著者
松本 哲一 中野 俊 古川 竜太 山元 孝広
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.153-163, 2018-08-10 (Released:2018-08-29)
参考文献数
21
被引用文献数
3

山形・福島県境に位置する第四紀の大型複成火山である吾妻火山について,同位体希釈法による38溶岩試料のK–Ar年代測定を行い,火山活動の時間的空間的変遷を明らかにした.吾妻火山は安山岩の溶岩流が主体の火山であり,一部の火山体を除き,岩石学的にはほとんど区別できない.年代測定に基づき,完新世に形成された浄土平火山を含め,12の火山に区分した.最も古い活動は 1200 ka 頃に東側で開始し,徐々に西方へ移動し,700 ka 頃に西端で活動,その後,再び東側に時間をおって活動中心が移動している.従来は,吾妻火山の活動は300 ka 以降,完新世の活動までの長い休止期が存在するとされていたが,その期間にも活動は継続しており,現在まで長い休止期を挟まずにほぼ継続的に活動が続いていることが明らかになった.
著者
神野 誠 中澤 和夫 松日楽 信人 宮川 豊美 砂押 貴光 羽藤 武宏 森川 康英 小澤 壯治 古川 俊治 北島 政樹
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2002, 2002
被引用文献数
3

筆者らは, 腹腔鏡下手術を対象とし, マスタとスレーブが一体化され, 簡単・コンパクトでかつ操作性を優れた手術支援用マニピュレータを開発している。試作した一体型マスタとスレーブマニピュレータについて, ファントムを用い腹腔鏡下で彎曲針による縫合結紮作業を実施し, 従来の鉗子では不可能な方向からの縫合作業が容易であることが確認できた。さらに, 縫合時の各関節角動作データ, 作業時間および作業精度を取得し, 操作性の定量的評価を行った。
著者
神野 誠 中澤 和夫 松日楽 信人 宮川 豊美 砂押 貴光 羽藤 武宏 森川 康英 小澤 壯治 古川 俊治 北島 政樹
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2003, 2003
被引用文献数
3

筆者らは, マスタとスレーブが一体化され, 簡単・コンパクトでかつ操作性に優れた腹腔鏡下手術支援用ロボット鉗子を開発している。これまで外径12mmのタイプを試作してきたが, 今回, 外径10mmおよび5mmについて試作したので, その結果について報告する。
著者
大峡 充己 古村 孝志 前田 拓人
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

