著者
杉浦 清彦 高田 肇
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.7-14, 1998-02-25
参考文献数
25
被引用文献数
1 23

ダンダラテントウ(以下ダンダラと略記)の被食者としての適性を,ワタアブラムシ,マメアブラムシ,モモアカアブラムシ,ムギヒゲナガアブラムシ,ジャガイモヒゲナガアブラムシ,ヘクソカズラヒゲナガアブラムシおよびエンドウヒゲナガアブラムシの7種について,15L-9D, 18&deg;Cにおける産卵から羽化までの発育期間と生存率,蛹重,産卵前期間ならびに羽化後10日間の産卵数を指標として検討した.比較対象としてナミテントウ(以下ナミと略記)を用いた.<br>ヘクソカズラヒゲナガアブラムシでは,ダンダラ,ナミともに,供試したすべての個体が1齢幼虫期に死亡した.ダンダラについては,発育期間はマメアブラムシ(18.0日)で最も短く,モモアカアブラムシ(18.7日)を除く他の4種アブラムシ(20.1&sim;20.9日)との差は有意であった.生存率は6種(70.3&sim;91.3%)間に有意差はなかった.雌の蛹重はモモアカアブラムシとジャガイモヒゲナガアブラムシ(18.4&sim;18.5mg)において,エンドウヒゲナガアブラムシ(16.0mg)あるいはムギヒゲナガアブラムシ(15.2mg)より有意に重かった.雄の蛹重は6種(12.2&sim;15.6mg)間に有意差はなかった.産卵前期間はマメアブラムシ,ジャガイモヒゲナガアブラムシ,ムギヒゲナガアブラムシおよびモモアカアブラムシ(7.3&sim;8.0日)において,ワタアブラムシ(11.6日)より有意に短かった.産卵数はマメアブラムシ(172.5個)において,ワタアブラムシ(98.8個)より有意に多かった.<br>これらの結果を総合的に判断して,ダンダラの被食者としての適性は,ヘクソカズラヒゲナガアブラムシを除く6種については,マメアブラムシとモモアカアブラムシで最も高く,ジャガイモヒゲナガアブラムシ,ムギヒゲナガアブラムシ,エンドウヒゲナガアブラムシがこれらに次ぎ,ワタアブラムシで最も低いと評価した.各指標(発育期間と産卵前期間は発育率に換算)について,最大値を1としたときの相対値平均は最高のマメアブラムシで0.97,最低のワタアブラムシで0.78であるので,6種アブラムシ間の被食者としての適性の差異は比較的小さいと考えられる.ナミについても,被食者としての適性はマメアブラムシとモモアカアブラムシで高く,ワタアブラムシで比較的低いと評価でき,ダンダラと顕著な差異は認められなかった.
著者
鈴木 隆雄 杉浦 美穂 古名 丈人 西澤 哲 吉田 英世 石崎 達郎 金 憲経 湯川 晴美 柴田 博
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.472-478, 1999-07-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
27
被引用文献数
54 44

比較的健康な地域在宅高齢者527名を対象として, 面接聞き取り調査, 身体属性の測定, 腰椎骨密度および歩行能力などの運動能力を1992年の初回調査時に測定し, その後5年間追跡調査を行ない, その間での2回以上の複数回転倒者について, その関連要因の分析を行なった.その結果, 2回以上の複数回転倒者では非転倒者あるいは1回だけの転倒者に比較して初回調査時において, 自由歩行速度, 最大歩行速度, 握力などの運動能力や, 皮下脂肪厚, および老研式活動能力指標総得点などで有意な差が認められた. さらに, 5年間での追跡期間中の複数回転倒の有 (1), 無 (0) を目的変数とする多重ロジスティック回帰モデルによる分析を行なった結果,「過去1年間の転倒経験」が最も強い正の, そして自由歩行速度および皮下厚が負の有な関連として抽出された.このような地域高齢者を対象とする縦断的追跡研究の結果から, 転倒や転倒に基因する多くの骨折に対して,「過去の転倒経験」を問診で詳細に聞き取ることや, 簡便な「自由歩行速度」を測定することにより, 転倒ハイリスク者をスクリーニングすることが可能であり, ひいては転倒・骨折予防に極めて有効な指標となることが考えられた.
著者
杉浦 むつみ 大前 由紀雄 新名 理恵 池田 稔
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.103, no.8, pp.922-927, 2000-08-20
参考文献数
12
被引用文献数
4 1

