著者
後藤 富士子
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.14-17, 2013 (Released:2017-06-02)

協議離婚は裁判所の手続を経ないが、調停離婚、離婚訴訟提起後の和解離婚および判決離婚は、裁判所の手続による。当事者は、別居など紛争勃発から終局まで、法的手続を抱えながら月日を送る。離婚事件で最も問題なのは、父母の紛争の狭間に置かれた子どものケアである。民法は離婚後単独親権制を採用しているが、離婚前は別居しても共同親権制なのに、共同養育を法的前提として「子の最善の利益」を守ることについて、司法は無策である。単独親権制を前提とした手続では、「どちらが監護親として適格か」という二者択一競争に父母を投げ込んで相対的劣者を子育てから排除する「裁判」がされる。これに対し、共同養育を前提とした手続では、夫婦として紛争状態にある父母が子育てに「どのようにかかわっていけばよいのか」を当事者が調整するのを援助する。前者の「裁判」では、「事実」は定型化されたうえ「法万能主義」が貫徹されるから、科学の出番はない。後者の調整援助の手続こそ、臨床心理、精神医学等々、科学が必要不可欠になるのである。
著者
伊藤 正雄 細川 泰秀 後藤 将夫 真辺 純裕 向井 和男
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 2008年春季全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.116, 2008 (Released:2008-08-07)

本稿は、経営情報学会「情報システム発展史」特設研究部会ワークショップ用に作成したものである。本稿では、新日本製鐵における情報システム発展史の総括と君津製鐵所における世界初の鉄鋼生産一貫オンラインリアルタイムシステム(All On line System)について述べ、そのシステムが果たした経営への貢献、人・組織への貢献と、そこで培った経験、教訓などについて述べる。
著者
永光 加奈 田辺 公一 後藤 伸之 大津 史子
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.370-379, 2018-07-10 (Released:2019-07-10)
参考文献数
7
被引用文献数
2

We investigated the current situation of pharmacists' recognition of and countermeasures they take against adverse drug reactions (ADRs) in order to elucidate related factors. We administered a web-based questionnaire to pharmacists who work at community pharmacies. The factors included in the questionnaire were basic information, recognition of and countermeasures against ADRs (the frequency of ADR recognition, investigation medium, the recognition of and countermeasures against ADRs and reasons for those). There were 29 questions about ADR education in total. In this study, we focused on the frequency of ADR recognition and countermeasures taken against ADRs, and examined their current status and related factors. As a result, after performing multivariable logistic regression analysis, we found that the group of pharmacists who made prescription inquiries about patients had an association with the investigation medium they used and are likely to investigate actively. Our results suggest the possibility that many pharmacists differed in their knowledge about the onset and recognition of ADRs. Moreover, our results found situations where prescription inquiries were actively made, but ADRs were not adequately reported. In conclusion, pharmacists who make prescription inquiries are likely to investigate and actively use information media, and this suggests the necessity of selecting the appropriate information medium and critically examining information. However, since those who answered our survey were biased towards the young, it is necessary to consider the possibility that this influenced the results.
著者
後藤 由佳
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1-12, 2014-03-30 (Released:2014-07-16)
参考文献数
14
被引用文献数
1

英単語のclimbは手足を使って自力で登ることを意味するが, 日本語訳の「のぼる」にはそのような限定はない。本研究は大学生を対象として, 英単語のこのような意味範囲の理解を扱った。実験1ではまずテスト群の大学生(n=44)のデータから, 基本動詞climb, memorize, borrow, teach, put onの意味範囲の理解が不十分であることを示し, 次に, 辞書の「語法」の記述を読む辞書群(n=101)では意味範囲の把握がある程度促進されることを示した。実験2では, 誤文指摘練習をする練習群(n=39), 意味範囲を間違って使用し現実にはあり得ないような意味になるエピソードを読むエピソード群(n=45)を設定し, 実験1の辞書群と比較して効果を検討した。その結果, 練習群とエピソード群では事後テストの正答率は約90%となり, 実験1の辞書群の75%を上回った。またエピソード群では学習者の動機づけも高めることができた。さらに, 英単語の学習方略と教授・学習方法の組み合わせによって動機づけに交互作用(ATI)が生じることが示唆された。
著者
大江 基貴 越智 義道 後藤 昌司
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.167-179, 2017 (Released:2018-04-26)
参考文献数
32