本研究では、強震観測データと地震波伝播シミュレーションの同化に基づく長周期地震動の即時予測の実現に向け、データ同化手法の高速化に向けた検討を行った。これまでFurumura et al. (2019)は、K-NETとKiK-net強震観測と3次元差分法による地震波伝播シミュレーションのデータ同化に基づき、2007年新潟県中越沖地震と2011年東北地方太平洋地震における、都心の長周期地震動の即時予測実験を行った。データ同化には、震度の即時予測(Hoshiba and Aoki, 2015)や津波の即時予測(Maeda et al., 2015; Gusman et al., 2016)などで広く用いられている最適内挿法が用いられ、長周期地震動の計算は3次元地下構造モデルを用いた差分法計算により行われている。近年の高速計算機により、日本列島規模の長周期地震動のシミュレーションは、地震波(表面波の基本モード)の伝播速度の数倍以上の速度で行うことは十分可能になった。しかし、長周期地震動の予測から揺れが実際に始まるまでの十分な時間的猶予を確保するためには、コストの高い地震波伝播計算を、より高速に行うための研究開発が必要である。そこで、本研究は従来のデータ同化・予測に表面波伝播のGreen関数を活用して高速化する手法の有効性を検討した。この手法はWang et al. (2017)でGreen’s Function-Based Tsunami Data Assimilation (GFTDA)として、沖合津波計を用いた津波の高速データ同化・予測手法として提案されている。GFTDAでは、予めデータ同化地点と最終予測地点の間の津波伝播のGreen関数を計算しておき、これをデータ同化地点での観測データとシミュレーション結果との残差に畳み込み積分することで、予測地点の波形を計算する。差分法によって残差を時間発展させていく計算過程を予め計算されたGreen関数で代用するため、最終予測地点の津波波形を瞬時に求めることができる。通常のデータ同化に基づく予測手順と数学的に等価であることはWang et al. (2017)により証明されている。 本研究では、まずこの手法の長周期地震動への適用性を確かめるために、2004年紀伊半島南東沖地震(M7.4)のK-NET, KiK-net強震観測データを用いたデータ同化の数値実験を行い、K-NET新宿地点(TKY007)の長周期地震動の予測を行った。同化・予測計算はJ-SHIS地下構造モデルに対して行った。Green関数の計算を効率的に進めるために、相反定理を用いた震源と観測点を入れ替えた計算を行った。実験より、従来のデータ同化手法による予測とGreen関数を併用した本手法による予測が同一となることを確認した。本手法の活用により、震源域近傍の和歌山県〜三重県の観測データの同化後、直ちに遠地の最終予測地点の長周期地震動が得られることから、猶予時間を大幅に拡大することができる。さらに、熊野灘沖のDONET観測網を利用することで、より即時予測の精度の向上と猶予時間の確保が期待できることも確認した。 続いて、Green関数を併用した手法を用いた南海トラフ地震の長周期地震動の即時予測実験を行った。最終予測地点はKiK-net此花(OSKH02)、K-NET津島(AIC003)、新宿(TKY007)の3点である。震源モデルに内閣府(2016)の1944年東南海地震と1946年南海地震、そして想定最大級(M9)のものを用いた。それぞれの地震の長周期地震動は3次元差分法計算により求め、これを想定観測データとみなして実験に用いた。本実験ではK-NET, KiK-netに加え、DONET、気象庁海底ケーブル地震計、及び高知県沖〜日向灘に展開が計画されている海底津波地震観測網N-netの予想地点での想定観測データも用いた。最終予測地点の長周期地震動の強さは、水平動の速度応答スペクトルのGMRotD50 (水平2成分の波形記録を0~90°回転させたときのそれぞれの速度応答スペクトルの幾何平均のメディアンの値; Boore et al., 2006)により評価した。また、長周期地震動の継続時間の影響を評価するために、地動の累積変動量も計算した。これらの長周期地震動の予測精度は同化の経過とともに一様に高まる。例えば昭和南海地震の震源断層モデルと破壊が東側(熊野灘沖)から進行する地震シナリオでは、地震発生から70秒後の新宿地点の速度応答スペクトル(固有周期10秒)と累積変動量の予測は、大きな揺れが始まる約80秒前に実際の7割のレベルまで達成することを確認した。一方、破壊が西(足摺岬沖)から始まるシナリオでは、最終予測地点が遠い分、同等の予測精度を得る時点でより長い猶予時間(約120秒)が確保できることがわかった。しかしながら、断層破壊が都心に近づくにつれ、長周期地震動レベルが増大するため、より長時間(100秒間)の同化時間が必要であった。いずれにせよ、精度の高い予測と猶予時間の両方を確保するためには、震源域近傍での強震観測とともに、巨大地震の断層破壊の拡大に合わせてデータ同化を一定時間続け、予測を更新し続けることが必要である。
著者
古明地 樹 Tatsuki KOMEIJI コメイジ タツキ
出版者
総合研究大学院大学文化科学研究科 / 葉山町(神奈川県)
雑誌
総研大文化科学研究 = Sokendai review of cultural social studies (ISSN:1883096X)
巻号頁・発行日
no.15, pp.47-64, 2019-03-31

