著者
池田 一 吉田 真也 安養寺 信夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_105-I_110, 2015 (Released:2016-01-31)
参考文献数
14

火山噴火に対する危機管理の意思決定を行うにあたり,最も困難な側面のひとつは火山観測データの解釈である.火山観測データに応じて,火山噴火の危険性を定量的に評価することが可能となれば,火山噴火時の危機管理の意思決定を支援する重要な情報となる. 本研究では,火山噴火の危険性について,火山観測データを噴火確率として定量的に評価した.具体的には,御嶽山の2014年危機を対象として,火山観測データのうち火山性地震と火山性微動の発生回数のデータを用いて,ベイズ推定により,時々刻々と変化する噴火確率を推定し,火山噴火の危険性を定量的に評価できることを示した.
著者
吉田 永弘
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.18-32, 2013

可能の「る・らる」は,中古では否定可能を表す用法しか持たず,中世になって肯定可能を表す用法が現れたと言われている。本稿では,通説の検証を行いながら,肯定可能の「る・らる」の展開を描く。まず,実現の有無という観点から肯定可能を<既実現可能><未実現可能>の2類に分け,事態の性質によって,I既実現の個別的事態,II恒常的事態,III一般論,IV未実現の個別的事態の4種に分ける。その上で,中世以前はI〜IIIの<既実現可能>に留まり,IVの<未実現可能>は近世に現れることを示す。また,<未実現可能>が出現した要因を,未実現の事態の表現方法の変化のなかに求める。
著者
吉田 司雄
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.30-44, 2001-04-10

江戸川乱歩「二銭銅貨」、坂口安吾「アンゴウ」、大岡昇平「暗号手」。これら「暗号」解読を作中に組み込んだ作品群は、テクストを読むという行為自体を問題化している。メッセージの送信者が目指した受信者としてではなく、いわば「選ばれなかった読者」としてメッセージに向かい合う時、情報伝達行為の問題性もまた明らかになる。そこから、情報化社会における文学研究のありようを考える手掛かりを探ってみたい。
著者
吉田 成朗 鳴海 拓志 廣瀬 通孝
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2013論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.266-271, 2013-09-27

本研究では,皮膚電気活動を用いた接触情報を利用してキス行為に新たな価値を付加し,人前でのキス行為の誘発を目的としたエンタテイメントシステムを提案する.カップル間でのコミュニケーションの手法としてお互いの唇を重ね合わせるキス行為がある.そうした,カップル間の行為を拡張するため,キスによって二人の写真がデコレーションされるフォトフレームを開発した.被験者実験により提案システムによって,カップル間のキス行為が誘発されることを確認した.
著者
伊藤 英之 吉田 真理夫 長山 孝彦 脇山 勘治 原田 憲邦 南里 智之
出版者
公益社団法人 砂防学会
雑誌
砂防学会誌 (ISSN:02868385)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.47-53, 2012-05-15 (Released:2015-08-03)
参考文献数
18
被引用文献数
3

Snowmelt-type mudflow is often observed when a pyroclastic flow, surge, blast or a hot-debris avalanche moves over a snow-covered slope. We constructed the experimental equipment to simulate snowmelt due to high-temperature rock fragments moving over a snow-covered channel. The experiments were carried out for nine different cases, changing the parameters of temperature, rock particle diameter, and snow density. On comparing the hydrographs of these nine cases, we found that the following conditions lead to rapid snowmelt and large peak flow : (1) the temperature of the pyroclastic material is sufficiently high ; (2) the snow density is remarkably high, as in the case of solid ice ; and (3) snow is saturated with liquid water, as in the case of slush. The results indicate that the volume of the snowmelt-type mudflow particularly depends on the snow density and the temperature of the pyroclastic materials.

