著者
篠原 直秀
出版者
一般社団法人 室内環境学会
雑誌
室内環境 (ISSN:18820395)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.99-106, 2020 (Released:2020-08-01)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

2020年の春時点で, 日本を含む世界中で新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)の感染が猛威を振るっており, 三密を避けることなど, より一層の感染対策が求められている。 本稿では, 室内環境における感染対策に関わる情報を収集・整理した。 感染者が呼吸・会話・咳・くしゃみなどをすると, ウィルスを含む飛沫が環境中に飛散する。 会話や咳で飛散する大きな粒子は, 多くの場合2 m以内に床面に沈着するが, 室内の気流によっては5 m程度飛散することもある。 また, 飛沫核などの小さな粒子は, 沈着せずに数時間もしくはそれ以上室内を漂う可能性がある。 室内空気中からウィルスが除去される経路としては, 床面や壁面への沈着, 換気による屋外への排出, ウィルスの不活化があるが, 無風の状態では10 μmを超えるサイズの粒子ではほぼ沈着で除去されるが, 数μm以下の粒子では換気と不活化の寄与が大きい。 室内を漂うエアロゾル上の新型コロナウィルスの不活化の半減期は1.1時間程度であり, 換気回数1回/hの場合よりも減衰への寄与は小さい。 日本の一般家屋の日常生活時の換気回数は, 春夏で1.2-1.7回/h, 秋冬で0.6回/h程度であり, 病室などで感染対策として取られる換気回数よりはるかに低い。 窓開け換気は室内濃度を低減させるのに非常に有効であるが, 屋外の風向や風速によっては十分な換気量が得られないケースもある。 空気清浄機については, コロナウィルスについての研究はないが, HEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)を用いた場合には, ウィルスについても一定の効果が認められている。
著者
加瀬 七夏美 中村 友紀 植木 毅 桑原 直子 松尾 侑希子 三巻 祥浩 立川 英一 山田 陽城
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

【目的】コルチゾールは、血糖上昇、蛋白質異化促進、脂質分解促進、抗炎症や免疫抑制作用を有する生命維持に必須のホルモンである。生体がストレスに晒されると視床下部-下垂体-副腎皮質(HPA)系が活性化され、コルチゾールが大量に産生されてストレスに拮抗する。一方で過度なストレスによってHPA系機能が亢進され続けるとネガティブフィードバック機構が破綻し、過剰に分泌されたコルチゾールが精神疾患や代謝性疾患、悪性腫瘍、記憶障害などを引き起こす。近年、難治性うつ病患者ではHPA系機能障害が起こり、コルチゾール濃度の顕著な増加が持続されていることが知られている。演者らは漢方薬の香蘇散に見出された抗うつ様作用に、HPA系機能の改善作用が関わっていることを既に報告した。また先に、新たなHPA系機能改善物質を探索するため、35種類の漢方薬について副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)刺激によるコルチゾール産生に対する影響をスクリーニングし、生薬ダイオウが活性に関与することを見出した。今回、引き続きコルチゾール産生抑制活性を指標にダイオウの成分探索を行ったところ、活性成分を単離・同定したので報告する。【方法・結果】ダイオウ(日局、5.0 kg)の水抽出エキス(575 g)をDiaion HP-20カラムクロマトグラフィーに付し、順次極性を下げながら溶出させ5個の粗画分に分画した。このうち最も強い活性が認められたエタノール溶出画分について、各種クロマトグラフィーを用いて分離・精製を行い、6種のアントラキノン類を単離した。単離された化合物のACTH刺激によるウシ副腎皮質細胞のコルチゾール産生抑制活性を評価した結果、2種の化合物が強い活性を示した。
著者
奥田 知明 村上 道夫 内藤 航 篠原 直秀 藤井 健吉
出版者
一般社団法人 日本リスク学会
雑誌
リスク学研究 (ISSN:24358428)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.207-212, 2021-06-25 (Released:2021-06-23)
参考文献数
32
被引用文献数
1

Since airborne transmission has been considered as a possible infection route for the novel coronavirus in addition to contact and droplet infection routes, ventilation is an important measure against airborne route. In this paper, we describe the history of setting regulatory standard values and the interpretation of CO2 concentration as a measure against infectious diseases. Although the standard value of 1,000 ppm is not intended originally for infection control, it is practically useful as a guide value for potential infection risk management.
著者
藤原 直子
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.77, no.674, pp.759-766, 2012-04-30 (Released:2012-07-02)
参考文献数
44
被引用文献数
1

In this study we analyzed the formation and the establishment of teachers' room and principal's office in Japanese school buildings. The teachers' room was placed for rest and meal in the early time of the educational system, but after the late 20th year of the Meiji era, it was also used for works for class, school clerical works and official/unofficial meetings. The principal's office began to be placed around the 20th year of the Meiji era and progressively increased. Both were situated closely at the center of the first floor of the school building in the late Meiji era.
著者
勝木 桂子 相原 直彦 伊達 裕 武村 珠子 住田 善之 和田 光代 鎌倉 史郎 下村 克朗
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.291-300, 1997-05-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
19
被引用文献数
1