本論では、江戸時代中期の絵師、橘守国(延宝七(一六七九)年―寛延元(一七四八)年)画作『絵本通宝志』(享保十四(一七二九)年刊、以下『通宝志』)を、「太公望図」を中心に分析することにより、守国が行った作画方法を明らかにし、守国作品の位置づけを試みる。今回の分析から、守国の作図は画題が持つ複数の定型表現を取り合わせて行われていると推定できた。これは、守国が狩野派に学んだ知識を絵師の需要に即して変容させたものであると考えるものである。近世中期以降、町絵師が増加することで、粉本に対する需要が増していた。狩野探幽の弟子である鶴澤探山に学んだ橘守国は、その需要に応じるように大坂で多くの絵手本を作成した。それらの絵手本は浮世絵師を含む町絵師に大きな影響を及ぼしたことで知られる。本論で扱う守国画作の『通宝志』は、柏原屋より刊行された絵手本である。様々な画題を紹介し、人物図や和漢の故事画題に関しては解説を付す形式をとる。自序に従えば、守国は、作画の際に先例となる図様を粉本として用いるべきだと考えており、粉本として『通宝志』を手掛けたという。この主張は典型的な粉本主義と同種のものだと言える一方で、図様の中には先例から逸脱したものが少なくない。特に、巻五上にはその傾向が強く表れる。巻五上は、狩野永徳以来宝永年間まで狩野派が描き続けてきた賢聖障子(けんじょうのそうじ)という画題を掲載している。賢聖障子とは、三二人の漢人物を描いた紫宸殿を飾る画題であり、守国が狩野派の粉本を目にしていたと推測される。しかし、守国が描く賢聖の図は狩野派画の賢聖障子資料と同一の構図ではない。粉本主義の主張と、描いた作品の独自性という矛盾に対し、本論では「太公望図」を中心として分析を行った。その結果、太公望図には、舶載の漢籍などに由来する肖像画的な系統と、故事を絵画化した系統の二系統が存在することが判明した。また、守国の作画は両者を取り入れていることが判明した。これは賢聖障子の画題紹介をすると同時に、絵師の需要に即した図を守国が作画したものであると推測する。このことから、『通宝志』巻五上から見る守国作品は、絵画領域において狩野派という雅文化の知識を、庶民文化へと普及させる一翼を担ったと考えられ、知識が庶民文化へ伝達される近世中期的特徴と一致するものである。
著者
鈴木 優也 福島 隆男 岩澤 貴宏 中村 元 七澤 繁樹 牧野 邦比古
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.274-278, 2019 (Released:2019-05-28)
参考文献数
19
被引用文献数
2

O-157による溶血性尿毒素症候群(hemolytic uremic syndrome; HUS),急性脳症は小児に好発し成人での発症は稀である.今回成人女性で急性脳症を発症し後遺症なく回復した1例を経験した.症例は24歳女性.腹痛,下痢で発症し,便からO-157と志賀毒素が検出された.第6病日にHUS,第11病日に急性脳症を発症した.一時人工呼吸管理となったが,ステロイドパルス療法,血漿交換療法(plasma exchange; PE)を行い第53病日に後遺症なく退院した.成人女性は男性よりも志賀毒素の受容体となるGb3の発現率が高く高リスクと考えられる.治療としては炎症性サイトカインを抑制するステロイドパルス療法とPEの有効性が示唆され,積極的に施行を考慮すべきと考える.
著者
米森 敦也 近江 亮 二瓶 和喜 真木 健裕 金古 裕之 三栖 賢次郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.729-734, 2013 (Released:2013-09-25)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

症例は75歳,男性.腹痛,発熱にて救急搬送.急性虫垂炎による回盲部膿瘍の診断で当科入院.保存的加療で経過観察としたが,膿瘍が増大したため,13病日に膿瘍穿刺ドレナージ施行し,28病日に退院となった.その後の大腸内視鏡検査にて,虫垂開口部に突出する腫瘍が認められた.生検で管状腺腫の診断となり,腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.虫垂内に15×10mmの有茎性腫瘍を認め,病理組織検査にて虫垂管状腺腫と診断された.術後に臍部創感染と後腹膜気腫がみられたが,保存的加療で軽快し,術後30日目に退院となった.虫垂原発の良性腺腫は非常にまれな疾患であるが,術前診断できれば腹腔鏡下手術の良い適応である.
著者
佐々木 全 名古屋 恒彦
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = The journal of Clinical Research Center for Child Development and Educational Practices (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
no.14, pp.409-421, 2015-03-10

