著者
樋口 収 下田 俊介 小林 麻衣 原島 雅之
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.14-22, 2016 (Released:2016-10-06)
参考文献数
28
被引用文献数
5 1

東京電力福島第一原子力発電所の事故から5年以上たった今なお福島県の産物の風評被害は続いている。なぜ消費者は福島県の産物を危険視するのだろうか?2つの実験で行動免疫システムが活性化すると,汚染地域を過大に推定するかどうかを検討した。実験1では,プライミングの条件(病気の脅威条件vs.統制条件)に関係なく,慢性的に感染嫌悪傾向が高い人の方が低い人よりも,汚染地域を過大に推定していた。実験2では,感染嫌悪傾向が高い人では病気の脅威条件の方が統制条件よりも汚染地域を過大に推定していた。また感染嫌悪傾向が低い人では条件で差異はみられなかった。風評被害と行動免疫システムの関係について考察した。
著者
小林 麻衣 堀毛 一也 北村 英哉
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.88.16005, (Released:2018-01-15)
参考文献数
22
被引用文献数
1

This two-part study aimed to examine the effects of temptation coping strategies on self-control when faced with a conflict between academic goals and temptations. The results of Study 1 indicated that the general use of temptation coping strategies promoted goal pursuits. Study 2 investigated whether differences in the difficulty of goal achievement had an effect on the effectiveness of temptation coping strategies. Goal Verification, Temptation Avoidance, and Goal Execution, which are subscales of the Scale of Temptation Coping Strategies in Academic Situations, were effective strategies to facilitate self-control regardless of the difficulty of goal achievement. However, Mood Changing, which is another subscale of the Scale of Temptation Coping Strategies in Academic Situations, was a strategy that did not affect self-control. These findings indicated that the temptation coping strategies were largely effective in academic situations. The implications of adaptive self-control are also discussed.
著者
尾崎 由佳 後藤 崇志 小林 麻衣 沓澤 岳
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.87.14222, (Released:2016-03-10)
参考文献数
54
被引用文献数
31

Self-control refers to the ability to execute goal-oriented behavior despite the presence of temptation(s) to do otherwise. Since self-control has a wide-range impact on our daily lives, it is of critical importance to assess individual differences of self-control with a highly reliable and valid, yet simple, measure. Toward this end, three studies were conducted to test reliability and validity of the Japanese-translated version of Brief Self-Control Scale (Tangney, Baumeister, & Boone, 2004). The scale showed good internal consistency (Study 1) and retest reliability (Study 2). The total score of the scale was correlated with the self-reported indices of self-control (e.g., daily experience of ego-depletion, study hours) and performance in the Stop Signal Task (Study 3), indicating its high converging validity.
著者
白岩 祐子 小林 麻衣子 唐沢 かおり
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.105-116, 2018-08-27 (Released:2018-09-19)
参考文献数
23

本研究は2000年に始まった意見陳述制度と2008年に始まった被害者参加制度に着目し,両制度を実際に行使した犯罪被害者遺族がこれらの制度をどのように評価し,またその意義や問題点をどのように理解しているのかを検討した。交通事犯や殺人などの遺族97名から協力を得て制度に対する評価を求めたほか,「制度の意義」「制度の問題点」「行使するとき留意した点」につき自由記述を求めた。その結果,両制度はいずれも遺族から高く評価されており,とくに「心情・意見を直接被告人や裁判官に伝えられる」「思考や気持ちの整理ができる」点が肯定的な制度評価につながっていること,逆に,「自分の話を被告人や裁判官がどのように受け止めたか分からない」「専門家や経験者による支援があればよかった」という点が否定的な制度評価につながっていることが明らかになった。
著者
下田 俊介 大久保 暢俊 小林 麻衣 佐藤 重隆 北村 英哉
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.294-303, 2014 (Released:2014-08-25)
参考文献数
15
被引用文献数
7 7