9 0 0 0 異國物語

著者
吉田幸一編
出版者
古典文庫
巻号頁・発行日
1995
著者
中西 英之 吉田 力 西村 俊和 石田 亨
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.1356-1364, 1998-05-15
参考文献数
18
被引用文献数
19

FreeWalkは休憩時間の雑談のような非形式的なコミュニケーションを支援する電子会合システムである.FreeWalkはだれもが互いに出会い,実世界と同じように振る舞うことのできる3次元仮想空間を提供する.会合の参加者は自分のカメラ画像が張りつけられた3次元物体として表され,位置と向きを持つ.参加者は空間内を自由に動き回ることができる.参加者の音声は,その音量が互いの距離に反比例して聞こえる.話したい参加者同士が互いに近づいて会話グループを構成するので,混乱することなく多くの人々が会合に参加することができる.FreeWalkのシステムは位置関係のみを管理するコミュニティサーバと各参加者に対応するクライアントからなる.カメラ画像や音声はクライアント同士の間で必要に応じて送受信される.FreeWalkの使用実験を研究室内に加え,大学間や海外を含む多地点間で行い,動作性能の評価を行った.FreeWalk is a desktop meeting system to support informal communication just like chatting at a coffee break.FreeWalk provides a three dimentional virtual space where everybody can meet and can behave just as they do in real life.Each participant is represented as a three dimentional object on which his/her live video is mapped,and has a location and a view direction.He/she can move and turn freely in this space.Voice volume is inversely proportional to the distance between sender and receiver.A participant approaches others and form a meeting organization in order to talk to them and so that many participants can talk without confusion.The FreeWalk system consists of a community server and clients.A community server controls information about locations and view directions.Live video and voice data are transferred between clients on demand.We held meetings experimentally with using FreeWalk in various environments to evaluate operational performance.
著者
吉田 善哉
出版者
京都大学文学部科学哲学科学史研究室
雑誌
科学哲学科学史研究 (ISSN:18839177)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.42-63, 2014-03-31

Since the late 20th century, studies on evolution and on development have interacted with each other and have made a significant success in biological research. This interaction between evolution and development has often been called evolutionary developmental biology, for short, "evo-devo". Moreover, some biologists suggest a newer framework called ecological evolutionary developmental biology, for short, "eco-evo-devo", which attempts to reveal mechanisms by which environmental factors help to construct variation, and is said to be the sign of "a new and more inclusive evolutionary theory". This article examines the relationship between eco-evo-devo and evo-devo. Although evo-devo has concentrated on developmental genetic approaches in its middle stage, it was originally more diverse in terms of its approaches in its early development and contained many concepts and approaches, including ecological and environmental ones emphasized in eco-evo-devo. Thus it is more reasonable to regard eco-evo-devo as a part of evo-devo in which the emphasis is shifting from studies in laboratories to studies taking environmental factors into account.
著者
師 茂樹 吉田 叡禮 石井 公成
出版者
花園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究においては、聖語蔵に収録されていた沙門宗『因明正理門論注』・崇俊『法華決釈記』・『法華略讃嘆』・『法華経二十八品略釈』巻上・『金剛般若経疏』、佛教大学図書館蔵『大智度論略鈔』、国立歴史民俗博物館蔵『唯識比量』(水木家資料)など、従来知られていなかった未翻刻文献を複数発見し、その翻刻デジタルテキストと校訂版を作成することができた。これらの文献には多くの逸文が含まれ、東アジア仏教の解明に資することが期待される。いくつかの文献については学会等で発表し、その重要性が認知されている。近日中にデジタルテキストと校訂版を公開する予定である。
著者
光田 航 東中 竜一郎 李 廷軒 杉山 弘晃 水上 雅博 中村 竜太 安達 敬武 川端 秀寿 吉田 仙 杵渕 哲也
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.1172-1205, 2023 (Released:2023-12-15)
参考文献数
53

