著者
調 憲 播本 憲史 小山 洋
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.235-242, 2020-08-01 (Released:2020-09-03)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

【背景・目的】 COVID-19感染症は世界的なパンデミックの状況となった.日本でも2020年1月から5月にかけて大きな感染拡大が見られた.中国では,感染率は地域によって大きな差があり,人口密度の高い地域ほど高いことが報告されている.本邦においても都道府県ごとの累積感染者数が大きく異なるものの,詳細な検討はない.【対象と方法】 日本において初発患者が見られた2020年1月16日から多くの都道府県で流行がほぼ終息し始めた2020年5月3-6日までの約110日間における47都道府県におけるCOVID-19に対するPCR検査陽性者(累積感染者)の数を都道府県人口で除した累積感染者の割合(累積感染割合)と人口集中度,人口密度,公共交通機関を用いて通勤・通学する人の割合,人口当たりの乗用車保有台数の指標との相関を単・多変量解析を用いて検討した.さらにCOVID-19感染者のうち,感染経路が不明な者,調査中など明らかな感染経路不明な感染者を感染経路不明割合としてそれぞれの因子との関連を単・多変量にて解析した.さらに回帰直線の95%信頼区間を超えて高い感染率を示す都道府県について検討をした.【結 果】 単変量解析では都道府県別の累積感染割合とすべての因子は有意な相関を示した.多変量解析では累積感染割合では人口密度が独立した因子として選択された.さらに感染経路不明割合とすべての因子は単変量解析で相関した.同様に多変量解析では人口密度と公共交通機関を用いて通勤・通学する人の割合が独立した因子として選択された.回帰直線の95%信頼区間を超えて感染率の高い都道府県には石川,富山,福井県,高知県,東京都,北海道などが挙げられた.【結 論】 COVID-19累積感染割合は人口密度などの因子と強い相関を認め,ポストコロナの時代に向けて「密集」,「密接」を回避するライフスタイルの導入が重要と考えられた.95%信頼区間を超えて感染割合の高い都道府県においては観光や夜の繁華街など人口密集の要因以外が関与している可能性があり,地域別の詳細な解析が今後の感染対策に有用と考えられた.
著者
小山 友 Tomo OYAMA
雑誌
東洋英和大学院紀要 = The Journal of the Graduate School of Toyo Eiwa University (ISSN:13497715)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.95-112, 2013-03-15

