著者
島村 咲衣 安藤 正規 鶴田 燃海 永田 純子 淺野 玄 大橋 正孝 鈴木 正嗣 小泉 透
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.55-65, 2020 (Released:2020-02-14)
参考文献数
47

近年,日本各地でニホンジカ(Cervus nippon)による林業被害や森林生態系への影響が報告されている.狩猟者の減少や高齢化によって捕獲努力量が伸び悩む中でも森林への被害を軽減させるために,例えば北米において考案されている,オジロジカ(Odocoileus virginianus)母系集団の強い定住性を利用したLocalized Management法のような,被害防除に効果的な個体数調整手法の適用を検討していく必要がある.しかし,ニホンジカ地域集団内の母系集団の規模がオジロジカと同様であるかは不明であり,本手法の適用の可否は不明である.さらに,既存のマイクロサテライトマーカーによってニホンジカの母系集団を検出できるか否かも明らかになっていない.そこで本研究では,ニホンジカ母系集団の検出を目指してマイクロサテライトマーカーの解析能力を検討し,空間的な遺伝構造の検出可能スケールについて検討した.国内4地域(北海道,静岡,岐阜,宮崎)で捕獲された計251個体(胎子63個体を含む)を解析に用い,マイクロサテライトマーカー17座の遺伝子型を決定した.遺伝子座ごとの対立遺伝子数(Na)は3~18となり,オジロジカの値と比較して少ない傾向にあった.個体識別能力の指標PID-siblingを算出した結果,本研究では多型性の高い上位4座を用いて個体識別が可能であった.地域集団間および地域集団内の遺伝的多様性を評価するため,全集団平均の遺伝子分化係数(G’ST),各集団のNa,対立遺伝子数の期待値およびヘテロ接合度の期待値を算出した.地域集団間および地域集団内の遺伝的多様性はどちらも低い傾向がみられた.地域集団間および地域集団内において,STRUCTUREを用いた遺伝構造解析では,北海道および宮崎の集団は明瞭にそれぞれ独立のクラスターが構成されるものの,中部(静岡・岐阜間)の遺伝構造は不明瞭になるケースが確認された.一方で,地域集団内の遺伝構造(母系集団)は検出されなかった.胎子63個体を使っておこなった母性解析では,胎子を妊娠していた真の母親を推定できた確率は約20%にとどまった.本研究では,北海道,中部および宮崎の地域集団間の遺伝構造を明瞭に検出できたが,地域集団内の母系集団は検出できなかった.そのため,サンプル数のもっとも多かった静岡集団においても,Localized Managementの適用が可能な個体群であるとは断定できなかった.それは,各マイクロサテライトマーカーの多型が少ないことが原因であり,日本国内のニホンジカが過去に経験した個体数の減少によるボトルネック効果を反映していると考えられた.
著者
大橋 正
雑誌
研究報告組込みシステム(EMB)
巻号頁・発行日
vol.2013-EMB-29, no.6, pp.1-8, 2013-05-20

初期のコンピュータのハードウェア設計段階では文書に記載された回路図を基として論理ゲート間を配線でリンクした Linked logic が適用されていた.そのコンピュータは人とワイヤーを介して操作パネルでコミュニケーションを行い運用・保守を行った.その後インターネットを介し,コンピュータと人がコミュニケーションをなして運用・保守をした.一方,コンピュータの設計図面等の文書は紙媒体で閲覧・管理されて以来,HTML などのハイパーメディアで閲覧・管理をするようになった.更に今日ではクラウドの普及と Android のスマートフォン等の出現により,利用者が固定しているか否かに関わらず多種多様の電子機器に関わるハードウェアやソフトウェアの運用,保守,閲覧,管理等の情報を Android はインターネットにより膨大なビッグデータとして取込める様になってきた.この膨大なビッグデータから,必要な Android のハードウェア・データやソフトウェアデータを Android で入手し,運用,保守,閲覧,管理等を従来よりも高機能化する方法として Web Linked Data を導入し,最適なシステム設計に役立たせる期待が生じてきた.本論は Android を情報システムと組込みシステムの両面から捉えて設計する eALD(embedded Android with Linked Data) システムを念頭に置いて,Web Linked Data の Android 系設計への適用を考察する.
著者
竹内 淳彦 森 秀雄 佐藤 滋 大橋 正義 北嶋 一甫 山田 伸顕 本木 弘悌
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.55-59, 2000-03-31

1999年の地域大会として11月27日に上記のフォーラムを開催した.午前は「工業のまちを歩く」と題して東京都大田区内の住工混在地域を巡検し, 午後は大田区産業プラザにおいて会議が行われた.はじめに小関智弘氏の特別講演「工場に生きる人々とそのまち」が行われ, 続いて竹内淳彦の基調報告, 5名のパネラーの報告の後, 討論が行われた.なお, 巡検参加者は66名, フォーラム参加者は203名であった.座長は上野和彦(東京学芸大学)と松橋公治(明治大学)が務めた.以下には各報告の要旨, 討論と巡検の記録を掲げる.
著者
大橋 正洋
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.217-222, 2000-07-01 (Released:2010-02-25)
参考文献数
3
著者
岡本 健太郎 山本 潤 福田 光男 林田 健志 峰 寛明 大橋 正臣 田畑 真一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_388-I_393, 2011 (Released:2011-12-08)
参考文献数
6

