著者
野村 和孝 嶋田 洋徳 神村 栄一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.121-131, 2020-05-31 (Released:2020-10-23)
参考文献数
30

わが国の司法・犯罪分野・嗜癖問題の認知行動療法(CBT)の実践として、2017年に創設された公認心理師がその職責を果たすためには、CBTの実践を精査し今後の課題を明らかにすることが必要である。本稿ではわが国における司法・犯罪分野の心理に関する支援を要する者の特徴と支援の枠組みを網羅的に概観し、CBTの実践における課題を検討した。そこで、プロセス指標の評価、グループワークの展開方法、抵抗や否認への対応、認知的介入、レスポンデント条件づけ、および施設内処遇と社会内処遇との連携に基づく介入の六つについて、知見を蓄積していくことが提案された。いずれの課題についても、司法・犯罪分野・嗜癖問題における支援効果を高めるために、個人と環境の相互作用の観点を持つCBTの理解の枠組みで取り組み知見を蓄積していくことが期待される。
著者
門司 和彦 青柳 潔 片峰 茂 嶋田 雅曉 竹本 泰一郎
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

アフリカにおいて近年猛威を奮うHIV/AIDS感染を小学生、中学生、高校生レベルで予防するためには、彼らの性に対する知識・態度・行動を知ると同時に、学校保健の枠組みの中で実質的・具体的な教育メッセージを送る必要がある。小学校でのドロップアウト率の高さを考えると小学校3-5年生ぐらいにエイズ教育を実施する必要がある。しかし、性に対するそれぞれの社会に扱いはデリケートであり、エイズ教育はそのままでは受け入れられない。一方、住血吸虫感染は、アフリカの農村部の多くの地域で慢性的に流行し、小学生が中心的な感染者である。特にビルハルツ住血吸虫症は血尿を主症状とするために、小学生が身近な関心を持つ疾患である。しかも、治療薬が存在し、本人が川との接触を避け、また川での排尿をしなければ、本人も感染を逃れ、また地域全体の感染も抑えることが可能である。ビルハルツ住血吸虫症は生殖器から出血するため性病と混同されることもあるが、そのサービス(治療)と健康教育は地域からも受け入れられている。本プロジェクトではこれまでのビルハルツ住血吸虫対策の健康教育とエイズ・性行動に関する知識・態度・行動研究と健康教育を連携させてその行動変容を見ようとしたものである。調査上の制約から住血吸虫症対策は主にケニアの小学生で実施し、性行動はタンザニアの高校生での調査が中心となった。いずれも知識は高いが行動変容にはなお時間がかかることがわかった。例えばコンドーム使用は増加しているが、感染危険が高いと考えられる相手の場合の方が使用頻度が低くなっていた。また、教育介入による行動変容は効果があがるまでに時間がかかり、その評価方法を明確にする必要性が浮かび上がった(715字)
著者
伊藤 隆 喜多 敏明 嶋田 豊 柴原 直利 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.433-441, 1996-11-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
16
被引用文献数
3 3

八味地黄丸が奏功した慢性喘息患者4症例を報告した。症例は63歳女, 57歳女, 41歳女, 42歳男。いずれも成人発症, 通年型である。重症度では第1例は軽症, 第2例は中等症, 第3, 4例は重症に相当した。漢方医学的には4例ともに八味地黄丸証を認めた。第1例はウチダ八味丸Mが奏功したが, 第2~4例は反応せず熟地黄を用いた自家製丸剤により始めて喘息病態の改善を認めた。4例ともに喘息病態の改善に伴い発作点数の低下, 治療点数の低下, 早朝時ピークフロー値の上昇を認めた。経口ステロイド剤は第3例と第4例に使用していたが, 第3例で離脱, 第4例で減量できた。本報告により八味地黄丸が慢性喘息患者の呼吸機能改善に対して有用であること, 丸薬として投与する場合には乾地黄よりも熟地黄を用いた方が治療効果においてより優れている可能性が示唆された。
著者
嶋田 元 堀川 知香 福井 次矢
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.12, pp.3413-3418, 2012 (Released:2013-12-10)
参考文献数
9
被引用文献数
2 1