The rise of the new radical right in Western European political parties started in the late 1980s and is now expanding across Europe. While causes of the rise of the new radical right vary in each county, a common characteristic of many radical right parties is their exclusive stance toward the immigration issue. Has the expanding support for these radical right parties across Europe resulted from anincreasing sense of xenophobia among European citizens against immigrants? Or has it resulted from the radical right parties’ usual tactic of gaining public support by expressing negative opinions on the immigration issue in order to acquire political legitimacy? This paper aims to clarify the rise of the radical right in the Netherlands in and after 2000. Focusing on two parties, Lijst Pim Fortuyn and Partij voor de Vrijheid, the study identifies characteristics of the radical right in Netherlands. Especially, it reviews and examines changes in Dutch society, including globalization and the expansion of the EU since the 1990s, in order to trace structural changes in the Dutch political system and examine the ways in which such changes are linked to the rise of the radical right. The paper also examines causes of the expansion of public support for the new radical right: whyit has been able to gain public support by proclaiming itself to be anti-immigration and anti-Muslim, despite the fact that most radical right candidates have historically been avoided by most citizens and treated as fringe candidates since the Second World War. In addition, the paper clarifies how the immigration issue in Dutch society has affected the radical right and how the radical right has gainedthe support of voters, including the arguments used by the radical right to acquire political legitimacy for its anti-immigration and anti-Muslim stance.
著者
三木 文雄 小林 宏行 杉原 徳彦 武田 博明 中里 義則 杉浦 宏詩 酒寄 享 坂川 英一郎 大崎 能伸 長内 忍 井手 宏 西垣 豊 辻 忠克 松本 博之 山崎 泰宏 藤田 結花 中尾 祥子 高橋 政明 豊嶋 恵理 山口 修二 志田 晃 小田島 奈央 吉川 隆志 青木 健志 小笹 真理子 遅野井 健 朴 明俊 井上 洋西 櫻井 滋 伊藤 晴方 毛利 孝 高橋 進 井上 千恵子 樋口 清一 渡辺 彰 菊地 暢 池田 英樹 中井 祐之 本田 芳宏 庄司 総 新妻 一直 鈴木 康稔 青木 信樹 和田 光一 桑原 克弘 狩野 哲次 柴田 和彦 中田 紘一郎 成井 浩司 佐野 靖之 大友 守 鈴木 直仁 小山 優 柴 孝也 岡田 和久 佐治 正勝 阿久津 寿江 中森 祥隆 蝶名林 直彦 松岡 緑郎 永井 英明 鈴木 幸男 竹下 啓 嶋田 甚五郎 石田 一雄 中川 武正 柴本 昌昭 中村 俊夫 駒瀬 裕子 新井 基央 島田 敏樹 中澤 靖 小田切 繁樹 綿貫 祐司 西平 隆一 平居 義裕 工藤 誠 鈴木 周雄 吉池 保博 池田 大忠 鈴木 基好 西川 正憲 高橋 健一 池原 邦彦 中村 雅夫 冬木 俊春 高木 重人 柳瀬 賢次 土手 邦夫 山本 和英 山腰 雅宏 山本 雅史 伊藤 源士 鳥 浩一郎 渡邊 篤 高橋 孝輔 澤 祥幸 吉田 勉 浅本 仁 上田 良弘 伊達 佳子 東田 有智 原口 龍太 長坂 行雄 家田 泰浩 保田 昇平 加藤 元一 小牟田 清 谷尾 吉郎 岡野 一弘 竹中 雅彦 桝野 富弥 西井 一雅 成田 亘啓 三笠 桂一 古西 満 前田 光一 竹澤 祐一 森 啓 甲斐 吉郎 杉村 裕子 種田 和清 井上 哲郎 加藤 晃史 松島 敏春 二木 芳人 吉井 耕一郎 沖本 二郎 中村 淳一 米山 浩英 小橋 吉博 城戸 優光 吉井 千春 澤江 義郎 二宮 清 田尾 義昭 宮崎 正之 高木 宏治 吉田 稔 渡辺 憲太朗 大泉 耕太郎 渡邊 尚 光武 良幸 竹田 圭介 川口 信三 光井 敬 西本 光伸 川原 正士 古賀 英之 中原 伸 高本 正祇 原田 泰子 北原 義也 加治木 章 永田 忍彦 河野 茂 朝野 和典 前崎 繁文 柳原 克紀 宮崎 義継 泉川 欣一 道津 安正 順山 尚史 石野 徹 川村 純生 田中 光 飯田 桂子 荒木 潤 渡辺 正実 永武 毅 秋山 盛登司 高橋 淳 隆杉 正和 真崎 宏則 田中 宏史 川上 健司 宇都宮 嘉明 土橋 佳子 星野 和彦 麻生 憲史 池田 秀樹 鬼塚 正三郎 小林 忍 渡辺 浩 那須 勝 時松 一成 山崎 透 河野 宏 安藤 俊二 玄同 淑子 三重野 龍彦 甲原 芳範 斎藤 厚 健山 正男 大山 泰一 副島 林造 中島 光好
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
日本化学療法学会雜誌 = Japanese journal of chemotherapy (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.526-556, 2005-09-25

