著者
竹田 謙一 神山 洋 松井 寛二
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.55-63, 2007-03-30

家畜福祉に対する関心が世界的に広まりつつあり,2004年に開催されたOIE の第72回年次総会で家畜福祉に関する基本原則が採択された。特に断尾などの肉体の切断は,家畜福祉の視点から問題視されている。本研究では,断尾農家,非断尾農家各19戸に断尾に関する聞き取り調査を直接面接法で行った。調査内容は1)飼育方法,2)断尾の利点と欠点,3)断尾をしない理由,4)家畜福祉に関する設問とした。各質問項目の結果は以下のとおりであった。1)経営規模,飼育方法,1人あたりの搾乳頭数ではなく,ミルキングパーラーの形態が断尾の実施と関係していた。2)断尾の実施はゴムリング(84%)を用いて,夏を除く全ての季節に行われてた。断尾の利点として,「汚い尾で叩かれない」と回答した断尾農家数は非断尾農家数の2.6倍にもなり,また,「糞尿を撒き散らさない」は断尾農家からしか得られず,糞尿による汚染に起因しているこれら2つの項目で顕著な差が認められた。断尾の欠点として,非断尾農家の多くは,ハエが追い払えないことを挙げた。断尾農家は断尾部位の菌による感染,ハエや埃を払えないという衛生面を挙げた。3)非断尾農家の半数以上は「断尾の必要性を感じていないから」と答えた。また,「ウシを尊重したいから」,「ウシがかわいそうだから」というようなウシに対する倫理的配慮を求めた回答も多かった。4)38戸のうち23戸(60.5%)が家畜福祉の言葉を聞いたことがなく,家畜福祉に対する酪農家の関心の低さが伺えた。酪農家の関心が高かった搾乳牛のストレス項目は,断尾農家,非断尾農家にかかわらず,「行動抑制」76.3%,「飼育環境」63.2%,「繁殖方法」31.6%であった。
著者
松井 敏史 櫻井 秀樹 遠山 朋海 吉村 淳 松下 幸生 樋口 進
出版者
公益社団法人 日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.86, no.11, pp.630-635, 2012
参考文献数
20

Wernicke's encephalopathy (WE) is the best known acute neurologic complication of vitamin B_1 (B_1) deficiency and often occurs in chronic alcoholism. The plausible causes of B_1 deficiency in alcoholics depend on the underlying mechanisms, such as a low dietary intake of B_1, inadequate absorption of B_1 from the intestine due to the gastrointestinal tract damage, and coexistent alcoholic liver disease altering the capacity of B_1 storage and the metabolism of biologically important nutrients. Because the use of the classic triad of WE may overlook a mild form of WE that can be detected as inactive WE pathology, Caine and colleagues have proposed the clinical criteria for diagnosis of WE in chronic alcoholics based on the clinical-neuropathological correction. The Caine criteria include dietary deficiency, oculomotor abnormalities, cerebellar dysfunction and either altered mental status or mild memory impairment, two of which are required for diagnosis of clinical WE. In our cohort, 13 alcoholic patients who fulfilled the Caine criteria were followed up and CSF-tau levels increased at the acute stage of the disease and then decreased at the chronic stage, suggesting that the patients have a transient neuronal damage. The Caine criteria enabled an immediate intravenous administration of B_1 and provided a favorable prognosis. For the therapy of WE, parenteral treatment with a high dose of B_1 is now recommended. A typical regimen is that 500 mg of B_1 is intravenously administered three times daily for two consecutive days and 500 mg of B_1 is intravenously administered once daily for additional five days, in combination with other B vitamins. After establishment of a sufficiently low threshold for parenteral B_1 treatment, the B_1 treatment should be conducted in all alcoholic patients with altered mental status, oculomotor disorders or ataxia.
著者
中道 上 山田 俊哉 松井 知子 阪井 誠 島 和之
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.249-258, 2012-08-25 (Released:2019-07-01)
参考文献数
14

The purpose of this work is to reduce the target pages of the web usability evaluation by usability testing. The target pages will reduce by detecting low satisfaction web pages. We analyze users ' interaction data for detecting low satisfaction web pages using variable selection. Analysis results, detectable interaction data are browsing time, moving distance of gazing points and wheel rolling. We apply statistical discriminant analysis to these interaction data and detect low usability web pages by classification between low usability group and others. Analysis result, we get mathematical line between evaluation target pages and low usability rate. Evaluators can determine evaluation target pages by using mathematical line of low usability group.
著者
松井 彩奈 西元 康世 公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院 千里金蘭大学 看護学部
巻号頁・発行日
vol.14, pp.163-170,