心室内伝導障害例での持続型心室頻拍 (SVT) の発生予知に時間解析法による加算平均心電図 (SAEOG) が有用であるかを検討した.SAECGを施行した心室内伝導障害例70例を, 12誘導心電図から右脚ブロック型を示す36例 (RBBB群) と左脚ブロック型を示す34例 (LBBB群) に分類し, SVTの既往の有無 [SVT (+) 群, SVT (-) 群] でSAEOG各指標を検討した.RBBB群ではTQRSD, LAS40, RMS40の3指標とも, LBBB群ではRMS40のみでSVT (+) 群とSVT (-) 群との間に有意差が認められた.SVT (+) 群を分離するための診断基準は, RBBB群ではTQRSD≧160mseo, LAS40≧40mseo, RMS40≦14μVとなり, 川頁に感度77%, 85%, 77%, 特異性78%, 70%, 74%で, LBBB群ではRMS40≦14μVとなり, 感度82%, 特異性87%で良好な診断精度であった.以上より, SAEOG各指標はLPの診断基準を新たに設定することにより, 心室内伝導障害例においてもSVTの予知が可能であると結論される.
著者
鈴木 かの子 松井 孝典 川久保 俊 増原 直樹 岩見 麻子 町村 尚
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021)
巻号頁・発行日
pp.4H3GS11d01, 2021 (Released:2021-06-14)

幅広いステークホルダーがSDGs(持続可能な開発目標)に取り組み,成功事例を共有することは重要である.そこで本研究は深層学習型の自然言語処理モデルBERTで,①活動事例や課題をSDGsに写像する分類器を構築すること,② SDGs間の連環関係 (nexus) を可視化すること,③地域課題とそれを解決しうる取り組み事例とのマッチングシステムを構築することを目的とした.まず,国連関連文書,日本の政府関連文書,内閣府が収集するSDGsの課題解決等に関する提案文書を収集し,各文書とそれに対応する複数のSDGsが対になったマルチラベルデータフレームを構築し,WordNetを用いたデータオーグメンテーションを行った.次に,訓練済み日本語BERTモデルをマルチラベルテキスト分類タスクでファインチューニングし,nested cross-validationでハイパーパラメータの最適化と交差検証精度の推定を行った.最後に,学習後のBERTモデルでSDGs間の共起ネットワークを可視化するとともに,地域課題と取り組み事例のベクトル埋め込みを行ってコサイン類似度を取得することで,マッチングシステムの開発を行った.
著者
寺西 眞 藤原 直 白神 万祐子 北條 賢 山岡 亮平 鈴木 信彦 湯本 貴和
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.482, 2004 (Released:2004-07-30)

ホトケノザは、主に他花受粉をおこなう開放花と自家受粉のみをおこなう閉鎖花を同時につける一年草で、種子にエライオソームを付着する典型的なアリ散布植物である。一般的に、自殖種子は親と同じ遺伝子セットを持つため、発芽個体は親と同じ環境での生育に適していると考えられ、他殖種子は親と異なる遺伝子セットを持つため、親の生育環境と異なる新しい環境へ分散・定着するのに適していると考えられる。したがって、自殖種子は親元近くへ散布され、他殖種子は親元から離れた環境へ散布されるのが生存に有利であると考えられている。 開放花由来種子は閉鎖花由来種子より種子重・エライオソーム重・エライオソーム/種子(_%_)が有意に大きく、トビイロシワアリによる持ち去り速度が大きいことが明らかとなった。エライオソームを取り除いたホトケノザの種子は、エライオソームが付いたままの種子よりトビイロシワアリに持ち去られる割合・速度が低かった。また、エライオソームを接触させたろ紙片はほとんど巣に持ち去られたが、エライオソーム以外の種子表面を接触させたろ紙片はほとんど持ち去られなかった。 このようなアリの行動の違いがなぜ生じるのかを検討するため、アリの反応に関わる物質・アリの資源となる物質に着目して種子表面の化学的特性を調べた。その結果、遊離脂肪酸(オレイン酸、リノール酸など)、糖(フルクトース、グルコース)、アミノ酸(アラニン、ロイシンなど)が含まれていることが分かった。 これらのことから、ホトケノザは種子表面、特にエライオソームに含まれる化学物質の量・質を繁殖様式によって変えることで、アリによる持ち去り速度をコントロールしている可能性があることが示唆された。
著者
佐原 直美 池添 博彦
出版者
帯広大谷短期大学
雑誌
帯広大谷短期大学紀要 (ISSN:02867354)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.37-45, 1999-03-25 (Released:2017-06-16)
参考文献数
24
被引用文献数
7
著者
大橋 宏正 北岡 教英 原 直 武田 一哉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.219, pp.59-64, 2010-10-01