筆者らは高機能広汎性発達障害等注)のある小学生らを対象としたエブリ教室を開催している(佐々木,加藤,2011 1)).その目的は参加児にとっての休日生活の充実である.エブリ教室では,その活動内容としてタグラグビーを設定した.タグラグビーとは,ラグビーの簡易普及版である.タグラグビーは,タックルなどの接触プレーを排除した安全なスポーツであることが指摘されがちだが,実は,接触プレーを排除したことによって独自の競技特性を有すことになり(鈴木,2012 2)),そこに競技としての面白さが生まれている. また,タグラグビーは,平成20年版小学校学習指導要領解説における例示種目の一つとなり,以後その教材研究が徐々に進められている.その内容は当然ながら,小学校体育の授業における内容であり,そこでの展開方法や内容,具体的な競技にかかる知識技能,例えば,状況判断やパスなどの習得や発揮などに関する指導方法に関する実践的,実証的な研究がある(例えば,鈴木,2009 3);永友,勝田,2009 4);杉田,2010 5);木内,2012 6)).タグラグビーに関する研究において,対象者を高機能広汎性発達障害等のある児と限定し,かつ実践の場を学校の授業以外の活動とし,さらに,タグラグビーやラグビー経験のないボランティアを主たる支援者とし,共にプレーしながら支援するという実践方法という点で,エブリ教室の実践及び本研究は類を見ない.
著者
影山 恵美子 古岩 清子 木村 りつ子 折井 孝男 伊賀 立二
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.435-442, 2002-10-10 (Released:2011-03-04)
参考文献数
3

The Ministry of Health and Welfare (the present, Ministry of Health, Labour and Welfare) has begun to report the recall information of medical supplies (in short, recall information) on the home page of the pharmaceutical information provision by the Organization for Pharmaceutical Safety and Research since April 1 st, 2001. However, all recall information on the home page appears the day after the official publication. In case of medical devices in comparison to pharmaceuticals, it takes a longer time to be reported on the home page. However, such recall information is valuable, because it is the only information source, which medical institutions can obtain up-to-date information spontaneously.At Uwajima City Hospital, from May 2001, the pharmacists have participated in a safety management program regarding new medical devices or medical materials.In order to keep all medical materials safe, pharmacists check the recall information regularly and provide them to the clinical site for risk management. Not only the medical institutions but also the dealers have begun to make practical use of such recall information. However, no system for using such information has yet been established among them. According to the regulations of recall information, a contact system from the maker to the dealer has been established. However, the first information of medical devices is always obtained through the home page. The way to obtain the information has been changing.Needless to say, the “Internet” is nowadays the main media for the communications all over the world. Accurate information must be speedy and reliable. The rational use of such information on the Internet is therefore urgently needed.
著者
北方 晴子 古賀 令子
出版者
文化女子大学
雑誌
文化女子大学紀要 服装学・造形学研究 (ISSN:13461869)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.21-30, 2011-01

本稿は,筆者を含む研究者6名による共同研究「ファッション誌の現在に関する一研究」1)の成果報告の一部である。2008年に行った先行研究や業界誌における議論を分析・検討する基礎調査を経て,2009年9月に<ファッションとメディアを考える>シンポジウムを企画開催した。基礎調査とシンポジウムにおける議論の中で浮上したのが,中国市場の急速な発展である。そこで,ファッションおよびファッション・メディアの発展プロセスの研究において,最重要なケーススタディとして中国市場の調査研究の重要性が高まっていると考え,主要ファッション誌の編集者インタビューを中心とする中国ファッション誌の現地調査を行った。その結果,これまでファッション誌と読者との関係は,ファッション誌が読者を教育するという状態にあり,中国ファッション誌の市場やコンテンツにおける牽引役を日本系や欧米系提携誌が担ってきたが,現在中国ファッション誌の最大の課題は,美意識や価値観の「本土化」(脱輸入依存)にあることが明らかとなった。また,ウェブと紙媒体との関係についても,ウェブは紙媒体に対する脅威ではなく補完・共存するべきものとの捉え方が共通していたことも,今後のファッション誌の展望について考察を進めるに際しての1つの指針を得た。
著者
成田一也 小林優太 宮島香里 ステーブンバンダベフト 粟飯原萌 古市昌一
雑誌
第76回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.1, pp.647-649, 2014-03-11