子どもの入院に家族が付き添う場合は多く,その家族に対する看護の必要性は,家族看護実践の課題のひとつである.子どもの入院に付き添う家族ついての研究は,親の思い,付き添い環境の実態について述べられているものは多数あるが,その負担を系統的に分類したものはみられない.本研究の目的は,子どもの入院に付き添う親はどのような負担を感じているかを整理し,現状を明らかにすることである.さらに得られた知見から,具体的な家族支援について検討する.医中誌Webのデータベースを用いた文献検索を実施した.「入院」「小児」「家族」「付き添い」「親」「負担」の用語を用いて論理積で検索を行った.結果,17本の文献が該当した.家族が実際感じている負担の内容を分析するために,対象者が家族ではないものなどを除外し,最終的に該当した論文13本を分析対象とした.対象文献をベレルソンの手法を用いて内容分析を実施した.対象文献より,子どもの入院に伴う負担に関する不安や苦痛,希望が表現された文脈を抽出してデータ化し,文脈単位とした.文献より,子どもの入院に付き添う親の負担について述べられた文脈を抽出した結果,163文脈単位が抽出された.それらをサブカテゴリ(記録単位)化し,それぞれ類似した内容ごとにまとめ,【子どもの療養環境への不満】【子どもが療養生活環境にいることに伴う親の身体的苦痛】【家庭,他の家族員に関する心配,苦痛】【看護職者への不満】【子どもが療養生活環境にいることに伴う親の精神的苦痛】【入院そのものに対する不安】【子どもの病気に対する不安】【看護職者以外の医療従事者に対する不満】【経済的な負担】【社会的活動に対する不安】という10のカテゴリが形成された.最も多かったのは【子どもの療養生活環境への不満】のカテゴリで全体の32%を占めた.次に多かったものが,【子どもが療養生活環境にいることに伴う身体的苦痛】のカテゴリで17%を占めていた.子どもの入院時,付き添う家族の基本的欲求が制限されており,看護職として積極的に看護介入していく必要性が考えられた.特に,負担として多く挙がっていた付き添い環境,付き添いに伴う家族の精神的負担,子どもの病気の受容などの負担に対して,看護職は親がこのような負担をもちながら付き添う現状を理解し,早急な改善を目指す必要があるだろう.また,治療に関する説明だけではなく話の傾聴や親の頑張りを認めるような関わりが必要であることが考えられた.
著者
松井 修視 MATSUI Shuji
出版者
県立長崎シーボルト大学
雑誌
県立長崎シーボルト大学国際情報学部紀要 (ISSN:13466372)
巻号頁・発行日
no.1, 2000-12-20

*この判例批評は、「大分県監査委員公文書一部非公開決定処分取消等請求事件[大分地裁平成11年5月31日判決(平成9年(行ウ)第20号、公文書一部非公開決定処分取消等請求事件・判例集未登載)]の提起するいくつかの問題点に対する意見書として、控訴人(本件第1審の原告)の要請を受けて、2000年3月17日付で福岡高等裁判所に提出したもの(甲第18号証)に、【事案の概要】と【判決要旨】を追加して、発表するものである。紙面の関係上、今回は前半部分を「『行政執行情報』と監査請求に係る公文書の公開(1)」として掲載する。*【事案の概要】、【判決の要旨】、【意見】の「1.大分県情報公開条例第9条7号の行政執行情報の解釈のあり方」まで本号。【意見】の「2.監査請求における審理過程の収集書類、聴取内容などの第9条7号該当性についての判断のあり方」以下、次号予定。*国立情報学研究所より電子化
著者
藤本 東 小川 徹 山本 和慶 松井 勇佑 山崎 俊彦 相澤 清晴
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 41.05 マルチメディアストレージ/コンシューマエレクトロニクス/ヒューマンインフォメーション/メディア工学/映像表現&コンピューターグラフィックス (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
pp.35-40, 2017 (Released:2021-05-12)
参考文献数
6

