著者
後藤 嘉宏
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.364-371, 2012-09-01
参考文献数
43

東日本大震災はソーシャルメディア等新しいメディアの活躍の目立った災害であるとされる。他方,正常化の偏見仮説やオルポート&ポストマンの流言の公式等,災害情報学の従来の知見が当て嵌まる事例が多かったが,そのことへの新聞等での言及は少ない。これは新しいメディアに注目が集まったためであろう。その点から考えると,情報技術の進展が人々の意識や行動を変えるわけではないといえる。他方,インターネット革命が,相互監視的な情報環境に身を晒すことに馴れさせる等,我々の意識を根底から変える可能性そのものは否定できない。これは個人の自律性の確保の面で問題はあるが,防災の面からいうとメリットも大きい。今回の震災はソーシャルメディアと既存メディアの連携が注目された災害といわれるが,非常時と平時とをいかに分けるか,さらに連携のなかでどう棲み分けていくかという課題が前面に出た災害であるといえよう。
著者
若杉 葉子 戸原 玄 中根 綾子 後藤 志乃 大内 ゆかり 三串 伸哉 竹内 周平 高島 真穂 都島 千明 千葉 由美 植松 宏
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.109-117, 2008-08-31 (Released:2021-01-22)
参考文献数
64

現在行われている多くのスクリーニングテストは誤嚥のスクリーニングテストであり,不顕性誤嚥(SA)をスクリーニングすることは難しいとされている.今回,我々はクエン酸の吸入による咳テストを用いたSAのスクリーニングの有用性について検討を行った.対象は何らかの摂食・嚥下障害が疑われた18歳から100歳までの患者204名 (男性131名,女性73名,平均年齢69.90±11.70歳).超音波ネブライザより1.0重量%クエン酸生理食塩水溶液を経口より吸入させ,1分間での咳の回数を数える.5回以上であれば陰性 (正常),4回以下であれば陽性 (SA疑い)と判定し,VFもしくはVEの結果を基準とし,SAのスクリーニングの感度,特異度,有効度,陽性反応的中度,陰性反応的中度を計算した.咳テストによるSAのスクリーニングの結果は,感度0.87,特異度0.89,有効度0.89,陽性反応的中度0.74,陰性反応的中度0.95であった.次いで主要な原疾患別に咳テストの有用性を検討した.脳血管障害患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度0.76,特異度0.82,有効度0.79,陽性反応的中度0.73,陰性反応的中度0.84であった.頭頚部腫瘍患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度1.00,特異度0.97,有効度0.98,陽性反応的中度0.93,陰性反応的中度1.00であった.神経筋疾患患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度0.83,特異度0.84,有効度0.84,陽性反応的中度0.56,陰性反応的中度0.95であった.呼吸器疾患患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度0.67,特異度0.81,有効度0.76,陽性反応的中度0.67,陰性反応的中度0.81であった.気管切開のある患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度0.71,特異度1.00,有効度0.78,陽性反応的中度1.00,陰性反応的中度0.50であった.認知症患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度1.00,特異度1.00,有効度1.00,陽性反応的中度1.00,陰性反応的中度1.00であった.以上より,クエン酸吸入による咳テストはSAのスクリーニングに疾患によらず有用であると考えられた.
著者
後藤 千織 Goto Chiori
出版者
青山学院大学コミュニティ人間科学部
雑誌
青山学院大学コミュニティ人間科学部紀要・コミュニティ活動研究所報 (ISSN:24354686)
巻号頁・発行日
no.2, pp.21-35, 2021-03-19

