著者
田澤 悠 村上 健 堀口 利之
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.121-129, 2020-08-31 (Released:2020-12-31)
参考文献数
27

【目的】 近年,COPD の増悪に誤嚥が関与していることが明らかになってきている.今後の課題はCOPD 増悪の予防であり,呼吸機能や嚥下機能が具体的にどのようにCOPD の増悪に関わっているのかについて知ることが重要であると考えられる.今回,外来通院中のCOPD 患者を対象に,呼吸機能に加え嚥下機能に関する評価を行い,それらが過去の増悪歴の有無を有意に反映するかどうかを検討した.【方法】 対象は,外来通院中のCOPD 24 名(男性22 名,女性2 名)とした.増悪と診断されて入院の適応となった既往を増悪歴有りとすると,増悪歴が有ったのは11 名,無かったのは13名であった.MASAから抜粋した項目を評価した.嚥下造影検査により10 mL の液体嚥下での喉頭侵入/ 誤嚥の有無を調べ,スパイロメトリーでは特に努力肺活量(FVC),1 秒量(FEV1),対標準1 秒量(%FEV1),最大呼気流量(PEF)などを検討項目とした.次いで各々の項目に対し増悪歴の有無を最も効率的に分類できる最適cutoff値(co)を求め,各評価項目および測定値と増悪歴との関係を検討した.解析にはFisher の正確確率検定あるいはχ2 検定を用い,各々の項目の2 群と増悪歴に有意な関係を認めるかどうかを検討した.【結果】 増悪歴と有意な関係を認めたのは%FEV1(co: 42.0%, p=0.033)であった.一方,MASA, FVC,PEF は,増悪歴と有意な関係を認めなかった.【考察】 MASA は,嚥下機能低下が顕在化するに至っていない本研究の対象者において増悪歴を反映しないものと考えられた.PEF が有意ではなかったにもかかわらず%FEV1 が有意であったことは,PEF が瞬間的な呼気流速を反映するのに対し,%FEV1 は呼気流速に加え呼気流量も反映するためで,すなわち誤嚥に対する下気道防御においては,呼気流速に加え呼気流量も重要であることを示したと考えられた.
著者
岩本 奈織子 鈴木 瑞佳 高木 康伸 堀口 慎一郎 有賀 智之
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.114-118, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
22

BRCA1/2遺伝学的検査は,PARP(Poly ADP-ribose polymerase)阻害薬のコンパニオン診断から遺伝性乳癌卵巣癌(hereditary breast and ovarian cancer;HBOC)の診断まで広く晋及しつつある.今後,BRCA1/2遺伝学的検査数の増加と,それに伴いBRCA1/2病的バリアント保持者の増加が見込まれる.BRCA1/2病的バリアント保持者では,年に1回の乳房造影MRI検査でのサーベイランスが推奨されている.MRIでのみ描出される病変に対しては,MRIガイド下生検(MRI-guided vaccuum-assist biopsy;MRI-VAB)が必要となるため,MRIを行う際にはMRI-VABが可能な施設との連携が望ましいとされている.しかしながら,実際に保険診療でMRI-VABを行っている施設は少ない.当院では2022年6月からMRI-VABを開始し,2023年5月までの期間においてMRI-VABを6例に施行した.患者の年齢は30~60代であり,半数は悪性であった.1例は,BRCA2病的バリアント保持者で非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ;DCIS)と診断されたHBOC症例であった.今回,われわれはMRI-VABの導入時に必要であった準備と過程を報告する.
著者
坂下 宗祥 堀江 翔 水上 匡人 弥郡 優加里 長谷 剛志
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.801-808, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
16

誤嚥性肺炎により入院し自宅退院となったアルツハイマー型認知症を呈した70歳代の肺癌終末期患者に対して,作業療法士による訪問リハビリテーションを実施した.Transdisciplinary approachの概念を基に栄養,姿勢ポジショニング,食事介助,口腔ケアの方法に関する様々な食支援を実施した.結果,栄養状態に改善がみられ,褥瘡の発生なく,47日間在宅生活を過ごすことができ,妻の不安が軽減したと推察された.今回の経験から,食支援を実践するためには多職種連携を通して幅広い知識と技術を身につけること,また対象者が適切な食支援を受けられるよう地域の体制づくりも必要であることが示唆された.
著者
赤堀 将孝 小西 美智子 今磯 純子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.726-735, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
28

