著者
正木 隆 佐藤 保 杉田 久志 田中 信行 八木橋 勉 小川 みふゆ 田内 裕之 田中 浩
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.17-23, 2012-02-01 (Released:2012-05-29)
参考文献数
19
被引用文献数
7 6

苗場山ブナ天然更新試験地の30年間のデータを解析し, 天然更新完了基準を検討した。試験地では1968年に5段階の強度 (皆伐∼対照区) での伐採, および5通りの林床処理 (刈り払い, かき起こし, 除草剤散布等) が行われ, 1978年には残存母樹も伐採された。本研究では残存母樹の伐採から4年後の1982年と2008年の植生調査 (各種の被度および最大高) および樹木の更新調査 (稚樹密度および稚樹高) の結果を解析した。高木性の樹木が更新 (2008年に高木性樹種の被度50%以上) する確率は, 1982年当時の稚樹密度・稚樹高・植生高でよく説明され, ブナに対象を限定した場合では, 稚樹の密度と高さのみでよく説明された。高木性樹種の更新の成功率は, 稚樹の密度が20万本/ha以上, かつ植生が除去された場合にようやく8割を超えると推定された。各地の広葉樹天然更新完了基準では, 稚樹高30cm, 密度5,000本/haという例が多いが, この基準は低すぎると考えられた。伐採前に前生稚樹の密度を高める等の作業を行わない限り, 天然下種によるブナ林の更新は難しいと考えられた。
著者
小川 崇
出版者
日本社会教育学会
雑誌
日本社会教育学会紀要 (ISSN:03862844)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.47-56, 1999 (Released:2021-02-25)
参考文献数
61

The aim of this paper is to clarify the position and characteristics of Political Education in the activities of The Woman's Suffrage League of Japan (WSL) which was organized to agitate for women's suffrage in 1924.   The most important aim of WSL was to achieve women's suffrage. Therefore they lobbied the Diet. They assumed that Political Education would become more familiar to women and a more important part of their activities after they got the vote. The movement for women's suffrage made progress in this period.   After “Mansyu-Jihen” (1931), however, lobbying for women's suffrage at the Diet began to decline gradually. To cope with this difficult situation, WSL began to cooperate with local governments instead of going directly to the Diet During this process, they realized that connecting Political Education with the everyday lives of women would arouse their political interest.   This Political Education was meant to increase the popularity of the movement to get women's suffrage by focusing on the everyday lives which women were living. It was also meant to convert their individual demands into political opinions, through their everyday lives.
著者
中島 けい子 福本 順子 中野 典子 小川 政禧
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.261-268, 1976-09-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
5
被引用文献数
1

1) N-50-4型 (東洋理工製作所, 20KHz) 超音波発振装置を用い, 1gのパセリを30mlの蒸留水で洗浄すると, 10分間でパセリの細菌の残存率は約10%に低下し, 洗液中にはほとんど残存せず, 未洗浄パセリに付着していた細菌の約90%が殺菌されたことになる。しかし単なる振り洗いをわずか1分間行なうことによって, この超音波処理と同じ程度の洗浄効果が得られ, 振り洗いのほうがむしろ効率がよかった。2) Bransonic 12型 (Branson社, 50KHz) 超音波洗浄器を用い, 50gのパセリを1lの蒸留水で洗浄すると, 10分間でなおパセリと洗液の細菌の残存率はそれぞれ約25%と45%であって, 未洗浄パセリに付着していた細菌の約30%が殺菌されたにすぎず, N-50-4型超音波発振装置による洗浄効果に劣る。しかし, 同量のパセリを攪拌洗浄した場合, 殺菌効果はほとんど認められず, 未洗浄パセリに付着していた細菌の約30%がパセリに, 約70%が洗液に検出された。それゆえに, 相当量のパセリを洗浄する場合には超音波洗浄のほうがやや有効と判断されるが, その効果は顕著ではなかった。3) 20gのパセリを1lの容器に入れ, 水道水で流水洗浄すると, 1分間でパセリに残存する細菌は未洗浄パセリに付着していた細菌の数%にすぎず, 本実験で行なわれた他のいずれの方法よりも有効であった。
著者
五味 馨 藤田 壮 越智 雄輝 小川 祐貴 大場 真 戸川 卓哉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.II_249-II_260, 2020 (Released:2021-03-08)
参考文献数
40