The Implicit Positive and Negative Affect Test (IPANAT) is an instrument for the indirect assessment of positive and negative affect. A Japanese version of the IPANAT was developed and its reliability and validity were examined. In Study 1, factor analysis identified two independent factors that could be interpreted as implicit positive and negative affect, which corresponded to the original version. The Japanese IPANAT also had sufficient internal consistency and acceptable test–retest reliability. In Study 2, we demonstrated that the Japanese IPANAT was associated with explicit state affect (e.g., PANAS), extraversion, and neuroticism, which indicated its adequate construct validity. In Study 3, we examined the extent to which the Japanese IPANAT was sensitive to changes in affect by assessing a set of IPANAT items after the presentation of positive, negative, or neutral photographs. The results indicated that the Japanese IPANAT was sufficiently sensitive to changes in affect resulting from affective stimuli. Taken together, these studies suggest that the Japanese version of the IPANAT is a useful instrument for the indirect assessment of positive and negative affect.
著者
新井 典子 小林 麻衣子 杉浦 裕太 佐々木 恭志郎
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究は赤ちゃんロボットを活用し,当事者だけではなく社会全体の子育て力の底上げを目的とする.まず,赤ちゃんの「泣き」に関する振る舞いを模したロボットの開発を目指す.さらに,開発したロボットを利用した子育てトレーニングプログラムの策定を行い,乳幼児に対するストレス緩和をはかり,適切なあやし行動を習得させる.このようなロボットを利用したトレーニングプログラムを様々な社会集団や虐待経験のある親や里親希望者に展開し,より効果的なものにブラッシュアップする.本研究は, 心理学とロボティックスを融合させた新しいトレーニングプログラムを提案するものである.
著者
小森 政嗣 城下 慧人 中村 航洋 小林 麻衣子 渡邊 克巳
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PH-002, 2021 (Released:2022-03-30)

ガウス過程選好学習(Gaussian process preference learning)と敵対的生成ネットワークの一種であるStyleGAN2を組み合わせた実験を行い,外集団構成員が有していると想定される顔特徴の可視化を試みた。日本の大学生116名が提供した顔画像を,Flickr-Faces-HQ(FFHQ)で学習したStyleGAN2の潜在表現に埋め込んだ。埋め込まれた潜在表現に対し主成分分析を行い8次元の顔部分空間を構築した。実験参加者に,この顔空間(±2SD)から生成された2つの画像をモニタに並べて提示し,「より巨人/阪神ファンらしい顔」を選択する課題をそれぞれ100試行行わせた。実験参加者は全て阪神ファンであった。選好結果をもとに顔特徴を巨人/阪神ファン顔らしさに変換する内的な効用関数の推定を行った。ガウス過程選好学習はガウス過程回帰にThurstoneモデルを組み込んだ手法である。すべての参加者の結果を平均した平均巨人/阪神ファン顔らしさ関数をそれぞれ算出し,これらの関数が最大値となった潜在表現から,阪神ファンが考える巨人・阪神ファンの顔を合成しその顔特徴と比較した。
著者
白岩 祐子 小林 麻衣子 唐沢 かおり
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.41-51, 2016-08-25 (Released:2016-08-25)
参考文献数
44

In desperation to learn the details of their case and to achieve the right to know, the families of crime victims in Japan have been taking action to implement the victim participant system in criminal trials. Focusing on the victim participant system, which began in 2008, the present study examined whether or not family members of victims who actually participated in criminal trials felt that their demands to know were fulfilled through the process. We administered a survey targeting 173 individuals whose family member has been the victim of a crime such as murder. The results revealed that their demands were fulfilled as they had expected only when they participated in the trial. Furthermore, we found that such sufficiency level led to their satisfaction with the justice system, while insufficient fulfillment of demands led to an increase in people’s willingness to act toward changing the system. We discussed the social consequences of judicially guaranteeing a victim’s right to know.
著者
小林 麻衣
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-12, 2013-07-30 (Released:2013-08-28)
参考文献数
22
被引用文献数
1

本研究では人々の学業目標追求時の自己統制葛藤状況に焦点をあて,学業場面における誘惑対処方略 (Temptation Coping Strategy in Academic situation: TCSA)に関する尺度を作成し,その信頼性および妥当性を検討した。研究1では,予備調査で選定された40項目に対して,大学生に回答を求めた。因子分析の結果,TCSA尺度は「目標意味確認方略」「気分転換方略」「誘惑回避方略」「目標実行方略」の4つの下位尺度(計20項目)から構成されることが示された。研究2では妥当性の検証を目的に,自己調整学習方略,学業的満足遅延,先延ばし意識特性との関連を検討した。研究3では,再検査信頼性の検討を行った。その結果,妥当性に関して幾つかの課題が残るものの,TCSA尺度の信頼性と妥当性が確認された。
著者
髙鳥 真 韮澤 力 橋本 尚幸 小林 麻衣 一ノ本 隆史
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.G0936-G0936, 2006

