著者
長堀 祐造
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
中国研究 (ISSN:18825591)
巻号頁・発行日
no.2, pp.91-126, 2009

1. 増田渉著『魯迅の印象』 : 同伴者作家は語る、「農民を殺すのはよくない」と。2. AB団粛清と富田事変3. 魯迅の反応が意味すること(1) 増田の紹介する「上海文芸の一瞥」の革命文学者批判(2) 魯迅、馮雪峰をからかう。「君たちがやってきたら、まず私を殺すんじゃないか」(3) 魯迅、ソ連への病気療養行きを断る(4) 革命が来て、それでも命があったら上海の道路掃除でもやりましょう(5) 増田証言の魯迅研究のおける意義
著者
小杉 礼子 堀 有喜衣
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.5-28, 2004-01-31
被引用文献数
1

これまで様々な論者によって研究が進められてきた「フリーター」は,主として「残業のない正社員なみ」に働いている若者が多く含まれていた.こうした若者を本稿では「中核的」なフリーターと位置づけ,「あまり働いていない」者を「周辺的」フリーターとし,さらに「働いていない」者を「無業」として,その現状と問題を明らかにした.政府統計を用いた分析によれば,(1)「周辺的フリーター」はおよそ35万人,無業者はおよそ80万人と推計される(2)90年代後半以降,非在学・非家事の「無業」が増加している,という傾向が見られた.また都道府県別に失業と無業の関係をみたところ,若年男性では雇用情勢の厳しい都道府県で無業化していたが,女性については家事従事者が増加するためはっきりした相関が見られなかった.こうした「周辺的フリーター」の増加に対して,すでに就業支援を行っている機関に対してインタビューを行い,若者に対する認識と,その認識に基づく支援の論理の構築を探った.インタビューによれば,これらの諸機関の活動はそれぞれの範囲では十分機能しているものの,しばしば限定的な支援を正当化する論理へと帰結しているという問題が見出された.今後は,これまで十分に注目されてこなかった「周辺的フリーター」の現状把握と,若者から信頼される支援のさらなる構築が求められる.
著者
額尓徳尼 堀田 紀文 鈴木 雅一
出版者
JAPANESE SOCIETY OF REVEGETATION TECHNOLOGY
雑誌
日本緑化工学会誌 = Journal of the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.338-350, 2009-11-30
被引用文献数
1

内蒙古自治区全域における砂漠化と緑化事業がもたらした植生変化の実態を把握するために,NOAA/AVHRR の衛星リモートセンシングデータから求めたNDVI(正規化植生指数)を用いた検討を行った。まず,文献から植生変化の実態が明らかな地域において,NDVI の変化と植生変化について比較し,1982~1999 年までの約18 年間における植生の変動を調べた。植生変化が少ない地域でのNDVI の変動から,植生増減を判断するNDVI 変化の閾値を検討し,1982~1986 年と1995~1999 年の夏季NDVI の差を ΔNDVI とし,植生の増減を8km 分解能のピクセル毎に求めた。そして,ΔNDVI により植生が変化した地域を抽出して図化した。その結果,内蒙古自治区全体としては,NDVI が増加した地域の割合が減少した地域の割合を大きく上回り,植生増加の傾向が示された。赤峰市(特に敖漢旗)の植生増加が顕著であり,次いでシリンゴル盟,フフホト市,バヤンヌール市の一部にまとまったNDVI 増加が示され,内蒙古全域においてNDVI が増加した面積が約20 万km<SUP>2</SUP> 程度見られた。北半球の高緯度地域では温暖化によるNDVI の増加が報告されているが,行政区毎に求めたNDVI が増加した地域の面積と,統計資料に基づいて集計した造林面積と耕地化された面積の合計に良好な比例関係が見られ,内蒙古自治区における夏季のNDVI 増加は主に緑化と農耕地の拡大という人為的な要因による植生増加である。一方で,NDVI 減少が抽出された内蒙古自治区西部(アラシャ盟),東北ホルチン砂地周辺などでは,もともと植生が乏しい地域であり,これらの地域では砂漠化による植生減少が指摘された。
著者
得丸 定子 佐藤 英恵 郷堀 ヨゼフ
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.257-268, 2010-02-28

