著者
野村 和孝 山本 哲也 林 響子 津村 秀樹 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.143-155, 2011-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、性加害行為経験者を対象とした認知行動療法的治療プログラムを構成する心理社会的要因が、性加害行為抑止効果に及ぼす影響についてメタ分析を用いた検討を行うことであった。性加害行為抑止を目的とした認知行動療法的治療プログラムを心理社会的要因の構成に基づき分類したところ、セルフ・マネジメントの有無に基づく分類がなされた。セルフ・マネジメントの有無が性加害行為抑止に及ぼす影響についてメタ分析を行った結果、性的嗜好、歪んだ態度、社会感情的機能、リラプス・プリベンションから構成される治療プログラムの性加害行為抑止効果が確認された一方で、ストレスマネジメントなどのセルフ・マネジメントの向上を目的としたアプローチの手続き上の工夫の必要性が示唆された。
著者
嶋田 吉朗
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.28, pp.148-159, 2015-08-07 (Released:2016-10-12)
参考文献数
22

Although it is relatively well known that local business owners are active participants in local voluntary activities, we have not had enough opportunities to interpret this phenomenon sociologically. Through a qualitative analysis of one business owners' voluntary association, “Junior Chamber (Seinen-Kaigisho),” and its activity in a local traditional festival, the “Yamakasa” in Iizuka city, this paper reveals both how a local economic network has established a wider civic sensibility and what kind of role it has played in its local community. This shows us the importance of reconsidering the possibility of a form of civic engagement that initially took root in the economic sphere.
著者
白川 葉子 高見沢 実 尹 莊植 水沼 淑子 嶋田 昌子
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.133-144, 2016 (Released:2017-08-10)

本研究は,外国人居留地としての歴史的背景と資産をもつ横浜山手に現存する個人所有の住宅(洋館)を取り上げ,その土地・建物の履歴・変遷に関する歴史的資料の調査と現所有者・居住者の聞き取り調査を行った。横浜山手には公開施設である「山手西洋館」,学校や教会が所有する元「住宅(洋館)」,個人所有の住宅(洋館)が現存しているが,そのうち個人所有は,21 棟であり,その多くは近年所有者を変えながらも,住まいとして機能し続けている。そしてその建物は,横浜山手において,地域の特徴を形成する重要な要素として,その存在意義を確立しているといえる。
著者
恒次 祐子 芦谷 浩明 嶋田 真知子 上脇 達也 森川 岳 小島 隆矢 宮崎 良文
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.347-354, 2005 (Released:2007-04-13)
参考文献数
11
被引用文献数
2 1

5種類の味と香りの異なるチョコレートに対する主観的快適感と被験者の性別およびパーソナリティの関係を検討したところ, 以下の結果が得られた.1) 女性群においては,i) チョコレート全体に対する快適感が男性群よりも有意に高いこと, ならびに個別のチョコレートについては, 苦みを強くしたチョコレートにおいて快適感が男性群よりも有意に高く, オーク材抽出物を添加したチョコレートにおいても高い傾向にあることが認められた.ii) 快適感に対する男性性ならびに女性性の有意な正の影響が認められた.2) 男性群においては,i) 快適感に対するタイプA型傾向の有意な正の影響が認められ, 特性不安の有意な負の影響が認められた.3) チョコレート別の快適感とパーソナリティとの関係について,i) 男性群においてはオーク材抽出物添加チョコレートの快適感と女性性との間に有意な正の相関が認められた.ii) 女性群においてはオーク材抽出物添加チョコレートならびに甘みを強くしたチョコレートの快適感と男性性との間に有意な正の相関が認められた.以上により, チョコレートの快適感に評価者個々人のパーソナリティが影響を与えていることが明らかとなった. 今後個人の価値観や好みを重視したチョコレートの創造を検討していく上で, 有用な示唆を与えるものと考えられる.
著者
市川 裕 佐藤 研 桑原 久男 細田 あや子 高井 啓介 月本 昭男 高橋 英海 菊地 達也 長谷川 修一 葛西 康徳 江添 誠 牧野 久実 小堀 馨子 鎌田 繁 中西 恭子 土居 由美 嶋田 英晴 志田 雅宏 櫻井 丈 小野 塚拓造 山野 貴彦 アヴィアム モルデハイ
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ユダヤ教の歴史を調べていくと、のちに出現する二つの一神教、キリスト教とイスラーム、を生み出す基盤になっていることがわかる。宗教学の歴史は信仰を基盤とする西欧のキリスト教を宗教の一般モデルとしたため、このモデルから外れる諸要素は関心から外れた。しかし、イスラームとラビ・ユダヤ教はそれぞれ、シャリーアとハラハーを特徴とする啓示法の宗教であり、預言者に啓示された神の意志は、日常生活の行動様式を詳細に規定している。これら一神教の二つの異なる類型がともに古代ユダヤ社会に起源を有することを示して、一神教の歴史全体を動態的に理解する道筋を示すことは、人類の宗教史を考察する上で文明史的意義を持つものである。
著者
徳留 真一郎 八木下 剛 羽生 宏人 鈴木 直洋 大毛 康弘 嶋田 徹
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-15, 2008-02