本研究の目的は地域での生活支援に必要な作業療法学生の卒業時コンピテンシー項目を明らかにすることである.デルファイ法を3回実施し,地域実践作業療法士87名から51項目を作成した.必要度が75%以上の項目は,自己の健康管理,対象者のリスク管理,対象者と家族を含む支援者との信頼関係構築に関する項目など19項目,51~75%未満の項目は,家族や他職種との協働や作業療法過程,住環境や地域環境に関する項目など22項目,50%以下の項目は,近隣住民を含む連携,地域資源の情報収集に関する項目など10項目であった.卒業時に地域で生活支援を行うためには,これらの修得に向けた教育内容を取り入れる必要性が示唆された.
著者
坂井 進一郎 PANG Peter K STOCKIGT Joa PONGLUX Dhav TONGROCH Pav 北島 満里子 堀江 俊治 高山 廣光 矢野 眞吾 渡辺 裕司 渡辺 和夫 相見 則郎 KTPANG Peter JOACHIM Stoc DHAVADEE Pon PAVICH Tongr JOACHIM Sto PETER KT Pa DHAVADEE Po PAVICH Tong PETER KT Pan 池上 文雄
出版者
千葉大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

アカネ科植物ミトラガイナ・スペシオ-サ(Mitragyna speciosa)葉部は、タイ国内では"Kratom"、マレーシア国内では"Biak Biak"と呼ばれる伝承民間薬であり、麻薬様作用:中枢神経抑制効果(阿片様作用)と中枢神経興奮効果(コカイン様作用)及び止瀉作用が知られていた。本植物に含まれる有効成分に焦点を当てて、日本、タイ、ドイツ、カナダの研究者がそれぞれの専門領域の研究分野で協力することにより、化学と薬理の両面からの究明研究を行なった。化学面では、タイ産植物葉部の詳細な成分検索を行ない、主塩基Mitragynineと共に新化合物を含む数種の微量塩基を単離構造決定した。更に、主塩基Mitragynineの集約的ルートによる不斉全合成法を開拓することができた。また、Mitragynineの菌代謝産物として報告されたプソイドインドキシル体やMitragynineオキシインドールも化学変換により合成し、これらの立体化学を明らかにすると共に、薬理活性評価用検体として供した。更に、マレーシア産Mitragyna speciosa葉部のアルカロイドについても化学的研究を行い、新規化合物の単離と共にピリドン型ミトラガイナアルカロイドの基本骨格合成を達成することができた。一方、薬理面での成果としては以下の点があげられる。主成分Mitragynineの中枢作用について検討を行い、Mitragynineに強力な鎮痛作用を見い出した。さらに末梢作用として、平滑筋収縮抑制作用を見い出した。輸精管標本を用いた検討から、末梢作用の作用機序としてMitragynineが神経の節後線維に作用し、神経伝達物質の放出を抑制することが考えられた。神経由来細胞を用い、パッチクランプ、蛍光色素法などを駆使して解析した結果、Mitragynineの神経伝達物質遊離抑制作用には神経のT型およびL型Caチャネル遮断作用が関与していると推定した。また、モルモット回腸標本に用いた検討から、Mitragynineはオピオイド作用も有していることが判明した。その効力はMorphineの1/6であった。Mitragynineの微生物代謝物Pseudoindoxyl体にもオピオイド作用が認められ、その効力はMorphineの約20倍強力であった。そこで、これらの化合物についてオピオイド受容体結合実験を行い、両アルカロイドは特にμ受容体に親和性が高いことを見い出した。これらのMitragynineの末梢作用はその鎮痛作用機序に関連していると考えられる。Mitragynineの構造に類似する釣藤鈎アルカロイドおよび母核のIndoloqunolitidine誘導体を用いて、オピオイド作用の構造活性相関的検討を行った。該結果、Mitragynineの9位メトキシル基が作用発現に必須であることが明らかとなった。また、そのメトキシル基と4位の窒素の位置関係が効力を左右していると推察した。また、Mitragynineの中枢作用に関する研究で以下の成果を得た。脳内5-HT2A受容体作動薬をマウスに投与すると"首振り行動"が発現する。本行動に対するMitragynineの影響を検討した結果、Mitragynineは用量依存的な抑制効果を示した。Mitragynineの抑制作用はNoradrenaline枯渇薬及び5-HT枯渇薬の影響を受けず,α2受容体拮抗薬で解除されたことから、Mitragynineがシナプス後膜α2受容体刺激作用または5-HT2A受容体遮断作用を有することが示唆された。Mitragynineをマウスに腹腔内あるいは脳室内投与(i.c.v.)すると顕著な鎮痛作用が認められた。i.c.v.投与したMitragynineの鎮痛作用はオピオイド拮抗薬Naloxone(i.c.v.),α2受容体拮抗薬および5-HT受容体拮抗薬(i.c.v.,orくも膜下腔内投与)で抑制された。従って1)Mitragynine自身が脳内で作用して鎮痛作用を発現しうること,および2)この鎮痛作用に上位オピオイド受容体及び下降性モノアミン神経系が関与することが推察された。この様に、ミトラガイナアルカロイドに種々の特異的かつ有効な薬理活性が見出された。これらアルカロイドは今後、医薬品の開発、薬理作用機序の観点から興味深い素材と考えられる。上記研究と平行して、タイ産Uncaria,Nauclea,Hunteria、及びVemonia属植物の化学的検索及び薬理学的評価も実施した。
著者
井畑 真太朗 山口 智 菊池 友和 小内 愛 堀部 豪 伊藤 彰紀
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.53-58, 2021 (Released:2021-10-28)
参考文献数
12