注射用セフェム系抗菌薬cefozopran (CZOP) の下気道感染症に対する早期治療効果を評価するため, ceftazidime (CAZ) を対照薬とした比較試験を市販後臨床試験として実施した。CZOPとCAZはともに1回1g (力価), 1日2回点滴静注により7日間投与し, 以下の結果を得た。<BR>1. 総登録症例412例中最大の解析対象集団376例の臨床効果は, 判定不能3例を除くとCZOP群92.0%(173/188), CAZ群91.4%(169/185) の有効率で, 両側90%, 95%信頼区間ともに非劣性であることが検証された。細菌性肺炎と慢性気道感染症に層別した有効率は, それぞれCZOP群90.9%(120/132), 94.6%(53/56), CAZ群93.3%(126/135), 86.0%(43/50) で, 両側90%, 95%信頼区間ともに非劣性であることが検証された。<BR>2. 原因菌が判明し, その消長を追跡し得た210例での細菌学的効果は, CZOP群89.5%(94/105), CAZ群90.5%(95/105) の菌消失率 (菌消失+菌交代) で, 両群間に有意な差はみられなかった。個々の菌別の菌消失率は, CZOP群91.1%(113/124), CAZ群90.8%(108/119) で両群問に有意な差はみられなかったが, 最も高頻度に分離された<I>Streptococcus pneumoniae</I>の消失率はCZOP群100%(42/42), CAZ群89.5%(34/38) で, CZOP群がCAZ群に比し有意に優れ (P=0.047), 投与5日後においてもCZOP群がCAZ群に比し有意に高い菌消失寧を示した (P=0.049)。<BR>3. 投薬終了時に, CZOP群では52,4%(99/189), CAZ群では50.3% (94/187) の症例において治療日的が達成され, 抗菌薬の追加投与は不必要であった。治療Il的遠成度に関して両薬剤間に有意な差は認められなかった。<BR>4. 随伴症状の発現率はCZOP群3.9%(8/206), CAZ群5.0%(10/202) で両棊剤間に有意な差はなかった。臨床検査値異常変動として, CAZ群に好酸球増多がCZOP絆より多数認められたが, 臨床検査値異常出現率としては, CZOP群31.6% (65/206), CAZ群32.2% (65/202) で, 両群間に有意な差は認められなかった。<BR>以上の成績から, CZOPは臨床効果においてCAZと比較して非劣性であることが検祉された。また<I>S. pneumoniae</I>による下気道感染症に対するCZOPの早期治療効果が確認された。
著者
高橋 英之 伊豆原 潤星 改田 明子 山口 直孝 境 くりま 小山 虎 小川 浩平 石黒 浩
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.852-858, 2019-10-15 (Released:2019-10-15)
参考文献数
17

コミュニケーションを円滑に行う上で,相手に対する事前知識や信念を互い有し,それを振舞いや発言にトップダウンに利用することは重要である.その一方で,多くの人間とロボットのコミュニケーションにおいては,ロボットに関する事前知識や信念を人間側が持っていないことが多い.本論文では,事前知識や信念が人間とロボットのコミュニケーションに及ぼす影響を調べるために,著名な文豪である夏目漱石のアンドロイドを用いて,被験者が“夏目漱石”や“ロボット”,“人工知能”に対して有している事前知識や信念がどのように“漱石アンドロイドとのコミュニケーション”に対する印象に影響を与えるのかを調べた.その結果,“夏目漱石”に対する事前知識は緩く漱石アンドロイドとのコミュニケーションにおけるリアリティと関連する一方,それ以上に“人工知能”に対する畏怖の念が強く漱石アンドロイドのリアリティと関連していることが分かった.
著者
岡 寛 小山 洋子 中村 満行 松本 美富士 西岡 久寿樹
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.45-50, 2014-03-30 (Released:2015-05-30)
参考文献数
18

