著者
佐藤 健斗 野口 普子 三富 菜々 嶋田 岳 昆 恵介
出版者
公益社団法人 日本義肢装具士協会
雑誌
POアカデミージャーナル (ISSN:09198776)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.118-123, 2019 (Released:2019-10-16)
参考文献数
11
被引用文献数
2

臨床の場面で、脳血管障害により身体に後遺症を負った装具使用者と、義肢装具士やその他の治療に関わる様々な職種の方々との間で装具を使用する上で重視する点の違いを感じる場面が少なくない。今回は、それぞれが短下肢装具選好に際して重視する要素を確認し、違いを明らかにすることを目的とし、コンジョイント分析を用いた調査研究を行った。結果として、義肢装具士群、理学療法士群が短下肢装具を使用する目的を「歩行・立位の安定」とみて、装具選好の際に重視している一方、装具使用者群とは有意にその影響度に差異があり、装具使用者群においては装具選好にあたり必ずしも重視される要素ではない可能性が示唆された。
著者
利部 慎 嶋田 純 島野 安雄 樋口 覚 野田 尚子
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF HYDOROLOGICAL SCIENCES
雑誌
日本水文科学会誌 (ISSN:13429612)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.1-17, 2011 (Released:2011-04-27)
参考文献数
26
被引用文献数
15 9

阿蘇カルデラ内を水文化学的な特性に基づいて4 地域に区分し,その4 地域から得られた地下水の滞留時間を明らかにすることで,阿蘇カルデラ内の地下水流動機構を明らかにした。安定同位体比特性および水質特性,さらに水素安定同位体比から推定された涵養標高により,カルデラ内を外輪山山麓系:領域( I ),中央火口丘群系:領域( II ),カルデラ低地系不圧地下水系:領域( III ),カルデラ低地系自噴井系:領域( IV )の4 領域に区分した。領域( I )と( III )では推定される涵養標高が相対的に低く,溶存成分量の少ないCa-HCO3 型であるため,涵養から湧出までの経路は比較的短い流動規模の小さなグループと考えられた。一方,領域( II )と( IV )は,推定涵養標高が高く溶存成分量の多いSO4 成分に富んだ水質組成であるため,中央火口丘群で涵養された流動規模の大きなグループと考えられた。また,年代トレーサーであるトリチウムやCFCs を用いて地下水の滞留時間の推定を行った。まず,トリチウムによるピストン流での滞留時間は全領域において約3 年未満と推定された。そして,トリチウムの濃度履歴を利用した詳細な滞留時間の推定が,領域( I )および領域( II )で行うことができ,領域( I )ではピストン流の流動形態で約20 年の滞留時間と推定され,CFCs の分析結果と整合的であった。一方,領域( II )ではトリチウムとCFCsにより推定された滞留時間に相違がみられたが,これは流動形態が混合流によるものと考えられ,その際に推定された平均滞留時間として約3 年が得られた。このような長い滞留時間は、水文化学特性や推定された地下水流動機構と調和的なものである。なお,領域( III )では人為起源によるものと考えられる過剰付加により,CFCs による滞留時間の推定を行うことができなかった。また,領域( IV )ではCFCs によるピストン流の滞留時間が約2 年と推定されたものの,溶存成分量が多いことや推定涵養標高が高いことを考慮すると,より長い滞留時間を有している可能性を否定できないため,今後他の年代トレーサーとの比較を行うことが期待される。
著者
関矢 信康 引網 宏彰 古田 一史 小尾 龍右 後藤 博三 柴原 直利 嶋田 豊 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.811-815, 2004-11-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

難治性の気管支喘息の3症例に対して咽喉不快感, 動悸, 自汗を目標として清暑益気湯を投与した。目標とした症状および所見は速やかに改善した。さらに発作の回数が著明に減少あるいは消失した。そのほか3症例に共通していた事柄は中年期であること, 発作が通年性であること, 心窩部不快感, 心下痞〓, 臍上悸を認めることであった。これまで清暑益気湯は夏やせ, 夏まけに対して用いられることが多かったが中年期の気管支喘息の長期管理薬 (コントローラー) としても認識されるべき処方であると考えられた。
著者
徳久 謙太郎 鶴田 佳世 小嶌 康介 兼松 大和 三好 卓宏 高取 克彦 庄本 康治 嶋田 智明
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.167-177, 2012-06-20 (Released:2018-08-25)
被引用文献数
1

