著者
家坂 利清 井上 浩 木村 茂
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.449-456, 1987

人工妊娠中絶術後に出現する子宮内膜再生細胞について, 性ホルモン投与後の形態変化を観察した (109例).全体を無処置群, プロゲステロン投与群, エストロゲン投与群の3群にわけ, 術後2~3日と6~8日に内膜細胞診を施行した.主として核分裂細胞と巨細胞の出現率という観点から, これらの検体を分析し, 以下の結論を得た.<BR>1. プロゲステロンやエストロゲンは再生細胞の出現率には影響は及ぼさなかった.<BR>2. だがプロゲステロンもエストロゲンも再生細胞の分裂能を低下させた.特にエストロゲンの作用は著明であった.<BR>3. エストロゲンには再生細胞を小型化し, 成熟を抑制する作用もある.プロゲステロンにはこの効果は明らかでなかった.<BR>これらの作用が生体内においていかなる役割を果たすか, 詳細な意義は不明である.しかし成熟内膜が両ホルモンにより発育を制御されるのと異なって, この場合両者の作用とも抑制的であることから, 細胞増殖を基盤とした内膜の再生は内分泌因子だけでは解釈しにくい.また同じ内膜とはいえ, 成熟腺細胞と未熟な再生細胞では, エストロゲンに対する応答が異なる事実も興味深い.
著者
寺本 昌弘 曽根 岳大 高田 耕平 小縣 開 齋藤 啓太 和泉 拓野 高野 昂佑 長尾 茂輝 岡田 陽介 田地 規朗 河村 俊邦 加藤 章一郎 前川 隆彰 小林 彩香 小林 真一 佐藤 謙 木村 文彦
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.598-604, 2020 (Released:2020-07-03)
参考文献数
18

2011年1月から2018年2月までに再発indolent B-cell lymphomaに対し,当科で施行したrituximab併用bendamustine(BR)療法の治療成績を後方視的に解析した。病型は濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma, FL)42例(67%)が多く,FL症例で治療を完遂した群の無増悪生存期間(progression free survival, PFS)の中央値は未到達であった。また治療開始から5年間のCD4陽性T細胞数を解析したところ,長期にわたり200/µl前後を推移する症例が多かった。BR療法は再発indolent B-cell lymphomaに対し有用な治療であり,特にFLにおいてはBR療法を完遂することがPFSの改善に重要である。また治療後は細胞性免疫不全が顕在化するため,5年程度は感染症の発症に注意するべきかもしれない。
著者
馬 寧 杜若 大樹 山田 泰己 柴田 史久 木村 朝子
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.93-94, 2019-02-28

本研究は仮想物体の色彩刺激が実物体の硬軟感に与える影響を分析することを目的とする.具体的には,仮想物体の明度,色相,彩度を変えることで,実物体の硬さ知覚にどのような錯覚が起きるかを実験,分析した.実験では,実物体の下部に感圧センサを設置し,体験者が実物体を押下することで,その圧力に応じてHead Mounted Display上に提示された仮想物体が変形する.既存研究では,赤色のような暖色は軟らかく,青色のような寒色は硬く知覚され,明度が高いほど軟らかく知覚するといわれていた.しかし,本実験を通して,人間が知覚する明るさが硬軟感に影響を与えていることが示唆された.
著者
安田 榮一 木村 脩七
出版者
炭素材料学会
雑誌
炭素 (ISSN:03715345)
巻号頁・発行日
vol.1983, no.115, pp.196-208, 1983-11-01 (Released:2010-06-28)
参考文献数
108
被引用文献数
1 2
著者
清水 俊幸 石畑 宏明 飯野 秀之 木村 雅春
雑誌
情報処理学会研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.72(1993-HPC-048), pp.17-24, 1993-08-19

並列計算機AP1000の数値演算アクセラレータオプション(A:Numerical Computation Accelerat) を開発した.NCAによりAP1000のプロセッサエレメント () にベクトル処理機構を付加し,計算能力を高めた.NCAでは,ベクトル演算器とスカラ演算器の間にコマンドFIFOと呼ぶバッファを設け,ベクトル処理とスカラ処理のオーバラップを可能とした.オーバラップによりベクトル演算器とスカラ演算器の処理速度の差に起因する演算器の利用率の低下を防ぎ,トータルな処理時間の短縮を実現した.NCAのアーキテクチャと基本性能,並列処理性能について述べる.
著者
坂西 梓里 谷川 力 木村 悟朗 佐々木 健 川上 泰
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.171-176, 2018-12-25 (Released:2019-01-25)
参考文献数
37
被引用文献数
1 6