核家族化, 個人化の進んでいる現代では, ペットは単なる飼育動物の域を超え「コンパニオン・アニマル」と呼ばれ, その親密な存在の死に伴う「ペットロス」という用語は, 学校教育現場でも用いられつつある。ペットの死に伴う感情やその死への関わりは, ティーチヤブル・モーメントとして「いのち教育」の好機である。しかし, それらの言葉の背後にある心情やその理解については, 十分に認識されていない現状である。ゆえに, いのち教育の一環としてのペットロスについての基礎的知見を得るために, 本調査を行った。結果として, 心理尺度では"協同努力型人生観""多彩型人生観""信仰型人生観""金銭重視型人生観"の4因子が抽出された。"協同努力型人生観"は最もペットロスに陥りやすく, "金銭重視型人生観"はペット葬に反対であり, 女性の方が男性よりもペットロスに陥りやすい結果が示された。自由記述では, 「ペット葬賛成」派が約6割を占めた。「ペット葬反対」派も回答としては反対ではあるが, その記述を考察すると「賛成」派であった。ペット喪失悲嘆から立ち直った契機としては「時間の経過」が最多であり, 先行研究で見られない記述として, 「ペットについての知識, ペットロスについてあらかじめ勉強しておく, 心の準備をしておく」が得られた。本調査により, 人生観や性別とペットロスとの関係性や, ペット葬の必要性への認識, ペット飼育の知識やペットロスについて事前学習の重要性が示され, 「いのち教育」の一環としてのペットロス学習の意義が得られた。
著者
加藤 士雄 井野 秀一 永井 謙芝 渡邉 括行 堀 耕太郎 似鳥 寧信 高杉 弘子 服部 裕之 伊福部 達
出版者
Human Interface Society
雑誌
ヒューマンインタフェース学会研究報告集 : human interface (ISSN:13447270)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.65-70, 2002-11-22
被引用文献数
11

In order to enable the profoundly hearing impaired to recognize speeches talked at international conferences, we have designed an automatic captioning system using a speech recognition technology. This system was utilized at a Disabled Peoples' International conference (DPI) held in Sapporo this October. In this system, some speakers (shadowing speakers) including broadcast announcers repeated the same voices as the conference talker's or English interpreter's voices, while the speech recognition device converted the shadowing speaker's voices into JApanese letters or English letters. Where, before using the captioning system, the shadowing speakers have had completed an enrolling their voices into a voice dictionary of the speech recognition device. The conference talker's face images as well as the caption letters were displayed onto a large screen. The conference talker's images were delayed in order to be synchronized with the subtitles. Furthermore, incorrectly recognized words were corrected by humans before displaying them. We have evaluated the captioning system from a viewpoint of a comprehension of the subtitles, the optimal time delay of the talker's image, and a system usability. This report describes the evaluation results which were obtained from the above international conference.
著者
山中 啓義 立花 義浩 堀口 憲一 栗田 紹子 櫻井 高太郎 嶋中 昭二 浅野 裕
出版者
市立室蘭総合病院
巻号頁・発行日
2004

市立室蘭総合病院(以下当院)は一般病床429床、精神科病床180床の計609床の総合病院であり、年平均600名の癌患者が入院している。1998年4月1日~2003年3月31日までの過去5年間で入院した癌患者の総計は3231名であった。この中で身体科から精神科神経科(以下当科)へコンサルトされた新来患者126名(男性88名、女性38名)を対象とした。方法は癌原発巣、転移の有無、告知の有無、癌治療、精神科依頼理由、精神科受診までの期間、精神科診断、精神科治療、精神科診察期間、患者の転帰の10項目について後方視的に調査した。結果は(1)入院癌患者の精神科受診率は3.9%であった。(2)診断はせん妄、痴呆などの脳器質性精神障害の割合が多かったが、不安、抑うつ気分を主訴としたコンサルトが増加傾向にあった。(3)癌告知後に不安障害、気分障害を呈する症例を多く認めた。以上より当院における入院癌患者のQOL向上のためにも、今後は癌告知後のコンサルテーション・リエゾン活動の充実とともに、身体科からのコンサルトを待つ立場から、身体科治療の一員として当科が積極的に関与していく立場への変化が必要とおもわれた。
著者
堀田 創 野澤 貴 萩原 将文
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.347-356, 2008-06-15
被引用文献数
1 1