2018年4月に閣議決定された第五次環境基本計画において「地域循環共生圏」が大きく打ちだされ,政府の施策・事業にもその理念が取り入れられつつある.これまでのシステム・アプローチを基礎とした持続可能な発展に関する研究はこれと共通する部分が多く,その実現に大いに貢献することが出来るものと考えられる.本研究では提案型論文として,地域循環共生圏の考え方を取り入れたシステム研究の推進に必要な基礎的・理論的な整理と課題の検討を行う.まず地域循環共生圏の定義を確認し,その中核的な要素を抽出した「原則」として目標・方法・条件を提案する.また,行政計画や既往研究における圏域概念を分類して地域循環共生圏を位置づける.さらにシステム的な研究において必要となる課題を挙げ,その初動的なアプローチとして地域循環共生圏構築の活動をその構成要素に分解して構造化する手法を開発し,分析の基本的枠組みとして提案する.
著者
小川 七世 鈴木 匡子
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.238-250, 2021-12-25 (Released:2022-01-12)
参考文献数
83

Gorno-Tempiniらによる原発性進行性失語(PPA)の臨床診断基準が発表されてから,今年で10年になる.診断基準という共通語ができたことで,PPAの論文数は急激に増加した.一方,この診断基準は発表当初から,PPAの診断をめぐって,またその先の3タイプの分類に関して問題点が指摘されてきた.特に3タイプのいずれにも属さない分類不能型や2タイプ以上にあてはまる混合型について様々な提案がなされている.その中でPPAからの独立性を確立しつつある原発性進行性発語失行やPPAの新タイプを中心に概説する.また,PPAの経過と背景疾患/病理所見についても述べる.
著者
安井 もゆる 小川 春美 吉原 秋 鈴木 道也 小川 知幸 畑 奈保美 津田 拓郎 田村 理恵
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

世界史学習の意欲が喚起されるのはどのようなときか。本研究は学生および高校教員への聞き取り調査等により、世界史学習の契機、実践そしてその際の内面を質的に調査することによって、基礎教養的であるとともに問題解決志向型であるような新しい世界史授業の開発・提案を行い、学問と教育の架橋を目指すものである。方法としては、大学生・短大生を対象に聞き取り調査を行い、高校までの世界史学習への評価・世界史学習への動機づけ等を明らかにする。また、高大連携に積極的な学界全体の動向を踏まえ、全国の高校の世界史教員にも聞き取りすることにより、授業での学習意欲を高めるための取り組みを調査する。
著者
石田 壽一 小野 一隆 佐藤 芳治 小川 泰輝
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.659-665, 2014 (Released:2015-08-01)
参考文献数
1
被引用文献数
1

東日本大震災において被害を受けた東北大学青葉山キャンパスの3つの実験研究棟(約7500~10000m2)の建替え工事が進捗している。復興のビジョンとして掲げた災害に強いレジリエントキャンパスの構築に向け,新しい実験研究棟には基礎免震構造を採用するとともに省エネやBCPにも対応している。復興建物の計画概要および大規模災害からの復興過程における建設需要の偏在による設計・施工時の課題をレポートする。
著者
小川 壮寛 松下 明 中島 利裕 守安 洋子 島田 憲一 江川 孝 五味田 裕 髙橋 正志 髙見 陽一郎
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.302-307, 2013 (Released:2014-01-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