線維筋痛症(Fibromyalgia:FM)は,全身に広範囲な痛みを主訴とする原因不明の疾患で,本邦に推定で200万人以上存在する.痛みの強さの評価は,従来Visual Analog Scale(VAS),Numeric Rating Scale(NRS)等によって行われてきたが,これらは主観的である.痛みを定量化できれば痛みの認知療法となり治療は格段に進化すると考えられる.昨今,痛みを定量的に評価できる痛み定量化システム(Pain Vision®)がニプロ社より実用化され,患者の持つ痛みを客観的に評価される事が可能になった. 我々はACR1990の分類基準を満たすFM患者83人の痛みを,現在のNRSとPain Vision®で測定し,比較検討した.その結果,Pain Vision®によるFM 患者の男性閾値は9.35±2.64μA(平均±SD),女性閾値は7.93±2.30μAであったが,FM の女性で閾値の低い集団が一定の割合存在した.Pain Vision®による痛み度は男性649.91±312.94,女性688.08±526.65,と男女ともに著明な高値を示し,FM 患者の痛み度は対照群の関節リウマチ(Rheumatoid arthritis:RA)患者の痛み度346.23±335.82より有意に高かった(P<0.0001).さらにFM 患者の女性では痛みの閾値が低く,疼痛知覚過敏との関連が示唆され,これに対して,RA患者では,閾値の低下はなかった.NRSの平均は,FM患者5.7±2.0とRA患者5.5±2.2では差がなかったが,FM患者ではNRSスコアが高いほど,痛み度が高い傾向が認められた(P=0.0177). Pain Vision®による痛み度の測定は,FM患者の痛みの病態を知るうえで,優れていると考えられる.
著者
小山 真人 鵜川 元雄
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

1987(昭和62)年8月20日の早朝、富士山頂で震度3の地震が発生し、その後も同月27日まで震度1~2の地震が3回続いた。これらの地震は山頂だけが有感であり、八合目付近の山小屋でも気づいた人はいなかった。遠方の高感度地震計の記録が不明瞭だったことから、山頂直下のごく浅い部分で発生したと考えられている。この地震を契機として山頂に初めて地震計が設置されたが、今日まで同様な地震は観測されていない。日誌などを遡っても例がなく、1933年以降で初めての事件であった(中禮ほか1987火山学会予稿集;神定ほか1988験震時報;鵜川ほか1989防災センター研報)。この地震は同年8月26日の各社の報道で大きく取り上げられ、火山活動との関係が取り沙汰されたが、噴火に結びつきそうな他の現象は起きなかったとされている。 現在の知識に照らすと、この地震の原因としてもっとも考えやすいのは山頂火口の陥没未遂である。過去たびたび噴火を起こした山頂火口下の火道内には空洞があって、重力的に不安定であろう。こうした火口の「栓」をなす岩石の一部が、時おり地下の空洞に崩落し、その際に小地震や火口底の陥没、場合によっては小さな噴火を伴うことが、他の火山で知られている。 裾野市立富士山資料館に展示されている山頂火口の古いジオラマに、「昭和62年8月頃 直径50m 深さ30m 陥没した」との丸い赤紙に書かれたメモが、陥没位置と思われる火口内壁に付されている。この真偽を調べるために、富士山資料館の元学芸員とジオラマを作成した職員(故人)の家族、当時の富士山測候所員、地震を受けて臨時観測に出かけた気象庁職員たちへの聞き取り調査、臨時観測の報告書ならびに測候所の気象観測日誌の確認を、富士山資料館と気象庁火山課の協力を得て実施した。また、地震前後に撮影された写真(気象庁職員、国土地理院、静岡新聞社、筆者撮影)とも照合した。それらの結果を以下に記す。(1)富士山資料館のジオラマ上のメモは、当時の富士山測候所の職員(名前不明)からの伝聞によって資料館職員が付したものらしい。(2)山頂火口内壁の同規模の円形の陥没が、地震後の写真(1988年3月と12月、1990年代)で確認できるが、地震前の写真(1986年9月と11月、1987年4月)にも認められる(1970年代の写真には確認できず)。また、その陥没位置は、ジオラマに表示された場所の近傍ではあるが若干異なる。なお、当時の観測項目中に地変がないため、観測日誌に陥没の記述はない(有感地震のみ欄外に記載)。2001年以降の写真に陥没は認められず、崩落で埋まったらしい。(3)上記陥没の存在は当時の複数の測候所員が認識しており、1982~84年頃の台風による大雨後に陥没したと記憶する職員もいるが、本当に大雨が原因かは不明とのこと。また、1987年地震後は火口内を注視していたが、際立った変化は確認できなかったとの談話もある。なお、地震当時の8月26日に山頂火口内の温度測定を実施した臨時観測の報告書には「特に高温な場所は発見できず、噴気等も全くなかった。また、大きな落石の跡も見当たらなかった」と記され、それに携わった職員の記憶にもない。以上のことから、山頂火口内壁の陥没は、1987年の山頂地震より前の1980年代なかばに発生したと判断できる。しかし、両者の発生時期が近いことから、原因が同一の疑いが残る。また、原因の如何にかかわらず、陥没の発生自体は山頂火口内壁ならびに火口底の不安定さの象徴とみなすべきであろう。現行の富士山の噴火警戒レベルは、レベル上げの際に2を使用せず、1から3に上げることになっている。気象庁によれば、レベル2は火口が特定できる場合に限っており、富士山では事前に火口が特定できないためと理由づけされている。かつて演者の1人は、住民に比べて対策の遅れがちな登山者のためにレベル2の使用を提案したが(小山2014科学)、その後の富士山火山広域避難計画対策編(2015年)ではレベル1を「レベル1(活火山に留意)」と「レベル1(情報収集体制)」の2つに分け、後者を登山者対策に使用することとなった。しかし、具体的な対策としては山小屋組合等への周知や入山規制実施の準備などとされ、登山者の避難や入山規制を義務づけてはいない。しかしながら、レベル2は本当に不要だろうか? 噴火前に火口が特定できる場合は本当にないのか? 地下からマグマが上昇して噴火に至るモデルにとらわれ過ぎていないか? 陥没や噴気の急激な復活など、噴火以外の現象の危険箇所が事前に特定できた場合はどうするのか? 上記の対策では事態の展開が速い場合に登山者の安全が十分確保できないのでは? などの疑問があり、レベル2問題は上記協議会での継続審議事項となっている。
著者
小山 隆秀
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.205, pp.211-243, 2017-03