【目的】脳卒中患者の日常生活活動に関連した立位・歩行時の身体動作能力を評価する,ラッシュモデルに適合した新しい尺度,脳卒中身体動作能力尺度(SPPS)を開発すること。【方法】脳卒中患者の日常生活場面の観察をもとに,身体動作25項目から構成される仮尺度を作成した。この仮尺度を2施設の脳卒中患者102名に5段階評点を用いて実施し,評点段階および項目をラッシュ分析にて解析して本尺度を完成させた。またこの尺度の一次元性および尺度全体の信頼性を検討した。【結果】評点段階分析では軽介助と監視の段階が統合され,4段階評点となった。項目選択分析では,9項目が除外され,16項目から構成されるSPPSが完成した。SPPSの一次元性および尺度全体の信頼性は良好であった。【結論】SPPSは脳卒中患者の日常生活活動に関連した立位・歩行時の身体動作能力を評価する尺度であり,その間隔尺度化が可能な特性は,臨床および研究に有用であろう。
著者
安藤 祐子 山﨑 陽子 新美 知子 細田 明利 川島 正人 嶋田 昌彦
出版者
日本口腔顔面痛学会
雑誌
日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.49-53, 2015-12-25 (Released:2016-05-27)
参考文献数
11

症例の概要:症例は50歳の女性.16か月前より右側舌根部に違和感を自覚するようになった.近医内科受診したところ,含嗽薬が処方されたが症状は改善しなかった.その後,近医内科で膠原病が疑われ血液検査を行ったが異常はなかった.症状は次第に右側舌縁部全体に拡大した.2か月前,近医歯科受診を経て本院口腔外科受診となった.細菌検査の結果はカンジダ陰性であった.軟膏および含嗽薬が処方されたが症状に変化がなかったため当科受診となった.初診時は右側舌縁部に灼熱感を訴え,症状は断続的に発生していた.胃部不快感があり内科受診予定とのことだったので立効散7.5g/日を含嗽で処方したところ,含嗽後一時的に症状は軽減した.処方開始7週間後,症状の発生頻度が減少した.処方開始11週間後,症状を感じない時間が増えた.この頃より,患者は自主的に症状のある時のみ立効散を使用していた.その後,症状は7週間で2回のみの出現であったため,処方開始5か月後,立効散の含嗽の頓用処方とした.処方開始8か月後には症状が落ち着いたため,症状出現時に立効散を含嗽で使用することとし,終診となった.考察:本症例は含嗽薬による含嗽では症状の改善はなかったが,立効散による含嗽で症状が改善した.したがって,立効散の含有成分による舌粘膜への作用が示唆された.結論:内服治療が困難な舌痛症に対し,立効散の含嗽は有用であったと考えられた.
著者
夏池 真史 金森 誠 前田 高志 嶋田 宏 坂本 節子
出版者
日本プランクトン学会
雑誌
日本プランクトン学会報 (ISSN:03878961)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.1-10, 2022-02-25 (Released:2022-03-06)
参考文献数
31