本稿は、1840年代初頭のアメリカ合衆国で禁酒運動に参入した労働者階級の女性が、「真の女性らしさ」のイデオロギーをいかに解釈したのかを考察する。1840年代初頭に、大酒飲みの男性職人や男性労働者が率いる絶対禁酒運動であるワシントニアン運動が発達すると、 労働者階級や下層中流階級の女性たちも、マーサ・ワシントン協会を設立し、ワシントニアン運動を支えた。ワシントニアン運動に参加した女性たちは、女性は道徳的に優れているため飲酒癖に陥らないというイメージを否定し、女性も飲酒癖に陥ること、そして、そのよう な女性たちが救済可能であることを証明しようとした。また、ワシントニアン女性は、既存の慈善活動が飲酒癖に陥った人々を救済してこなかった現状を批判し、慈善が堕落を生み出すのではなく、むしろ更生のためには慈善が必要であることを訴えた。ワシントニアン女性は、限られた資源で慈善活動を展開し、経済的に豊かな女性だけが良心や同情心を持つという階級限定的な「真の女性らしさ」の概念に挑戦した。
著者
大島 洋一 溝口 陽子 後藤 春彦
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.71, no.605, pp.159-166, 2006-07-30 (Released:2017-02-17)
参考文献数
20

The Companies' branch locations are selected by weighting financial merits and the work efficiency merits in Osaka. The office market is competitive and the office centers are changing in Osaka. The relocation objectives showed characteristics of the each office center. The Office centers starategies can be positioned 3 different ways in the matrix of financial merit and work efficiency merit. Such as "New Development","Change of Use", and "Stagnant".
著者
後藤 崇志 石橋 優也 梶村 昇吾 岡 隆之介 楠見 孝
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.32-41, 2015 (Released:2015-04-25)
参考文献数
44
被引用文献数
1 7

We developed a free will and determinism scale in Japanese (FAD-J) to assess lay beliefs in free will, scientific determinism, fatalistic determinism, and unpredictability. In Study 1, we translated a free will and determinism scale (FAD-Plus) into Japanese and verified its reliability and validity. In Study 2, we examined the relationship between the FAD-J and eight other scales. Results suggested that lay beliefs in free will and determinism were related to self-regulation, critical thinking, other-oriented empathy, self-esteem, and regret and maximization in decision makings. We discuss the usefulness of the FAD-J for studying the psychological functions of lay beliefs in free will and determinism.
著者
村上 道夫 小林 智之 越智 小枝 後藤 あや 五十嵐 泰正
出版者
一般社団法人 日本リスク学会
雑誌
リスク学研究 (ISSN:24358428)
巻号頁・発行日
pp.SRA-0361, (Released:2021-05-19)
参考文献数
41

A planning session was held at the 33rd Annual Meeting of the Society for Risk Analysis, Japan, with the aim of sorting out the similarities and differences between the Fukushima disaster and the COVID-19 pandemic, and discussing the implications for social policy. This paper reports on the planning session, entitled “Thinking about COVID-19 from Fukushima and Fukushima from COVID-19.” This paper reports on the topics including “Risk perception, psychological distress and social division at the Fukushima disaster and COVID-19 pandemic,” “Why Japanese people pursuit null-risk?: Lessons learned from the two disasters,” “Risk perception and resilience among mothers: Data from the Fukushima nuclear accident and COVID-19 pandemic,” and “Perspectives on societal risk trade-offs: Nuclear accident /pandemic.” Although the disaster and the pandemic have different characteristics, it was confirmed that there are many findings that need to be shared regarding various individual and societal risk issues, risk trade-offs, and measures to recognize and adapt to these risks. The significance of interdisciplinary and bird’s eye view disaster risk research across disaster types and disciplines was highlighted.
著者
佐藤 宏亮 後藤 春彦
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.66, no.547, pp.201-208, 2001-09-30 (Released:2017-02-04)
参考文献数
34
被引用文献数
1 4

The purpose of this paper is to clarify the urban forming process in the modern silk raising area from the two aspect. The first is the action of wealthy people and second is the urban space, through the analysis of the modernizing process in Honjo-machi. The results are the followings 1) In Honjo-machi, it mordernized rapidly with the change of silk raising system 2) The action of wealthy people kept pace with flow of modernization, and contributed to form the social system 3) And thier action largely affected to industrialization, Finally, the space structure was affected by the silk mill.
著者
渕田 隆史 春原 則子 今富 摂子 後藤 多可志
出版者
目白大学教育研究所
雑誌
目白大学高等教育研究 = Mejiro University Education Reseach (ISSN:21859140)
巻号頁・発行日
no.25, pp.117-125, 2019-03-31