近年,勉強に対する苦手意識からモチベーションが上がらず,その結果数学等を嫌いになる生徒の増大が問題となっている.この問題を解決するために教育現場では学習者のモチベーション向上のため,様々な方法が実施されており,その一つにシリアスゲーム(以下SG)を利用する方法が知られている.しかし従来のSGでは,紙の教材を電子化しただけでモチベーション向上には繋がりにくいことや,数学的思考力の向上には役立つが,その成果を試験などで発揮できたかどうかが十分評価されていないという問題があった.そこで,本研究ではそれらの問題を解決するゲームとして,三角関数を題材とした横スクロールアクションゲームを作成し,その初期評価結果について述べる.
著者
古牧 徳生
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 = Bulletin of Nayoro City University (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.23-61, 2018-03

医学の進歩により急速な高齢化が進む先進国では安楽死を合法化する動きが顕著になってきた。本稿は快楽主義の視点から,まず安楽死をめぐる諸事情を概観したあと,今や安楽死は単に個人の要請というだけでなく,社会としても無視することのできない要請ではないかと問うものである。 一節では安楽死が尊厳死へと変わっていく経緯とその際の議論を概観する。 二節ではオランダが世界で最初に安楽死を合法化するまでの歩みを概観する。 三節では日本国内の安楽死事件を通して, 安楽死は三種類に分類されることを確認する。 四節では日本でも学会指針という形で徐々に尊厳死法制化へ進みつつあることを述べる。 五節では安楽死容認の風潮から予想される危険について述べる。 六節では前節での問題点について筆者なりの回答を示す。Facing the rapid aging of society due to ongoing advances in medicine, many developed countries have made moves to legalize euthanasia. From the hedonistic point of view, this article argues for the necessity of euthnasia, not only as personal demand but also as social request. It consists of six sections.1.Ideological review of the transition from "euthanasia" to "death with dignity".2.Steps towards the legalization of euthanasia in the Netherlands.3.Some euthanasia incidents in Japan.4.Struggles towards passing a euthanasia bill in Japan.5.Some prospective problems arising from an increasing tolerance of euthanasia.6.The author's response to the problems posited in the previous section.
著者
神藤 英二 望月 英隆 寺畑 信太郎 古谷 嘉隆 内田 剛史 酒井 優
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.30, no.11, pp.2210-2214, 1997-11-01
被引用文献数
8

盲腸に発生した, 腺癌と偏平上皮癌の成分を含む内分泌細胞癌の症例を経験した. 肉眼的には典型的な2型腫瘍であったが, 組織学的検索から同一腫瘍内に内分泌細胞癌と腺癌の領域を認め, さらに内分泌細胞癌の内部には偏平上皮癌への分化を示す部分を多数認めた. 内分泌細胞癌の診断の過程で行った免疫染色では, neuron-specific enolase に陽性を示したものの, クロモグラニンAには陰性であったため, 電子顕微鏡検査を追加, 内分泌顆粒を認めたことで, 最終的に内分泌細胞癌の診断を得た. 臨床的には悪性度が高く, 肝転移を認めたため肝切除を含む根治度Bの手術を施したが, 残肝再発を来し, 術後9か月目に死亡した. 今回の症例は, 組織学的多様性から, 腫瘍発生母地, およびその分化の過程が注目されるので報告した.
著者
古川 元也
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.180, pp.129-140, 2014-02-28