【目的】今回,2年次,3年次の臨床実習終了後のエゴグラム特性について調査し,学生の自我状態の変化と臨床実習成績の関連について検討した.本学では,2年次に3週間の臨床実習(いわゆる評価実習)と3年次に8週間の臨床実習を二期行っている.成績はいずれも優・良・可・不可または保留の総合判定として判断される. <BR>【方法】対象は,平成16年度に晴陵リハビリテーション学院理学療法学科3学年に在学した学生40名(男性18名,女性22名)で,調査は,2年次実習終了後(平成16年2月)と3年次二期目の実習終了後(平成16年12月)に行った.調査用紙は新版東大式エゴグラム(以下,TEG)を用い,学生には調査主旨を説明し了解を得た上で全員一斉に行い,38名(95.2%:3年次)の有効回答を得た.<BR> データ処理は,3年次臨床実習成績から成績上位群(二期間の一方で総合判定が優の10名)と成績下位群(二期間の一方で総合判定が可または保留の9名)の2群に分け,TEGの5項目(批判的親:CP,養育的親:NP,成人:A,自由な子供:FC,従順な子供:AC)について各々の平均値から各群のTEGパターンをみた.さらに両群の同一学生について,後方視的に2年次のTEG項目と3年次のTEG項目について対応のあるt検定(有意水準5%未満)を用いて比較した.<BR>【結果】成績上位群では,2年次でNPとFCが高い「M型:優しく世話好きで他者からかわいがられる」,3年次ではNPを頂点とし次いでAが高く,他が低い「台形型:自己偽性をしても他人に尽くす指導者的」を示し,群内比較においてACで有意に3年次が低かった(p<0.05).成績下位群では両学年ともにNPとACが高く,CPとAが低い「N型:依存的で現実に即した行動が出来ない」を示し,いずれの項目でも学年間での有意な変化はなかった.<BR> 【考察】医療職に求められるTEGパターンは「台形型」と言われている.今回,成績上位群の3年次でこのパターンがみられた.NPは親身になって世話をするという自我を示し,Aはその値が高いと物事を論理的に判断でき,低いと合理的に判断することが困難となる.また,ACが相対的に低位を示すと行動力があるとされる.つまり,成績上位群では,より医療職に適した自我へと変化しうる背景が2年次に現れており,3年次の臨床経験によって自己概念の形成が適切に行われたと言える.<BR> 一方,成績下位群では学年間に変化がなく,ともに「N型」を示した.AC高位では主体性に欠け,さらにA低位を伴うと依存的傾向が強まり,問題解決が難しくなると言われている.故に成績下位群では,学年間においても自己概念の形成が行えず,臨床実習成績に影響を及ぼしたと考えられる.以上のことから,ACが相対的に低位になる(行動力を身に付ける)ようにNPとAを伸ばす(思いやりや計画性を身に付ける)という,自己概念の形成を学生自らが認識するとともに,教員が共有して関わっていくことの必要性が示唆された.<BR>
著者
樋口 収 埴田 健司 小林 麻衣 北村 英哉
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.363-368, 2012
被引用文献数
1 1 1

This research investigated how to overcome temptations and protect high-order goals while pursuing a goal. We hypothesized that in order to promote self-regulation, individuals non-cousciously engage in asymmetric evaluative responses to goal-relevant and temptation-relevant stimuli. In an experiment, we manipulated either diet goal or academic goal. Then, we measured evaluations of either sugary drinks (e.g., Coke, Fanta) or healthy drinks (e.g., Healthya Green Tea, Black Oolong Tea). The results showed that participants who activated a diet goal had significantly more positive evaluations of healthy drinks than sugary drinks. In addition, this tendency was moderated by the means of dieting (i.e., only participants who cut down on sweets when going on a diet). The role of non-consious asymmetric evaluations for self-regulation is discussed.
著者
北村 英哉 佐藤 重隆 小林 麻衣
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

人は意識的に気をつけて行動する場合と、意識しないで自動的に行動を行う場合がある。これを2つのモードとすれば、そのときの感情状態によって、いずれのモードをとるかの選択に影響が現れる。さらに、本研究では、現在の感情に加え、将来感じられると予期される感情予期の影響を取り上げ、現在の感情と未来の感情の双方がモード選択に影響することを示した。これらを社会的に重要な3つの場面-感情制御、偏見、学習の自己制御-において検討し、特に自己制御では将来の感情予期の影響が大きいことを見出した。