言語聴覚士が対象者と行う会話は、ラポール形成のみならず対象者の言語症状やコミュニケーション能力の把握ならびに訓練課題として重要な意味を持つが、会話に苦手意識を持つ言語聴覚士を目指す学生は少なくない。言語聴覚学科(以下、本学科)では、学生の会話能力向上を目指したプログラムを実施し一定の成果を得ている。しかし、習得がなかなか困難な学生のいること、また、習得がしやすい側面と困難な側面のあることが明らかとなってきた。そこで今回、会話演習における評価点の高い学生と低い学生の会話特性について、聞き手役割の観点から詳細に分析した結果、成績上位群の発話ターンを中心に「あいづち+ 情報要求」パターンが抽出された。この聞き手ストラテジーの使用は「会話への積極的な関与」と「一つの話題の持続性」を示し、適切な会話展開の契機となっていた。しかし成績下位群の会話の分析から、「あいづち+ 情報要求」パターンを使用していても、質問内容が文脈上不適切であれば会話展開の契機とはならないということも示唆された。今回の分析により、会話演習における評価点の高い学生とそうでない学生との具体的な相違点が明らかとなった。
著者
米田 剛 後藤 晋
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

乱流の数理的理解を飛躍させるために、乱流モデルを一切使わずに、非圧縮Navier-Stokes方程式そのものを使った大規模数値計算、及びその数値計算結果に対する純粋数学的洞察を進める。さらに、乱流実験も進め、そのNavier-Stokes乱流の数理的洞察そのものの妥当性を検証する。より具体的には、①3次元Navier-Stokes乱流のエネルギーカスケードのメカニズム解明②流体運動が乱流であるための重要な指標であるzeroth-lawの数理的理解③乱流実験データに基づく、①および②の数理的洞察の妥当性の検証、を進める。
著者
後藤 鉄男
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.347-353, 1970-05-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
41

拡がった素粒子像の立場について, 主として剛体模型的な見地を出発点として論ずる. 古典的運動を相対論的にして量子論的に拡張していくと次第に抽象化されたものになる. 明確な定式化の鍵はpoint-like systemという理想化であり, これの一般化は無限成分方程式に導く. 無限成分方程式の形の定式化を具体的問題に応用することがどの程度考えられているかについて簡単に述べる.
著者
後藤 正己
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会北海道支部研究報告集. 構造系
巻号頁・発行日
no.57, pp.213-216, 1984-03-26

荒廃した戦後の国土復興の為、都市計画、区画整理事業の中で、安い費用、工期短縮等の中から急成長したのが曳家の技術である。しかし曳家そのものへの認識、技術等の地域さがあり鉄筋コンクリート造建造物は大都市中心に行なわれた様である。詳細は定かでないが、東京で5階建7,000トン、名古屋で8階建20,000トン等の大規模な建物が動いて意る。鉄筋コンクリート造の曳家では、建物下に移動装置の取付け段取りから移転完了据付までの同建物に応力の変化を起こさないことを原則のもとに施工しなければならない。鉄筋コンクリート造補強コンクリートブロック造、煉瓦造等では木造建物の様に基礎と切離す事が、切断による建物を傷める危険性及び補強強度の不安、又工事費の増大等の欠点があり、基礎下から持ち上げて曳家する方法が取られている。規模が大なる建物では機械に制約され、持ち上げるとジャッキが3倍、枕木が10数倍の量が必要であると、揚げ下げする時の、ジャッキ全体のバランスを保つ事が難しく、建物を痛める原因にもなる、又工期、費用も増大するので、無浮揚工法がほとんどである。実量のある大規模な曳家で一番問題があるのが、地耐力である。地耐力が充分である地盤は良いが杭等にたよっている建物は、地盤の改良、枕木等の敷詰、鉄筋コンクリートの路面等で、補強しなければ、建物の移動中に不等沈下を起こしてします。又基礎底面下約600w/mの移動装置が必要なために地下水位も考慮しなくてはならない。それでは、当社が昭和58年7月から9月にかけて施工した。(株)日鉄工営の下請で、曳家工事のみを手掛けた、室蘭日鋼記念病院看護婦業の曳家工事の概略を報告させていただきます。
著者
伊藤 正雄 細川 泰秀 後藤 将夫 真辺 純裕 向井 和男
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.116, 2008

