著者
仙波 由加里 柘植 あづみ 長沖 暁子 清水 きよみ 日下 和代
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.147-153, 2006-09-25
参考文献数
17

2003年、厚生科学審議会生殖補助医療部会の「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書」の中では、提供された精子・卵子・胚を利用した生殖補助医療(DC)で生まれた子の福祉を尊重するという姿勢から、DCで生まれた人たちに提供者を特定できる情報をも提供するという方針が提示された。そこでDCの中でも、すでに生まれた人が成人し、自らの経験を語ることが可能なAIDに注目し、この技術で生まれた者5名を対象にインタビューを実施して、彼らがどのような提供者情報を望んでいるかを考察した。結論としては、AIDで生まれた人たちは提供者の氏名や住所、社会的情報や医学的情報のみならず、精子提供者のそれまでの人生や生き方、現在の生活、嗜好、考え方などを含む人間性や人柄を知ることを強く望んでいることがわかった。こうした点から法の中では、将来DCで生まれてきた人たちがその提供者と会うことを前提とした措置についても講ずるべきだと考える。
著者
土井 信幸 小見 暁子 池永 啓介 大塚 穂乃香 秋山 滋男
出版者
日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
雑誌
アプライド・セラピューティクス (ISSN:18844278)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.77-90, 2021 (Released:2021-12-03)
参考文献数
23

一般用医薬品において酸化マグネシウムは瀉下薬の主成分、さらに、解熱鎮痛薬の吸収促進剤に含まれている。酸化マグネシウム製剤は高マグネシウム血症による健康被害や死亡例が報告されており、それに伴う医薬品安全性情報が発出されている。本研究は、酸化マグネシウムを含有した一般用医薬品による高マグネシウム血症発症後の重篤な副作用の回避を目的とし、薬剤師や登録販売者が販売する際の、考慮すべき患者背景と適正使用に関する情報提供内容のエビデンスの構築について検討した。 添付文書の調査の結果、瀉下薬かつ第3類医薬品の酸化マグネシウムの1日最大用量は医療用医薬品とほぼ同じ約2,000 mgであった。また、すべての商品で添付資料(患者説明書)に腎機能に応じた投与量の規定は定められていなかった。JADERの解析結果から、60代以上では高マグネシウム血症発症後の転帰死亡の割合は約2倍高かった。また、メタアナリシスからは、腎機能低下(CKDステージG3b以上)の患者では酸化マグネシウムの服用による高マグネシウム血症発症リスクが高いことが示された(RR[95% CI]: 3.14 [1.56-7.45])。 以上の結果より、薬剤師や登録販売者が酸化マグネシウム含有の一般用医薬品の販売時に、医療用医薬品の服薬有無や年齢や腎機能などの患者背景を確認すること、さらに、購入者に対して高マグネシウム血症の初期症状とその対応についての情報提供をすることが重要であると考える。
著者
佐藤 暁
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.62, pp.253-266_L15, 2011 (Released:2011-12-09)
参考文献数
9

Inquiry into the theory of meaning (hereafter refered to as “inquiry”) is a new method of inquiry in the philosophy of language proposed in the 1960s. It was considered new in terms of both its subject and method. In this paper, we identify the subject and method of Dummett's analysis, as he advocated his anti-realist theory of meaning. For Dummett, inquiry is the analysis of the ability that a person who can speak a language actually has, that is, a practical ability to speak a particular language. The ability to speak a language is not the ability to speak sentences or a set of such abilities, because one learns to speak a language not by memorizing sentences or their use. An analysis of the ability to speak a language is parallel to that of an ability to cook a particular dish. Dummett says a theory of meaning is a description of linguistic ability.However, it is not clear how we can philosophically “describe” an unobservable ability that is distinguished from any observable act. In justifying his project, Dummett asserts that practical abilities can be classified as knowledge or nonknowledge. The former abilities, being knowledge themselves, have propositions the knowledge of which translates to the ability itself. These propositions are not a description of the ability from the outside but an “internal description” of such an ability. The propositions themselves are components of an ability, and abilities can be philosophically analyzed by clarifying these propositions. Dummett states that the abilities to speak a language and cook a dish are both knowledge.In cooking, the recipe of a dish is an internal description of the ability to cook the dish. Therefore, we can clarify propositions corresponding to a recipe in cooking as an analysis of linguistic ability. Clarifying such propositions is inquiry, and the propositions constitute a theory of meaning for language.
著者
久保 暁子 山本 清龍 中村 和彦 下村 彰男
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.33(2019年度 環境情報科学研究発表大会)
巻号頁・発行日
pp.181-186, 2019-11-25 (Released:2019-11-22)
参考文献数
9