青森県津軽地方のネブタ(「ねぷた」および「ねぶた」を総称する)とは、毎年8月初旬に、木竹や紙で山車を新造して、毎夜、囃子を付けて集団で練り歩く習俗である。現在では海外でも有名な観光行事となった。そのルーツには七夕や眠り流し、盆行事があるとされてきたが、その一方で近世から近現代まで喧嘩や口論、騒動が発生する行事でもあった。本論ではこれをケンカネプタ(喧嘩ねぷた)として分析する。ケンカネプタは、各町の青少壮年達によるネブタ運行が、他町と遭遇して乱闘へ発展するものであるが、無軌道にみえる行為のなかには、一定の様式や儀礼的要素が伝承されてきたことが判明した。しかし近代以降、都市部ではネブタの統制が強化され、ケンカネプタの習俗は消滅したが、村落ではその一部が、投石や喧嘩囃子等で近年まで伝承されていた。さらに都市部では、近世以来行われてきた子供たちの自主的なネブタ運行が禁止されるとともに、喧嘩防止のため、目抜き通りでの合同運行方式を導入することによって、各ネブタ組は、隊列を整えて大型化した山車を運行し、合同審査での受賞を競うことへ価値観を転換していった。近年は、山車の構造や参加者の習俗形態が急速に多様化しており、それにともなう事故が発生したため、市民からは、ネブタが「伝統」または「本来の姿」へ回帰することを訴える動きがある。しかし本論の分析によれば、現在推奨されている審査基準や「伝統」とされる山車の形態や習俗は、近世以降の違反や騒乱から形成され、後世に定着したものであることがわかる。よって、現在の諸問題を解決するための拠り所、または行事全体の紐帯として現代の人々が希求している「本来の姿」に定型はなく、各時代ごとに変容し続けてきた存在であるといえよう。Nebuta (including both "Neputa" and "Nebuta") is festivals held at the beginning of August every year in different parts of the Tsugaru Region in Aomori Prefecture. In these festivals, bands of participants parade newly constructed floats made of wood, bamboo, and paper at night.Nebuta has become famous even outside of Japan, attracting many tourists. Although it originated in the Tanabata, Nemuri Nagashi, or Bon Festival, Nebuta always entailed quarrels, fights, and brawls from the early modern to the modern times. This folk custom is called "Kenka Neputa" and is analyzed in this paper.Kenka Neputa is a brawl resulted from an encounter between floats paraded by young and adult men from different towns. Although it seemed to have been uncontrolled, it has been revealed that there were some traditional codes and ritual elements in such fights. In modern times, Kenka Neputa died out in urban areas because of stronger control of Nebuta, but some elements, such as stone throwing and fighting music, had survived up to recent years in rural areas.In urban areas, children floats, whose origin dates back to the early modern period, were prohibited, and floats paraded down main streets were brought under joint control in order to prevent fights. As a result, Nebuta teams shifted their focus to how to win a festival-wide float competition, creating larger floats and marching in columns. In recent years, Nebuta has become increasingly diversified in the form of floats and the style of participants. As these changes have caused some accidents, a movement is growing among local people to bring Nebuta back to its "traditional" or "authentic" form.This analysis, however, reveals that the form and style of floats valued in competitions or considered as "traditional" were created from brawls and violations and established as standards after the early modern period. Therefore, the grounds for solving current problems, or the "authentic forms" contemporary people are longing for as common standards, are not definite but subject to changes over time.
著者
小山 裕
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.37-51, 2010-06-30 (Released:2012-03-01)
参考文献数
46
被引用文献数
1

