著者
西田 幸典 佐藤 啓造 藤城 雅也 根本 紀子 足立 博 岩田 浩子 米山 裕子 李 暁鵬 松山 高明 栗原 竜也 藤宮 龍祥 浅見 昇吾
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.168-182, 2018 (Released:2018-09-11)
参考文献数
27

今日の在宅看取りは,地域の診療所医師が大部分を担っているが,2040年をピークとする多死社会の看取り体制として,それが適切に機能するかの問題がある.そこで,本研究は,診療所医師の在宅看取りにおける負担軽減策として,看護師による死亡診断および死亡診断書の作成について,多死社会を担う若年層の認識を踏まえて,その是非を法医学的観点から考察するものである.研究方法は,質問紙調査(対象:医学生242名,一般学生402名)と看取り制度に関する文献調査である.質問紙調査の結果は,看護師による死亡診断について,看護師のみが死亡に立ち会う状況で是認する割合が高く,死亡診断について研修を受けて試験に合格した看護師が良いとする割合が高かった.また看護師による死亡診断書の作成について,看護師のみが死亡に立ち会う状況で是認する割合が高く,死亡診断書の作成について研修を受けて試験に合格した看護師が良いとする割合が高かった.しかし,死亡診断を是認する割合は,死亡診断書の作成を是認する割合よりも高かった.一方,医療制度改革の潮流には,①医師の働き方の見直しとしてタスク・シフティングの提案,②看護師の特定行為の創設,③地域包括ケアシステムの推進,④欧米における看護師による死亡確認の現状がある.本研究では,上記の調査結果と医療制度改革の潮流を踏まえ,診療所医師の負担軽減策の一つとして,看護師による死亡診断を,①特定行為の一つとする方法と ②保健師助産師看護師法の「診療の補助」とは別の新たな枠組みとする方法を提案する.一方,看護師による死亡診断書の作成については,原則として時期尚早と考える.しかし,診療所医師の負担軽減および死後のエンゼルケアやグリーフケアの実施の観点から,末期がん患者のような特定の患者に限定し,かつ,死亡診断書の作成プロセスの一つである異状死でないとの判断までであれば検討の余地があると考える.ただし,これを実現するためには,異状死の判断を適切に行い得る程度の知識と技術を担保できる教育システムが必要不可欠であると考える.
著者
伊豫田 旭彦 木村 秀敬 武井 悟 垣内 祥史 杜 暁冬 藤井 宗太郎 益田 義浩 枡野 大輔 宮田 一乘
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.33-44, 2006-06-20 (Released:2008-04-11)
参考文献数
11
被引用文献数
1 4

加速度センサと, のれん状スクリーンを用いた野球におけるピッチングを体感するVRアプリケーションを提案する. 従来の入力デバイスにはない, 直接かつ直感的な入力方式を開発した. 加速度センサを埋め込んだボールを用いることで, 実際のピッチングと同じ動作で変化球を投げることができる. また, 現実空間と仮想空間をシームレスにつなぐスクリーンを開発することで, プレイヤーは, 投げたボールが仮想空間に飛び込むという新感覚を体験できるようになった.
著者
郝 暁卿
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.1-19, 2014-01-08

本稿は世界記憶遺産の保存・活用に関する総合的研究という奨励交付金の報告の一部として作成したものである。いわゆる記憶遺産とは過去のものでありながら、現在の人々に常に深遠な意義を示し、影響し続ける存在でないといけないものである。その意味で他の記憶遺産と同じように『黄帝内経』もそのような存在である。本稿は中国に複数ある「世界記憶遺産」の中で『黄帝内経』に考察の焦点を当てて、その現代的な意義を考えた。また、それと同時にその背景にある中国文化の要素も改めて吟味しようとした。結論の一つとして、『黄帝内経』は中医学の基礎理論を確立しただけではなく、その魅力と価値はまた病気治療と養生保健の実用性及び中国伝統文化の特殊な思惟方式にあるということである。
著者
石郷 友之 髙田 遼 近藤 蕗 伊部 裕太 中野 敬太 立石 莉穂 藤居 賢 片野 唆敏 北川 学 木明 智子 中田 浩雅 橋本 暁佳 宮本 篤
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.140, no.8, pp.1041-1049, 2020-08-01 (Released:2020-08-01)
参考文献数
47
被引用文献数
3