室町時代後期の都市京都を考える際に、社会的組織として重要な構成要素となるのは洛中日蓮教団(宗祖日蓮を師と仰ぐ信仰集団)である。洛中の日蓮教団は鎌倉時代後期から南北朝期に日蓮門下六老祖の一人である日朗が京都への布教を開始し、その後大覚妙実、日像の布教によって教線を拡大し、後醍醐天皇による四海唱導布教の綸旨を得てからは、四条門流を中心に諸派の離合集散を繰り返しながらも宗勢を増してゆくのである。日蓮教団は天文五年に宗門にとっての一大法難ともいうべき天文法華の乱(天文法難)に遭ったとされ、最終的には帰洛を勅許されるも一時的には洛中より追放されていた。その後も教団内部における門流の対立や和合、織田信長による天正七年の安土宗論敗北など教団内の運営は安定性を欠き、通説的理解では十六世紀後半の教団の恢復は十分にはなされなかったとされている。ところで、天文法華の乱を前後して制作されている洛中洛外図の諸本には日蓮教団系寺院が描きこまれている。従来の洛中洛外図研究ではこれら寺院の存在が景観年代の確定に寄与したこともあったが、洛中洛外図の諸本が制作依頼者の意図に基づく理想的景観を盛りこんだ工房作であることを考えれば、個別の景観年代追求はさほど意味のあることでもない。また、これら日蓮教団寺院は諸本によって差異があり、描写も一様ではない。むしろ考究すべきは、洛中より追放処分を受けた教団が描き続けられなければならない理由はどのようなものなのかであり、洛中諸本山のうちの描写される本山とそれ以外の本山に差異はあるのか、そのことはどのような社会的背景を持つのかを確定する必要があろう。本稿では、成立年代とその制作背景が確定されつつある洛中洛外図の研究成果を援用しつつ、描かれた日蓮教団諸本山が意味する点について論及したい。
著者
大槻 秀樹 五月女 隆男 松村 一弘 藤野 和典 古川 智之 江口 豊 山田 尚登
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.9, pp.763-771, 2009-09-15
参考文献数
19

精神疾患のいくつかは,季節性に寛解・増悪することが指摘されており,とくに気分障害における季節性がよく知られている。自殺企図患者や入院患者における季節性の変動を示すデータは散見されるものの,一般救急外来を受診する患者に関するデータは少ない。我々は平成17年 9 月から 1 年間,滋賀医科大学附属病院救急・集中治療部を受診した3,877例(救急車により搬送された患者2,066例を含む)を調査した。精神科疾患は299例(7.7%)であり,その中でF4(神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害)が158例と最多であった。精神科疾患で受診する患者数は, 6 ~ 7 月と 9 ~10月にピークがあり, 1 月に最も減少していた。精神科疾患で受診する患者数は,日照時間や降水量との間に関連性は認められなかったが,気温が上昇すると精神科疾患により来院する患者数が増加することが示された。これらの結果は,救急外来を受診する精神科疾患の特徴を示すと共に,今後,救急外来において精神科疾患を早期に発見する手助けの一つとなりうると思われる。
著者
呉 景龍 古谷 慎平 楊 家家 高橋 智
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集C編 (ISSN:18848354)
巻号頁・発行日
vol.77, no.777, pp.2062-2070, 2011 (Released:2011-05-25)
参考文献数
10
被引用文献数
2 3

Driver safety is an important and often sensitive issue for seniors. Statistics show that the elderly are more likely than other drivers to receive traffic citations for failing to yield, turning improperly, and running red lights and stop signs all indications of decreased driving ability. Currently in Japan, half of the deceased in traffic accidents are elderly people. In present study, we focused on how the pedal placement affect on braking action in emergency. First, ten healthy young and ten elderly individuals were asked to perform a simple reaction experiment by foot. Then, the same subjects were instructed to complete a braking action experiment with different pedal placement condition. The results suggested that both simple reaction time and foot movement time of elderly subjects were significantly longer than that of young subjects. Moreover, the brake pedal force of elderly subjects was lower than that of young subjects. Thus, aging influenced both of simple reaction time and braking action in emergency. In addition, even the pedal placement changed characteristics of braking action of both young and elderly subjects, the most comfortable pedal placement of elderly subjects differed from young subjects.