本稿の目的は,ニクラス・ルーマンが『制度としての基本権』(1965年)において最初に提示した機能分化社会という秩序表象が立つ共時的・通時的連関の解明にある.共時的な観点からは,ルーマンの機能分化社会理論が,公共性や公的秩序といった概念を手がかりとした,ドイツ的国家概念の批判という,同時代のドイツ連邦共和国の理論家の幾人かに共通して見られる試みの一ヴァージョンであったことが示される.ルーマンの機能分化概念は,かかる国家概念を支える19世紀ドイツの社会構造と見なされていた国家と社会の二元主義へのオルタナティヴであった.通時的な観点からは,機能分化社会という秩序表象がカール・シュミットの全面国家との比較から分析される.ルーマンは,シュミットのいう社会の自己組織化を,社会全体の政治化による自由なき全面国家の成立と見なし,それを批判するために機能分化を維持するためのメカニズムを探求した.政治システムの限界づけを志向するという点で,初期ルーマンの機能分化社会理論は,19世紀の市民的自由主義の自由主義的な再解釈であったと特徴づけることができる.

15 0 0 0 OA 松屋筆記

著者
小山田与清 著
出版者
国書刊行会
巻号頁・発行日
vol.第1, 1908
著者
小山 善哉 石飛 進吾 久松 徳子 松下 新子 山口 大樹 平田 あき子 山見 由美子 大井 久美子 林 善彦
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.243-252, 2012-12-31 (Released:2020-06-07)
参考文献数
15

【目的】 高齢者や頸部可動域に制限がある患者でも安全に実施しやすく,実際の食物嚥下動作に近似した口腔期・咽頭期の嚥下リハビリテーション手技として,われわれは栄養カテーテルチューブを用いた「蕎麦啜り様訓練」を考案し,表面筋電図を用い,嚥下リハビリとしての有効性を評価した.【方法】健常成人16 名(20~25 歳,平均年齢22.2 歳)を被験者とし,舌骨上筋群,舌骨下筋群,胸鎖乳突筋に双極電極を貼付し,① 空嚥下,② 開閉口,③ 頸部左右回旋,④ メンデルゾーン手技,⑤ シャキア訓練,⑥ 12 フレンチ(Fr)「蕎麦啜り様」チューブ吸い,⑦ 12Fr チューブ一気吸い,⑧ 8Fr「蕎麦啜り様」チューブ吸い,⑨ 8Fr チューブ一気吸いの各手技を実施させ,表面筋電位変化を記録した.得られた原波形は,平滑化時定数100 ms で二乗平均平方根(RMS)に整流化し,各被験者から得られた%MVC の平均値を,各筋群について,一元配置分散分析し,有意差が認められた場合はボンフェローニの補正による多重比較を行った.【結果】「蕎麦啜り様」チューブ吸いは,舌骨上筋群ではシャキア訓練に匹敵する高い%MVC を示し,舌骨下筋群ではメンデルゾーン手技より有意に大きく,シャキア訓練の値の2/3 に近い高い平均%MVC を示した.一方,胸鎖乳突筋では,空嚥下やメンデルゾーン手技と有意差なく,きわめて低い%MVC を示した. 【結論】チューブ吸い「蕎麦啜り様訓練」は,舌骨上下筋群に高い筋活動を認め,胸鎖乳突筋は低い筋活動しか認めず,頸椎症や高齢者など頸部運動に制限のある患者に対しても応用可能な,安全で簡便な口腔期および咽頭期の嚥下リハビリ手技として評価できる.
著者
小山 貴之 中丸 宏二 相澤 純也
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.67-72, 2018-10-31 (Released:2019-01-26)
参考文献数
11