【目的】突発性難聴(以下SSNHL)は原因不明の感音性難聴である。高齢者で眩暈を伴う重度SSNHLでは、発症2週間以内に症状が改善しないと予後不良と言われている。今回、耳鼻科で予後不良と診断され発症約1ヶ月後より鍼治療を開始し聴力回復が認められた症例を経験したので報告する。 【症例】74歳女性、主訴:左難聴、既往歴:18年前右聴神経腫瘍の手術により右重度難聴、現病歴:X年10月4日から特に誘因なく左難聴を自覚、両側難聴になり、対話不能。同日耳鼻科を受診、左SSNHLと診断。鼓室内ステロイド注射を施行。X年10月13日より回転性眩暈出現、左SSNHLも改善せず、X年10月21日より当院神経耳科にて入院。重度感音難聴(grade4)を認め、同日から薬物療法、星状神経節ブロックを連日開始。X年10月30日、経過不良、また頸肩部の張り感を自覚した為、神経耳科より鍼治療の診療依頼。神経学的所見は左右難聴を認める以外は全て正常。板状筋、肩甲挙筋、僧帽筋に筋緊張。鍼治療方針は内耳の血流改善、頸肩部筋群緊張緩和を目的に天柱、風池、肩井及び左翳風に40mm16号鍼置鍼10分を入院中週3回、退院後週2回実施。評価はオージオグラムで測定。 【結果】初診時左91.3dB、右96.3dBの為、筆談で医療面接。1週間後左82.5dB右92.5dBと回復が認められ対話が可能となり、4ヶ月後の鍼治療終診時左68.8dB右86.3dBと回復した。聴力回復判定では回復(10-30dB未満改善)の値、重症度分類ではgrade4→grade3に回復した。 【考察および結語】本症例は、頸肩部の鍼治療で、内耳動脈を介して蝸牛の血流及び有毛細胞に何らかの影響を及ぼしたものと考える。以上より、今後、予後不良の重度SSNHL患者に対して西洋医学的治療に追加する治療オプションとして鍼治療は有用性が高い可能性が示唆された。
著者
前 健彦 堀 茂徳
出版者
一般社団法人 軽金属学会
雑誌
軽金属 (ISSN:04515994)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.3-7, 1984-01-31 (Released:2008-07-23)
参考文献数
7
被引用文献数
5 6