本研究では,単一の人物の大規模な対話データを大規模言語モデルと組み合わせることで,対象人物を再現するチャットボット(なりきりAI)を構築した.さらに,構築したチャットボットの公開実験とそのエラー分析を行うことで,現状の到達点と問題を調査した.その結果,構築されたチャットボットは高い自然さとキャラクタらしさを持つことが明らかになった.さらに,対象人物を再現するチャットボットのエラーは,属性に関するエラーと関係に関するエラーに分けられ,また,自己に関するエラーと他者に関するエラーに分けられることが明らかになった.
著者
吉田 隆雄 幸田 健一 中尾 進太郎 大山 行也
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.146, no.2, pp.106-114, 2015 (Released:2015-08-10)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

ニボルマブ(遺伝子組換え)[商品名:オプジーボ®点滴静注20 mg,100 mg,以下ニボルマブ]は,ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体であり,「根治切除不能な悪性黒色腫」を効能・効果として,2014年9月より世界に先駆けて日本で発売された新たな免疫チェックポイント阻害薬である.非臨床試験において,ニボルマブは,ヒトPD-1の細胞外領域に特異的に結合し,PD-1とPD-1リガンド(PD-L1およびPD-L2)との結合を阻害した.また,ニボルマブは抗原刺激によるヒトT細胞の増殖およびIFN-γ産生を増強し,悪性黒色腫患者T細胞を用いた悪性黒色腫抗原ペプチド再刺激系においては,腫瘍抗原特異的CD8陽性T細胞およびIFN-γ産生細胞を増加させ,ヒト悪性黒色腫細胞に対するCD8陽性T細胞の細胞傷害活性を増強した.さらに,ニボルマブは各種抗原を接種したサルの細胞性および液性免疫応答を増強し,抗マウスPD-1抗体4H2は,マウス同系担がんモデルにおいて腫瘍組織中の免疫関連遺伝子の発現量を増加させ,抗腫瘍効果を示した.このようにニボルマブは,PD-1とPD-1リガンドとの結合を阻害し,抗原特異的なT細胞の増殖,活性化およびがん細胞に対する細胞傷害活性を増強することで抗腫瘍効果を示すことから,悪性腫瘍に対する新たな治療薬になると考えた.臨床試験において,悪性黒色腫患者を対象とした国内第Ⅱ相試験にて有効性,安全性および忍容性が確認されたことから,ニボルマブは悪性黒色腫の有用な治療薬となりえることが示された.本試験結果を踏まえ,2013年12月に製造販売承認申請を行い,2014年7月にニボルマブは世界初の抗PD-1抗体として製造販売承認を取得した.現在,様々ながん腫に対するニボルマブの臨床試験が実施されており,今後ニボルマブが,がん治療の選択肢を広げるものと期待される.
著者
吉田 拓弥 古久保 拓 三宅 瑞穂 和泉 智 庄司 繁市 山川 智之
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.533-539, 2022 (Released:2022-09-28)
参考文献数
9

低酸素誘導因子―プロリン水酸化酵素阻害薬ロキサデュスタット(ROX)投与後に血清甲状腺刺激ホルモン(TSH)レベルが低下した血液透析(HD)患者の症例が報告されている.白鷺病院で維持HD を施行し,ROX を開始したHD 患者11 例(71±15 歳)を対象とし,血清TSH および遊離サイロキシン(FT4)レベル低下の頻度や程度について調査した.血清TSH レベルは,ROX 開始後11 例中9 例で低下し,3 例が基準値以下となった.血清FT4 レベルは,ROX 開始後11 例全例で基準値以下まで低下した.ROX 開始前後の血清TSH 変動と血清FT4 変動の間には強い正相関が認められた(ρ=0.838,p=0.001).影響が顕著だった1 例では,ROX 開始12 日後,血清TSH レベルは8.81 から1.04 μIU/mL,血清FT4 レベルは1.05 から0.38 ng/dL へ低下し,ROX 中止後に正常範囲まで改善した.ROX はHD 患者において高頻度で血清TSH レベルおよびFT4 レベルの低下を起こし,症例によってはその急速な発現や症状を伴う可能性に注意が必要であると思われた.