著者
東田 正信 奥 雅博 村上 仁一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.10, pp.2249-2261, 2013-10-01

PB(プッシュボタン)電話機から利用者が検索条件を入力して電話番号を検索できる自動電話番号案内システムを開発した.検索キーワード入力には,情報機器に不慣れな利用者でも,簡単に操作方法を学習でき,短時間で入力できる文字情報縮退入力方式を採用した.本方式では,ひらがな5文字を一つの数字キーに縮退させて割り付けたPB電話機の数字キーを使い,検索キーワードをその「よみがな」に従って逐次数字キーを押下することで入力する.同様の文字割付に従い数字列化された情報を付加した電話帳DBを数字列化されたキーワードで検索する.本論文では,文字情報の縮退度情報を用いて利用者からの入力回数を最少化するための入力情報数最少化技術,採用した入力方式に起因する曖昧性を複数の曖昧さを含む情報の相互接続可能性を用いて解消する相乗的曖昧性解消技術などの知的対話誘導技術,及びこれらの技術を実装した自動電話番号案内システムの構築と評価について述べる.このシステムは「あんないジョーズ」という名称で公衆サービスとして提供された.1998年から2007年までのサービス期間中に,約1300万呼に対して検索処理を実行し,正しく電話番号を案内できた呼は約1000万呼であった.表示機能がないことによる入力内容のミスやキータッチのミスなどに起因して,番号が案内できなかった呼を除いて,「あんないジョーズ」が利用者に対してオペレータと同等の応対を提供できた呼の数は呼全体の約85%であった.
著者
林 秀樹 内貴 乃生 宮本 証 川口 民郎 杉本 喜久 伊藤 誠 Joel Q. Xue 村上 義孝 堀江 稔
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.368-376, 2015 (Released:2015-07-27)
参考文献数
10

近年,早期再分極が致死性不整脈発生の新たな心電図所見として注目されている.しかし,早期再分極のすべてが致死性不整脈の原因になっているわけではなく,良性と悪性が存在する.両者の鑑別は極めて重要である.われわれは,病院を受診した症例から構成された心電図データベースを用いて,様々なコホートにおいて早期再分極と致死性不整脈の関係を調べた.早期再分極は,思春期に頻度が高いことが認められ,Brugada症候群・QT短縮症候群・デバイス植込みの症例において,早期再分極と致死性不整脈発生の関係が認められた.今後,早期再分極と治療効果の関連を検討する必要があると考えられた.
著者
村上 通敏 亀山 孝一郎
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.659-662, 1983

アムシノニド0.1%を含有するビスダーム軟膏およびクリームをアトピー皮膚炎9例, 接触皮膚炎5例, 皮脂減少性湿疹2例, 慢性多形痒疹1例, ヴィダール苔癬1例, 日光皮膚炎1例, 尋常乾癬1例の計20例に使用した。臨床効果は著効13例(65%), 有効5例(25%), やや有効2例(10%)であつた。副作用は全例に認めず, 臨床検査を実施した5例においても異常な変動を認めなかつた。
著者
栗村 芳実 村上 敬吾 土田 英俊
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.1698-1702, 1969-08-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
11
被引用文献数
1