無毒で常温貯蔵可能な液体推進剤として亜酸化窒素(N_2O)/エタノールの組合せに着目し,それによる扱い易い液体推進系の実証研究を進めている.当面の目標として大気吸い込み式極超音速推進系の飛行試験に用いる加速用ロケットエンジンへの適用を目指しているが,その低温環境順応性を活かす衛星・探査機搭載推進系への応用も視野に入れている.これまでに,推力700N級の要素試験供試体を用いた燃焼試験を2シリーズ行って,エンジン噴射器設計のための有用なデータと運用特性を取得してきた.併せて,水冷式燃焼器による燃焼器壁面熱流束分布の測定や厚肉のシリカ繊維強化プラスチックSFRP製燃焼器を用いた燃焼試験によって燃焼器への耐熱複合材料適用の可能性も探っている.
著者
木下 奈緒子 大月 友 五十嵐 友里 久保 絢子 高橋 稔 嶋田 洋徳 武藤 崇
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.65-75, 2011-05-31
被引用文献数
2

本稿の目的は、精神病理の理解や治療という観点から、人問の言語や認知に対して、今後どのような行動分析的研究が必要とされるか、その方向性を示すことであった。人間の言語や認知に対する現代の行動分析的説明は、関係フレーム理論として体系化されている。関係フレーム理論によれば、派生的刺激関係と刺激機能の変換が、人間の高次な精神活動を説明する上で中核的な現象であるとされている。刺激機能の変換に関する先行研究について概観したところ、関係フレームづけの獲得に関する研究、刺激機能の変換の成立に関する研究、刺激機能の変換に対する文脈制御に関する研究の3種類に分類可能であった。これらの分類は、関係フレーム理論における派生的刺激関係と刺激機能の変換の主要な三つの特徴と対応していた。各領域においてこれまでに実証されている知見を整理し、精神病理の理解や治療という観点から、今後の方向性と課題について考察した。
著者
前田 駿太 増田 悠斗 佐藤 友哉 嶋田 洋徳
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.46-57, 2016-12-31 (Released:2016-12-31)
参考文献数
22
被引用文献数
2

本研究の目的は,社交不安症における心理的ストレッサーに対するコルチゾール反応についてメタ分析を用いて検討することであった。文献検索の結果,社交不安症の診断基準を満たす者と健常者の間で心理的ストレッサーに対するコルチゾール反応を比較している9報の文献が抽出された(社交不安症群:N=265;健常群:N=199)。そして,ベースライン期,ストレス期(ストレス負荷後25分まで),回復期(ストレス負荷後25分経過以降)の3つの時期それぞれにおいて,社交不安症群と健常群のコルチゾール値の差分値に基づく効果量を算出した。メタ分析の結果,いずれの時期においても社交不安症群は健常群よりも高いコルチゾール値を示すことが明らかになった。このことから,社交不安症においては直接的なストレッサーの呈示に対してのみならず,ストレッサー呈示前後の認知的処理によってもコルチゾール反応が亢進していることが示唆された。
著者
梁 熙俊 嶋田 純 松田 博貴 利部 慎 董 林垚
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.187-205, 2015-05-29 (Released:2015-06-25)
参考文献数
35
被引用文献数
10