The receiver operating characteristic (ROC) curve is a currently well-developed statistical tool for characterizing accuracy of medical diagnostic tests. Recently, several authors suggest approaches referred to as ROC regression models in order to evaluate effects of factors influencing accuracy of diagnostics. Oe, Ochi, & Goto (2016) have presented an inference process of a ROC regression model based on Generalized Additive Model with penalized splines via REstricted Maximum Likelihood method. This approach focuses on smoothing continuous-type covariates, but in addition to continuous covariates (e.g. age, weight, etc), discrete covariates (e.g. sex, smoking, etc) often significantly effect on accuracy of diagnostics. On this article, we proposed an extended method so that we could model discrete and continuous covariates simultaneously. We provided the formulation and the inference procedure, and evaluated inference performance of this method through several simulations. In the simulation result, we found that both effect of discrete and continuous covariates on the ROC was appropriately estimated. Furthermore, we applied our method to the neonatal hearing impairment screening data and evaluated how some covariates effect on the ROC with auditory brainstem response (ABR) as a diagnostic valuable for hearing impairment. From the analysis results, it was suggested that sex and Transient Evoked Otoacoustic Emission (TEOAE) influenced on the ROC with ABR.
著者
三谷 博 深町 英夫 後藤 はる美 酒井 啓子 塩出 浩之 池田 嘉郎 平 正人
出版者
公益財団法人東洋文庫
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

この研究は近代に起きた6つの革命を公論と暴力の関係に着目しつつ比較する。取り上げるのはイギリス・フランス・日本・中国・ロシア・中東の革命で、日本と外国の専門家が互いに緊密な議論を行い、最後は英文論文集を刊行する。革命では公論と暴力が同時に誕生するが、暴力が蔓延する条件を探るのが第1の問題である。また、革命の終わりには暴力が排除されるが、その後、公論が維持されて自由な体制が生まれるのか、公論まで排除されて専制体制が生ずるのか、その分岐要因の解明が第2の課題である。さらに、諸革命がどんな連鎖関係に立っていたのか、アジアなど後発革命の側から先行革命の利用の様子を明らかにする。
著者
根本 学 佐藤 陽二 後藤 英昭 澤田 祐介 行岡 哲男 松田 博青 島崎 修次
出版者
日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.12, pp.717-724, 1999-12-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
13

乗車用安全帽(以下ヘルメット)の着用が頭部保護に関し,効果の高いことは周知のごとくである。一方,臨床の場ではヘルメットを着用していたにもかかわらず,頭部・顔面外傷にて救急医療施設に搬送される患者は少なくない。ヘルメットは日本工業規格(以下JIS規格)により3種類(A種,B種,C種)に分類されており,一般使用者の多くはA種もしくはC種を着用している。臨床検討として,過去2年間に経験した着用ヘルメットが判明している二輪車事故患者157例を対象とし,頭部・顔面外傷の有無とその損傷部位,および着用ヘルメットにつき検討した。実験的研究として,同一条件下で市販されているJIS規格AおよびC種ヘルメットの衝撃吸収試験を行った。統計学的検討はχ2検定およびt検定を用いて行い,危険率5%未満を有意とした。また,実験における測定値は,平均値±標準偏差で表示した。臨床例では157例中,A種着用群は56例,C種着用群は101例であった。頭部・顔面外傷の頻度はA種着用群60.7%であり,C種着用群25.7%に対し有意(p<0.001)に多かった。衝撃吸収試験ではA種よりC種が有意差(p<0.001)をもってすぐれた衝撃吸収能を示した。とくに376cmからの落下実験では,A種で脳に損傷を与えるとされている衝撃加速度400Gを超える値が測定された。JIS規格では125cc以下の排気量に対し,A種ヘルメットの着用を許可しているが,今回の検討でA種ヘルメットの危険性が判明した。ヘルメットの生産・販売にあたり,消費者に保護性能を明確に伝え,消費者自身がヘルメットの機能を認識することが大切であり,今後,現状に見合ったJIS規格の再検討が必要と考える。
著者
青木 弘行 久保 光徳 鈴木 邁 後藤 忠俊 岡本 敦
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.96, pp.47-54, 1993-03-01 (Released:2017-07-25)

