用文献数
3

ストレスに対する生体の評価あるいは視覚疲労の生理的評価のために瞳孔反応を用いた方法が研究されてきた。瞳孔径は,精神活動であるストレス,覚醒,注意,あるいは眠気などに相関して増大する。したがって瞳孔反応は,扁桃体あるいは前頭葉機能との相互関係により調節されており,情動発現や認知過程に関する単純な反射ではなく,脳活動全般の指標であることが示唆されている。自律神経系反応としての瞳孔径の変化が,ストレスと強い相関関係にあるバイオマーカーとして用いられている。また瞳孔振動・ゆらぎを指標として,ストレスや睡眠との関係を研究した報告が数多くある。例えば,全身疲労で疲弊した状態では,瞳孔縮瞳に伴い大きな瞳孔のゆらぎが出現するが,それが他覚的な眠気の指標とされている。一方,疲労とは相反する状態である音楽を聴きながらのリラックス状態でも同様な縮瞳とゆらぎの出現が観察できる。いまだ情動発現における身体反応と瞳孔反応の研究は十分ではない。今後,瞳孔反応の非侵襲的な測定方法によりますます盛んになることが望まれる。
著者
阿形 亜子 釘原 直樹
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.108-115, 2014 (Released:2014-03-18)
参考文献数
27

近年,好ましい人物であるとの評判を獲得できることが向社会的行動を引き出すという競争的利他主義(Van Vugt, Roberts, & Hardy, 2007)が,多くの研究で注目を集めている。そこで本研究では,個人の貢献にともない評判が形成されうる状況がパフォーマンスを促進するかどうかを検討した。発展途上国に寄付する物品を作成する場面を用いて,貢献量を他者に呈示できる個人条件と,自己の貢献量が提示できない集団条件を設定し,実験をおこなった。併せて,作業量に伴って参加者自身に金銭報酬が与えられる物質的報酬条件との比較をおこなった。その結果,寄付物品作成場面を用いた潜在的報酬条件において,集団条件よりも個人条件でパフォーマンスが高まり,評判が形成されうる状況が寄付行動を促進することが示された。一方,潜在的報酬条件と物質的報酬条件の間で,パフォーマンスに差はみられなかった。最後に,実験操作の問題点について考察し,向社会的行動の促進要因としての評判の効果について議論をおこなった。
著者
安 柄九 大垣 雅晴 泉 浩 竹中 温 柿原 直樹 飯塚 亮二 北村 誠
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.837-840, 2004-05-31 (Released:2010-09-24)
参考文献数
13

今回われわれは, S状結腸捻転に対する緊急手術の術後に, 悪性症候群を発症し, 急激な経過をたどり死亡した1例を経験したので報告する. 症例は54歳男性. 18歳より統合失調症にて入院加療中, 突然の嘔吐, 腹痛を主訴に当院へ救急搬送された. 腹部単純X線検査・腹部CT検査では拡張したS状結腸を認めた. 緊急開腹手術を施行したところ, S状結腸は著明に拡張し, 時計回りに180度捻転していた. 術後5日目白血球数は正常化していたにもかかわらず40℃台の稽留熱, さらに錐体外路症状を認めたため, 悪性症候群と診断した. 大量輸液療法, および全身冷却療法にて対応したが, 心肺停止となり, 術後5日目に死亡した. 剖検では全身臓器および骨格筋には病理組織学的所見は認められなかった. 抗精神病薬, 抗うつ薬内服中の患者において解熱薬抵抗性の高熱を認めた場合, 悪性症候群を念頭におく必要があると考えられた.
著者
徳原 直子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.88-94, 2022-03-01 (Released:2022-03-01)

最初に,平成30年の著作権法改正により新たに設けられた「柔軟な権利制限規定」について概説する。その上で,国立国会図書館が取り組んでいる当該規定に関連するものとして,デジタル化資料(画像)のテキスト化事業及びそのテキストデータを活用した本文検索サービス,並びにデジタル化資料の閲覧・検索機能の利便性向上のためのAI(機械学習)を用いたサービス開発について,平成30年の著作権法改正による影響を考察しつつ紹介する。
著者
片岡 由行 河野 久征 河原 直樹 越智 寛友 西埜 誠 中村 秀樹
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7.8, pp.363-371, 2020-07-05 (Released:2020-11-07)
参考文献数
24
被引用文献数
1

蛍光X線分析におけるファンダメンタルパラメータ法(FP法)は,理論的に蛍光X線強度を計算して定量分析に利用する方法である.FP法を搭載した波長分散型蛍光X線分析装置は,1980年代後半に国内X線機器メーカーであるリガクと島津製作所が世界に先駆けて開発し,エネルギー分散型装置への適用を含め機能拡張と改良を重ね,その応用範囲も拡大し一般的に使用されるようになった.FP法の代表的な応用例として標準試料を必要としないスタンダードレス分析があるが,電子材料やめっき分析に使用される薄膜FP法,また,従来の検量線法におけるマトリックス補正係数に,FP法を利用して求めた係数を使用する方法も,各種材料のJISやISOの分析規格として採用されている.また,蛍光X線に加え,散乱線強度を含めたFP法も開発し,ポリマーや生体試料の分析や不定形試料の分析にも応用されており,著者らが開発したFP法は,蛍光X線分析の応用範囲の拡大に大きく貢献することができたと考えている.