The embrittlement of aluminum by liquid gallium was investigated by measurements of a tensile test, a microscope and EPMA methods. The fracture stress of aluminum, coated with gallium of less than 1 mg, or tested within 1 min after coating, varied widely. The fracture stress of aluminum decreased with increase in holding time after coating with gallium. The fracture stress of specimen removed gallium on surface was greater than that with gallium adhered to surface. The fracture stress of aluminum increased with increase in holding time at 35°C again, when gallium on its surface was removed after holding at 35°C for 300 min after coating. Ductile to brittle transition appeared within a range of temperature between 23°C and 27°C°Cunder the test in l min after coated with gallium. This temperature range was almost independent of strain rate. In the tensile test after holding at 35°C for long time, ductile to brittle transition was within the range of temperature between 0°C and 27°C.
著者
堀 啓一郎
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.91-93, 2015 (Released:2020-02-19)

福島第一原子力発電所の溶融した炉心燃料は2020年頃から取り出す計画である。この取り出した燃料デブリの計量管理手法については,廃炉に関する研究開発プロジェクトの一つとして日本原子力研究開発機構と東京電力が中心となり検討を進めている。この現状について報告する。
著者
堀江 順策
出版者
一般社団法人 日本ゴム協会
雑誌
日本ゴム協会誌 (ISSN:0029022X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.3-11, 1982 (Released:2007-07-09)
参考文献数
8
被引用文献数
3 1
著者
横堀 將司 江川 悟史 横田 裕行
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.29, no.Supplement2, pp.S20-S24, 2022-12-01 (Released:2022-12-01)
参考文献数
5

2020年に脳死判定に関する新しい国際コンセンサスが作成された(determination of brain death/death by neurologic criteria: The World Brain Death Project)。これによると,解消できない要因により脳死判定に関わる臨床検査を完遂できない場合に,補助検査を施行するべきとされている。補助検査は主として脳血流検査および電気生理学的検査に大別される。特に脳波検査は本邦の法的脳死判定では必須とされているが,今回の国際コンセンサスにおいては,脳波検査は脳幹機能を検査できないため,これを判断基準とすべきでないとの記載がある。また,脳血流検査においては,近年普及しつつあるCT血管造影やMRIについても言及されているものの,臨床的データの少なさから,現状では脳血流停止を評価するための補助検査として使用しないことが提案されている。我々には,本邦の脳死判定基準の歴史や国際コンセンサスとの整合性を図り,補助検査を活用することが求められている。
著者
堀川 寛
出版者
一般社団法人 日本家族心理学会
雑誌
家族心理学研究 (ISSN:09150625)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.116-128, 2010-11-30 (Released:2023-04-05)
参考文献数
18

Social Withdrawal, “Hikikomori” in Japanese, has been a serious social problem for over twenty years in Japan. Although it is almost impossible to know the clear numbers of Hikikomori, from about half million to million people could be categorized in this term. A lot of studies and researches have been issued to elucidate the reason and to find out the solution of this problem. Some of the researchers began to shed light on Pervasive Developmental Disorders (PDD) as one of the major causes of Hikikomori, recently. The purpose of this study is to make clear the relation between PDD and Hikikomori, and the features of Hikikomori caused by PDD, by the interview with five mothers of Hikikomori sons. The result of the interview shows some significant ideas which help us understand why these people became Hikikomori. Although the symptoms of PDD appeared even from childhood, mothers did not take them seriously. After some problems happened on their sons, the mothers went to the public health center. But they had to go to different specialists until they could get a clear diagnosis. Even after their sons were diagnosed PDD, they could not get the particular support for their sons, so that their situations have not been improved yet.
著者
村井 政史 堀 雄 森 康明 古明地 克英 八重樫 稔 今井 純生 大塚 吉則 本間 行彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.29-34, 2019 (Released:2019-08-26)
参考文献数
13

症例1は72歳男性で,重たいものを持ち上げるなどの重労働を約半年間行い,全身に痛みを自覚するようになった。肩の凝りと痛みが著明なことから葛根湯を,瘀血が存在すると考え桂枝茯苓丸料を合方して治療を開始した。 尿の出が悪化し麻黄の副作用と考え減量し,治療効果を高める目的で蒼朮と附子を加味したところ,体の痛みはほぼ消失した。症例2は53歳男性で,頚椎捻挫受傷や外科的手術歴があり,全身に痛みを自覚するようになった。左右の胸脇苦満が著明なことから大柴胡湯を,瘀血が存在すると考え桂枝茯苓丸料を合方して治療を開始した。便が出過ぎて日常生活に支障を来すため大黄を減量し,肩凝りが著明なことから葛根を加味したところ,体の痛みは消失した。線維筋痛症は治療に難渋することが多いが,煎じ薬ならではのさじ加減により,副作用を軽減し治療効果を発揮させることができた。
著者
堀口 薫
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科學. 物理篇 (ISSN:04393538)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.319-320, 1966-03-22
著者
宍戸 恵理 八重 ゆかり 堀内 成子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.101-112, 2018-12-25 (Released:2018-12-25)
参考文献数
26
被引用文献数
4 3