Sedative hypnotics are among the classes of drugs reported to influence falls. However, the effects of the sedative hypnotic drugs, suvorexant and ramelteon, on falls are not well known. Therefore, we conducted this retrospective case-control study to examine the association of the use of these two sedative hypnotics with the risk of falls. Conducted at the Sapporo Medical University Hospital in Japan, our study included 360 patients with fall incidents and 819 randomly selected control patients. Patients in the fall group were significantly older with a lower body mass index, and had a history of falls, disabilities in activities of daily living, cognitive impairment, and delirium. Monovariate analysis revealed that patients in the fall group frequently used ramelteon [odds ratio (OR) 2.38, 95% confidence interval (CI): 1.49-3.81, p<0.001], but rarely used suvorexant (OR 0.66, 95% CI: 0.29-1.39, p=0.317), compared with control patients. Furthermore, multivariate analysis revealed that ramelteon use did not increase the risk of falls (adjusted OR 1.43, 95% CI: 0.82-2.48, p=0.207), whereas suvorexant use significantly decreased the risk of falls (adjusted OR 0.32, 95% CI: 0.13-0.76, p=0.009). Although ramelteon tends to be used in patients at a high risk of falls, it may not increase the risk of falls. In contrast, the use of suvorexant may reduce the risk of falls.
著者
河端 由佳 狩野 俊幸 浅見 暁子 古田 淳一
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.1926-1929, 2016-12-01

61歳女性。15年前より躯幹や四肢にそう痒を伴う紅色丘疹が出現し、春と夏には掌蹠にそう痒さを伴う漿液性丘疹が出現するようになった。受診時、汗疱状湿疹が遷延する臨床像と大豆の多量摂取歴から全身型金属アレルギーが疑われた。金属パッチテストでは亜鉛と白金が+?(ICDRG基準)であった。多量に摂取していた大豆を1ヵ月間制限したところ、掌蹠や躯幹、四肢の皮疹は軽快した。軽快後、ポラプレジンクの内服による亜鉛負荷試験を実施したところ、亜鉛による全身型金属アレルギーと診断された。管理栄養士の協力を得て、亜鉛摂取を控えるよう指導し、皮疹は寛解した。
著者
鄭 暁紅
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3+, pp.110, 2018-05-01 (Released:2018-07-17)
参考文献数
2

中国ミャオ族の歴史の中,色彩の応用は極めて複雑である.その色彩は記号化され,視覚から意味の多重化までなっている.本論文はシンボル学から,中国ミャオ族色彩を記号として応用する意味を研究する.論文の論理の成立は,ミャオ族の伝統的な色彩に基づいて非常に複雑な記号的な状態を備えている.視学から,ミャオ族の伝統色はあまりにも複雑な表示方式で,歴史を感知次元で,その複雑さは絶えず変化し,最も直接的な身体体験から,微妙な感情体験まで,その記号の表示方式が固定していない.シンボル学の角度から,ミャオ族の伝統色彩が異なる歴史条件の下で,その色彩の感知を考察し,複雑な歴史の霧の中で,相対的にはっきりした伝統色彩の変化道を見つけることができる.ミャオ族服装の色彩は,その伝統文化のなかに特殊な存在である,その色彩象徴の変化プロセスは,ミャオ族色彩の歴史変化の普遍的な意味を持っている,ミャオ族伝統色の秘密を開ける鍵を見つけることができるかもしれない.本論文の研究重点は,ミャオ族服装色の記号的意味を研究し,視覚から中国ミャオ族伝統色彩の多重変身の鍵を研究し,その色彩意義と象徴を解読し,有効的な応用方法を探る.
著者
岡本 依子 菅野 幸恵 東海林 麗香 高橋 千枝 八木下(川田) 暁子 青木 弥生 石川 あゆち 亀井 美弥子 川田 学 須田 治
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.23-37, 2014 (Released:2016-03-20)
参考文献数
37
被引用文献数
1

親はまだしゃべらない乳児と,どのようにやりとりができるのだろうか。本研究は,前言語期の親子コミュニケーションにおける代弁の月齢変化とその機能について検討するため,生後0~15ヶ月の乳児と母親とのやりとりについて,代弁の量的および質的分析,および,非代弁についての質的分析を行った。その結果,代弁は,「促進」や「消極的な方向付け」,「時間埋め」,「親自身の場の認識化」といった12カテゴリーに該当する機能が見いだされた。それらは,「子どもに合わせた代弁」や「子どもを方向付ける代弁」,および,「状況へのはたらきかけとしての代弁」や「親の解釈補助としての代弁」としてまとめられ,そこから,代弁は子どものために用いられるだけでなく,親のためにも用いられていることがわかった。また,代弁の月齢変化についての考察から,(1)0~3ヶ月;代弁を試行錯誤しながら用いられ,徐々に増える期間,(2)6~9ヶ月;代弁が子どもの意図の発達に応じて機能が限られてくる期間,(3)12~15ヶ月;代弁が用いられることは減るが,特化された場面では用いられる期間の,3つで捉えられることが示唆された。そのうえで,代弁を介した文化的声の外化と内化のプロセスについて議論を試みた。
著者
岩崎 恵 庄古 知久 安達 朋宏 内山 まり子 加藤 開 谷澤 秀 中本 礼良 吉川 和秀 小島 光暁
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.403-408, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
6