難聴の高齢者を対象に補聴器装着前後における心理的ストレスの評価を行った.対象は,難聴を主訴に東京都老人医療センター耳鼻咽喉科を受診した患者のうち,補聴器の装着が適切であると判断された31例(男性11例,女性20例,年齢80.4&plusmn;5.3歳,66~89歳)である.補聴器装着前後に聴こえに対する自己評価と,新名の心理的ストレス反応尺度のうち情動18項目(うつ&bull;不安&bull;怒り)について質問した.その結果,患者の聴こえに対する自己評価は,装着後に有意(p<0.001)な改善を認めた.また情動18項目(うつ,不安,怒り)における心理的ストレス反応は,うつ,不安,怒りのいずれも有意(p<0.001)な減少を認めた.特にうつについてはストレス反応スコアの減少が著明であった.従って,補聴器の装着は,聴力の改善によるコミュニケーション能力の向上だけでなく,高齢者の心理面にも良い影響を及ほしたと考えられた.精神科領域では老年期にみられる痴呆とうつ状態は相互に影響しあい,互いに移行することが指摘されており,高齢者の心理面より,うつ,不安等の心理的ストレス反応を減少させることは,老年期うつ病の発症や,老年期痴呆への移行を二次的に予防することにもつながる可能性が考えられた.また聴覚障害が痴呆や認知障害の進行や重症度に影響する可能性も指摘されており,補聴器装着による聴力の改善は,痴呆や認知障害の進行を抑制するという観点からも有用であると考えられた.
著者
竹中 裕人 杉浦 英志 西浜 かすり 鈴木 惇也 伊藤 敦貴 花村 俊太朗 神谷 光広
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11731, (Released:2020-05-30)
参考文献数
40

【目的】腰部脊柱管狭窄症術後の患者立脚型アウトカムと運動機能の術後経過を明らかにすること。【方法】LSS 術後1,3,6 ヵ月で評価できた78 症例を対象とした(最大12 ヵ月追跡)。固定術37 例(68.4 ± 10.5 歳)と除圧術41 例(68.9 ± 7.8 歳)であった。JOABPEQ,腰痛・下肢痛・下肢しびれのVAS,6 分間歩行テストと体幹屈曲・伸展筋力を評価した。【結果】固定術,除圧術ともJOABPEQ の4 つの項目,腰痛,下肢痛,下肢しびれのVAS と6 分間歩行距離は,術後1 ヵ月から改善した。一方,JOABPEQ の腰椎機能障害は術後6 ヵ月から改善した。また,体幹筋力は,除圧術が術後3 ヵ月から改善した。【結論】本研究で明らかになったJOABPEQ と運動機能の経過は,手術の説明や術後経過の目標値として役立つと考えられる。
著者
田村 美穂子 田尾 龍太郎 米森 敬三 宇都宮 直樹 杉浦 明
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.306-312, 1998-05-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
24
被引用文献数
24 41