目的 : 共同薬物治療管理 (CDTM) を地域医療に導入するための方略の一つとして, 事前に処方医と事後報告を行うポジティブリストを作成し, 疑義照会を事後報告へ切り替えることによる効果を検証した.方法 : 事後報告に替えることのできる疑義照会をリソルブ疑義と定義した上で, ポジティブリストに基づく事後報告への切り替えを行い, その効果をリソルブ疑義の件数, 保険点数およびジェネリック医薬品使用率の変化を調査することにより評価した.結果 : 医師の治療計画を変更することなく, ポジティブリストにより178件 (疑義照会全体の22.7%) の疑義照会を事後報告に替えることができ, 疑義照会にかかる時間を大幅に短縮することができた. これにより保険点数は17,455点削減でき, ジェネリック医薬品使用率は46.6%まで上昇した.結論 : ポジティブリストに基づく薬剤師自身の判断で疑義照会を事後報告に切り替えることにより, 疑義照会実施件数および医療費削減とジェネリック医薬品使用率上昇を可能とした.
著者
小川 順子
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.37-54,v, 2002

本論は、チャンバラ時代劇映画における「殺陣」に焦点を当てて、殺陣のもつ歴史的な展開を新たに構成し、「殺陣史」の類型化を試みたものである。 チャンバラ時代劇映画における「殺陣」は映画がもつ宿命と同じものである。すなわち、ある程度ドミナントになったパターンが続くと、観客は新たなるものを欲望するようになり、そのようにして新たな欲望に応えるように映画は展開してきた。「殺陣」も同様に、歌舞伎の引き写しから様々な要素が加えられ、新たなる刺激を求める観客に応えようとしてきたはずである。しかし残念ながら、「殺陣」そのものを映画作品から独立させ、歴史的なパースペクティブからダイナミックな展開を構成していくというアプローチは見られない。多くは作品論や映画史、または役者の身体論という形において語られてきているのみである。 本論では、これまで流布してきた「殺陣」に関する言説を抽出し、歴史的な時間の流れにそって便宜上、時代配列した上で、映画史が繰り返し語る「黒澤時代劇」を一つの軸として、「殺陣の歴史的展開」のモデル化を試みたい。 歴史的なパースペクティブで「殺陣」を捉えなおしたとき、これまでの「殺陣」を構成してきたいくつかの要素が抽出可能であると考える。そして「殺陣」のもつダイナミックな展開は、これらの要素の導入や組み合わせ、並べ替えや特定の要素の強調、あるいは特定の要素の欠如によって、いくつかの類型に分類できると考える。そこで便宜上、四つの要素を抽出してみた。(1)映像効果的要素(映像技術の発展を指すので、歴史的にずっと変化し導入され続けている要素)。(2)コレオグラフィー的要素(歌舞伎的な舞踊からジャズ・ダンス的な要素まで全て含む「踊る」身体技法。これが当てはまる年代は、映画の草創期から「時代劇映画第二黄金期」と言われる一九六〇年代までを大きく含む。なぜなら、これは歌舞伎関係や舞台出身であるスターたちの身体と切り離せない要素だからである)。(3)スプラッター的要素(手足や首が飛んだり血が噴出するといった演出、いわば人間の身体を「モノ」化した映像表現)。(4)武術的要素(実際の武術の型を取り入れ、また武術家の名前をクレジットに出すことによって、武術的な関心を観客にアピールしたもの)。そしてこのスプラッター的要素と武術的要素は、映画史が繰り返して語る「黒澤時代劇」によってもたらされたものと考えられている。黒澤の『用心棒』『椿三十郎』、でこれらの要素が「殺陣」にもたらした革新は今更強調することもないであろう。 しかし、黒澤が与えた革新後、コレオグラフィー的要素は意識的に回避・否定されるようになり、そののちの「殺陣」は「黒澤時代劇」を一つの定型として仰いで反復を繰り返し、本質的に何ら新しい要素が加えられていないと考えられる。このような否定的状況の中で「殺陣」の未来は、失われたコレオグラフィックな身体技法を身につけたスターの出現か、新たなる要素の導入の他に可能性はないのではないかと考えられる。
著者
小川 智美 関屋 昇
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.119-122, 2002-06-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
13
被引用文献数
9