音声を連続音声認識システムにより常時認識することによって得られる認識単語列からその場の雰囲気に適切な音楽・楽曲を提案し,再生するシステムを構築した.楽曲を説明するテキストより構築された文書ベクトル空間と,楽曲の音響特徴量を表現する音響ベクトル空間の対応付けを利用することで,大語彙音声認識によって得られた音声認識単語列を音響ベクトル空間へとマッピングする.また,大語彙音声認識ではカバーできない固有名詞などのキーワードをワードスポッティングで認識する.本稿ではシステムの概要と基本的な性能評価の結果と実際の雑談音声への応用に向けた予備実験結果を示す.楽曲のレビューを読み上げた音声を認識した結果による楽曲検索結果と,レビューのテキストを用いた結果との比較により,テキストではMRR値1で検索できたものが,音声認識性能はWER70.55%,ワードスポッティング性能はF値31.58%でもMRR値0.83と比較的良い結果を得た.また,今後の雑談認識の応用の予備的実験を行い,雑談書き起こしからの例を示した.
著者
萩原 直幸
出版者
日本フランス語フランス文学会 中国・四国支部
雑誌
フランス文学 (ISSN:09125078)
巻号頁・発行日
no.33, pp.17-26, 2021-06-01

本稿は2019年12月5日、香川大学を主催校とし、新型コロナウィルス感染予防のためのオンラインで開催された日本フランス語フランス文学会中国・四国支部大会にて行った口頭発表をもとに、大幅に加筆・修正をしたものである。」
著者
中嶋 麻菜 海老原 直邦 西条 寿夫 大平 英樹
出版者
人間環境学研究会
雑誌
人間環境学研究 (ISSN:13485253)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.19-25, 2013 (Released:2013-06-29)
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

Many people regularly listen to music for stress reduction and for healing. A number of studies have investigated the effects of music on psychological and physiological states. However, there have been few studies to examine the effects of music on recovery from stress states. Therefore, the present study investigated how psychophysiological stress states can be recovered through listening to music. Sixteen participants (3 men and 13 women) were assigned both to a music-condition and to a no music-condition, and performed the Trier Social Stress Test (TSST). The psychological parameters, stress hormones (salivary cortisol and salivary chromogranin A) and autonomic indices (heart rate and heart rate variability; HRV) were measured. All parameters, except autonomic indices, significantly increased after the TSST. Psychological parameters and salivary cortisol showed more significant reduction in participants listening to music than in participants who did not listen to music. When participants listened to music, the heart rate increased and the high frequency of HRV decreased. There was no change in salivary chromogranin A and low frequency/high frequency ratio (LF/HF ratio) of HRV. These results suggest that listening to music led to sympathetic nervous activation rather than parasympathetic nervous activation. Within physiological parameters, salivary cortisol corresponded to psychological stress state most. It could be interpreted that uplifting music made sympathetic nervous activation and led to exultation or excitement rather than to relaxation. Therefore, the autonomic indices would also be corresponding to psychological stress states.
著者
赤澤 堅造 奥野 竜平 一ノ瀬 智子 竹原 直美 松本 佳久子 益子 務
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.54Annual, no.Proc, pp.3OS2-3-5-1-3OS2-3-5-2, 2016 (Released:2016-11-19)
参考文献数
2

There is an important cohort study indicating that frequent performance of music instrument has the significant effect of reducing the risk of dementia in the elderly. We have been developing a novel electronic musical instrument Cymis (Cyber Musical Instrument with Score), showing that persons with neural or motor impairments such as cerebral palsy can play the piece easily. The aim of the present study is to develop a network system enabling the ensemble of the Cymis. Firstly we found that the elderly can play the Cymis easily under support of a music therapist. Secondly, four university students including two female majoring music and two beginners of music were able to perform ensemble with the Cymis, where two beginners watched guide of performance on the monitor. By measuring time differences in performances of four people, it was indicated that beginners also could perform ensemble with slight time differences against others.
著者
柴原 直利 嶋田 豊 伊藤 隆 新谷 卓弘 喜多 敏明 後藤 博三 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.43-50, 2000-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
20

C型慢性肝炎は高率に肝硬変症へと進展し, 自然治癒の可能性は非常に低いとされている。筆者らは, 和漢薬治療によりC型肝炎ウイルスが消失したC型慢性肝炎の一例を経験した。症例は37歳の女性。1982年の第一子出産時に輸血を受けた。1983年1月頃に全身倦怠感を自覚し, 慢性肝炎と診断され治療を受けていた。1988年に肝生検により慢性活動性肝炎と診断され, 同年5月に当科を受診した。初診時より補中益気湯・桂枝茯苓丸を併用投与し, 自覚症状は改善したが, ALT値は不変であった。しかし, 柴胡桂枝湯合当帰芍薬散投与後より徐々にALT値に改善が得られ, 加味逍遥散料に転方した1996年5月以降は正常化した。ウイルス学的検査においては, 柴胡桂枝湯合当帰芍薬散投与中である1995年3月に測定したHCV RNA定量では104 Kcopies/mlを示したが, 1998年4月以降は検出感度以下となった。