著者
片山 めぐみ 柿山 浩一郎 張 浦華
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.105-112, 2011-11-30
被引用文献数
1

本研究は、動物園における歩行移動時の高揚感に影響を及ぼす経路の物理的要因について実験により検証し、高揚感の上昇に効果的な経路デザインについて考察することを目的とする。実験には、高揚感の上昇・下降に従ってボタンを押すと経過時間と共にデータが保存されるツールを開発した。実験経路には、動物の生息地を探検しているように環境がデザインされている動物園経路を採用し、歩行移動時の動画を被験者に提示した。実験終了後に高揚感が変化した理由について変化地点ごとに聞き取りを行った。実験結果として、視界を遮ったり暗くすることで先の空間に期待を抱かせ、さらにその先に何か発見や驚きがあることが高揚感の上昇に繋がることを読み取ることができた。このことから、展示空間までの経路を効果的にデザインするには、行く手を遮る要素(カーブや暗闇)などによって十分に期待を持たせ、その先に発見や驚きを与える要素(印象的な形態の樹木や岩、滝、光など)の設置をひとつのループとして経路上に配置していくことが効果的と考えられる。
著者
田中 角栄 柿山 浩一郎
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.63, 2016

本研究は以上のような着眼点から、幼児座席の安全性を高めるとともに、視覚的な安心感を与えることができるシートベルトの構造とデザインについての提案を行い、その評価を行うことを研究の目的とし、幼児専用車に取り付けることで、体の保持・安定に大きな改善が見られ、外部から見た時の印象に大きな変化がみられると考える。評価実験では試作品と一般的にみられる送迎バスの大人用2点式のシートベルトを取り付けた幼児座席も用意し、視覚的な安心感の度合いを比較検討することで、試作品のデザインの改良を行い、装着時の時間や個別の動作を分析することで、幼児期の体格差に合わせた細かな構造の変更検討も行う。また、シートベルトを使うことによる施設の車両使用者の意見を聞くことで、使用時の運行時間への影響などについても分析が出来ると考える。以上により、新たな改良点を模索し、次の展開を得ることができると予想する。
著者
保住 純 飯塚 修平 中山 浩太朗 高須 正和 嶋田 絵理子 須賀 千鶴 西山 圭太 松尾 豊
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.449-459, 2014-09-01 (Released:2014-07-30)
参考文献数
15

The Ministry of Economy, Trade and Industry and the corporate world in Japan have recently embraced the ‘Cool Japan’ policy. They have assisted Japanese content industries in exporting Japanese media contents, such as manga (comics), to foreign countries, especially in Asia. However, this overseas expansion has not been successful in producing profits to the expected degree. The main reason for this shortfall is that companies are unable to perceive local consumer consumption trends in those countries easily and at low cost. Consequently, they are unable to select media contents that might be popular in such areas in the future. Herein, we design a consumption trend calculating system that incorporates web mining. It is readily applicable to many countries and contents. Specifically, we use web mining of data elicited from search counts on search engines, tweet counts from Twitter, and article data from Wikipedia to calculate consumption trends based on weekly manga sales data in Japan. Results show that this model can predict consumption trends for six months with high accuracy and that it can be adapted to calculate consumption trends of other contents effectively, such as anime (animation) in Japan and manga in France. Moreover, we establish the ASIA TREND MAP web service to inform industries about these calculated consumption trends for Asian countries.
著者
鍋師 裕美 堤 智昭 植草 義徳 松田 りえ子 穐山 浩 手島 玲子 蜂須賀 暁子
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.45-58, 2016-02-15 (Released:2016-02-15)
参考文献数
19
被引用文献数
10

牛肉,山菜類,果実類,キノコを用いて調理前後の放射性セシウム濃度を測定し,除去効果を検討した結果,調味液へ浸漬してから牛肉を乾燥させた場合や山菜類をあく抜きした場合では,調理前の80%以上の放射性セシウムが除去され,調味液への浸漬やゆで調理,及びこれらの工程後の水さらしが放射性セシウム除去に有効であることが示された。しかし,牛肉及び果実の単純な乾燥,果実類のジャム,焼きシイタケ,山菜類のてんぷらでは,放射性セシウムはほとんど食品から除去されなかった。調理法によっては,放射性セシウムの総量に変化はないものの,水分除去等により濃度が上昇することがあるため注意が必要である。
著者
八尾 隆史 津山 翔 赤澤 陽一 上山 浩也
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1088-1094, 2019-07-25