我々は Manga109という 109冊分の漫画画像を収めた学術利用可能なデータセットを構築した.このデータセットは高品質かつ多様な漫画画像を含んでいるが,メタデータを持たないため機械学習や手法間の比較等の用途にそのまま使うことができなかった.本研究では「コマ」「テキスト」「キャラクター」の 3つの要素についてメタデータを構築する.さらにこのメタデータについての解析を行い,著者やジャンル等について特徴を抽出できる可能性があることを示す.
著者
松井 秀俊 三角 俊裕 横溝 孝明 小西 貞則
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1-2, pp.25-45, 2016 (Released:2016-12-01)
参考文献数
42
被引用文献数
1 1

非線形混合効果モデルを用いた,経時測定データに対するクラスタリング手法について考察する.本論文では,基底関数展開に基づく非線形混合効果モデルを適用することで,経時観測データを平均効果関数および個体ごとの変動を表したランダム効果関数を用いて関数データとして表現する.次に,ランダム効果関数集合に対して,自己組織化マップやウォード法等の手法を適用してクラスタリングを行う.提案した手法を,微小粒子状物質データ,気象データおよび台風経路データへ適用し,有効性を検証する.
著者
中本 順 傳 秋光 松本 大輔 西山 花生里 池添 冬芽 田野 香菜 松井 尋美 中山 知未 坂元 真由美 山下 修司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.D0482, 2006

【目的】<BR>今日わが国の慢性透析患者は20万人を超え、さらに透析療法の進歩により、透析治療の長期化、透析者の高齢化といった新たな問題が生じている。また、透析患者の主な原疾患は糖尿病性腎症が第1位となった。こういった背景から、昨今、慢性腎不全血液透析患者(以下、CRF-HD患者)に対するリハビリテーション医療の考え方が適用されつつある。そこで、今回我々はCRF-HD患者に対するリハビリテーション医療のための基礎検討として、CRF-HD患者の日常の運動量とQOLの実態を検討した。併せて、透析導入となった原疾患(慢性腎炎&lsaquo;非DM群&rsaquo;と糖尿病群&lsaquo;DM 群&rsaquo;)により差があるのか、あるとすればどのような差異がみられるのかを検討した。<BR>【方法】<BR>対象は、姫路市内の某病院で外来維持透析を受けている、調査に同意したCRF-HD患者で、50〜60歳男性13名である。透析導入となった原疾患(慢性腎炎&lsaquo;非DM群&rsaquo;と糖尿病群&lsaquo;DM群&rsaquo;)の2群に分類した。4週間以上装着されたLifecorder EXデータとSF-36の下位尺度項目評価データなどを、Peasonの相関係数、unpaired Student-t検定で検討した。<BR>【結果】<BR>1)両群の年齢、透析期間、体格、ルーチン血液検査には有意差を認めなかった。2)全体的(n=13)には、身体機能と運動量(1日平均消費カロリー)は正相関した(R=0.738, p=0.0039)。しかし、群別では非DM群(n=6)では相関せず(R=0.593, p=0.215)、DM群(n=7)で正相関した(R=0.821, p=0.0237)。3)身体機能などでは非DM群と有意差なし(身体機能;DM: 60±16.33S.D., 非DM:72±17.664S.D., p=0.2294)にも関わらず、DM群では全体的健康観のみが有意に低かった(DM: 34.282±4.499S.D.,非DM:42.5±7.583S.D., p=0.0339)。4)非DM群とDM群間には、運動量に有意差は認めなかった(非DM:85.833±37.706 Cal/day,DM群:61.143±56.893 Cal/day,)。(1日平均歩数は、非DM:3577±1497歩, DM群:2328±1794歩と有意差は認めなかった。)<BR>【結論】<BR> 1)今後は自己判断の身体機能を実際に心肺持久力などの体力検査で検討し、可能な症例には体力改善を通じて自信をつけさせ、DM群のQOL改善を図ることが重要と考えられた。2)透析導入後の運動制限継続は昨今否定され、運動による透析合併症予防効果も期待されつつある。健常人の健康維持向上には、1日1万歩が推奨されている。従って、透析患者は非DM 、DMに関わらず可能な限り運動量を増加させる必要があり、適切な運動処方を作成して実践し検証する必要があると考えられた。<BR>
著者
尾崎 航成 向井 宏明 松井 くにお
雑誌
第82回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, no.1, pp.621-622, 2020-02-20