A survey of the helminth infection in brown rats (Rattus norvegicus) captured in 2017 at Chuo Ward, Tokyo, was carried out. Of the 20 rats examined, 13 (65%) were infected with helminths. The prevalence of helminths was as follows: Capillaria hepatica (35%), cysticerci of Taenia taeniaeformis (20%), Nippostrongylus brasiliensis (20%), Orientostrongylus ezoensis (20%), Heterakis spumosa (20%), Dioctophyma renale (15%), Vampirolepis nana (5%). The helminths were identified based on morphological features, and molecular analyses of the nuclear 18S ribosomal DNA, ITS region, and mitochondrial 12S ribosomal DNA sequences. From the standpoint of public health, it should be noted that 4 helminth species, namely C. hepatica, T. taeniaeformis, D. renale, V. nana were capable of infecting humans. In addition, C. hepatica and V. nana can be accidentally transmitted to humans by direct ingestion of embryonated eggs from rat feces. This is the third confirmed report of D. renale from R. norvegicus in Japan. A total of 11 worms were recovered from the abdominal cavities of 3 brown rats. In this rare case, we describe the morphological features of the adult worms and eggs and determined the 18S ribosomal DNA sequence of D. renale.
著者
山縣 恵美 渡邊 裕也 木村 みさか 桝本 妙子 杉原 百合子 小松 光代 岡山 寧子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.369-379, 2020-06-15 (Released:2020-07-02)
参考文献数
33

目的 高齢者の閉じこもり予防および改善の支援に向けて,地域在住自立高齢者を対象とした体力測定会に参加した者の2年間の閉じこもりに関する状態の変化とその関連要因を明らかにすることを目的とした。方法 亀岡市10地区の高齢者6,696人に対し2011年7月に日常生活圏域ニーズ調査(以下,ベースライン調査)を実施し,その回答者に2012年3~4月に体力測定会を開催し1,379人が参加した。この1,379人に対し2013年9月に再度体力測定会の案内を郵送し,参加を希望した638人に質問紙調査(以下,追跡調査)を実施した。本研究の対象者は,両調査で閉じこもり関連項目に回答した522人とした。分析には,ベースライン調査より基本属性,日常生活状況,健康状態,基本チェックリスト,生活機能に関する項目を,追跡調査より閉じこもりに関する項目を用いた。閉じこもりは,基本チェックリストの2項目のうち,1項目以上該当したか否かで評価した。両調査から,1) 非閉じこもりであった者が,そのまま非閉じこもり(非閉じこもり維持群)であったか,閉じこもり項目に該当(閉じこもり移行群)したか,2) 閉じこもり項目該当者が,それを改善(閉じこもり改善群)したか,そのまま(閉じこもり継続群)であったかで対象者を分類した。各群の特性を比較後,ロジスティック回帰分析を行い,閉じこもりに関する状態の変化に関連する要因を明らかにした。結果 ベースライン調査で非閉じこもりであった375人中,非閉じこもり維持群が326人(86.9%),閉じこもり移行群が49人(13.1%)であった。また,閉じこもり項目に該当した147人中,閉じこもり改善群が85人(57.8%),閉じこもり継続群が62人(42.2%)であった。2年後に新たに閉じこもり項目に該当する要因として,社会的役割が低いこと(OR=1.481,CI=1.003-2.185)が,閉じこもり改善の要因として,治療疾患がないこと(OR=14.340,CI=1.345-152.944),知的能動性が高いこと(OR=2.643,CI=1.378-5.069)が選択された。結論 2年間の縦断研究より,非閉じこもりであっても社会的役割の乏しい高齢者への支援の必要性が,また,閉じこもり項目該当者に対しては,治療疾患,知的能動性を考慮した支援の必要性が示唆された。
著者
木村 佐千子
雑誌
獨協大学ドイツ学研究 = Dokkyo Universität Germanistische Forschungsbeiträge (ISSN:03899799)
巻号頁・発行日
no.53, pp.1-37, 2005-03

In diesem Beitrag wird die Entstehungsgeschichte der Nationalhymnen der deutschsprachigen Länder (Deutschland, Österreich, der Schweiz und Liechtenstein) sowie der europäischen Hymne dargestellt. Texte (mit Übersetzung ins Japanische) und Noten sind beigegeben.
著者
井下 智加 平林 純 加藤 成樹 木村 純子
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.225-230, 2018-04-10 (Released:2018-04-13)
参考文献数
8

質感は,光沢感,立体感,凹凸感,透明感など,人が材質に対して感じる視覚的,触覚的な感覚を指す.貴重な文化財を眺める時であれば,そうした質感情報を通じて,強い印象や豊かな満足を人は得る.近年,印刷やCG技術が大きく向上し,質感表現を活用したビジネスが創出され始めている.我々は,従来の色のみを扱う画像の世界から,質感情報を応用した領域へ技術開発やビジネス展開を進めようとしている.本稿では,文化財保存·高品質複製を踏まえた質感再現技術を紹介するとともに,質感の定量測定を容易に行うことができる「質感測定器·表面反射アナライザー」について紹介する.
著者
溝畑 剣城 谷川 英二 竹田 秀信 松尾 耐志 奥野 修一 平瀬 健吾 増田 幸隆 福井 学 木村 智 Kenjo Mizohata Eiji Tanigawa Hidenobu Takeda Taishi Matsuo Syuichi Okuno Kengo Hirase Yukitaka Masuda Manabu Fukui Satoshi Kimura 藍野学院短期大学看護学科 藍野学院短期大学看護学科 藍野学院短期大学看護学科 藍野学院短期大学看護学科 藍野学院短期大学看護学科 藍野学院短期大学看護学科 藍野学院短期大学看護学科 藍野学院短期大学看護学科 藍野学院短期大学看護学科 Department of Nursing Aino Gakuin College Department of Nursing Aino Gakuin College Department of Nursing Aino Gakuin College Department of Nursing Aino Gakuin College Department of Nursing Aino Gakuin College Department of Nursing Aino Gakuin College Department of Nursing Aino Gakuin College Department of Nursing Aino Gakuin College Department of Nursing Aino Gakuin College
雑誌
藍野学院紀要 = Bulletin of Aino Gakuin (ISSN:09186263)
巻号頁・発行日
vol.20, 2007-03-31