要旨●十二指腸粘膜は正常では小腸型粘膜であるが,異所性胃粘膜や胃上皮化生をしばしば伴い,十二指腸で発生する腫瘍は腸型および胃型形質ともに存在することから,胃と同様の病理診断基準を用いることが可能と考えられる.早期病変の観察に基づく経験から導かれた病理診断基準に,胃上皮性腫瘍の形質発現や細胞増殖動態,遺伝子異常などのエビデンスを加え,構造異型の乏しい高分化上皮性腫瘍の病理組織学的診断基準(腺腫と癌の鑑別診断基準)をここで提唱する.
著者
平井 一行 犬飼 達也 中山 浩伸
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.J163-J170, 2016 (Released:2016-11-29)
参考文献数
29
被引用文献数
1 1

現在の真菌感染症治療薬には抗真菌スペクトラムや副作用の問題があるため,治療薬選択の余地は狭く,有効な治療法の開発が急務となっている.有効な治療法の開発の1つの手段として,真菌のストレス環境下の応答機序(シグナル伝達や代謝など)の解明がある.本稿では,感染時に起こるさまざまなストレスのうち,鉄欠乏ストレスおよびそれに適応するために起こる代謝の変化に着目し,それらの応答システムの解明について,Candida glabrataを中心としたCandida酵母での研究の現状を紹介し,真菌症の治療戦略の創製の可能性に触れる.
著者
山本 秀和 小山 浩
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.662-672, 1997-07-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
103
被引用文献数
7

大規模集積回路(LSI)は,シリコン単結晶基板(ウエハー)を用いて製造ざれる.これまで,デバイス特性向上の要求に対し,ウエハーの品質は充分なマージンを持ち,大きな問題は起こさなかった.しかし,近年その状況が大きく変化してきている.シリコンウエハーの製造プロセスは,結晶引ぎ上げとウエハー加工に大別されるが,両者に起因したデバイス不良が発生し始めた.そこで,これらの不良をともに改善できるエピタキシャル成長ウエハーが注目されている.ざらに,マルチメディア時代の半導体デバイスを開発する上で,一つのプレークスルーをもたらす薄膜SOIウエハーも本格的に検討され始めた.ここでは,これらデバイス不良の現状を解説し,次にその解決策としてのウエハー仕様の変更と次世代ウエハーの展望について述べる.
著者
秋山 浩一
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.86-93, 2016-03-01 (Released:2018-01-31)

本稿では,日本の企業の現場において"ソフトウェアテストに対する取り組み"がどのように行われているか,筆者のコンサルティング活動を通じて得た事実を述べる.一般にソフトウェアテスト(以降,特に断らない限り「テスト」は「ソフトウェアテスト」を指すものとする)は,ソフトウェア開発の最終工程に位置する.テストの第1の目的は,商品やサービスのリリース後の市場不具合を事前に見つけることで品質コストにおける外部失敗コストを内部失敗コストに変え,トータルの品質コストを下げて適正化することにある.商品にもよるが不具合1件当たりの外部失敗コストは内部失敗コストの10倍程度かかることが知られている.筆者のコンサルティング先の企業においてもテストで不具合が見つかるうちはテストを続け,評価コストを費やしてでも外部失敗コストを内部失敗コストに変えるほうが"トータルの品質コストを低く抑えられる"ことが確認されている.このようにソフトウェア開発における品質コストの適正化手段のひとつとしてテストは現実的な解であり今も重要な活動である.しかしながらテストで使用している技術は,ここ30年ほとんど変化はなくテストに対する専門的教育も実施されず,現場のテストエンジニアの経験と勘に依存している状況にある.本稿では,世の中の変化によって変わってきたテストの現場が直面している課題と変化について報告する.
著者
上山 浩次郎
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.138, pp.195-209, 2021-06-25

本稿では,教育機会の不平等における地域と社会階層の関連構造を検討した。地域による教育機会の不平等に関する研究は,これまでコンスタントに行われてきた。ただし,地域的要因が社会階層などの他要因に還元できると解釈されうることから,地域を属性的な要因として位置づけることには批判も存在してきた。そこで,本稿では,進路選択に対して,地域変数と社会階層的変数が,どのように関連しているのかを計量的に把握することを試みた。分析の結果,たしかに,進学行動に対して,地域変数は社会階層的変数を通して格差を生成していた。だが,社会階層的変数に還元できない形でも地域変数は格差を生成していた。さらに,両者を比べると,社会階層的変数を媒介しない形の方が,格差を生成する度合いが大きい。ここからは,地域的要因は,社会階層的要因とは相対的に独自に教育機会の不平等という現実を生成していることがあらためて示唆される。
著者
中山 浩太郎 原 隆浩 西尾 章治郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.2917-2928, 2006-10-15
参考文献数
18
被引用文献数
14