沖縄県南大東島における淡水レンズは貴重な水資源として用いられており,その形状と成因を明らかにするため,本研究では,15ヶ所の観測井における電気伝導度の観測結果を用いて淡水レンズの形状を推定し,地形,地質,地下水位の時系列解析によりその成因を評価した。本地域の地下水位は,潮汐の主要5分潮の周波数で高いシグナルを示し,潮位変動の影響を受けることが明らかになり,島の南側に位置する観測井で相対的に高い透水性がみられ,西側と北東側で低い透水性がみられた。本地域における淡水レンズ(電気伝導度2000μS/cm以下)は,西側と北東側で確認でき,淡水レンズの厚さは,中央低地で10~13m,西側で5~8m,北東側で3~6mであった。なお,透水性の違いや島の西側に多くの池沼・湿地が分布する地形的な理由から,西側の淡水レンズにおいて季節変動がみられた。
著者
日和佐 楓 嶋田 大作
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

長距離自然歩道は、環境省が全国に設置している歩道で、九州自然歩道もその一つである。豊かな自然環境に触れることによって、自然保護意識を高めることを目的にしており、環境政策の基盤的手段と位置づけられる。しかし、これまでの研究では、長距離自然歩道の利用者の特性や環境保護意識の解明は、充分に行われていない。本研究では、この課題について、九州自然歩道における利用者アンケート調査を実施して、その解明に取り組む。調査方法は、ルート上の山頂や登山口の3ヶ所で、調査員が自記式質問紙を配布・回収する形で2015年秋に行った。特に、環境意識については、一般的な環境意識と自然歩道利用者のそれを比較するため、内閣府の世論調査と同じ内容とした。その結果、九州自然歩道の利用者は、森林への親しみや生物多様性への取り組みに関して、世論調査よりも環境意識が高い結果となった。また、これらの項目では、九州自然歩道の利用頻度が高い利用者ほど環境意識も高くなることが分かった。他方、自然環境との関係性が低い循環型社会の形成に関する質問では、自然歩道利用者の環境意識において、世論調査との差や利用頻度との関係はみられなかった。
著者
中瀬 仁 嶋田 昌義 弘重 智彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
地震工学研究発表会講演論文集 (ISSN:18848435)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.801-804, 2001 (Released:2010-06-04)
参考文献数
5

液状化地盤における地中埋設構造物について, 従来の液状化判定に基づく検討を適用した場合, 十分締め固められた良質な埋め立て地盤や, 浮き上がりが生じにくいと考えられる細粒分を含む埋め立て地盤においても浮き上がると判定され, 膨大な対策費が必要となる場合が想定される. 著者のグループでは, 浮き上がりを許容する性能設計を視野においた検討を進めており, 本稿では過去に報告された実験結果を対象に, DEM (個別要素法) を用いた浮上量予測に対するシミュレーション研究を実施した内容について報告する. シミュレーションでは, 地盤を締め固める対策を施したケースに比べて無対策の構造物の浮上量が大きくなり, 定性的な浮上の傾向が実験と一致した. また, 液状化地盤が構造物下部に回り込むメカニズムも再現できた.
著者
佐藤 友哉 橋本 塁 嶋田 洋徳 大月 友
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.91-98, 2015 (Released:2015-11-19)
参考文献数
28