本論文では,位置情報に基づく新しいインターネット広告システムを提案する.インターネット上の広告システムは,一般的に効果の高いと考えられるユーザに対して広告を配信するものが望ましい.本研究では,広告効果向上の方法の一つとして,位置情報を根拠とする方式を提案している.位置情報に基づくインターネット広告配信は,ターゲットとしたい地域から近い位置に居るユーザに広告を配信することで実現される.しかしながら広告の効果的な範囲は地域ごとの特性および広告の質によってそれぞれ異なり,それらを詳細に広告主が指定するのは極めて困難である.その結果,産業界における実現可能性が非常に低くなるという問題がある.提案システムは,ニューラルネットワークにより自動的に広告の効果的な範囲を推定し,それを配信アルゴリズムに組み込むことで広告主に負担をかけない広告配信を可能としている.このシステムは携帯電話用の広告配信として利用され,現在も実際に運用されている.検証実験の結果,広告の効果的な範囲の自動推定および,位置情報に基づく広告が有効であることが確認されている.
著者
好田 勲 柘植 覚 獅々堀正幹 北 研二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.23, pp.17-22, 2003-03-06
被引用文献数
4

ベクトル空間モデル(Vector Space Model;VSM)は情報検索における代表的な検索モデルであり,検索対象文書および検索質問を多次元ベクトルで表現するう特徴を持っている.しかし,これらのベクトルは一般にスパースかつ高次元であるため,計算機のメモリによる制限や検索時間の増大などの問題が生じる.また,次元が増加するに連れ,文書中に含まれる不必要な索引語がノイズ的な影響を及ぼし検索精度を低下させてしまうという現象も起こってくる.以前,我々はこの問題を解決するため,Non-negative Matrix Factorization(NMF)を用いたVSMの次元圧縮手法を提案した.しかし,メモリの問題がまだ存在する.そこで,本稿では,k-means NMF を用いたVSMの次元圧縮手法を提案する.また,スパースな行列に対し有効な検索手法である検索質問拡張にNMFを用いる手法を提案する.MEDLINEコレクションを用いた検索実験を行った結果,NMFを用いた場合とk-means NMFを用いた場合では,検索精度を劣化することなく計算に必要なメモリを約$1/10$に軽減することができた.また,NMFを用いた検索質問拡張もVSMよりも高い検索精度を示すことができた.The Vector Space Model (VSM) is a conventional information retrieval model, which represents a document collection by a term-by-document matrix. Since term-by-document matrices are usually high-dimensional and sparse, they are susceptible to noise and are also difficult to capture the underlying semantic structure.Additionally, the storage and processing of such matrices places greatdemands on computing resources. Dimensionality reduction is a way toovercome these problems. We proposed non-negative matrix factorization(NMF) for dimensionality reduction of the vector space model.However,this method did not overcome memory problems. Hence, we proposek-means NMF for dimensionality reduction of the vector space model. And,we propose query expansion using NMF in this paper.Using MEDLINE collection, we experimentally showed that k-means NMF offers great improvement over the vector space model.
著者
三簾 久夫 堀内 久太郎 Chakhatrakan Somchai 齋藤 修平
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.46-53, 2008-06-15

本論文は,タイ・チャオプラヤ河デルタ上流域Sing Buri県におけるNew Theory農家の食料自給と経営成果について論じたものである。具体的には,調査農家38戸の農業所得と農外所得を含めた農家所得,作目構成,有機質資源の循環等の経営概要を明らかにした。第1に,New Theory農家の食料自給を論じるために,食料自足率,家計仕向率,食料自給率を算出した。結果はそれぞれ,36.8%,11.0%,901.8%となり,Sing Buri県におけるNew Theory農家は,生存レベル(自給農家)を超えているが,New Theory農業の意図している食料自給が十分に実践されていないことが明らかになった。第2に,New Theory農家の所得水準を論じるために,世界銀行およびタイ政府の2つの貧困ラインを基準として調査農家の貧困係数をそれぞれ算出した。その結果,世界銀行基準(1人当たり1日1ドル)では0.482となり,経済的に豊かであるが,タイ政府基準(1人当たり1日200Baht)では2.69となり,貧困であることが明らかになった。