厚生労働省では,平成22年度より医療の質の評価・公表等推進事業を進めており,「国民の関心の高い特定の医療分野について,医療の質の評価・公表等を実施し,その結果を踏まえた,分析・改善策の検討を行うことで,医療の質の向上及び質の情報公表を推進すること」を目的としている.平成22年度は国立病院機構,全日本病院協会,日本病院会の3団体が,平成23年度は全日本民主医療機関連合会,恩賜財団済生会,日本慢性期医療協会の3団体が本事業を実施した.
著者
田中 佑樹 嶋田 洋徳 岡島 義 石井 美穂 野村 和孝
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.20-021, (Released:2021-06-17)
参考文献数
33

本研究においては、ユーザーからの入力データに基づく自動化された個別フィードバックによって、ストレッサーに応じたコーピングの実行と睡眠の質の改善を促すストレスマネジメントのためのスマートフォンアプリケーションを開発し、労働者を対象としてその有効性を検討することを目的とした。効果検証は、コーピングレパートリー、睡眠の質、心理的ストレス反応を指標として、アプリケーション群、ワークシート群、個別面接群の3群における介入前後の比較が行われた。計63名分のデータを分析した結果、コーピングレパートリーおよび心理的ストレス反応には、アプリケーション群とほかの2群の間に有意な効果の差異は見られなかったものの、睡眠の質は、むしろ個別面接群のみにおいて有意な改善が認められた。したがって、開発されたスマートフォンアプリケーションのコンテンツには改良の余地が残されていることが示唆され、今後の展望に関して考察された。
著者
嶋田 美奈
出版者
パーソナルファイナンス学会
雑誌
パーソナルファイナンス学会年報
巻号頁・発行日
no.10, pp.49-59, 2010

貸金業法の改正以前、消費者金融大手7社は消費者金融市場を一層健全化することを目的とし、消費行動診断サービス及び家計管理診断サービスの開発と導入を行った。本稿は、日本貸金業協会が運営するサイトのインターネット上で利用できるこの診断ツールを用いて、消費行動診断や家計管理診断を利用した者に関して、消費行動や心理的な特徴、家計管理状態の特徴などを調査・分析を行ったものである。そこから多重債務者の可能性が高い者を抽出し、その特徴を心理学と行動経済学の観点から検討した。その結果、心理的特徴として、自己コントロールカ、思考的熟慮性と計画性が低く楽観的、生活や金銭への管理意識、金銭感覚が乏しい反面、衝動性やその場への満足感重視の傾向が強い。金銭的破綻の危機感はあるが、借入に対する抵抗感が低く、安易に債務返済を繰り返し行う対処能力の低さ、対処スキルの未熟さが示された。この傾向を行動経済学の現状維持バイアスの視点から見ると、即自的現在消費への満足感に価値を置くため、借りては返すという行為を繰り返しながら、消費や借金を続ける傾向が高く、セルフコントロール機能が不全である。負債が増加する要因として、安易さ手軽さを好み、簡単にクレジットにアクセスできることとその機会があること、将来の消費への価値が低いことなどが示された。
著者
山田 健志 富士 健太郎 嶋田 知生 西村 いくこ 西村 幹夫
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.239, 2005

植物において,原形質膜のタンパク質がどのように液胞へ運ばれ分解されるかは明らかにされていない.そこで,原形質膜タンパク質の液胞への輸送を調べる目的で,シロイヌナズナとタバコ培養細胞(BY-2)におけるエンドサイトーシスを解析した.エンドソームは非常に早く液胞へ到達するので,通常の条件ではほとんど見ることができない.しかし,パパイン型システインプロテアーゼの阻害剤であるE64dでBY-2を処理すると,エンドソームが細胞礎質に大量に蓄積することが分かった.このことは,E64dがエンドソームと液胞の融合を阻害することを示唆している.原形質膜タンパク質(PIP2a,LTI6b)とGFPの融合タンパク質を発現するシロイヌナズナ形質転換株にE64dを処理したところ,GFP蛍光を持つエンドソームが蓄積し,融合タンパク質の分解が阻害された.さらに,ビオチン化阻害剤を用いて,蓄積したエンドソームに2つのパパインホモログ(ENP)が局在することを見つけた.以上の結果から,ENPは原形質膜タンパク質の液胞への輸送過程の一つであるエンドソームと液胞の融合に働くことが示された(1).<br>1) Yamada et al. (2004) Plant J., in press.
著者
引網 宏彰 柴原 直利 村井 政史 永田 豊 井上 博喜 八木 清貴 藤本 誠 後藤 博三 嶋田 豊
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.699-707, 2010 (Released:2010-10-30)
参考文献数
6

