著者
小林 茂樹 松岡 悠 久万田 敏夫
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.37-42, 2017

<p><i>Macarostola</i> 属は,インド~オーストラリア区から26 種が知られ,成虫の前翅は鮮やかな橙赤色の地に白や黄色の斑紋をもち,美麗種を多く含む.幼虫は日本産種を除き,フトモモ科の植物を利用する.日本では,ベニホソガ <i>M.japonica</i> Kumata, 1977(寄主植物:ゴンズイ,ミツバウツギ科)の1 種のみが知られていた.しかし,De Prins and De Prins (2016)は,ウェブサイト上にレンブ(フトモモ科)から得られた日本産本属の標本写真を本属の一種 <i>M.zehntneri</i> (Snellen, 1902)として掲載した.吉安は,2016年3 月に沖縄島において野生化したフトモモ(フトモモ科)からベニホソガ属の幼虫を採集した.羽化した成虫と大阪府立大学所蔵標本を検討した結果,前翅の斑紋の特徴から <i>M. zehntneri</i> と同定した.雌雄交尾器を初めて図示し,分布と寄主を追加するとともに,これまで報告のなかった幼虫の潜孔,マユの写真を図示した.幼虫は初め,葉にナメクジの這ったような細い潜孔を作り,その後潜孔を脱出し,葉を円錐形に巻き内部を摂食する.老熟すると巻いた葉から脱出して葉縁を強く折り曲げて細長いマユを紡いで蛹室を作り,その中で蛹化した.また,ミトコンドリアDNAのCOI 領域の一部(DNA バーコード領域)の配列(658bp)を決定し,遺伝距離を比較した結果,同属の他種(<i>M.japonica</i>, <i>M. ida</i>)と明確に区別でき、最も近かったのはオーストラリアの学名未決定種であった.</p><p>フトモモベニホソガ <i>Macarostola zehntneri</i> (Snellen, 1902)(和名新称)(Figs 1-4)</p><p>開張8-10 mm.前翅の斑紋は,翅頂の2 つの黒色斑紋,後角部にL字形の白色斑紋を除き,6 ないしは7 つの黄色の斑紋をもつ.原記載では前縁の黄色斑紋は3 つであるが, 日本産ではしばしば第一斑紋が2 つに分かれる.日本産のベニホソガ <i>M. japonica</i>は,頭部が橙赤色,黒色斑紋を持たない,前縁の斑紋が白色,雄交尾器のバルバはより丸みを帯びる,雌交尾器の1 対のシグナは短く,同じ長さであるなどの点で本種と識別できる.幼虫は,両種とも葉を円錐形に巻くが,ベニホソガでは,ミツバウツギ科のゴンズイを利用し,葉縁を折らないでボート形のマユを葉上に作る.</p><p>寄主植物:フトモモ,レンブ(フトモモ科),国外ではフトモモ(新記録),レンブ,同属の <i>Syzygium cumini</i> が知られる.</p><p>分布:日本(新記録):沖縄(沖縄島,石垣島);国外では台湾(新記録),インドネシア,インド.</p>
著者
小林 文男 橋本 学 柴田 巌
出版者
広島大学平和科学研究センター
雑誌
広島平和科学 (ISSN:03863565)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.41-84, 1993

The purpose of this paper is to verify differences of the 'Peace Declarations' delivered in Hiroshima and Nagasaki in August 1993. Needless to say, both these 'Declarations' appealed the total abolition of nuclear weapons and complete disarmament in the earth. But, in practice, there were so many differences of content between them. The authors sent out questionnaires for 311 members of Hiroshima university students. The question is 'As to the 'Peace Declarations' made in Hiroshima and Nagasaki in 1993. Which 'Declaration' do you feel sympathy for Hiroshima's or Nagasaki's ? And give your reasons for choosing it'. As a result, Nagasaki 'Peace Declaration' proved to have far higher opinions of the subjects than Hiroshima. The main reasons are as follows: (1) It was easier to understand 'Peace Declaration' of Nagasaki than of Hiroshima. (2) Hitoshi Motoshirna, the Mayor of Nagasaki,admitted that Japan had aggressed the Asian countries from 1910 to 1945, showed more friendly attitude to these countries than Takashi Hiraoka, the Mayor of Hiroshima. Nagasaki 'Peace Declarations' have had higher opinions than Hiroshima since the authors began this investigation on 1990. However, the 'Declaration' of Nagasaki in 1993 have more faults than the past 3 years beyond doubt. Because the support rate against it have come down than before. The faults are as follows: (1) The Nagasaki 'Declaration' never mentioned 'PKO' (Peace Keeping Operation) which Japan come up against now. (2) The Nagasaki 'Declaration' didn't definite the concreate compensation and assistance to non-Japanese victims of Atomic Bomb.
著者
小林 文男 柴田 巌
出版者
広島大学
雑誌
広島平和科学 (ISSN:03863565)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.201-234, 2000