幅広い世代へのインターネット普及に伴い,SNS(ソーシャルネットワークサービス)が広く利用されている.反面,SNS上の人権侵害が増加しており,これに伴いインターネット監視団体の負担も増加している.今後もSNSの利用者が増加し,SNS投稿数も増加が予想されるため,不適切投稿の監視自動化が求められる.本研究では,機械学習を用いて不適切投稿を自動検知する手法を検討し評価を行った.人権侵害に該当するニュアンスの投稿を不適切投稿としてラベル付し学習モデルを作成し教師あり学習による不適切投稿の検知を評価したので報告する.
著者
松井 健二 杉本 貢一
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 = Journal of Japan Association on Odor Environment (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.166-176, 2009-05-25
参考文献数
30

みどりの香り(GLV)は炭素数6のアルデヒド,アルコール,アセテート類の総称である.GLVは陸上植物にほぼ普遍的に見いだされ,様々な食品の重要なフレーバー成分となっている.また,GLVがヒトに抗ストレス効果を誘導することが報告され,注目されている.最近の研究で,植物は自らの生息する生態系をモニターし,制御するためにGLVを利用していることが明らかになってきた.C6アルデヒドはその高い反応性により外敵に対する直接防衛に寄与している.また,三者系では害虫の天敵を呼びつけて害虫駆除に利用している.また,植物自身もGLVを感知する能力を得,周りの状況を把握することで生態系の変化に敏感に対応しているらしい.
著者
切田 正憲 松井 敏夫
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.281-286, 1993-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
8
被引用文献数
1

1.ノリ幼芽が乾燥によって受ける障害は1時間では極めて少ないが, 乾燥時間がより長くなるにつれて, しだいに大きくなった。2.ノリ幼芽を淡水に浸漬すると, 30時間浸漬より影響があらわれ, 72時間浸漬ですべての幼芽が枯死した。3.乾燥前に浸る海水比重が1.015からノリ幼芽に障害がではじめ, 1.012では障害が大きくなり, 1.010以下では比重が低くなるにしたがって, 障害がさらに大きくなった。4.乾燥前後に浸る海水比重のうち, 乾燥前に浸漬する海水比重の影響のほうが極めて大きかった。5.ノリ幼芽の生長は, 乾燥前後に浸漬する海水比重が正常海水の1.024よりも, やや低い側で効果的であった。
著者
加藤 真由佳 田中 雅彦 松井 みどり 橋本 由徳 神谷 葉子 神谷 剛 渡邉 賢司
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.434-439, 2014-07-25 (Released:2014-09-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

異常ヘモグロビンとはグロビン鎖のアミノ酸配列異常を呈するヘモグロビンの総称である.鎌状赤血球貧血患者の研究に端を発し,Hb M-Iwateの発見により日本人においても異常ヘモグロビン症が証明された.異常ヘモグロビン症は等電点電気泳動法の応用や技術改良による検出頻度の拡大を経て,現在ではヘモグロビンA1cの測定に用いられる高速液体クロマトグラフィの異常クロマトグラムより発見される例が増えている.今回われわれは,非血縁2家系,4例の異常ヘモグロビン症を経験した.同疾患は遺伝性疾患であり人口移動の少ない地域では出現に注意する必要がある.異常クロマトグラムであってもヘモグロビンA1cが測定される場合があり,クロマトグラムのパターンに注意を要する.遺伝子解析には十分に配慮する必要があるが,不要な検査,治療を避けるためにも患者が自身の病態について理解しておくことは重要と考える.普段から臨床医とコミュニケーションを図り,適切な情報を臨床側に提供していく必要があると考えられる.
著者
伊藤 貴雄 大橋 容一郎 福谷 茂 加藤 泰史 松井 慎一郎 芝崎 厚士 川口 雄一
出版者
創価大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

19世紀後半から20世紀初頭にかけて世界的に影響力のあった新カント派の哲学は、日本において大正から昭和初期にかけて大きく受容され、その影響は狭義の哲学にとどまらず、広く文化評論から経済学・政治学・法律学・教育学など社会科学分野の思想家にも及んだ。新カント派哲学への理解なしに近代日本思想史を正確に理解することはおよそ不可能と言える。にもかかわらず今日、日本の学界では同学派への関心は極めて希薄なものにとどまっている。本研究は、近代日本思想史において新カント派哲学が社会科学と接点をもった意義を学際的に明らかにし、新カント派の継受をめぐる国際比較研究を可能とする研究基盤を構築するものである。