リウマチ性多発筋痛症(PMR)に対して,漢方治療が奏効した5症例について報告する。さらに,これら5症例を含む当科でのPMR治療例10例について検討した。その結果,有効症例は6症例であった。そのうち,1例はステロイド剤の投与を拒否した症例であったが,他の5症例は筋痛症状や炎症反応の出現により,ステロイド剤の減量が困難な症例であった。また,1例を除いて,CRPは3.0 mg/dl以下であった。一方,無効症例では高度の炎症反応を示しており,ステロイド剤の投与が必要であった。有効症例には駆瘀血剤(疎経活血湯,桃核承気湯,桂枝茯苓丸,腸癰湯加芍薬,薏苡附子敗醤散,当帰芍薬散)が投与されていた。以上より,PMRでステロイド剤の減量が困難な症例や炎症反応が軽度である症例には,漢方薬は治療の選択肢の一つとなりうると考えられた。さらに駆瘀血剤の積極的な使用がPMRの治療に有用である可能性が示唆された。
著者
嶋田 典人
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.65, pp.48-64, 2013-11-30

学校という「組織」とそれを構成する教職員という「人」が、公文書を現用文書として管理している。本稿では主に教員について日々多忙な業務と文書管理の関係を若干の経験も交えながら「記録管理」の視点から考察する。国や地方公共団体、文書館などの他の行政機関・組織との関係について法的視点を交えながら述べる。現用文書としての保存年限が過ぎ、非現用文書となった時に歴史的公文書として保存されているのか、学校史編纂事業を通して、現用文書と非現用文書の連続性、文書のライフサイクルについて実態を見る。歴史的公文書は「学校アーカイブズ」であり、そのより良い保存と利用について、学校組織内での取り組みについて考える。最も重要であるのは、児童・生徒の教育への活用である。また、地域の拠点としての学校の役割と地域住民の利用について考察する。
著者
嶋田 哲郎 藤本 泰文
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.S7-S9, 2009 (Released:2009-06-08)
参考文献数
9

2009年5月1日に内沼で捕獲されたオオクチバス(全長506mm,体重2.4kgのメス)の胃内容物から鳥類1羽,アメリカザリガニ3匹が発見された.未消化の羽毛の大きさや色彩パターン,上嘴や脚の色や形態,露出嘴峰長やふ蹠長などから,捕食された鳥類はオオジュリンと考えられた.
著者
嶋田 英晴
出版者
東京大学文学部宗教学研究室
雑誌
東京大学宗教学年報 (ISSN:02896400)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.61-72, 2010-03-31

論文/Articles
著者
伊藤 貴之 山田 敦 井上 恵介 古畑 智武 嶋田 憲司
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.252-253, 1997-09-24