シソーラス辞書は,情報検索や自然言語処理,対話エージェントなどの研究領域において幅広くその有用性が実証されてきた.しかし,自然言語処理などによる従来のシソーラス辞書自動構築では,形態素解析や同義語・多義語の処理など,語の関連性を解析する前段階の処理において精度低下を招く要因がいくつかある.また,辞書作成時と利用時のタイムラグにより最新の語や概念への対応が困難であるという問題もある.そこで本論文では,これら2 つの問題を解決するために,ここ数年で急速にコンテンツ量を増加させたWiki ベースの百科辞典である「Wikipedia」に対し,Web マイニングの手法を適用することでシソーラス辞書を自動構築する方法を提案する.Thesauri have been widely used in many applications such as information retrieval, natural language processing (NLP), and interactive agents. However, several problems, such as morphological analysis, treatment of synonymous and multisense words, still remain and degrade accuracy on traditional NLP-based thesaurus construction methods. In addition, adding latest/miner words is also a difficult issue on this research area. In this paper, to solve these problems, we propose a web mining method to automatically construct a thesaurus by extracting relations between words from Wikipedia, a wiki-based huge encyclopedia on WWW.
著者
穐山 浩 佐々木 秀輝
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.43-50, 2007-08-31 (Released:2017-12-01)
参考文献数
52

A novel type of encephalopathy occurred in patients with chronic kidney diseases, which was associated with the ingestion of the Sugihiratake mushroom during the fall of 2004 in Japan. To elucidate the relationship between the encephalopathy and this mushroom intake, we attempted to investigate whether cyanide and thiocyanate are present in the Sugihiratake samples and determined the cyanide and thiocyanate levels in fifteen samples collected from different Japanese districts using HPLC with fluorometric detection. The cyanide ions and thiocyanate ions were detected in the ranges of N.D.-114.0μg/g and N.D.-17.0 μg/g in the samples, respectively. This result demonstrated that cyanide exposure could occur from the intake of Sugihiratake mushrooms in one's diet. Furthermore, we discussed the possible association between cyanide and the onset of encephalopathy. In addition, we conducted a multivariate analysis of metabolites in 'Probably Toxic' sugihiratake collected from the area of encephalopathy outbreaks, and 'Probably Safe' sugihiratake collected from unaffected areas using UPLC/ToF MS. The results indicated that the presence of milligram quantities of vitamin D-like compounds per 10 grams of dried sugihiratake from the areas of encephalopathy outbreaks. The hypotheses to induce the encephalopathy in terms of vitamin D-like compounds are proposed.
著者
稲野 利美 山口 貞子 千歳 はるか 梅沢 亜由子 長橋 拓 岡垣 雅美 青山 高 森 直治 東口 髙志 大前 勝弘 盛 啓太 内藤 立暁 高山 浩一
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.71-80, 2020 (Released:2020-04-21)
参考文献数
56

【目的】本研究の目的は,進行がんを有する高齢者に対する集学的介入(NEXTAC-ONEプログラム)の栄養介入について詳細を示し,その忍容性を評価することである.【方法】初回化学療法を開始する70歳以上の進行非小細胞肺がんおよび膵がんを対象とし,8週間に3回の栄養介入を行った.標準的な栄養指導に加え,摂食に影響する症状,食に関する苦悩,食環境の問題への対処法を含めたカウンセリングを行い,分枝鎖アミノ酸含有の栄養補助食品を処方した.【結果】計30名の試験登録者のうち29名(96%)が予定されたすべての介入に参加し,遵守率については日記記載率90%,栄養補助食品摂取率99%であった.また治療期間中に栄養状態の悪化を認めなかった.【結論】悪液質リスクの高い高齢進行がん患者において,われわれの栄養介入プログラムは高い参加率と遵守率を有し,化学療法中の栄養状態の維持に寄与した可能性が示唆された.
著者
清水 優子 牛島 廣治 北島 正章 片山 浩之 遠矢 幸伸
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.388-394, 2009 (Released:2010-02-10)
参考文献数
17
被引用文献数
3 3