本研究の目的は、社交不安の2つのサブタイプ(全般性、非全般性)における、刺激関係の形成の流暢性と、スピーチ場面で生起する生理的反応の差異を検討することであった。54名の大学生を対象に、パフォーマンス場面に対する不安を測定するSocial Phobia Scale(以下、SPS)、対人交流場面に対する不安を測定するSocial Interaction Anxiety Scale(以下、SIAS)への回答を求め、関係ネットワーク間での刺激関係の形成の流暢性を測定するGo / No-go Association Taskを実施し、スピーチ課題中の精神性発汗を測定した。SPS、SIAS得点の平均値、標準偏差をもとに群分けを行い、基準を満たす30名が分析対象とされた。その結果、全般性の社交不安を示す者は、不安が低い者と比較してパフォーマンス場面をあらわす言語刺激群と、ネガティブな情動をあらわす言語刺激群の間の刺激関係を形成しやすいことが示された。また、不安が低い者は、スピーチ準備期と比較して実施期の精神性発汗の程度が高いことが示された。本研究の結果から、社交不安の2つのサブタイプを関係フレーム理論の観点から記述する有用性が示唆された。
著者
小暮 敏明 渡辺 実千雄 伊藤 隆 嶋田 豊 寺澤 捷年
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.349-355, 1997-11-20
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

温経湯が奏効した原発性シェーグレン症候群(pSjS)の三例を報告した。症例1は, 67歳, 女性。1992年4月に目のゴロゴロ感を自覚, 11月砺波総合病院受診。抗核抗体(+), 乾燥性角結膜炎の存在, 唾液腺シンチで分泌低下からpSjSと診断。点眼薬で加療されたが無効のため1995年6月同院東洋医学科受診, 温経湯を投与したところ眼・口腔乾燥症状の軽快が得られ, 6ヶ月後乾燥性角結膜炎の改善が確認された。症例2は73歳, 女性。1987年腰痛で当科受診し和漠薬治療を受けていた。1991年胸鎖関節痛が出現し当科入院。シルマーテスト(+), 抗SS-A抗体(+), 口唇生検でリンパ球浸潤の存在より, pSjSと診断。温経湯の投与後1ヶ月で胸鎖関節痛は消失し, 赤沈などの炎症反応も正常化した。しかし, この例は乾燥症状の改善は得られなかった。症例3は39歳, 女性。1991年6月多関節痛, 口腔乾燥感を自覚し近医受診, 高γ-グロブリン血症, 抗SS-A抗体(+), 唾液腺シンチで分泌低下からpSjSと診断,非ステロイド性抗炎症剤を受けていた。和漢薬治療希望で1994年3月当科受診。多関節痛が強いため, 桂枝加苓朮附湯等を投与し関節痛は軽減。口唇乾燥と月経痛から温経湯に転方, 口腔乾燥感, 目のカサカサは軽快したが, 手関節痛の出現のため2ヶ月後, 桂枝加朮附湯加減に転方した。これらから温経湯のpSjSへの応用の可能性が示唆されるとともに, 乾燥症状だけでなく, 関節痛という腺外症状にも有効であったことから, 本方剤を運用するうえで示唆に富む症例と考えられた。
著者
嶋田 貴志 岡森 万理子 深田 一剛 林 篤志 榎本 雅夫 伊藤 紀美子
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.604-607, 2011-12-15
被引用文献数
1

5週齢のBALB/c系雌マウスにスギ花粉アレルゲンを5回感作した後,腹腔内にアレルゲンを投与して好酸球を集積させるI型アレルギーの遅発相モデルを作製した.このモデルに対して,モリンガ(<I>Moringa oleifera</I>)の葉を3種の混合比(0.3%,1.0%および3.0%)で混じた粉末飼料を自由摂取させ,好酸球の集積および血清中の総IgE量に対する影響を調べた.通常の飼料を与えた対照群と比較してモリンガ葉を0.3%および3.0%与えた群は,総白血球数および好酸球数で有意な低値を示した.血清中総IgE量では対照群と比較して3.0%のモリンガ葉を与えた群が有意な低値を示した.以上の結果より,モリンガ葉は経口的に摂取することでI型アレルギーに対して抑制作用を有する可能性が示された.