本研究は,股関節屈曲運動における骨盤大腿リズムを矢状面及び横断面内において把握することを目的とした。男子学生9名(平均年齢23.2歳 ± 3.7歳)を対象とし,ジャイロセンサーを用いて,背臥位での膝関節屈曲を伴う右大腿挙上の自動運動を測定した。その結果,大腿挙上運動開始直前から10°まで骨盤の前傾方向への運動がみられ,10°から90°に至るまで骨盤後傾運動1°に対し股関節屈曲運動6°の割合で直線的に変化した。骨盤には後傾運動以外に大腿挙上側への横断面内での回旋運動が生じ,大腿挙上10°に至る頃には最終回旋角度の約半分の範囲に達した。以上の結果から,骨盤大腿リズムの存在が明らかとなり,今後股関節屈曲運動の評価及び治療に考慮していく必要性が示唆された。
著者
富里 周太 大石 直樹 浅野 和海 渡部 佳弘 小川 郁
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.7-11, 2016 (Released:2016-02-23)
参考文献数
12
被引用文献数
5 2

吃音は社交不安障害などの精神神経疾患や発達障害が併存しうることは指摘されているが,これらの併存疾患に関する本邦からの報告はいまだ少数である.そのため,本邦における吃音と併存疾患との関連を検討することを目的に,2012年と2013年に慶應義塾大学耳鼻咽喉科を受診し吃音と診断された39症例について,併存する精神神経疾患および発達障害の有無を調べ,性別,年齢,発吃年齢,吃音頻度との関連を後方視的に調査した.併存する精神神経疾患として,気分障害(うつ,適応障害),強迫神経症,てんかん,頸性チックの合併を全体の15%に認めた.発達障害の併存は,疑い例や言語発達障害のみの症例を含め18%に見られた.発達障害の有無によって吃音頻度,性別,年齢に有意差は見られなかったが,発吃年齢は発達障害併存群で有意に高い結果だった.吃音は発達障害が併存することにより,発達障害を併存しない吃音とは異なった臨床経過を示す可能性が示唆された.
著者
小川 渉 菖蒲 敬久 筧 瑞恵 鞍谷 文保 小出 俊雄 文珠 義之 水田 泰次
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
日本金属学会誌 (ISSN:00214876)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.128-135, 2019-04-01 (Released:2019-03-25)
参考文献数
9
被引用文献数
3 3

Cymbals are percussion musical instruments with a simpler structure than other musical instruments. Therefore, their material composition basically decides the sound quality and decay time rather than the skill of the player. In this study, specimens of cymbals to which Titanium, Zirconium and Iron were added were prepared. From the difference of diffraction rings by synchrotron radiation X-rays, the crystal structure of the specimens of cymbals prepared by various manufacturing processes was analyzed in order to investigate the relationship between the crystal structure associated with the material and manufacturing process used and the damping of the sound of cymbals. As a result, it was found that the changes in the crystal structure were due to the manufacturing process used. In addition, it was clarified that the changes affected the damping of the sound of cymbals.
著者
三星 暢公 長舩 哲齊 Harvard LYMAN 松本 茂 小川 光哉 塔尾 武夫
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.31-39, 2001-11-30 (Released:2012-11-27)
参考文献数
23

The bacterial flora of the dohyo (sumo ring) has received little attention. If the flora are identified then treatment or prevention of any bacteriallesions or infections incurred by the wrestlers is possible. In the present study, using the automatic identification kit, the VITEK Auto Microbic System or Automatic Tests in Bacteriology, we describe the bacterial flora found in the dohyo over the four seasons of the year. Anaerobic bacteria, such as Clostridium tetani, were found, a possible source of serious infection. The exotoxin formed by Clostridium tetani, the causative agent of lockjaw tetanic spasm, is also neurotoxin. Nippon Sport Science University's dohyo is not a possible. source of infection by the spores of Clostridium tetani as the dohyo in the University is well maintained.