著者らは,廃棄物を利用することで“ホタテ貝殻の人工礁”を開発した。貝殻礁は,貝殻の空隙に有機堆積物の捕食生物のための生息空間を作り,港内の有機汚染物質を除去するのに有効である.小型試験礁を用いて試した結果,設置後3年が経過しても浄化効果が持続することが確認された.そして,その過程は生態系モデルによって再現された.より大きな効果を得るため,大型ホタテ貝殻礁の設置を行った.蝟集生物量は減少していくが,それは貝殻礁中心部の海水交換不足のためと考えられた.そこで,通水孔を設けた“実用的ホタテ貝殻礁”を開発した.その結果,生物は中心部に集まり,その効果は証明された.
著者
浅井 和康 鴻 信義 柳 清 深見 雅也 遠藤 朝彦 森山 寛 伊藤 裕之 大橋 正洋
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.329-334, 1995-06-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
10

頸髄損傷患者3症例について, 体位変換時および排尿前後での鼻腔通気度の変化を調べた。その結果, 坐位から仰臥位に体位変換することによって鼻腔抵抗値は上昇し, 排尿することによって低下をみた。これは, 頸髄損傷患者に特有の自律神経過反射 (autonomic hyperreflexia) と呼ばれる現象に伴うものと考えられた。すなわち, 膀胱内の尿の充満などによる麻痺域への刺激が交感神経反射を惹起して全身性の血圧上昇を起こす現象であり, これによって非麻痺域すなわち鼻腔の血管拡張を招き鼻閉をきたす。また健常者でも坐位から仰臥位に体位変換することによってわずかに鼻腔抵抗が増大するが, 頸髄損傷患者では顕著にこの現象が現れることも, 外傷に伴う交感神経系の機能障害が関与していることが示唆された。
著者
大橋 正洋
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.194-199, 2002 (Released:2006-04-25)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

この数年,高次脳機能障害は,メディアや行政の用語として用いられるようになった。しかしながら,医学領域ではこの語の定義について見解は統一されていない。リハビリテーション医学の分野では,20年以上も以前から,診断や治療についての試みが行われてきた対象である。しかし,主な関心は脳血管障害による失語・失行・失認といった神経学的症候に絞られていた。この数年,救急医療の進歩によって,脳外傷などによるびまん性脳損傷の後,救命された人々がリハビリテーションの現場に来るようになった。これらの人々は,認知,情緒,心理社会的障害などを持つ傾向があり,これらの障害は評価や対応が困難である。高次脳機能障害を持つ人々を支援するためのシステムは,量的にも質的にも十分ではない。1998年,当事者組織が設立され,広報活動を行った結果,この用語が急速に注目をあびるようになった。
著者
伊藤 憲佐 中山 恵美子 梶川 奈津子 清水 翔志 野田 剛 中村 隼人 村中 清春 林 真也 伊藤 太一 中井 智子 田中 研三 大橋 正樹 不動寺 純明 葛西 猛
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.419-426, 2011-10-20 (Released:2020-09-11)
参考文献数
36

鈍的胸部外傷による肋骨骨折患者の入院日数と, 初診時に得られる臨床情報について重回帰分析を行い, 入院日数の推定式を構築することを目的とした後ろ向き研究である. 肋骨骨折にて入院した患者92例を対象とし入院日数と, 性別, 年齢, HR, SBP, 血気胸の有無, 胸腔ドレーン挿入の有無, 硬膜外麻酔・神経根ブロックの有無, 肋骨骨折の本数を調査した. これらの項目に対し入院日数を目的変数として, 探索的に重回帰分析を行った. 最終的に推定入院日数=4.9+肋骨骨折の本数×0.9日に, 年齢が60歳以上の場合, +3.3日, 胸腔ドレーン挿入が施行された場合, +3.6日が加算される, 単回帰推定式が得られ, 95%信頼限界は±15.6日であった. この推定式により鈍的胸部外傷による肋骨骨折患者の入院日数が, 初診時に得られる情報から推定可能と思われる. また入院期間を短縮するためには肺炎の予防が重要である事が暗示された.
著者
上野 貴弘 大橋 正良
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2022-HCI-199, no.25, pp.1-6, 2022-08-15

いじめは被害者の心身的苦痛に基づく主観的な事象であるため,特定の動作から検出することは難しい.そこで,本研究では,被害者の心拍情報を用いて,主観的ストレスに対応したいじめの検出手法を検討する.実験では動画視聴による疑似的な体験から,いじめとリラックスのケースに基づく被験者の心拍情報を取得し,主観ストレスのアンケートを実施した.現在投稿中の論文では,いじめとリラックスを二値分類する機械学習モデルの精度と主観ストレスの相関を分析しているが,本稿では,分析結果を踏まえ,高ストレスと低ストレスにそれぞれ区別したデータを用いて解析した結果を報告する.
著者
大橋 正
雑誌
第78回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, no.1, pp.7-8, 2016-03-10