本研究は,大学アメリカンフットボール選手の可動性不良群38名と可動性良好群14名を対象とし,可動性の改善を目的としたエクササイズを週3回,12週間実施した.可動性不良群において,Functional Movement Screen(FMS)のスコアは,合計スコアとDeep Squat(DS),Shoulder Mobility Reaching(SMR),Active Straight Leg Raising (ASLR)に12週時点で有意な改善が認められた.SMRとASLRは可動性が必要な動作であり,本研究で実施したエクササイズにより,可動性の項目だけでなく複雑な動作パターンであるDSの改善にも寄与することが示唆された.
著者
平森 大規 釜野 さおり 小山 泰代
出版者
Japanese Council on Family Relations
雑誌
家族研究年報 (ISSN:02897415)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.5-25, 2023-07-15 (Released:2023-10-13)
参考文献数
18

本稿では、これまで筆者らが従事してきた研究を題材に、日本ではまだほとんど進められていない量的調査を通じた性的指向・性自認のあり方(SOGI) と家族研究の可能性を探った。日本の無作為抽出調査においてSOGIを測定する際の課題と測定方法を検討した研究、同性パートナーの有無の把握における課題を検討した研究、回答者のSOGIおよびカップルタイプ(女性間、男性間、男女間) 別に世帯・家族構成やジェンダー・家族意識等について検討した研究という3つの研究事例を提示した。日本では数少ない回答者のSOGIをたずねた無作為抽出調査である「大阪市民調査」およびその準備調査を用いてこれらの研究事例を検討した結果、既存研究の課題を乗り越えるべく、SOGIを分析軸にした家族研究を進めていくことの社会的・学術的意義が示された。
著者
小山 憲司
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.111, pp.2033, 2019-03-31 (Released:2019-03-27)

これからの学術情報システム構築検討委員会は,大学図書館と国立情報学研究所との連携・協力推進会議の下に設置された,国公私立大学の枠を超えて今後の学術情報システムのあり方について検討する組織である。2012年の設置以降,それまでに行われてきた議論を参照しながら検討を進め,2015年5月にその後の推進方針となる「これからの学術情報システムの在り方について」をとりまとめた。電子情報資源のデータの管理・共有とNACSIS-CAT/ILLの再構築(軽量化・合理化)の2 点を当面の課題として設定,それぞれ作業部会を設置し,具体的な活動を進めたほか,将来に向けた取り組みについても議論を重ねてきた。本稿ではこれまでの議論を紹介するとともに,私見も交えながらこれからの学術情報システムの方向と課題について検討した。
著者
小山 騰
出版者
慶應義塾福澤研究センター
雑誌
近代日本研究 (ISSN:09114181)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.121-173, 1994

国際結婚リストはじめに国際結婚の最初の照会太政官布告第103号太政官布告第103号に対する各国の反応国際結婚許可の手続国際結婚関係の史料および国際結婚の推定総数国際結婚の最初の事例尾崎三良とパサイア・モリソンの結婚と離婚英国人が関係した早期の事例皇族と国際結婚外国人婿養子の一事例としての「快楽亭ブラック」の結婚国籍による国際結婚の分析おわりに