エレクトリックギター用材料に適した新しい材料選択基準を求めるため、音色に強い影響を与えるヤング率、振動損失、密度、そして周波数スペクトル分布に代表される物理特性と、エレクトリックギターの音色としての「ふさわしさ」に対する評価尺度である感覚特性との相関関係について検討した。木材、プラスチック、金属に対する打撃振動、および振動音測定実験を行い、物理特性および音響特性の解析を行った。感覚特性は、これらの振動音の、エレクトリックギターに対する、相対的な「ふさわしさ」であるため、一対比較法を用いた官能評価実験により解析を行った。本研究によって解析された物理特性と感覚特性との関係を明確にするため、典型的な楽器用材料選択基準による評価を行うと同時に、これらの特性の相関式を、重回帰分析法に従って求め、エレクトリックギター用材料選択基準の検討を行った。これらの検討より、選択基準の説明因子である密度、特にその値の対数値とヤング率の影響が重要であることが明らかとなった。さらに、密度やヤング率を操作できる材料である繊維強化複合材料(GFRP、CFRP)の、エレクトリックギター用材料としての有効性について検討し、高剛性、低密度であるCFRPの利用可能性を確認した。
著者
後藤 吉彦
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.79-89, 2010-06-30 (Released:2012-03-01)
参考文献数
50
著者
羽田 大樹 後藤 厚宏
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.1596-1609, 2018-09-15

組織におけるWebアクセスの利用には多くの脅威が存在するため,悪性Webサイト情報のブラックリストが利用される.悪性Webサイト情報には登録理由やレピュテーションなどが付与されることがあるが,CSIRTのインシデントレスポンスにおいて合理的な判断を行うために適した情報を提供しているとはいえない.本稿では,インシデントレスポンスの「トリアージ」「対応実施」業務において,既存のブラックリストを活用した業務における課題を示し,合理的な判断を可能とするための「所有者」「コンテンツ」「現在の状態」「最終確認」という4項目による悪性Webサイト情報の分類を提案する.さらに,公開されている38種類のブラックリストの仕様について調査し,この分類に相当する情報がほとんど含まれていないことを示す.また,実際にブラックリストに一致してインシデント判定が求められた400件の悪性Webサイト情報について手動で調査を行い,一定数のWebサイト情報が外部からの調査によって定義に従った分類ができることを示す.この分類を活用することで速やかな対応ができることをケーススタディとして紹介し,提案分類が有効に働くことを示す.
著者
後藤 学
出版者
相模女子大学
雑誌
相模女子大学紀要. A, 人文系 (ISSN:18835341)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.23-33, 2012

The purpose of this research was to examine whether it is effective to use the digital contents which can be confirmed while a child operates the contents and a numerical change is looked at about acquisition of a triangular height concept. Five of eight children were able to understand height again and handwriting was able to express from the posttest to the figure. Therefore, the dinamic digital contents that operate geogebra and draw a triangle are effective for the child who forgets, although the knowledge about triangular height was mastered or being mastered confirming again and understanding. However, three children were not able to draw an exact figure by a posttest. This result has confirmed suggestion of the previous researches that it is difficult for a child to understand the definition "height is distance, when a figure is inserted by parallel lines". It can be inferred that the factor with a difficult understanding that there are four steps illustrating triangular height.
著者
宮地 尚子 後藤 弘子 青山 薫 ケン クリアウォーター ガルヴァス イシャ 紀平 省悟 菊池 美名子 栗林 美知子 松村 美穂 嶺 輝子 宮下 美穂 中島 啓之 仁科 由紀 坂上 香 田辺 肇 田中 麻子 ヴァーナー チャン リル ウィルス 吉岡 礼美
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