ヒトノロウイルス(HuNoV)は,未だ細胞培養系が確立されていないため,各種消毒薬のHuNoVに対する有効性について十分な知見が得られていない.そこで,HuNoVに形態学的にも遺伝学的にも類似し細胞培養可能なマウスノロウイルス(MNV)を用い,塩素系およびエタノール系消毒薬の不活化効果をTissue Culture Infectious Dose 50% (TCID50)法を指標に評価した.次亜塩素酸ナトリウムおよびジクロルイソシアヌル酸ナトリウム(塩素系消毒薬)は,200 ppm, 30秒間の接触でMNVは99.998% (4.8 log10)以上不活化して検出限界以下となり,125 ppmの場合でも30秒間で99.99% (4 log10)以上の不活化が認められた.70 v/v%エタノール,0.18 w/v%クロルヘキシジングルコン酸塩含有72 v/v%エタノールおよび0.18 w/v%ベンザルコニウム塩化物含有75 v/v%エタノールは,30秒間の接触で検出限界以下までウイルス感染価を低下させた.   本研究で対象とした2種類の塩素系消毒薬は,いずれも終濃度125 ppmで高いMNV不活化効果を示した.また,3種類のエタノール系消毒薬については,エタノール濃度70 v/v%以上で使用すれば,いずれも短時間でMNVの不活化が達成できることが分かった.以上の結果から,これらの市販の消毒薬はHuNoVに対しても高い不活化効果を有することが期待され,ノロウイルス感染症の発生制御および拡大防止の感染対策を目的とした環境用消毒薬として有用であると考えられる.

5 0 0 0 OA 弥生の石棒

著者
秋山 浩三
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.9, no.14, pp.127-136, 2002-11-01 (Released:2009-02-16)
参考文献数
23

西日本でも近年,縄文時代の代表的な石製呪術具である石棒類(石棒・石刀・石剣)の研究が盛んになってきた。とくに小林青樹や中村豊らを中心とする研究者によって西日本各地の関連資料の集成作業がなされ,重要な成果が公表された。そのなかで,『河内平野遺跡群の動態』(大阪府・近畿自動車道関連報告書)に収載されていた石棒の一部に関しては,掲載方法の不備(図面・記載の欠如)もあって,上記集成書からは遺漏してしまっている。それらの報告補遺を端緒とし,(旧)河内湖南岸域の諸遺跡から出土している石棒類を再検討する。その結果,この地域の石棒類には,弥生時代に属する遺構からの出土例が比較的多くみられ,"弥生時代の石棒"の存在を確実視できる。さらに,同様の観点で近畿地方各地の関連データを検索するならば,近畿一円に類似した現象を追認でき,それらの多くは縄文晩期末(突帯文)・弥生前期(遠賀川系)土器共存期の弥生開始期~弥生中期初頭(第II様式)という,一定の継続した時間幅のなかに位置付けられることが明らかになった。この現象は,ことに大阪湾沿岸域で比較的顕著で,なかでも近畿最古期の環濠集落を成立させた地域周辺で際立っている。従来の研究において,弥生時代の石棒に関しては,縄文時代の石棒類とは異なる原理で生まれたと評価されることが主流で,縄文時代から継承するあり方で遺存する諸例に対し積極的に言及されることがなかった。しかし,このような石棒類を分析するならば,弥生開始期における縄文・弥生系両集団の接触・「共生」(共存状態)・融合という過渡的様相のなか,両系集団の間にはおおむね当初段階からかなり密接な関係が,使用していた土器の種類や経済的基盤の違いをこえて達成されていたと想定できる。これは,縄文・弥生系集団による隣接地内における共生の前提であり背景であった。さらに,祭祀行為自体の特性から推測すると,このような弥生開始期やそれ以降の普遍的な弥生文化の定着後においても,石棒類が直ちには消滅せずに根強く存続した要因として,弥生文化の担い手の主体的な部分が在来の縄文系集団に依拠・由来していたことによる,という見通しを得ることができる。
著者
片岡 洋平 渡邉 敬浩 林 恭子 穐山 浩
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.269-274, 2018-12-25 (Released:2019-01-09)
参考文献数
21
被引用文献数
3 5

チョコレートとココアは,カカオ豆から作られる主な製品である.これらの製品は,土壌などの環境に由来するカドミウム(Cd)を含むことが知られている.Cd濃度を調査するために,国内流通していたダークチョコレート,ミルクチョコレート,ホワイトチョコレート,ココア粉末製品を購入した.分析には誘導結合プラズマ質量分析計による妥当性確認された分析法を用いた.チョコレートおよびココア粉末中のCd濃度は,それぞれ0.00021~2.3および0.015~1.8 mg/kgの範囲であった.各製品のCd濃度を製品のラベルに記載されているココア固形分の含有量に基づき評価した結果からは,Cd濃度とココア固形分の含有量との間に弱い正の相関があることが示された.調査した180種類のチョコレート製品のうち8製品,140種類のココア粉末製品のうち26製品中のCd濃度は,EUが設定した基準値を超過していた.