著者
松井 健人
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.63-72, 2016

<p>重明親王の日記『吏部王記』と大江匡房の言談集『江談』を用いて考察すると、橘成季による説話集『古今著聞集』における、第三話の「邪気」・第四五話の「火雷天神」・第五九三話の「衣冠着たる鬼」の正体は、すべて菅原道真であることが分かる。巻を越えたこれら一連の説話は連関しており、繋ぎ合せると、一〇世紀に重明親王の付近で語られていたであろう、失われた天神譚の記録として復元できると結論付けた。</p>
著者
古賀 正則 W.F Menski 金子 勝 山本 一美 山本 由美子 浜口 恒夫 佐藤 毅 中村 平次 山崎 利男 松井 透
出版者
一橋大学
雑誌
海外学術研究
巻号頁・発行日
1985

本年度の研究計画の目的は, 昨年度イギリスにおいて実施した調査によりえられたデータ,とりわけ面接調査票のデータを整理し, 一定の解析をおこなうことによって,今後の調査,研究に役立てることにあった. したがって, 本年度の研究成果はあくまでも中間的総括の域を出ないものであることを,まずことわっておきたい.1.研究成果の概要データの整理,解析によってえられた新たな知見,成果の要点は次の通りである.(1)第二次大戦後,イギリス植民地体制の崩壊にともなって,英領植民地各地に展開していたインド人移民社会は大きな変動を豪り,植民地本国イギリスへの大量の移動をひきおこすとともに,インド亜大陸からイギリスへの移住もまた激増した. こうしたインド人移民の大きな二つの流れに応じて,イギリスにおけるインド人社会の間にさまざまな面で大きな差異がみられることが明らかとなった.(2)イギリスにおけるインド人移民社会の形成,発展の歴史,およびインド人移民社会の構造,インド人移民の組織,政治,経済,社会,宗教活動などを,ある程度解明しえた. 殊にインド人移民のカースト,宗教組織の果す役割の重要性が注目される.(3)インド人移民社会の形成,発展は,イギリスの社会に大きなインパクトを与えつつあるが,他方インド人移民社会は,イギリス社会の影響を蒙り,一定の変容を受けながら,移民社会独自のアイデンティティを形成しつつある. そこにみられるのは,移民社会の受入れ国社会に対する一方的な同化の過程ではなく,多文化社会という新らしい社会の形成にむけての,共存的発展の過程であると考えられる.2.今後の研究の展望これまでの研究によってえられた新たな知見の一つは,インド人移民にとって必らずしもイギリスが最終的な移民先ではなく,かなりのインド人移民がイギリスを経由して,さらに他の英連邦諸国,とりわけカナダ,オーストラリア,あるいはアメリカ合衆国へ再移住しているという事実であった. われわれは今後の研究において,こうした再移住の過程を明らかにするとともに,インド人移民社会それ自体の変容と,受入れ国の社会にあたえるインパクトの解明を試みるつもりである. また,移民の主な送り出し地域の一つであるインドのグジャラート地方の調査を実施することによって,移民送出のメカニズム,海外移民の存在によって,この地方の蒙るインパクトを解明したいと考えている.
著者
松井 章 石黒 直隆 南川 雅男 中村 俊夫 岡村 秀典 富岡 直人
出版者
独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本研究を通じて、日本列島における家畜出現の実相、特にブタの存在、牛馬の出現、韓国忠南考古学研究所、中国浙江省文物考古研究所、台湾中央研究院語言研究所、ロシア科学アカデミー極東支部などと研究交流を行い、日本列島の周辺地域における家畜の出現についての見通しを明らかにすることができた。日本列島では、長崎県原の辻遺跡の弥生時代中期の層から出土したイノシシ属のDNA及び安定同位体による食性分析を行ったが、いずれも野生の結果が出た。愛媛県阿方貝塚の弥生時代前期層と宮前川遺跡群北齊院遺跡弥生終末、庄内期出土のイノシシ属には、東アジア系ブタの値を持つものが得られた。牛馬は畿内では馬は5世紀、牛は6世紀という従来の結果を踏襲した。海外では韓国忠南考古学研究所による金海ヘヒョンニ貝塚の発掘に参加し、ブタや牛馬が紀元前1世紀にさかのぼることを確かめた。中国では浙江省田螺山遺跡の調査に参加し、7千年前の層から水牛、ブタの出土を確かめることができた。台湾では、台南、恒春半島の遺跡から出土した動物遺存体を調査し、イノシシ属のサンプルを採取したが、野生・家畜の判別をつけることはできなかった。台湾とは今後、本研究を継続することになっている。ロシアはウラジオストック所在の科学アカデミー極東支部を訪問し、新石器時代ボイスマン貝塚1、2から出土した動物遺存体を調査し、サンプリングを行ったが、その分析はまだ結果が出ていない。以上のように、日本と周辺地域の家畜の出現時の様相を明らかにする目処をつけることができ、今後の共同研究の道を確保することができたことは大きな成果と言える。本研究で培った共同研究の基礎を今後、さらに発展させ、真に総合研究として東アジアにおける家畜の起源とその伝播を明らかにすることができればと考える。
著者
山本 吉伸 松井 孝雄 開 一夫 梅田 聡 安西 祐一郎
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.1_107-1_120, 1994 (Released:2008-10-03)
参考文献数
9