本稿は、経営情報学会「情報システム発展史」特設研究部会ワークショップ用に作成したものである。本稿では、新日本製鐵における情報システム発展史の総括と君津製鐵所における世界初の鉄鋼生産一貫オンラインリアルタイムシステム(All On line System)について述べ、そのシステムが果たした経営への貢献、人・組織への貢献と、そこで培った経験、教訓などについて述べる。
著者
後藤 敏行
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.256-267, 2012-11

本稿は,長尾真・前国立国会図書館長の「長尾構想」を検討する。長尾構想を推進する際,予算の制約上,できる範囲で資料の一部を対象にしていくやり方と,民間企業と連携してより多くの資料を対象にするやり方の2つがあると予測する。また,パブリックドメインと推定される資料,非市販または権利者不明と判断される資料を電子化して図書館内での閲覧,利用者への有償貸出に供する場合はオプトアウトを,市販中の資料を国立国会図書館のデータベースから出版社が販売するという仕組みについてはオプトインの規定を設けるべきと提言する。
著者
櫻本 恭司 後藤 耕司 岡本 耕 貫井 陽子 畠山 修司 四柳 宏 小池 和彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.4, pp.831-833, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

Mycobacterium marinumは,皮膚に結節や潰瘍を形成し,時に深部に進展して関節炎,腱滑膜炎,骨髄炎などを来すことがある.症例はprednisolone10mgを内服中の60歳代女性.手関節の腫脹で発症し,広範な皮膚潰瘍と四肢深部膿瘍を呈した.難治性の皮膚潰瘍をみた場合,抗酸菌感染症も念頭に置く必要がある.
著者
後藤 拓也
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.75, no.7, pp.457-478, 2002-06-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
34
被引用文献数
3 2

本稿はカゴメ株式会社を事例に,食品企業が農産物流動の国際化にどのように関与しているのかを明らかにした。日本のトマト加工品輸入量は1972年以降急増し,早くから国際的な農産物流動を経験してきた.その輸入地域は,1980年代までは台湾に依存していたが,1990年代以降は著しく分散化し,空間的変化が顕著である.輸入地域の1980年代以降の変化は,基本的には原料のコスト要因に規定される傾向にある.しかし,輸入量の約50%を占めるカゴメの海外調達戦略が,輸入地域の空間的変化に大きな影響を与えていた.そこでカゴメを事例に,企業単位で海外調達のメカニズムを検討した.その結果,カゴメが1980年代以降に海外調達提携先の多元化を進め,調達地域を著しく分散化させてきたことが確認された.カゴメによる海外調達先の分散化は,調達用途の多様化,調達のリスク分散,調達の周年化を進める上で重要であり,低コスト調達のみを追求した結果ではない.事実,カゴメの調達組織では,海外産地に対し多面的な評価を行っている.一方,カゴメによる海外調達の進展は,国内調達にも大きな影響を与えた.カゴメは,自らの国内産地を輸入原料で代替困難なジュース専用産地に位置付ける必要があり,国産原料をジュース専用品種へ全面的に転換したのである.これは,カゴメが海外調達で進めてきた用途別調達,分散調達,周年調達が,国内調達と連動していることを端的に示している.