鉄(III)キレート触媒によるアスコルビン酸の酸素酸化反応をpH1.5~5の水溶液中で,酸素吸収速度を測定することによって研究した。鉄(III)イオンのみが存在する場合には,アスコルビン酸の酸素酸化反応の速度は,比較的小さい。しかし,NTA,EDTAOH,EDTA,CyDTAおよびDTPAなどを配位子とする鉄(III)キレート触媒を用いると,アスコルビン酸の酸化は著しく促進される。これらの鉄(III)キレートの触媒活性は,一般に,キレートの性質,溶液のpHなどによって異なる。アスコルビン酸が鉄キレートに比べ大過剰であるときは,酸素吸収速度は,鉄(III)キレートおよび酸素分圧に関して,それぞれ見かけ上一次になる。鉄(III)キレートの触媒活性は,pH3~5において,Fe(III)NTA<Fe(III)EDTAOH>Fe(III)EDTA>Fe(III)CyDTA>Fe・(III)DTPAであった。鉄(III)キレートのアスコルビン酸酸化における触媒活性の大きさの順序は,これらのキレートを触媒としたときのかフェニレンジアミンの酸化的重合反応における,活性の大きさの順序とよく一致し,鉄(III)キレートの安定度定数がほぼ1020で活性極大に達する。得られた実験結果に基づき,鉄(III)キレートによるアスコルビン酸の接触酸化の機構を推定した。アスコルビン酸過剰の場合には,鉄(III)キレートが速い反応でアスコルビン酸を酸化し,その結果生成した鉄(II)キレートが酸素酸化する段階が律速であることが明らかとなった。鉄(II)キレートの酸素酸化の速さが,鉄(III)キレートの触媒活性を支配する主な因子であり,その段階はいくつかの反応経路を持つことがわかった。
著者
村上 祐一 倉西 森大 CHAMSAI Sawitree 岡本 純一郎
出版者
北海道大学大学院水産科学研究科
雑誌
北海道大学水産科学研究彙報 (ISSN:13461842)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.51-61, 2012-12

我が国の漁業管理は,許可制度と漁業権制度によって組み立てられている。いずれも漁業管理当局の許可又は免許という形で漁業を営む権利が確立するが,漁業権制度は,所謂許可制度とは異なった由来と性格をもつ。漁業権制度は,沿岸地域の漁業者集団による特定の漁業を目的とした沿岸地先水域の共同使用権的性格を有している。漁業権制度の起源を歴史的に辿れば,江戸時代の幕府の沿岸漁業統治の指針とされた律令要略の所謂「磯は地先,沖は入会」に由来し,それが明治漁業法により近代法制国家の下で漁業権の法的権利として確立されたものである。その後,戦後の沿岸漁業民主化のための制度変更を経て,漁業権制度は沿岸漁業者集団による沿岸漁業の自主管理枠組みとして我が国の漁業管理制度の骨格を成してきた。戦後,沿岸漁業の稠密化への対応として我が国の外延的漁業発展過程の中で企業経営が中心の沖合,遠洋漁業が漁獲量,漁獲金額において我が国の漁業の主役となるなかで沿岸漁業の漁業権制度は我が国漁業界においてある種,自明な制度として定着してきた。しかしながら近年,沿岸漁業の外部から漁業権制度について,その閉鎖性,非効率性を批判し,漁業権制度の改革ということが議論されるようになってきた。このような議論に対して漁業協同組合を中心に強い反発が起きている。2007年2月,経済団体連合会,日本商工会議所,経済同友会,日本貿易会の経済4団体の支援を受けた日本経済調査協議会は,規制改革議論の一環として水産業の戦略的な抜本改革を求める緊急提言を行った。この提言の背景には日本の水産業の低迷(水産資源減少,漁業経営の悪化など)があり,議論は漁業の活性化のための制度改革論として主導されたものであるが,その中で漁業の活性化のための漁業資源の科学的管理(許容漁獲量による管理),漁業経営の改善(許容漁獲量の漁業者への譲渡可能な個別割当)とともに漁業制度の規制緩和策として漁業協同組合員の資格要件の緩和と漁業権の中の定置漁業権,養殖のための特定区画漁業権を漁業協同組合以外の個別経営体にも免許を認めるべきとの提言が行われている。日本経済調査協議会の緊急提言は,現在の水産資源管理に不満を有する資源研究者を含め水産関係研究者をも巻き込み大きな議論となった。特に,漁業権制度の改革提言に対して沿岸漁業者の団体であり,漁業権制度の当事者である漁業協同組合は日本経済調査協議会の緊急提言に強く反発した。日本経済調査協議会の緊急提言をめぐる議論は,政権交代や政府の規制改革会議の終了により一旦は沈静化したものの,2011年3月11日に起きた東日本大震災という未曾有の災害からの水産復興対策議論の中で養殖のための特定区画漁業権の免許資格の規制緩和論が再び浮上することとなった。
著者
菅原 隆文 村上 礼隆 植竹 宣江 開 浩一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.135, no.6, pp.829-833, 2015 (Released:2015-06-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1