What makes it a pleasure to interact with a computer system? In this paper,we discuss some possible factors contributing to a pleasant interaction. We study the pleasure of interaction under the domain of a two-player game called word tennis, Shiritori in Japanese, conducted through a computer network. Two sets of experiments were carried out. The first set consisted of game sessions between a subject and a computer player. Half of the subjects were informed (correctly) that their opponents were computer players, while the other half were informed (incorrectly) that their opponents were human players. All subjects could quit the game session whenever they chose to do so. The second set was the same as the first one except that the computer player was replaced by a human player. From the results of both sets of experiments, we reveal that, regardless of whether the actual identity of the opponent is a computer or a human player, subjects who were told to be facing with a human player gave significantly higher pleasure-ratings than those who were told to be facing with a computer player. Furthermore, subjects who found the game pleasant kept playing the game until the end of the pre-determined time limit (one hour). As the word tennis game is dry and monotonous in essence, the exceptionally long game session suggests that the subjects must have had an intrinsic motivation for the game. However, previously recognized intrinsic motivation for games in general fails to explain our observed phenomenon satisfactorily. Hence, we make an attempt to characterize a novel intrinsic motivation, and postulate that the cognition of being involved communication with a human mind is indeed a valid intrinsic motivation in interacting with a computer system.
著者
松井 健児
出版者
至文堂
雑誌
国語と国文学 (ISSN:03873110)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.p35-49, 1988-01
著者
松井 仁
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.29-36, 1992-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
16

In this research, a new scaling procedure was developed in order to measure personality traits (θ) to create Movement responses of organic objects (M or FM in the Rorschach test) in the Inkblot test. This procedure was based on the item response theory. In this procedure the homogeneity of the items of the used test were checked. Here, 60 items including the Rorschach test and other items from Holtzman Inkblot Technique (HIT) were used and 402 subjects were asked to create one response for each item. Then, 40 homogenious items including 8 items from the Rorschach test were selected through the principal factor method. The item parameters of the selected 40 items and the information function for the estimation of θ were then calculated. The estimates of θ were also calculated by the maximum likelihood method. A discussion on the charactristics of items and personality traits estimated on Movement took place. And the result proved that the estimate of θ (personality traits) in order to create Movement responses were not reliable at a low level.
著者
イスラム マハメッド シャヒドール 松井 年行 吉田 裕一
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.245-251, 1994
被引用文献数
5