コンピュータの一部分の電源が維持されるサブユニットと電源が切断されるメインユニットで構成されるコンピュータのハードウェア(FPGAデータ)及びソフトウェアの現機能を変更して機能を拡張(アップグレード)又は縮退(ダウングレード)する為の構成情報及び拡張/縮退のエンティティ(FPGAデータ又はソフトウェア群)をウェブ上の管理元からダウンロードして所与のコンピュータのハードウェアやソフトウェアの機能拡張又は機能縮退を可能ならしめるサステイナブル・コンピュータのアーキテクチャの構成及びその作用について検討した研究。
著者
岡本 隆嗣 橋本 圭司 大橋 正洋 中地 照子 石井 明美 宮野 佐年
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.678-685, 2004-10-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
16
被引用文献数
5 6

当院で入院の多数を占める脊髄損傷,脳外傷,変形性股関節症患者のHRQOLおよび費用対効果を,EuroQOLを用い調査した.対象は2003年7月~12月に30日以上入院し,質問が理解可能で,重度の合併症がない111名である.調査内容は(1)入退院時FIM,(2)入退院時EuroQOL,(1)5項目法(5 Dimension,以下5D),(2)視覚評価法(Visual Analogue Scale,以下VAS),(3)5Dで問題がある人の割合,(3)費用効用分析,とした.結果は,脳外傷・脊髄損傷はFIMが有意に改善し,5D・VASは,3疾患とも有意に改善した.5D各項目では,脳外傷・脊髄損傷は各項目とも全体的に問題を感じている人の割合が減少し,変形性股関節症では,特に痛み・不安の項目で減少がみられた.診療報酬より算出した入院中の医療費は,脳外傷146.2±50.4万円,脊髄損傷182.2±79.0万円,変形性股関節症138.9±40.7(手術料含むと285.6±71.1)万円であった.患者の状態が退院後も変化しないと仮定した場合の1質調整生存年(Quality adjusted Life Year;QALY)獲得のための医療費は,脳外傷43.1±12.4万円,脊髄損傷42.5±55.1万円,変形性股関節症47.8±48.7(手術料含むと93.2±84.7万円)であった.本調査で,リハビリテーション前後での効用値の有意な増加を確認することができ,3群とも費用効果ありと考えられた.
著者
廣瀬 英晴 菊地 久二 斉藤 仁弘 小堀 雅教 芝原 健夫 安斎 碕 大橋 正敬
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.517-524, 1989
被引用文献数
1

本研究は, 吸水および溶解量の少ない可視光線重合型レジンの開発を目的として, シクロホスファゼンモノマー3種および市販モノマー3種を用いて可視光線重合型のアンフィルドレジンを試作し, それぞれの硬化物の水中での吸水量, 溶解量, MeOH中での膨潤量, 溶解量, THF中での膨潤量および機械的性質について検討したものである.その結果, 吸水量は, いずれのモノマーを用いた場合も経時的に増大した.また, 30日間水中浸漬した場合の溶解量は, 4PN-(EMA)<sub>8</sub>, 4PN-(TF)<sub>1</sub>-(EMA)<sub>7</sub>, 4PN-(TF)<sub>2</sub>-(EMA)<sub>6</sub>, Tri-EDMA, BMPEPPおよびBis-GMA+Tri-EDMAの場合, それぞれ順に0.16, 0.20, 0.51, 0.65, 0.17および0.81%を示した.MeOH中での膨潤量は, Bis-GMA+Tri-EDMAおよび4PN-(TF)<sub>2</sub>-(EMA)<sub>6</sub>の場合を除き, いずれも経時的に増加する傾向を示した.30日間MeOH中に浸漬した場合の溶解量は, シクロホスファゼンモノマーを用いた場合および市販モノマーを用いた場合, それぞれ0.09〜0.36および1.36〜5.40%を示した.30日間THF中に浸漬した場合の経時的な膨潤量は, シクロホスファゼンモノマーを用いた場合に市販モノマーを用いた場合と比較して小さかった.一方, 圧縮強さは, いずれのモノマーを用いた場合も230〜275MPaを示し, 曲げ強さは, シクロホスファゼンモノマーを用いた場合は, いずれも45MPa以下を示し, 市販モノマーを用いた場合は59〜90MPaを示した.
著者
上野 貴弘 森 慎太郎 大橋 正良
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.129-130, 2019-02-28

情報化社会の発展によって,携帯電話,PCなどのメディアデバイスが広く行き渡っている.それに伴い, twitterやLINE等ソーシャルメディアを利用して誹謗中傷が行われるなど,メディアリテラシーの問題が発生している. 本研究ではソーシャルメディアにおける書き込みをもとに,嫉妬感情の表現の検出を試みる.提案方式は,あらかじめ嫉妬感情だと判断した言葉を設定し,Pythonを用いてソーシャルメディアの書き込みから抽出するものである。抽出データから書き込みが嫉妬感情に基づいているか,その妥当性を判定する.