Recently, extended-spectrum β-lactamase (ESBL)-producing Escherichia coli has been more frequently isolated from blood specimens than in the past. In this study we investigated a panel of therapeutic agents used to treat 37 patients with ESBL-producing E. coli bacteremia. Antimicrobial agents administered as definitive therapy displayed higher efficacy rates than when empiric therapy was administered (efficacy rates, 95.7% vs. 62.5%). The success rate of carbapenem was 95.8% (23/24) in patients with ESBL-producing E. coli bacteremia. In addition, the success rate of cefmetazole against ESBL-producing E. coli sensitive to this drug was 87.5% (7/8). In conclusion, patients at high risk of infection due to ESBL-producing E. coli should be empirically treated with carbapenem antibiotics. In addition, cefmetazole may be a treatment option for patients with ESBL-producing E. coli bacteremia.
著者
村上 浩康 佐藤 比奈子 石山 大三 石原 舜三
出版者
The Society of Resource Geology
雑誌
資源地質 (ISSN:09182454)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.129-137, 2011-05-25
参考文献数
23

High-grade REE ores containing acid-resistant minerals, which are common in the Nolans Bore REE-P-U deposit, Northern Territory, Australia, were analyzed by ICP-MS after decomposition of two different preparation methods before the analyses; Li-borate-fusion in a commercial laboratory and multi-acid digestion in our organization. The result derived from multi-acid digestion method shows higher values on LREE relative to the other fusion method, yet Y and Zr showed us higher values on the fusion method. The high-grade REE ores are enriched in light-REE, especially Ce, La and Nd, with a maximum total REE value around 7 wt %. The quantitative analysis by multi-acid digestion seems highly reliable for a wide range of REE concentration when using suitable dilution ratio and digestion sequence with several types of acids which could totally dissolve acid-resistant minerals such as monazite. On the other hand, analysis by Li-borate-fusion at a commercial laboratory potentially gives lower values than that of multi-acid digestion; a given sample is extremely concentrated in light REE. It is necessary to examine the upper as well as the lower detection limits by a conventional analytical method in a commercial laboratory.
著者
村上 光正 吉識 忠継 浦上 良樹
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 = Journal of Japan Society on Water Environment (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.307-314, 1995-04-10
参考文献数
14
被引用文献数
3 4

A system with a submerged biofilter was employed for purifing pond water. The slime on the biofilm has a high ability of adsorption of pollutants when BOD loading is below one tenth of the ordinary. The circulating number, the ratio of the flow rate to the pond volume, is important for total purifing system. The number is 1-2d-1 under the conditions in which the flow of the pond is complete mixing type, the specific growth rate of algae is 0.5-1d-1, and the removal ratio of SS is 0.5.The experimental biofilter bed for the pond water of 450m3 was 0.45m width with a depth of 0.6m. The bed packed with the media of 22mm pitch corrugated plates was elongated about 80m to introduce the adsorption ability and to deduce the excess sludge and was not aerated. The result showed that the quality of the pond water maintained BOD 1mg·l-1, SS 0.9mg·l-1, and transparency > 100cm. The removal ratio of SS on the bed was about 60%.This is an energy saving system because the filtering head of the bed is lower than that of filters such as a sand filter or a filter cloth.
著者
井上 弘士 Moshnyaga Vasily G. 村上 和彰
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPSY, コンピュータシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.27, pp.55-60, 2002-04-12