In Hokkaido, Japan, the toxic dinoflagellate Alexandrium catenella (A. tamarense species complex Group I) is the source of frequent contamination of bivalves with paralytic shellfish toxins over the last 40 years, whereas A. pacificum (Group IV) has rarely been reported. Recently, A. pacificum cells were identified based on their morphology and DNA sequences in Hakodate and Funka bays, southern Hokkaido. To understand their seasonal occurrence, A. pacificum and A. catenella cells in the two bays were detected using microscopy and multiplex polymerase chain reaction (PCR) over a 2-year period (May 2018–May 2020). Microscopic observation showed that cells of A. pacificum, a species without the ventral pore between the 1′ and 4′ plates, occurred in Hakodate Bay from July to November 2018 and in July 2019, with a maximum cell density of 4450 cells L−1 in November 2018. It also occurred in Funka Bay in October 2018, with a maximum cell density of 50 cells L−1. Multiplex PCR using Alexandrium species-specific primers showed a similar seasonal occurrence of A. pacificum in Hakodate Bay. In contrast, A. catenella was found from February to May in Funka Bay but its occurrence was uncertain in Hakodate Bay because the microscopy and PCR tests were not simultaneously positive. The occurrence of A. pacificum was limited to the period (July to November) of optimum water temperature for growth (15–25℃), suggesting that the occurrence of motile cells was affected by water temperature. When A. pacificum bloomed at a relatively high density in Hakodate Bay during autumn 2018, warmer water temperature and lower salinity in the surface layer were observed compared to the previous 5 years. These environmental conditions were thought to be established due to warmer air temperatures, a longer sunshine duration, and a large amount of precipitation from October to November 2018. Such environmental and meteorological conditions were suggested to be suitable for the growth of A. pacificum in Hakodate Bay.
著者
田村 暢章 竹島 浩 谷口 展子 田草川 徹 山﨑 大輔 原口 茂樹 安田 治男 嶋田 淳
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.471-476, 2007-09-30 (Released:2014-04-10)
参考文献数
14

We report four cases whose implant fixtures were uncertainly placed and inserted into the maxillary sinus.The patients consisted of 2 males and 2 females whose ages ranged from 46 to 56 years. All cases were referred to us from private dental clinics. There were three cases of accidental insertion in the maxillary sinus on the left side and one case on the right side, but all of them had no symptoms at the first visit. All implant fixtures were surgically removed without any episodes, although one case was complicated with chronic maxillary sinusitis. It is considered that it is necessary to minimize invasion and time to remove the implant fixture in the maxillary sinus, and especially important to inspire the patient with confidence.
著者
嶋田 愛 千田 恭子
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.75-91, 2008

現在,わが国のクラシックの演奏会における西洋声楽曲のレパートリーは幅広い。その中でも,ドイツリートやイタリア歌曲,イタリアオペラに馴染みが深いように感じるが,ここに至るまでにわが国の西洋声楽曲のレパートリーはどのように変化してきたのだろうか。 本論では,明治以来のわが国の近代化と共に歩んできた西洋声楽曲のレパートリーの移り変わりについて明らかにする。方法としては主に,現在の東京藝術大学の前身,東京音楽学校で行われた各種コンサートの資料を用い,その中から独唱曲として演奏されている西洋声楽曲について調査する。また,時期としては日本人によって初めて西洋声楽曲が演奏された明治29年から東京藝術大学設立までの約55年間を,時代を追って扱うものとする。
著者
嶋田 貴志 岡森 万理子 深田 一剛 林 篤志 榎本 雅夫 伊藤 紀美子
出版者
日本食品科学工学会
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.604-607, 2011 (Released:2012-12-03)

5週齢のBALB/c系雌マウスにスギ花粉アレルゲンを5回感作した後、腹腔内にアレルゲンを投与して好酸球を集積させるI型アレルギーの遅発相モデルを作製した.このモデルに対して、モリンガ(Moringa oleifera)の葉を3種の混合比(0.3%、1.0%および3.0%)で混じた粉末飼料を自由摂取させ、好酸球の集積および血清中の総IgE量に対する影響を調べた.通常の飼料を与えた対照群と比較してモリンガ葉を0.3%および3.0%与えた群は、総白血球数および好酸球数で有意な低値を示した.血清中総IgE量では対照群と比較して3.0%のモリンガ葉を与えた群が有意な低値を示した.以上の結果より、モリンガ葉は経口的に摂取することでI型アレルギーに対して抑制作用を有する可能性が示された.
著者
木下 奈緒子 大月 友 五十嵐 友里 久保 絢子 高橋 稔 嶋田 洋徳 武藤 崇
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.65-75, 2011-05-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本稿の目的は、精神病理の理解や治療という観点から、人問の言語や認知に対して、今後どのような行動分析的研究が必要とされるか、その方向性を示すことであった。人間の言語や認知に対する現代の行動分析的説明は、関係フレーム理論として体系化されている。関係フレーム理論によれば、派生的刺激関係と刺激機能の変換が、人間の高次な精神活動を説明する上で中核的な現象であるとされている。刺激機能の変換に関する先行研究について概観したところ、関係フレームづけの獲得に関する研究、刺激機能の変換の成立に関する研究、刺激機能の変換に対する文脈制御に関する研究の3種類に分類可能であった。これらの分類は、関係フレーム理論における派生的刺激関係と刺激機能の変換の主要な三つの特徴と対応していた。各領域においてこれまでに実証されている知見を整理し、精神病理の理解や治療という観点から、今後の方向性と課題について考察した。
著者
藤 洋美 德重 智絵美 惠良 文義 樋口 尚子 結城 万紀子 梶原 希望 大場 ちなみ 嶋田 裕史
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.685-690, 2021-10-25 (Released:2021-10-25)
参考文献数
9