トラウマとジェンダーの相互作用を、(1)精神病理的側面から、(2)犯罪行為や逸脱現象の側面から、(3)文化創造的な側面から探り、明らかにした。(1)では海外研究協力者との共同研究や、臨床家、脳科学やジェンダー学等の専門家らによる共同研究会議を実施、トラウマの臨床的課題について検討した。(2)では刑事司法におけるストーカーや性犯罪事件の取り扱い、女性薬物依存症者のトラウマと社会復帰、性労働従事者への暴力について分析した。(3)では参加型アートプロジェクトの実施、参与観察を行い、トラウマからの創造性について考察した。(1)~(3)を統合し、成果を著作やウェブサイト等の形にまとめ、国内外で発表した。
著者
後藤 実
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.324-340, 2012-12-31 (Released:2014-02-10)
参考文献数
42

とくに1990年代以降, 多様な分野で社会的排除に関する研究が活性化し, 分析の視座が揃いつつある. そして, 「排除から包摂へ」という方向性が提示されている.本稿では, 社会システム理論に依拠することで, 包括的に近代社会における包摂/排除の形成を考察し, 社会政策学的な関心から行われている研究の不備を補う. そこで, 社会システム理論の観点から包摂問題を論じたT. パーソンズとN. ルーマンの理論を検討する. 両者の議論の吟味を経て, 機能分化した近代社会は, 包摂原理 (形式上の包摂原理) によって存立しており, そのもとで, 組織が排除・選抜を行うことで, 集合的な成果を確保し, 存続していること (作動上の包摂原理) が明らかとなる.ルーマンは, 排除を主題化しつつ, パーソンズ理論の不備, 欠点に対処した. とはいえ, 作動上の論理に即して包摂/排除と平等/不平等とを直接的に関連づけていないという問題点がルーマンの議論に関して指摘できる. そこで本稿では, 機能としての平等/不平等の区別に着目したうえで, 排除のコミュニケーションを問題化し, これが包摂/排除の調整 (調整上の包摂原理) に関与することを近代における包摂原理の複数性に即して考える.近代社会は, 形式上の包摂原理を参照して, 作動上の包摂原理を反省し, 存続に関わる包摂/排除を調整することで, 持続可能性を強化すると最終的に結論づける.
著者
山口 巧 堀尾 郁夫 後藤 正博 宮内 芳郎 出石 文男
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.136, no.8, pp.1185-1193, 2016 (Released:2016-08-01)
参考文献数
16
被引用文献数
2

It has been 6 years since the establishment of the position of “sports pharmacist” as one type of pharmacist. In the sporting world of Japan, sports pharmacists are expected to promote athletes' awareness of antidoping regulations and provide them with relevant education. However, currently, these pharmacists' main duty is to provide athletes and their coaches with guidance on medication. Using a model for the prediction of athletes' actions, we have worked to promote athletes' awareness of antidoping regulations and encourage sports pharmacists to perform relevant activities, such as antidoping education. As a result, we clarified that athletes' awareness regarding antidoping rules influences their actions when experiencing minor illnesses. In addition, we have proposed approaches to encourage athletes to undertake antidoping activities. The present study aimed to clarify competitive sports coaches' awareness of antidoping regulations, the instructions that those coaches give athletes when they experience minor illnesses, and coaches' awareness of athletes' usage of drugs and supplements. Analysis using a model for the prediction of actions revealed that to promote coaches' awareness of antidoping regulations, education aimed at raising their level of knowledge of doping is warranted. Furthermore, coaches were aware of the necessity of continuously providing athletes with antidoping instructions, but they did not keep sufficient track of athletes' usage of drugs and supplements. To encourage sports coaches to perform antidoping activities, it is effective to provide them with opportunities to develop their knowledge of doping prevention in their areas.
著者
後藤 吉彦
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.400-417, 2005-03-31 (Released:2010-04-23)
参考文献数
40
被引用文献数
1