トマト (品種レディファースト) 果実の糖含量と酸性インベルターゼ活性に及ぼす炭酸ガス施用 (700~900ppmv) の影響について検討した.炭酸ガス施用を行った果実のブドウ糖と果糖は無施用区 (250~400ppmv) よりも有意に高かったが, ショ糖では有意差が認められなかった.酸性インベルターゼ活性は可溶性のものが細胞壁結合性のものよりも高かった.開花後50日からのインベルターゼ活性の増大は還元糖含量の増大傾向と一致した.さらに, 炭酸ガス施用を行った果実は対照区のものよりもインベルターゼ活性は高かった.炭酸ガス施用は光合成とインベルターゼ活性の増大を導き, 糖含量および果色を向上させるものと考えられた.
著者
イスラム マハメッド シャヒドール 松井 年行 吉田 裕一
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.185-190, 1995

トマト (品種'レディファースト') 果実の糖含量とショ糖合成・ショ糖リン酸合成酵素活性に及ぼす炭酸ガス施用の影響について検討した.生育申に炭酸ガス施用を行った果実重量, 全糖, 還元糖は無施用区よりも有意に高かった.ショ糖合成酵素活性は開花後50日目まで施肥トマトで高く, その後急激に減少したが, 無施肥区では徐々に減少した.ショ糖合成酵素活性の減少はショ糖濃度の減少を伴った.処理間のショ糖濃度とショ糖合成酵素活性の間に有意差は認められなかった.ショ糖リン酸合成酵素活性は, 生育中比較的一定であった.
著者
松井 年行
出版者
香川大学農学部
雑誌
香川大学農学部学術報告 (ISSN:03685128)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.p161-167, 1980-03
被引用文献数
1

白下糖に見いだされた無機成分, 有機酸, 遊離アミノ酸を精製白糖に加えて, シェッフェ, ブラッドリー, ケンドール法に従って官能検査を行なった. 無機成分を精製白糖に加えた時, KCl等と無添加の白下糖の間にすべての方法で有意差があった. cis-アコニット酸と他の試料間の関係では, ブラッドリー法によって5%の危険率で有意差があった. アミノ酸のすべての試料間に, すべての方法で有意差がなかった.
著者
松井 三枝
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.237-253, 2017 (Released:2019-03-22)
参考文献数
84

The author introduced the past and current research that focuses on cognitive function in schizophrenia. Based on a comprehensive clinical neuropsychological examination, it was determined that schizophrenia has a background involving a wide range of cognitive dysfunctions. In particular, it is suggested that there is a substantial problem in memory and in processing speed. Furthermore, there are also problems with both attention and execution functions. The recent memory impairments in schizophrenia were not the same as that observed in amnesia. Aspects of memory organization and memory strategy have been characterized and have resulted in intervention methods to improve cognitive impairment with positive and verifiable effects. Improvement after cognitive remediation therapy seems to lead to improved social adaptation, and the therapeutic approach will likely become more popular with additional studies.
著者
松井 孝典 池野 優子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.II_73-II_82, 2011 (Released:2012-03-16)
参考文献数
33

本研究では,自然生態系と人間システムを包含する共生システムが適切な状態を築く,すなわち,自然生態系のストックである気候条件や環境物,植物群集,動物群集とそれに対する人々の感覚器の反応や活動系が良好な共起状態を持つことで,文化的生態系サービスが持続的に享受できるという仮説の基で,その生態系サービスを得るための共生システムの構造を解析することを目的としている.具体的には,この文化的生態系サービスを受け取った教師信号が内包されていると考えられる事例ベースの一例として小倉百人一首を選定し,生態系サービスを介した共生システムの概念モデルの構築,それに基づいたコンポーネントの出現に関するコーディング,および自己組織化マップと階層クラスタリングによる構造解析を行った.これにより,共生システムのデザインを支援するための7つの文化的生態系サービスの生成および享受の構造に関する知見を得るとともに,(1)全体的には環境物を視覚することを基礎としながら,(2)文化的生態系サービスの享受には,動植物を感知する際の気候条件や気象現象や人間システム側の活動モードとの相互作用が存在する可能性があること,(3)自然物そのものだけでなく,自然素材から成るプロダクトも文化的生態系サービスの生成および享受の要因となり得る可能性があることが示された.
著者
中根 洋治 奥田 昌男 可児 幸彦 早川 清 松井 保
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.182-194, 2011
被引用文献数
1