CADなどで生成された形状を細かい要素の集合に分割するメッシュ生成技術は、計算力学、形状表現、画像生成などの各分野に広く用いられている。もっとも有名なメッシュ生成手法の一つに、Delaunay三角メッシュ生成法がある。この方法は、平面中に与えられた多数の節点(ノード)を連結して三角形要素の集合を生成する方法であり、三角形要素の最小角度が最大になるようにメッシュを生成する。特に、形状の外周(Outside loop)、穴(Inside hole)、内部線分(Inside wire)などを制約条件にして(図1(a)参照)、制約条件を破損しないように三角メッシュを生成する、制約つきDelaunay三角メッシュ生成法が広く実用されている。ここでいう「制約条件を破損しない」とは、制約条件を構成するすベての線分(制約線分)が1個または2個の要素の辺となるように三角メッシュを生成することを意味する。制約つきDelaunay三角メッシュ生成法の典型的なアルゴリズム[1]では、制約線分がない状態で三角メッシュを生成し、そのメッシュに制約線分を追加し、制約線分と交差する要素を除去し、その領域におけるメッシュを再生成する(図1(b)参照)。しかしこの手法では、非常に多数のノードや制約線分をもつ場合に、要素と制約線分の交差判定処理、および再メッシュ生成処理の処理時間が大きくなる。本報告では、要素と制約線分との交差判定などの処理時間を低減する、制約つきDelaunay三角メッシュ生成法の効率的な実装方法(図1(c)参照)を提案する。本手法では、まず制約線分に接するノードを処理し、2辺が同一制約線分と文差する三角形がある場合には、メッシュをそのノードの処理前の状態に戻し、別のノードを先に処理する。この処理を終えた時点で、すべての制約線分は1個または2個の三角形要素に共有された状態となる。その後に、制約線分に接しないノードを処理して三角メッシュを完成する。この時、制約線分に接しないノードの処理において、新しい三角形要素と制約線分の交差判定をすることなく、制約線分の破損を防ぐことができる。よって、従来の手法よりも、制約線分との交差判定を少なくすることができる。
著者
後藤 博三 嶋田 豊 引網 宏彰 小林 祥泰 山口 修平 松井 龍吉 下手 公一 三潴 忠道 新谷 卓弘 二宮 裕幸 新澤 敦 長坂 和彦 柴原 直利 寺澤 捷年
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.471-476, 2008 (Released:2008-11-13)
参考文献数
22
被引用文献数
1

無症候性脳梗塞患者に対する桂枝茯苓丸を主体とした漢方薬の効果を3年間にわたり前向き研究により検討した。対象は富山大学附属病院ならびに関連病院を受診した無症候性脳梗塞患者93名で男性24名,女性69名,平均年齢70.0±0.8才である。桂枝茯苓丸エキスを1年あたり6カ月以上内服した51名をSK群,漢方薬を内服せずに経過を観察した42名をSC群とし,MRI上明らかな無症候性脳梗塞を認めない高齢者44名,平均年齢70.7±0.7才をNS群とした。3群間において,開始時と3年経過後の改訂版長谷川式痴呆スケール,やる気スコア(apathy scale),自己評価式うつ状態スコア(self-rating depression scale)を比較した。また,SK群とSC群においては自覚症状(頭重感,頭痛,めまい,肩凝り)の経過も比較検討した。その結果,3群間の比較では,自己評価式うつ状態スコアにおいて開始時のSK群とSC群は,NS群に比べて有意にスコアが高かった。しかし,3年経過後にはNS群は開始時に比較し有意に上昇したが,SK群は有意に減少した。さらに無症候性脳梗塞にしばしば合併する自覚症状の頭重感において桂枝茯苓丸は有効であった。以上の結果から,無症候性脳梗塞患者の精神症状と自覚症状に対して桂枝茯苓丸が有効である可能性が示唆された。
著者
上杉 雅之 嶋田 智明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.551-554, 2008 (Released:2008-10-09)
参考文献数
18
被引用文献数
1

[目的]知的障害を伴う症例3名を対象にAberrant Behavior Checklist(ABC)を用いた評価を施行し紹介することである。[対象]知的障害を伴う脳性麻痺2名とスミス・マゲニス症候群1名の計3症例とした。[方法]小児理学療法の経験のある理学療法士がABCのマニュアルと評価表を翻訳し,そのマニュアルに従い対象3名に対して評価を施行した。[結果]症例Aは I 攻撃性7点,II 引きこもり6点,IV多動性8点,V不適切な言語2点を示した。症例BはI攻撃性3点,II 引きこもり4点,IV多動性2点を示した。症例CはI 攻撃性9点,II 引きこもり1点,III 常同性5点,IV多動性14点を示した。ABCは知的障害の問題行動を短時間で評価できる有用な尺度の一つであると言えるだろう。