カキ属(Diospyros)のカルスを用いてゲノムサイズおよび倍数性を決定した.カキ(D. kaki Thunb.)9品種およびカキ以外の12種のカキ属(Diospyros)植物の葉原基由来カルスの核DNA含量をフローサイトメーターを用いて測定した.核DNA含量が既知のニワトリ赤血球およびタバコと比較することで6倍体のカキ品種のゲノムサイズは5.00-5.24 pg/2Cであり, 9倍体品種は7.51-8.12 pg/2Cであることが明らかとなった.また6倍体のD. virginianaのゲノムサイズは5.12 pg/2Cであり, 4倍体のD. rhombifoliaは3.76 pg/2Cであった.他の2倍体の種のゲノムサイズはD. montanaを除いて1.57-2.31pg/2Cであった.D. montanaは2倍体であるが, そのゲノムサイズは4倍体と同程度の3.48 pg/2Cであった.D. montanaを除くカキ属植物の倍数性とゲノムサイズの間には強い一次相関が認められ, ゲノムサイズより倍数性の推定が可能であるものと考えられた.本研究ではカルス細胞を用いた染色体観察法も検討し, カキ'宮崎無核'の染色体数は2n=9x=135, '次郎'とD. virginianaの染色体数は2n=6x=90, D. rhombifoliaは2n=4x=60, その他のカキ属植物の染色体数は, 倍数性が未知の4種を含めて2n=2x=30の2倍体であることを示した.この倍数性は, D. montanaを除いてフローサイトメトリーから推定した倍数性と一致した.

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著者
杉浦 光夫
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.255-256, 1968-03-05 (Released:2008-12-25)
著者
藤原 桜 尾﨑 雅子 中村 由果理 高野 奈央 高松 邦彦 破魔 幸枝 杉浦 あおい 高松 明子 中田 康夫
出版者
神戸常盤大学・神戸常盤大学短期大学部
雑誌
神戸常盤大学紀要 = Bulletin of Kobe Tokiwa University (ISSN:18845487)
巻号頁・発行日
no.13, pp.83-92, 2020-03-31

産後の母親の7割は、育児に対して自信がもてず、ストレスを感じ、身体的・精神的な不調を自覚しているといわれていることから、子育て中の母親のストレスに対する支援は重要である。アロマセラピーは、ストレスを軽減することが知られており、産褥期についての報告はあるが、子育て中の母親に対する効果の報告はない。そこで、本研究は、子育て中の母親にアロマハンドマッサージを行い、ストレスに対する効果を生理学的(唾液アミラーゼ活性)および主観的(POMS 2Ⓡ成人用 短縮版)に明らかにした。t検定とWilcoxonの符号付順位検定を用いて、対応のある母平均の差の検定を行い、マッサージの前後について、唾液アミラーゼ活性とPOMS 2Ⓡ成人用 短縮版で計測した。その結果「怒り-敵意」、「混乱-当惑」、「抑うつ-落込み」、「疲労- 無気力」、「緊張-不安」、「総合的気分状態」が有意に低下し、逆に「活気-活力」と「友好」は、有意に上昇した。なお、本研究は平成29年度に、採択された私立大学研究ブランディング事業タイプA「地域子育てプラットホームの構築を通したAll-Winプラン」における研究ブランディングAチームの地域研究の一貫として行われた研究成果である。| Because 70% of postpartum mothers are not confident about childcare, feel stressed, and are aware of physical and mental disorders, it is important to support the mother's stress during childcare. Aromatherapy is known to relieve stress, and there are reports about the effect of aromatherapy on the postpartum period. However, there are no reports on the effects of aromatherapy on the mother during childcare. Therefore, this study clarified the effects on stress, physiologically (saliva amylase level) and subjectively (Japanese version POMS2 shortened version), by giving aroma hand massages to mothers raising children. Using the t-test and Wilcoxon's signed-rank test, the difference between the population means was tested to reveal a decrease in salivary amylase activation and a 7-scale decrease. In addition, this research was conducted in 2017 as a part of the research branding A-team's area of research in private university research branding type A titled "All-Win plan through the construction of a regional childcare platform."
著者
杉浦 恪也
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.517-527, 1989-12-28 (Released:2011-08-11)
参考文献数
143

The day of August 19, 1839 is well-known as the date that Arago made the presentation of Daguerreotype to the French Academies de Sciences and Beaux Arts. In the year 1989, many photographic exhibitions including some historic photographs were held in celebration of the 150th anniverssary of photography all over the world.In this article, the classical photography from the birth to the present is outlined and then the research report, literatures, and descriptions about it are introduced. Finally, the existing state of the aged classical photographs which have been stored in Japan is mentioned, and the distinctive feature of each classical photography is viewed.
著者
杉浦 謙介
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