In August 1999, Hiroshima and Nagasaki observed the fifty-forth anniversary of the atomic bomb dropping. As usual, the Mayors of Hiroshima and Nagasaki each delivered the Peace Declarations at the Peace Memorial Ceremonies. Needless to say, Hiroshima and Nagasaki have appealed for the total abolition of nuclear weapons and the creation of lasting world peace since that fatal day. The purpose of this paper is to verify how Hiroshima and Nagasaki's appeals which are showed in the ""Peace Declarations 1999"" move the foreigner on the results of inquiries for 35 Chinese students in Chiba Institute of Technology. The findings of our survey are as follows: [1] Only 8.6% of students were in favor of both of them. [2] one-fifths were for Hiroshima Peace Declaration. [3] 37.1% were for Nagasaki Peace Declaration. [4] Over 30% of students (34.3%) were in favor of neither of them. This time, among students, 28.6% ( [1] + [2] ) rated Hiroshima Peace Declaration ""good"" or ""excellent"", while 45.7% ( [1] + [3] ) rated Nagasaki Peace Declaration in this way. Certainly, Nagasaki's rate was superior to Hiroshima's rate, however, the Hiroshima's point is the second hightest in the last five surveys (49.5% in 1991). By cotrast, the Nagasaki's point was the lowest in the past (down 25.7% from 1998). Most striking of all, 34.3% of Chinese students were in favor of neither of Hiroshima and Nagasaki. This point is the worst in the last surveys. Why they were against Hiroshima and Nagasaki Peace Declaration in 1999 ? The reasons are as follows: (1) These Peace Declarations didn't mention of Japan's War Responsibility. They believe that Japanese should not victimize oneself just because of atomic bomb, and they demand that Japanese should remember ""Nanjing Massacre"" and other sad incidents occured during Sino-Japanese war(1931-45) . (2) They question whether the total abolition of nuclear weapons equals to a peace of the world. They hope Hiroshima and Nagasaki will appeal to all nations states not only to abolish nuclear weapons bu
著者
村中 厚哉 安池 修之 劉 青原 栗田 城治 小林 長夫 吉田 健吾 内山 真伸
出版者
基礎有機化学会(基礎有機化学連合討論会)
雑誌
基礎有機化学討論会要旨集(基礎有機化学連合討論会予稿集)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.314-314, 2008

インドール・ベンゾフラン誘導体のN原子やO原子を重原子に置換した一連の化合物の電子状態について研究を行った。16族のヘテロ環化合物の電子吸収スペクトルにおける最低励起エネルギーは、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、ベンゾテルロフェンの順に原子半径に比例してレッドシフトしたが、インドール、ホスフィンドール、アルシンドール、スティビンドール、ビスムインドールの1-フェニル誘導体ではこのようなスペクトルシフトは観測されなかった。円二色性、磁気円二色性分光法と時間依存密度汎関数法を用いて観測された電子吸収スペクトルの帰属を行った。分子軌道を解析し、電子構造におけるヘテロ原子置換の効果を明らかにした。
著者
小林 伸聖
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.21-24, 2018

<p>光が透ける磁石があれば,専門家でなくてもさまざまな新しい用途に期待が膨らむだろう.ことさら磁性材料研究者にとって透明な強磁性体の開発は,その応用のみならず物性面において,魅力ある研究テーマの1つであろうと想像する.本稿では,我々が開発した透明かつ強磁性を示すナノグラニュラー材料について紹介する.ナノグラニュラー材料は,フッ化物などの絶縁体から成るマトリクスにナノメータサイズのFeCo合金などの磁性金属から成るグラニュールがほぼ均一に分散した微細構造を有し,フッ化物マトリクスに起因する良好な光透過性と同時に,FeCo合金グラニュールに起因する強磁性を併せもつ.</p>

1 0 0 0 OA 東京繁昌目鏡

著者
小林佐造 編
出版者
玉振堂
巻号頁・発行日
1883
著者
三浦 勝 森 隆太郎 高橋 徹也 小尾 芳郎 山中 研 阿部 哲夫 小林 大輔 中村 恭一
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.159-164, 2004
被引用文献数
2

内分泌細胞癌は悪性カルチノイド腫瘍ともいわれ, 従来の古典的カルチノイドとは区別されている. 今回, まれな十二指腸Vater乳頭部原発の内分泌細胞癌を経験したので報告する. 症例は66歳の女性で, 発熱, 腹痛を主訴に来院し, 血中アミラーゼ高値および肝機能異常を認めた. CT膵頭部に腫瘤形成を呈し, 上部消化管内視鏡ではVater乳頭部に, 中心に陥凹を有する隆起性病変を認め, 生検でVater乳頭部未分化癌または内分泌細胞癌の診断にて, 幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した. 術後病理学的にグリメリウス染色およびクロモグラニン染色陽性で, 内分泌細胞癌と診断した.術後早期にリンパ節再発, 肝転移を認め, 術後75病日に死亡した. Vater乳頭部原発の内分泌細胞癌は会議録を含め本邦報告17例とまれであるが, 予後は極めて不良とされている. 本症例も腫瘍部でのKi-67染色が約50%陽性と, 高頻度の細胞増殖を認め, 内分泌細胞癌の悪性度を裏付ける症例であった.
著者
鳥越 和憲 秋岡 健一郎 住谷 泰 清水 信貴 小林 裕子 白鳥 倫治
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.101-106, 2000-03-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
21