選択培地のみでMethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)の判定を行う目的で,ブドウ球菌選択培地5種類についてStaphylococcus aureusの検出性能を検討し,MRSAスクリーニング培地7種類については,各培地のMRSA検出性能を薬剤感受性試験と比較した。検証にはMRSA 28株,Methicillin-susceptible Staphylococcus aureus(MSSA)17株,S. aureus以外のブドウ球菌(non-S. aureus)15株の計60株を使用した。その結果,ブドウ球菌選択培地のS. aureusの検出感度は91%~100%,特異度は87%~100%であり,MRSAスクリーニング培地のMRSA陽性的中率は90%~100%,陰性的中率は94%~100%であった。培地によるS. aureusおよびMRSAの判定を行う場合は,その培地の特性を理解して検査を進めることが重要であると考えられた。
著者
嶋田 繁
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.151-164, 2000-04-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
51
被引用文献数
17 13

天城カワゴ平火山は,伊豆半島の天城火山北西部に位置する単成火山である.噴出物層序から,同火山の噴火活動は噴火様式の異なる4ステージ(ステージI:火砕サージ噴火→ステージII:プリニー式噴火→ステージIII:火砕流噴火→ステージIV:溶岩流出)に区分できる.このうち,ステージIIで噴出した大量の降下軽石(KGP)はおもに東風により西へ吹送されたが,一部は火口の北または北東~南東方向にも認められ,全体の分布域は伊豆~東海地方のほか南関東,中部山岳地域,近畿地方などの広域に及ぶ.その分布には偏西風の影響がほとんど認められないことから,噴火は夏季に生じた可能性が示唆される.またステージIIIでは,火砕流が天城火山山麓の谷を流下したが,これと同時に灰かぐらが発生し,火砕流の流下域やその西側に細粒火山灰層が厚く堆積した.カワゴ平火山の噴火年代については,14C年代値,周辺地域のテフラ層序,KGPと考古遺物との層位関係から,3,060~3,190yrs BPと推定した.この噴火と同時期(縄文時代後~晩期)の伊豆半島や駿河湾岸周辺の沖積低地では,潟湖の埋積が進み,沼沢地・湿地が発達していた.特に静清平野では,KGPを挾む泥炭層が低地のほか,扇状地末端などの微高地上にも分布することから,KGP降下期の同平野では広域に沼沢地・湿地が形成されていたと推定される.
著者
佐藤 寛 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-13, 2006-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本研究では、児童の自動思考をネガティブとポジティブの両側面から測定することのできる児童用自動思考尺度(ATIC)を作成し、抑うつ症状と不安症状との関連について検討することを目的とした。まず、児童のネガティブ・ポジティブな自動思考を測定する尺度を作成した。分析の結果、ATICはネガティブな自動思考である自己の否定と絶望的思考、およびポジティブな自動思考である将来への期待とサポートへの期待という4因子から構成されていることが示された。次に、児童の自動思考が抑うつ症状と不安症状に与える影響について検討した。その結果、ネガティブな自動思考である自己の否定は抑うつ症状と不安症状のいずれにも促進的な影響を与えており、絶望的思考は抑うつ症状のみに促進的な影響を与えていた。一方、ポジティブな自動思考である将来への期待とサポートへの期待は、いずれも不安症状とは関連していなかったものの、抑うつ症状に対しては抑制的な影響を与えていた。