これまでに我々は,ダイレグト・マップ命令キャッシュの低消費エネルギー化を目的として,ヒストリ・ベース・タグ比較(HBTC:History Based Tag-Comparison)方式を提案した.従来型キャッシュでは,ヒット/ミス判定のために,タグ比較が毎アクセス実行される.これに対し,HBTCキャッシュでは,プログラムの実行履歴に基づき必要に応じてタグ比較を行う.そして,無駄なタグ比較処理を動的に検出・削除し,命令キャッシュの低消費エネルギー化を実現する.本稿では,これまでに提案したHBTCキャッシュを改良し,オーバヘッドの小さい新しい実現方式を示す.また,信号処理アプリケーションを中心としたベンチマーク・プログラムを用いて,性能ならびに消費エネルギーに関するより詳細な評価を行う.
著者
村上 晴美 浦 芳伸 片岡 祐輔
出版者
一般社団法人 システム制御情報学会
雑誌
システム制御情報学会論文誌 (ISSN:13425668)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.51-64, 2016-02-15 (Released:2016-05-15)
参考文献数
20
被引用文献数
1

To help users select and understand people while searching for them, we present a method of assigning Nippon Decimal Classification (NDC), which is a system of library classification numbers, to people on the web. By assigning NDC numbers to people, we can assign not only labels to people but also build a NDC-based people-search directory. We use a relative index in NDC, which lists the related index terms attached to NDC. We count the number of relative index terms contained in the titles of web pages (HTML files) and assign the top five NDC9 numbers to people. We developed a prototype of a people-search directory by assigning NDC9 numbers to HTML files that were manually classified from web people-search results. We evaluated the usefulness of our approach by comparing four methods and six documents and found that our method (extracting relative index terms) from the titles of web pages outperformed other methods and documents.
著者
村上 修一
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.238-245, 2003-01-31
被引用文献数
1

近代の空間成果として注目すべき形態の多重解釈性(暖昧性)という観点から検証すべく、ガレット・エクボ(1910-2000)の初期4事例の図面を調査し分析考察を行った。その結果、樹木列植による囲みを単位空間として、列植の隙間・延長の交差・ずれという空間構造や高木列植の視線透過性による暖昧性が明らかになった。また、その空間構造によって視点移動にともなう空間変化が顕在化することが明らかになった。これらの結果は、近代の空間成果としての暖昧性が、エクボの初期作品に共有されことを示し、成果がいかに空間化されたかを示す。
著者
黒田 輝 国領 大介 熊本 悦子 ロハス ジョナタン 岡田 篤哉 村上 卓道
出版者
Japanese Society for Thermal Medicine
雑誌
日本ハイパーサーミア学会誌 = Japanese journal of hyperthermic oncology (ISSN:18822576)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.181-193, 2007-12-20
被引用文献数
3

本研究の狙いは, 呼吸性の移動・変形をする肝臓内に設定した治療目標部位に対して, 治療用超音波の焦点をガイドするための磁気共鳴技術の開発である. ここに提案する我々の方法では血管を肝組織の追尾に使うこととした. 自由呼吸下における肝の矢状面におけるシネ画像をフィルタリングすることによって血管断面の重心を求め, それを解析することにより肝組織の並進距離と伸縮距離を解析した. 超音波焦点を置くべき治療目標点を, 血管の瞬時位置に基づいて推定した. 2名の健常ボランティアに対する実験において血管輪郭を描くためには, 空間マトリクスの大きさとして128×128が必要であった. 肝の並進距離は頭尾方向において19.6±3.6 mm, 腹背方向において3.1±1.4 mmであった. 伸縮距離は頭尾方向において3.7±1.1 mm, 腹背方向において3.0±1.2 mmであった. 検討に用いた血管の組み合わせでは, 目標点の実測位置と推定位置のずれが, 頭尾方向で0.7±0.5 mm, 腹背方向で0.6±0.4, 直線距離にして1.0±0.5 mmであった. 生体熱伝導方程式によって温度上昇をシミュレートした結果, 完全に息止めをした場合に較べて, 焦点周囲における肝組織の温度上昇のロスは20%程度であった. これらの結果は, 血管重心位置の実測に基づく提案法が臓器内の特定部位の動的な捕捉と, 加温領域をカバーする温度分布撮像面の追尾に, 十分な能力を有することを示した.