プロポフォール麻酔中に低濃度のセボフルランを使用することによって,夢や健忘の出現に変化があるかを検討するために,ASA Iの耳鼻科患者60名を無作為に,プロポフォール+亜酸化窒素(PN)群,セボフルラン+亜酸化窒素(SN)群及びプロポフオール+亜酸化窒素+30分間低濃度セボフルランを30分間隔で投与した(PNs)群の3群(各20例)に分けて比較した.夢の想起率は,PN群で55%,SN群で10%と後者で有意の減少があった.PNs群は45%で,PN群より減少傾向を示した.翌日の健忘については,色に関する回答において,PNs群は他の2群に比べ有意に健忘が増加した.手術室での出来事や覚醒後の出来事についての調査では,PNs群は他の2群に比べ有意に健忘が増加した.プロポフォール+亜酸化窒素麻酔中,低濃度のセボフルランを間歇的に併用すると,夢は減少し健忘は増加して,麻酔の「覚醒の質」の向上を得られることが示唆された.
著者
小林 竜 小林 法一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.430-439, 2019-08-15 (Released:2019-08-15)
参考文献数
26

本研究の目的は,回復期リハビリテーション病棟退院後の在宅脳卒中者における家事再開の予測因子を明らかにすることである.退院後の家事再開状況は,改訂版Frenchay Activities Index自己評価表を使用し,食事の用意,食事の後片付け,洗濯,掃除や整頓,力仕事,買い物の6項目について調査し,退院時の機能・能力,本人を取り巻く社会的環境などとの関連を調べた.分析対象者は128名であった.ロジスティック回帰分析の結果,10m最大歩行速度や性別,家族形態などの予測因子が複数選択された.回復期リハビリテーション病棟入院中の脳卒中者に対して家事再開へ向けた支援を行う際には,これらの因子を考慮した多角的な支援の重要性が示唆された.
著者
大西 信治郎 吉浜 博太 上田 良穂 小林 恵子 伊藤 依子
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.780-785, 1985

米国Pfizer社で開発されたβ-lactamase阻害剤SulbactamとABPCのmutual prodrugであるSultamicillinを耳鼻咽喉科領域感染症22例に投与し, 以下の成績を得た。<BR>慢性中耳炎12例, 急性副鼻腔炎1例, 慢性副鼻腔炎3例, 急性扁桃炎4例, 慢性扁桃炎1例, 慢性咽頭喉頭炎1例の計22例の臨床効果は, 著効4例, 有効8例, やや有効6例, 無効4例で有効率は54.5%であった。<BR>副作用としては2例に下痢が認められた。本剤によると思われる異常値は, BUNの上昇が1例, Al-Pの上昇が1例, γ-GTPおよびLDHの上昇が1例に認められた。
著者
市川 竜太郎 小林 秀 小倉 あい
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

<b>目的<br></b><b></b>消費者が行う野菜の冷蔵保存の方法として、購入した状態のまま保存するか、食料保存袋に野菜を入れ替えて保存する方法が一般的に行われている。一方、野菜類は保存中に傷ませた経験のある食材であり、鮮度を保持する方法を知りたい食材として挙げられている。そこで、野菜としてホウレンソウを用い、保存方法の違いが保存後の鮮度に及ぼす影響について検討した。&nbsp;<br><b><br>方法<br></b>ホウレンソウは東京都内にて購入した市販品をそのまま供試試料とした。重さ約100gのホウレンソウをそのまま保存した場合、食料保存袋に入れて保存した場合、および含水不織布でホウレンソウを包み食料保存袋に入れたものを2週間家庭用冷蔵庫にて保存し試験に供した。保存後のホウレンソウの鮮度は、重量、ガス(O<sub>2</sub>,CO<sub>2</sub>)濃度、色差計による色調変化、官能評価(指標として、総合的な新鮮さ・しおれ・傷み・黄変・可食の可否)を行った。&nbsp;<br><b><br>結果<br></b>各々の条件で保存したホウレンソウの重量を測定した結果、含水不織布で包み食料保存袋で保存したものは、保存前と比較し重量が約10%増加していた。一方、ホウレンソウをそのまま保存した条件では保存前と比較し約17%の重量減少が認められた。食料保存袋にて保存した条件では顕著な重量変化は認められなかった。また、ガス濃度を測定した結果、保存条件の違いによる差は認められなかった。しかしホウレンソウの色調変化では、含水不織布で包み食料保存袋にて保存したものが最も緑色を維持しており、次いで食料保存袋による保存、そのままの状態での保存の順で葉の黄変が認められた。また、各保存条件で保存したホウレンソウの官能評価では総合的な鮮度で相違が認められ、含水不織布で包み食料用保存袋で保存したものが最も鮮度が良いと評価された。含水不織布を利用した保存条件では、葉からの蒸散作用が抑制されるとともに、ホウレンソウが水分を吸収し、鮮度を保持していたと推察された。