これは,3歳のMr.Rが両親の離婚で「父親」に見捨てられ,19年後,自ら求めて再会した抑圧的な父親に思いの丈を突きつけた,直面化と長引いたエディプス・コンプレックスの自覚,克服の物語である。5歳以後,母は再婚し「義父」と彼の連れ子の義兄,母が産んだ異父弟との生活で,Rは居場所を失った。7歳時,交通事故はそんな状況で起こった。現場に急行した警官に「理想の父」を見てRは救われた。そして24歳で結婚,26歳の12月長男誕生の予定である。しかし口唇裂の長男を堕胎するか否かでRは苦悩する。「妻の父」への報告も躊躇した。通常業務に,通信大学履修,論文作成,三種の仕事と第一子堕胎の決断を迫る,苦悶の極みに,父親を殺したいと思うまでにRはなった。だが「論文指導教授」が精神分析医Dr.Jで,RはJに精神療法を希求した。僅か9回,4ヶ月の面接での回復は,基本的信頼感がほぼ達成されたことを暗示している。
著者
木村 崇是 若林 茂則
出版者
日本第二言語習得学会
雑誌
Second Language (ISSN:1347278X)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.89-103, 2019 (Released:2020-02-05)
参考文献数
35

Tom ate an apple/applesという文において,目的語がもつ数素性や定性に応じて,動詞句によって表される事象の(非)完結性が決定される.本稿では,そういった文がもつ完結性の解釈を通して,冠詞などの語彙項目および数,定性などの形式素性の第二言語習得について,母語からの転移や意味・語用的計算などの観点から考察する.これまでの研究で,the applesのような定複数名詞を目的語として取る場合の完結性の解釈が困難であることが知られてきた(Kaku, 2009; Kimura, 2014; Wakabayashi & Kimura, 2018).また,初級学習者は(非)完結性解釈の際,数素性や定性の違いをうまく計算に取り込めないことも示されてきた(Kimura, 2014; Wakabayashi & Kimura, 2018).その原因として,先行研究では,定複数名詞句の計算の複雑性や発達中の中間言語における機能範疇の欠落などが提案されてきた.本稿では,これらの研究の問題点を指摘し,代案となる,以下の説明を提示する.すなわち,完結性は語用論的知識に基づいて尺度含意(scalar implicature)によって計算される(Filip, 2008)ため,語用論的知識の使用が難しい初級学習者にとっては,この尺度含意の計算が実行できず,その結果,表面的には形式素性が形態統語の計算にうまく取り込まれていないように見える.また,中級学習者になれば,尺度含意計算に基づく完結性の計算は行われるが,定冠詞theで示され,数が複数(plural)である名詞句の完結性解釈に問題が残る.これは,学習者の母語には,形式素性「定(definite)」を表すtheと同等の語彙項目が存在しないため,尺度含意の計算の基となる定冠詞the の習得が難しいためである.
著者
当目 雅代 上野 範子 木村 みさか
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.5_9-5_21, 1999-12-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
28

看護職における社会資源の認知度とそれらに及ぼす要因を検討することを目的として,病院勤務者を対象とした調査を行った。 そして,性,年齢の明らかな2,651名データから,1)認知度が高率だったのは,デイサービス・ショトステイ・高額療養費,傷病手当金制度で,低率だったのはライトハウス・更生医療・在宅介護支援センター・老人日常生活給付事業であった。2)勤務先に医療相談室のある者はない者に比べ,小児慢性特定疾患・ライトハウスの認知度が高率であった。 3)訪問看護制度のある者はない者に比べ,ホームヘルパー・デイサービス・ショートステイ・在宅介護支援センターの認知度が高率であった。 4)入院経験のある者はない者より高額療養費・補装具交付修理・身体障害者運賃割引制度の認知度が高率であった。 5)福祉体験・学習経験のある者はない者に比べ,すべての社会資源の認知度が高く,特に,ホームヘルパー・デイサービス・ショートステイ・在宅介護支援センターに関する認知度は50%を越えていた。 以上より,病院に勤務する看護職での社会資源の認知度は,福祉に関する体験や学習経験,あるいは家族を含む入院経験などの個人的要因に加え,勤務先での医療相談室や訪問看護制度の有無など,環境要因の影響を受けていることが示唆された。