目 的出産体験における痛みの予測と現実および疲労の予測と現実のギャップについて,ギャップと出産満足度がどのように関連しているか探索し,この関連について無痛分娩者と自然分娩者とを比較することで,分娩方法による違いがあるのか探索する。対象と方法同一対象者を産前・産後の2時点を追跡・比較する質問紙を用いた縦断的量的記述研究であり,都市部の総合周産期医療センター1施設で調査した。2時点のデータを確保できた609名のデータを用いて,統計学的に分析を行った。結 果1. 陣痛のギャップについて,「予測より痛かった」と回答した者が,自然分娩者に多かったが,会陰部痛のギャップは,「予測より痛かった」と回答した者が,無痛分娩者に多かった。2. 産後の疲労感の平均値は,無痛分娩者が60.1(SD=27.2),自然分娩者は52.2(SD=28.0)であり,無痛分娩者の方が有意に高かった(P<0.001)。また,無痛分娩者,自然分娩者ともに痛みと疲労感が「予測より痛かった/予測より疲れている」と回答した者は,「予測より痛くなかった/予測より疲れていない」,「予測通りだった」と回答した者よりも,産後の疲労感の得点が有意に高かった。3. 出産満足度の平均値は,無痛分娩者7.61(SD=1.85),自然分娩者8.65(SD=1.43)であり,自然分娩者の出産満足度は,無痛分娩者よりも有意に高かった(P<0.001)。陣痛のギャップ,分娩転帰と出産満足度について,分散分析した結果,陣痛のギャップと分娩転帰の交互作用は有意ではなかったが,それぞれ主効果は有意であった。また,無痛分娩者では,陣痛のギャップと出産満足度との間に負の関連が認められたが,自然分娩者では関連が認められなかった。結 論無痛分娩,自然分娩のどちらの場合も,痛みや疲労感に関する予想と現実とのギャップを小さくする方策が求められる。出産満足度を改善するためには,ギャップに着目する必要があり,それは無痛分娩でより重要である。
著者
廣畑 富雄 増田 義人 堀江 昭夫 倉恒 匡徳
出版者
The Japanese Cancer Association
雑誌
GANN Japanese Journal of Cancer Research (ISSN:0016450X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.323-330_2, 1973-08-31 (Released:2008-10-23)
参考文献数
12

The carcinogenicity of tar-containing skin drugs, Pityrol, Glyteer, Ichthammol JP. pine tar JP, and Metashal, was investigated by animal experiments and by chemical analysis of carcinogenic aromatic hydrocarbons. The results of animal experiments showed that the proportions of skin papilloma-bearing mice as compared to those at the first appearance of tumor were 64% (Pityrol), 71% (Glyteer), 9% (Ichthammol), 23% (pine tar), and 64% (Metashal). The proportions of skin carcinoma-bearing mice were 36% (Pityrol), 40% (Glyteer), 0% (Ichthammol), 6% (pine tar), and 22% (Metashal). A high proportion (37%) of metastasis in adjacent or remote organs was observed. No tumors developed in the control group that received acetone only.As for chemical analysis, a substantial amount of polycyclic aromatic hydrocarbons and, in particular, of benzo[a]pyrene was identified. The content of benzo[a]-pyrene agreed well with the degree of carcinogenic activity observed by the animal experiment. The average amount of benzo[a]pyrene, from three measurements, were 145 (Pityrol), 129 (Glyteer), none (Ichthammol), 48 (pine tar), and 80μg/10g (Metashal).The carcinogenicity of these drugs in man is difficult to assess at present and further epidemiologic studies appear to be needed to clarify this point.