本稿はまず, 身体的損傷 (インペアメント) ではなく社会的障壁こそが障害者にとっての問題=障害 (ディスアビリティ) であると主張する「障害の社会モデル」を紹介し, その功績と意義を確認する.そのうえで, 「社会モデル」に内在する問題-身体・インペアメントについての「生物学的基盤主義」, ひとを障害者/健常者とカテゴリー化することを容認するアイデンティティ・ポリティクス-を批判する.そして, それを補うべく, 障害学, 社会学に必要とされるのは, 障害者/健常者カテゴリーを不安定化させるような取り組みであると指摘し, そのためには「基盤主義」を徹底的に問いなおし, “障害者の身体” や “健常な身体” という概念を脱自然化させて捉えなおす視点が重要であると主張する.本稿の後半では, “健常な身体” の不安定さ, 不可能性を論じたM. Shildrickの著作をとりあげ, さらに, 彼女の議論を参照しながら, 障害者の〈逸脱〉した身体を健常者の〈標準〉なものに近づけるべくおこなわれるリハビリや整形治療について検証する.
著者
森 晃 水谷 正一 後藤 章
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.23-35, 2013-09-30 (Released:2013-11-29)
参考文献数
45
被引用文献数
1

近年,ナマズの繁殖場である水田水域の生息環境は悪化し,その個体数は全国的に減少している.ナマズの保全のためには複数の生息地に及ぶ生活史を把握する必要があるが,生態に関する知見は少ないのが現状である.そこで,ナマズの河川における行動生態情報を収集するため,超音波テレメトリーを適用し,小河川において追跡調査を実施した.まず,発信機の装着が魚体に及ぼす影響を室内水槽において検討した.ナマズ成魚 6 尾にダミーを装着し 5 週間観察した結果,体重の減少は見られたが,ダミーの脱落および死亡した個体は見られなかった.また,装着個体を用いて人工産卵を試みたところ,正常に産卵し孵化仔魚の生産に成功した.これらの結果から,発信機装着による生存や繁殖に及ぼす影響は少なく,ナマズに対する装着法として,適用可能であると考えられた.次に水田地帯を流れる谷川において追跡調査を実施した.谷川において捕獲した 5 尾のナマズ成魚に発信機を装着したのちに放流し,複数の受信機を各所に設置し,受信範囲内の装着個体の行動を約 1 年間モニタリングした.結果として 5 個体のうち 3 個体は 100 日以上モニタリングすることができた.次に,受信データを解析したところ,装着個体の行動パターンに季節変化が生じた.秋季にかけて 2 尾の装着個体の信号は,夜間に多く受信され昼間はほとんど受信されない規則的なパターンを示した.これは,日中は巣内で休息し,夜間に巣外で行動していたという夜行性活動パターンであると考えられた.一方,冬季にかけて 3 尾の装着個体の信号は昼夜同程度受信されるパターンを示した.このことから,冬季には昼夜活動を維持していたと考えられた.今回の研究により,ナマズの行動生態の情報を収集することができたが,手法による限界も判明した.今後は電波テレメトリーを併用することによりナマズの保全の際に必要な基礎的な行動生態情報を収集することが必要である.

4 0 0 0 OA 漢字音の系統

著者
後藤朝太郎 著
出版者
関書院
巻号頁・発行日
1937

4 0 0 0 OA 大漢和辞林

著者
後藤朝太郎 等編
出版者
朋文堂書店
巻号頁・発行日
1919