少数民族に関する東ドイツの地域的・思想的背景としてつぎの点を挙げることができる:・フーヘルが60歳で亡命するまで住んだブランデンブルク州のヴェンデン人は、ザクセン州に住む同じスラブ系のゾルベン人に対して共同意識と対立意識をもち、また、ドイツ民主共和国時代には社会主義的民族政策のなかでゾルベン人に包摂されたことで、ヴェンデン人としてのアイデンティティを強くもつようになった。・東ドイツのジプシー(Sinti/Roma)は、ナチス時代に迫害を受け、さらに、ドイツ民主共和国時代には少数民族保護政策からはずされた。・ドイツ民主共和国では、ナチス時代のユダヤ人迫害は西側の資本主義者の責任とされた。ユダヤ人は社会主義者とともに迫害され、戦い、社会主義国家を作った者とみなされたが、同時に、アメリカ合衆国やイスラエルとの結びつきから社会主義国家の敵ともみなされた。また、ユダヤ人は、社会主義的民族理論にしたがって、ユダヤ教を信じる宗教集団と位置づけられた。上の点がフーヘルの少数民族観および詩作品につぎのように反映している:・フーヘルはヴェンデン人を原風景の重要な形象としている。そして、ゾルベン人とは区別している。第2次世界大戦直後においては少数民族および民衆の象徴的存在と位置づけた。しかし、ドイツ民主共和国時代には体制に保護されたヴェンデン人(ゾルベン人)に背を向けた。・ジプシーはナチス時代ばかりではなく、ドイツ民主共和国時代も迫害されたが、同じように迫害されたフーヘルは、自分をジプシーに投影するようになった。・フーヘルは、ナチスによるユダヤ人迫害については言及していない。1度だけ自分の詩の注釈に「Auschwitz」を用いたことがあるが、この語もユダヤ人迫害問題とは関係ない。また、フーヘルは、現実世界のユダヤ人の形象ではなく、旧約聖書のユダヤ人の形象を詩に用いた。
著者
杉浦 功一
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.69-80, 2020-03-31

本稿では、広義の民主化支援の動向と変化の要因を、国際政治の構造変化と絡ませながら検証する。民主化支援活動は、西側諸国優位の中、1980年代終盤から90年代にかけて民主化の「第三の波」とともに発達した。しかし、2003年のイラク戦争以降、民主化支援はバックラッシュにさらされた。このバックラッシュは、欧米の「衰退」と中国など新興国の「台頭」という国際社会の権力構造の変化で拍車がかかった。2011年の「アラブの春」により、多くの政権は民主化支援への警戒をさらに強めた。NGOへの統制強化など、民主化支援に対処する政権側の戦略は巧妙かつ大胆になっていく。この民主化支援へのバックラッシュに対し、西側諸国やEUなど国際機構は、活動の工夫や国際的な連携で対処しようとしてきた。しかし、西側諸国の国際的優位が失われていく中で、安全保障や経済的利益に対する民主化支援の優先順位は低下し、対象国の政権が望まない政治的分野を避けるなど民主化支援の「非政治化」が進んでいる。
著者
高岡 詠子 田村 啓 杉浦 学
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE)
巻号頁・発行日
vol.2013-CE-120, no.9, pp.1-8, 2013-06-29