本研究では,ストレス軽減のためデジタル機器から一定期間離れる取り組みであるデジタルデトックスの基盤的な研究を企図して,①回答者の属性とデジタル機器の使用状況,デジタル機器の依存性を把握し,それらの関係性を明らかにすること,②平日・休日の過ごし方,デジタルデトックスへの意向を把握し,デジタルデトックスの可能性を考察すること,の2点を目的とした。その結果,約半数の学生がデジタル機器を4時間以上使用し,一部の学生は機器の使用によって学生生活に問題を抱えていた。学生の意向をふまえれば,日常の機器使用制限や自然豊かな場所への外出はデジタルデトックスに有効と考えられた。
著者
宮尾 暁 久保田 有一 梛野 尚人 江川 悟史 中本 英俊 福地 聡子 川俣 貴一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.466-470, 2021 (Released:2021-07-30)
参考文献数
9
被引用文献数
1

てんかん診療における不整脈の出現は突然死へとつながる可能性を有する.今回,致死性不整脈から心停止に陥り蘇生した1例を経験し,外来,急変前後,蘇生後,回復期まで,経時的な心電図変化を捉えた.心電図の経時的変化では,QT延長やブルガダ型波形が確認された.心電図変化を誘発する可能性を持つNaチャネル遮断薬,向精神薬との薬理作用,及び薬物動態的相互作用の認識の重要性に注目し,てんかん診療における心電図の重要性を強調した.
著者
菊地 暁
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文學報 (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
no.117, pp.157-158, 2021-05-31

<書評特集>菊地暁・佐藤守弘編『学校で地域を紡ぐ --『北白川こども風土記』から--』本特集の書評者は,2020年6月25日から7月16日に4週連続で開催されたオンライントークイベント『学校で地域を紡ぐ --『北白川こども風土記』から--』にコメンテイターとして御登壇いただいた諸氏に若干名を加えたものである。

3 0 0 0 OA 河鍋暁斎粉本

著者
惺々暁斎 [筆]
出版者
[ ]
巻号頁・発行日
vol.[5], 1800
著者
田島 暁雄
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1172-1177, 2015-11-15

本稿はDomain Specific Language(DSL)構築用プログラミング言語としてのRubyについて実例を含めて解説したものである.最初のパートではDSLについて歴史と情報システムにおける役割を明らかにする.続くパートでRubyが持つDSLの実装に向いたプログラミング言語の特性について実例を交えて解説する.
著者
劉 暁苹
出版者
北海道大学文学研究科
雑誌
研究論集 (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.179-194, 2016-01-15

日本語では,未完結の形を通して表現することによって,様々な伝達の効果を目指すストラテジーの一つである未完結の発話が選好されている。本稿は,形式上は未完結でありながら,意味機能が完結しているような従属節のみで終わる発話を言いさし文と定義し,新たな構文としての言いさし文の形成過程と構文特徴を明確にする。 まず,先行研究に基づき,従属節のみで終わる発話の用語を整理した上で,言いさし文という表現の使用を規定し,その定義づけを行う。そして,構文形成の要因によって,言いさし文を「意味論的な省略による言いさし文」「語用論的な省略による言いさし文」「付加による言いさし文」の三種類に分けた上で,本稿の考察対象を「意味論的な省略による言いさし文」に限定する。 最後に,意味論的な省略による言いさし文は,表現の慣習化や文法化によって生まれたものが多いので,典型的な定型表現の例として,「なければならない/なくてはならない」の省略による「なきゃ/なくちゃ」言いさし文,「ないとならない/いけない/だめだ/困る」の省略による「ないと」言いさし文,「たら/ばどう」・「たらどうしよう」・「たら/ばよかった/いいのに」の省略による「たら/ば」言いさし文,「って言った/聞いた」の省略による「って」言いさし文を詳しく考察する。
著者
太田 智子 松崎 浩之 児玉 浩子 寺田 宙 野村 恭子 太田 裕二 王 暁水 飯田 素代 日比野 有希
出版者
公益財団法人日本分析センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

東京電力福島第一原子力発電所事故後、国民の間に放射性物質への不安が広がった。中でも放射性ヨウ素については甲状腺がんとの因果関係が心配され、特に感受性の高い乳児についての影響が懸念されている。本研究では乳児の主たる栄養源の母乳を対象に、数種類存在する放射性ヨウ素のうち半減期が最も長いヨウ素129(1570万年)の分析を実施した。母乳は脂肪分が多いため分析することが難しく、母乳中のヨウ素129を分析した例はない。今回、母乳中のヨウ素を分析する手法を確立し、健康な母親から採取した母乳中のヨウ素129を分析しバックグラウンドを把握すると共に、データを基に乳児の母乳摂取による内部被ばく線量評価を試みた。
著者
向居 暁
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第15回大会
巻号頁・発行日
pp.131, 2017 (Released:2017-10-16)