本研究の事例に取り上げた矢作川流域のほとんどが花崗岩地帯であり,沖積平野の広範囲に砂が堆積している.近年,住宅や工場・道路などへの利用が多い旧河道や後背湿地では,地震時に堆積砂が液状化し,豪雨時に低湿地が浸水する被害を受けやすい.本研究では,矢作川の旧河道や後背湿地の生成過程と現状を歴史的文献・資料,地盤調査・工事資料,現地踏査などにより把握すると共に,浸水や液状化による災害に対する危険性を検討した.その結果,河床低下により矢作川本川の越水の危険性は減少傾向にあるが,支川の内水排除対策が今後の重要課題であり,また本川や各支川の旧河道及び低湿地における浸水や液状化に対する危険箇所が数多くあることを具体的に明らかにした.さらに,開発に伴う災害危険区域の増加傾向と共に遊水地の必要性も指摘した.
著者
森田 悠基 松井 藤五郎 大和田 勇人
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.1B21, 2009

<p>本論文では構築したWeb上のブログ空間から、評判ブログを抽出し、検索できるようにするためのシステムに対し、適切な分類アルゴリズムを比較検討する。ブログを個人ブログと非個人ブログに分けるという観点に基づいた分類に対し、Naive Bayes, Support Vector Machineといった教師あり学習とEMといった半教師学習を組み合わせた手法について比較実験を行う。</p>
著者
鳥山 成一 田中 敦 西川 雅高 島林 誠 松井 あきえ 米田 京平 山﨑 敬久 溝口 俊明 木戸 瑞佳 中村 篤博 中谷 訓幸
出版者
特定非営利活動法人 エコテクノロジー研究会
雑誌
エコテクノロジー研究 (ISSN:18819982)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.271-276, 2008
被引用文献数
2

For the emission gas concentration measurement of sublimable gas phase boron compounds, the optimal collector material applied to the inside stack sampler (the type-1 stack sampler developed in our previous article) was examined. The collection efficiency of alkali impregnated filter paper of calcium carbonate and magnesium hydroxide was investigated by the use of artificial stack. It was revealed that calcium carbonate filter paper have a high collection efficiency and fully applicable to the type-1 stack sampler equally to potassium carbonate filter paper examined in our previous study. However, magnesium hydroxide filter paper is not suitable for the collection agent.
著者
和泉 潔 松井 藤五郎
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.43-46, 2011 (Released:2012-03-29)
参考文献数
11

金融市場は世の中の経済活動の活発さを反映しているはずである.だからもし,みんなが持っている平均的な景況感を早く正確に知ることができたら,株価が予測できるはずだ.Web上の大量のテキスト情報から現在人々が経済状況に対して抱いている気分を抽出することが出来るかもしれない.専門家でないごく普通の人たちが,経済と直接は関係ないような事柄について書いたものから,金融の専門家が発信する市場に関わる様々なニュースや経済レポートまで,web上には常に大量のテキスト情報が溢れている.機械学習を用いたテキストマイニング手法によって,テキスト情報と市場変動の関係性を発見し市場分析に応用する最新研究事例を紹介する.
著者
武田祐太 松井藤五郎 犬塚信博
雑誌
第75回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.1, pp.467-468, 2013-03-06

投資信託とは、販売会社を通じて多数の投資家から集めた資金を、資産運用の専門家が株や債券などの金融資産、あるいは不動産などに投資するよう指図し、運用成果を投資家に分配する金融商品のことである。この際、リスク低減のために分散投資を行うことが重要とされており、そのために投資信託の特徴に基づいた分類が必要となる。そこで本研究では、投資信託と投資先銘柄の情報からネットワークを作成し、その構造に基づいて投資信託の分類をする方法を提案する。