本研究ではタッチタイピングのできないタイピストに焦点を当てて実験を行うことで、初心者の苦手な文字の傾向などを分析した.その結果、文字ごとの正解率と打鍵速度には相関があること、打鍵速度に関わらずミスの種類は誤打鍵が最も多いこと、左下のキーが打ちづらく、ホームポジション左のキーが打ちやすい、右手の打鍵については文字位置によってばらつきがあること、打鍵頻度が大きい文字は打鍵速度が速い傾向が見られるが、文字の打鍵頻度が少ない文字が必ずしも文字打鍵速度が遅いわけではなく、同じ打鍵頻度が少ない文字でも文字位置によって速度が大きく異なるなどの結果が導かれた。これをもとに、タイピング教育ソフトにおける問題文の適切さなどを評価したり、有効なタッチタイピング教育法の検討などを行うことが可能となる。
著者
廣瀬 雅治 岩崎 花梨 野尻 梢 武田 港 杉浦 裕太 稲見 昌彦
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.541-550, 2014-12-31 (Released:2017-02-01)

The flavor of food is not just limited to the sense of taste, however it changes according to the perceived information from other perception such as from the auditory, visual, tactile sense or through individual experience or cultural background etc. Our proposed entertainment system "Gravitamine Spice" focuses on the cross modal of our perception, where we perceive the weight of food when we carry the utensil. This system consist of a fork and a seasoning called the "OMOMI". User can change the weight of the food when flaking the seasoning onto it. Through this sequence of actions, user can enjoy a different eating experience, which may change the taste of their food or the feeling of the food when they are chewing it.
著者
岡田 絢美 杉浦 正和
出版者
早稲田大学WBS研究センター
雑誌
早稲田国際経営研究 (ISSN:18826423)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.109-124, 2014-03-31
著者
杉浦 彩子 内田 育恵 中島 務 西田 裕紀子 丹下 智香子 安藤 富士子 下方 浩史
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.325-329, 2012 (Released:2012-12-26)
参考文献数
17
被引用文献数
3 1

目的:耳垢は高齢者および知的障害者に頻度が高いことが知られており,湿性耳垢の頻度が高い欧米では高齢者の約3割に耳垢栓塞があるという報告もある.しかしながら乾性耳垢の多い日本においての報告はない.今回,本邦における一般地域住民における耳垢の頻度と認知機能,聴力との関連について検討した.方法:『国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究』第5次調査参加者中,60歳以上で,耳垢確認のための鼓膜ビデオ撮影検査を受け,かつ耳疾患の既往のない一般地域住民男女792人を対象とした.Mini-Mental State Examination(MMSE)と良聴耳の耳垢の有無,良聴耳の4周波数平均聴力との関連について一般線形モデルで検討した.結果:対象792人中良聴耳の耳垢を85人(10.7%)に認めた.MMSE 24点以上の群では良聴耳の耳垢が有るのは10.0%だけだったが,MMSE 23点以下の群では23.3%に耳垢を認めた.また良聴耳の平均聴力は年齢,性を調整しても耳垢有群では無群より有意に悪かった(p=0.0001).また,年齢,性,良聴耳平均聴力,教育歴を調整しても耳垢有の群では有意にMMSE得点が低かった(p=0.02).結論:本邦においても高齢者の1割に良聴耳の耳垢を認め,耳垢により聴力が低下している場合があることが示唆された.また耳垢を有する群では認知機能が悪いことが明らかとなった.
著者
杉浦 芳夫
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.201-215, 1977-04-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

大正期に世界的規模での流行をみたスペインかぜのわが国における流行過程は,これまで不鮮明であるとされていた.本稿は,その拡散経路を推定しつつ,この点の再検討を行なうことを目的としている.日本帝国死因統計を資料として, 1916年7月~1926年6月の10か年の各月ごとの府県別インフルエンザ死亡率を因子分析にかけた結果, 3つの流行地域が抽出された.それによると,第1因子は西日本地域,第2因子は都市地域,第3因子は東日本地域を識別していることがわかった.そして,因子得点間のクロス相関から3つの流行地域の時間的前後関係を検討してみると,スペインかぜは,西日本の主要港湾ならびに横浜港から侵入した可能性のあることが示唆され,その拡散過程において近接効果と階層効果が働いていたことも明らかとなった.以上の分析結果は,従来の通説とは異なり,わが国におけるスペインかぜの流行過程に,一の空間的秩序のあったことを意味するものである.