背景:COVID-19蔓延期の災害対応において,病院クラスター発生は病院機能停止を伴う大きなリスクである。感染者が含まれる多数傷病者受入方法を平時から検討しておく必要がある。目的:大規模災害発生時の多数傷病者受入に伴うCOVID-19クラスター発生の防止。 方法:防災訓練ワーキンググループにてCOVID-19蔓延期の災害対応を検討し,大規模災害発生時の多数傷病者受入方法とPCR検査を施行不能な場合に行う入院時のCOVID-19感染リスク分類のためのトリアージ法を策定する。結果:従来の二次トリアージに加えCOVID-19のリスク評価を行い,以下の4段階に分類するCOVIDトリアージを開発した。カテゴリーⅠ(紺)は発災前PCR陽性または抗原陽性,Ⅱ(紫):はCOVID-19の可能性が高い,Ⅲ(ピンク)はCOVID-19の可能性が低い,Ⅳ(白)は発災前PCR陰性とした。結語:災害拠点病院は潜在的なCOVID-19患者を受け入れるために従来のトリアージに加え,感染リスク別の入室カテゴリーを策定し,後日陽性者が判明した場合でも被害を最小限にする対策を準備しておく必要がある。
著者
向居 暁
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.143, 2015 (Released:2015-10-21)

「運命の出会い」という言葉は日常生活でよく聞く言葉である。本研究では、女子大学生を調査対象にし、初対面の異性と出会う仮想場面を設定し、その人物の外見的魅力、および、出会い状況の偶然性を操作することで、「運命の出会い」と感じる傾向に差異がみられるのかについて検討した。その結果、1つの仮想場面のみであるが、外見的魅力の高い人ほど、その出会いが運命だと感じられ、内面的魅力が高く、好意的に感じられることがわかった。また、外見的魅力が低い人において、偶然性は、運命度を高めないまでも、内面的魅力と好意度を上昇させることがわかった。
著者
久米 暁
出版者
京都大学哲学論叢刊行会
雑誌
哲学論叢 (ISSN:0914143X)
巻号頁・発行日
no.39, pp.27-45, 2012
著者
小関 弘展 米倉 暁彦 野口 智恵子 中添 悠介 砂川 伸也 松村 海 渡部 果歩 水上 諭 尾﨑 誠
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.933-938, 2020-08-25

目的:非接触型前十字靱帯(anterior cruciate ligament:ACL)損傷の骨解剖学的リスク因子を抽出することである. 対象と方法:初回非接触型ACL損傷患者33例33膝(ACL群)と健常者26例26膝(対照群)の下肢荷重位X線像から下肢前額面アライメントと骨形態を計測した. 結果:ACL群では対照群よりも静的下肢アライメントが外反しており,脛骨近位内側角と大腿骨遠位外側角が影響していた. まとめ:荷重位下肢アライメントが外反するほど膝関節への外反トルクが強くなるため,ACLに応力が集中して靱帯損傷に至る危険性が高くなると考えられる.
著者
湯澤 美紀 湯澤 正通 齊藤 智 河村 暁
出版者
ノートルダム清心女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,学習に困難を抱える子どもの読み書きに関する能力の向上を目指し,ワーキングメモリならびに音韻認識に着目した学習支援の研究を行った。まず,個人のワーキングメモリのプロフィールを測定するために,オートメーティッド・ワーキングメモリ・アセスメント(以下AWMA)の日本語版を作成した(2009年)。次に, AWMAを用い,特別支援学級に所属する児童10名のワーキングメモリのプロフィールを測定した(2010年)。次に,英語の活動を週1回, 14カ月(2010年~2011年)の長期にわたって実施した。学習支援プログラムについては, (1)ワーキングメモリの小ささに由来するエラーの軽減(2)ワーキングメモリプロフィールに応じた支援(3)音韻認識に着目したプログラム内容を目指し,構成した。結果,子どもたちの英語の音韻認識に向上が見られ,最終的には,英語の読み能力を身につけ,主体的に学習に取り組む姿が見られた。