本研究の目的は、県の形と県名の対連合学習において,奇異性・新奇性の高いと考えられる県の形のイラストの有効性を検討することであった。その結果,県の形と県名の対連合学習において、奇異性・新奇性の高い県の形のイラストは、県名の学習に効果的であるとはいえないどころか、逆効果であることがわかった。この結果は,都道府県の形のイラスト化によって県名の記憶の促進効果を見いだせなかった向居(2016,教心発表)と一致したものであった。
著者
松永 暁子 貝沼 圭二
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.32, no.9, pp.653-659, 1981-10-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
25
被引用文献数
5

1) β-アミラーゼ-プルラナーゼ法により澱粉糊, および米飯の糊化度を測定した.2) 本法では糊化澱粉と生澱粉, 老化澱粉の分解率の差が大きいため, 従来法に比較し, 初期の老化から測定することが可能であった.3) 5%コーンスターチの場合, 低温保存による老化の進行は5%米澱粉に比べ速やかで特に冷凍保存の老化は顕著であった.4) 米飯の老化は保存条件によって異なり, 冷蔵 (5℃) >室温 (20℃) >冷凍 (-18℃) >電子ジャー (70℃) の順で進行した.とくに冷凍米飯の糊化度は長く安定で, 適切な凍結, 解凍方法を用いれば米飯保存として最適と考えられる.
著者
水野 史暁 鈴木 謙太 小林 玲羽
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.426-429, 2019-09-13

本研究はバーテンダーのカクテルシェイク動作を遠隔地に伝えられるシステム:VRShakerを開発し,実際にバーへ赴くことなく3D空間内でアバターを介して他の人と飲用体験を共にできるコンテンツの開発を行った.メタバースにおいて,バーテンダーのカクテルシェイカーのシェイク動作をトラッキングしVRShakerが動きに追従することで,自宅にいながら,遠く離れたバーに来ているような体験を提示すると共に,他の人に作ってもらったカクテルも味わう事ができる.
著者
張 仲葛 李 錦〓 張 暁嵐
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1-10, 1993-03-15 (Released:2011-06-08)
参考文献数
11
被引用文献数
2 1

Pig raising has a long history in China. As early as about 6000-9000 years ago, local wild boars had been domesticated by the Chinese. The ancient Chinese people also paid great attention to selective breeding. In the Han Dynasty the superiority of Chinese pigs were known at home and abroad. During the Han Dynasty the small-ear pig in Southern China was introduced into Dachin Country (Roman Empire) to be bred into the ancient Roman pig. Up to the seventeenth and eighteenth centuries, the Chinese pig (Guangdong pig varietry) was introduced into the western countries such as the Great Britain and the USA. Since then it played an important role in the improvement of pig varieties in these countries.In recent years, due to the shortage of pig variety resources, some countries with developed pig industry have paid great attention to the Chinese pig varieties with high reproductivity and introduced them for crossbreeding. The results have been encouraging. And researches have been carried out in France, Britain, Japan and the Netherlands using Chines pigs to improve the reproductivity of pig varieties in these countries.World wide attension has been focused on the excellent characters of Chinese pigs and the breeding and management technology. They are the precious wealth of the whole mankind. We are thus expecting a glorious future.
著者
田中 暁生 船橋 新太郎
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.91-105, 2007-12-20 (Released:2009-03-13)
参考文献数
36
被引用文献数
1

Metamemory refers to the knowledge about one's own memory capabilities and mnemonic strategies that support efficient learning and memory, and/or to the awareness and recognition about on-going mnemonic processes as well as what is stored in memory. Psychological studies established experimental methods to investigate the accuracy of human metamnemonic judgments and demonstrated that humans were capable of monitoring their own memory accurately. Recently, a number of neuropsychological as well as neuroimaging studies have indicated that the prefrontal cortex plays a crucial role in metamemory. Meanwhile there have been growing interests in exploring metacognitive abilities in animals. These lines of studies have developed new experimental paradigms suitable for systematically investigating the capability of animals' metamemory. In this article, we first briefly review previous studies on metamemory in humans and animals. Based on the findings from these studies, we then discuss strategies for examining neuronal substrates of metamemory in monkeys through neurophysiological approaches.