- 著者
-
岡本 悦司
- 出版者
- 一般社団法人 日本薬剤疫学会
- 雑誌
- 薬剤疫学 (ISSN:13420445)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, no.2, pp.117-134, 2013-02-20 (Released:2013-04-10)
- 参考文献数
- 15
- 被引用文献数
-
2
レセプト情報・特定健診等情報データベース(以下,NDB)が構築され研究利用も可能となったが,その活用は厳格な個人情報保護規定により相当な制約を受けている.たとえば最小集計規制により,10 未満の集計は認められていない.ところが奇妙なことに,同じレセプトを対象とする医療給付実態調査にはそのような制約はない.その違いは法的根拠にあり,医療給付実態調査は統計法であるのに対して NDB は行政機関個人情報保護法(行個法)であることによる.二つの法律は正反対であり,統計法はデータ有効活用を推進するのに対して行個法は個人情報保護を最重視している.研究利用のためであれば NDB も統計法に基づく統計となるのが望ましいが,そうすると行政機関による統計目的外の利用(たとえば,請求内容のチェック)も制限されるという問題が生じる.ならば,行政機関による利用は行個法,研究利用は統計法というダブルスタンダードも選択肢である.またこれまで各種レセプト調査は,異なる行政機関が重複する調査を実施してきたが,NDB 構築を契機に分立する調査の統合も課題である.データベースとその二次利用をめぐる法的扱いは各国でも問題となっており,最近 OECD が実施したデータベースとその二次利用に関する調査結果の要約も参考として添付する.(薬剤疫学 2012;17(2):117-134)