著者
松宮 壽人 坂下 嘉章 坪井 靖 松本 弘 植田 伸幸
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
年次大会講演論文集 : JSME annual meeting
巻号頁・発行日
vol.2005, no.3, pp.179-180, 2005-09-18

A conceptual design of sodium cooled fast reactor as small-decentralized power supply has been performed. The reactor named 4S (Super Safe, Small and Simple) has a reflector controlled U-Zr metallic fuel core. Characteristics of the 4S reactor are non-refueling (core life time: 30 years), the negative coolant void reactivity during 30 years, integrated and simple reactor structure, and natural circulation decay heat removal systems. Accidents without scram events (AWS) as unprotected sudden loss of flow event and ATWS events have been analyzed for the passive safety features of 4S using a transient simulation code (ARGO-3 code). It is predicts that the passive safety can evade sever damages of the core and primary coolant boundary under the ATWS and AWS events.
著者
上小鶴 孝二 福永 健 松本 誉之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.2016-2021, 2011-12-25

要旨 潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis ; UC)の治療は免疫統御療法や抗TNF-α療法の保険適用など大きな飛躍を遂げた.白血球系細胞除去療法(cytapheresis ; CAP)も,2010年には,UCに対して,週における治療スケジュールの回数制限がなくなり,CAPのintensive therapyが可能となった.当院の検討でも,GMA,LCAPとも副作用なく,週1回法と同程度の割合の寛解導入がより速やかに可能であった.CAPのintensive療法は安全に効果を出すことが可能であるので,適用症例には積極的に行うべきと考える.
著者
松本高等学校 編
出版者
松本高等学校
巻号頁・発行日
vol.昭和7至8年, 1935
著者
山本 輝正 松本 和馬
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.135-144, 2016 (Released:2017-02-07)
参考文献数
72

石川県および長野県で人工構造物をねぐらとしていたカグヤコウモリのオス個体群に対して標識再捕獲法を用いて,21年間の個体数調査を実施した.最長寿命個体は,石川県で14年,長野県で17年の個体が確認された.日本産森林性コウモリ類でこのような長寿記録が確認されたのは初めてである.生涯を通じて生存率一定と仮定して,個体群パラメータの推定を試みたところ,1年当たりの生存率は,石川県で0.871,長野県で0.863,平均寿命は,石川県で7.3年,長野県で6.8年と推定された.また,出産哺育期のオスの平均個体群サイズは,石川県で9.1頭,長野県で22.7頭と推定された.しかし,1回の調査で発見される個体数は両調査地とも5頭以下であった.このことから,調査地周辺には調査対象としたねぐら以外にも利用するねぐらがあったことが示唆された.
著者
荻原 俊男 森本 茂人 中橋 毅 島本 和明 松本 正幸 大内 尉義 松岡 博昭 日和田 邦男 藤島 正敏
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.396-403, 1994-05-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
24
被引用文献数
9 8

本邦における高血圧専門家が老年者高血圧の治療方針に関していかなる考え方をしているかについてアンケート法によりその実態を把握することを目的とした. 治療対象について50%の専門家は年齢の上限を考慮しないとしたが, 残り50%は80歳まで, あるいは85歳までを上限としている. 治療対象血圧値は収縮期血圧は60歳代160mmHg以上, 70歳代160~170mmHg以上, 80歳代では170~180mmHgと高齢者程治療対象血圧は上昇, 拡張期血圧は90~95mmHg以上とするものが大部分を占めた. 降圧目標は60歳代では150/90mmHg未満, 70~80歳代では160/90mmHg未満とするものが多く, 80歳代では170~180/95~100mmHg未満と高めに設定するものが20数%あった. 用いる降圧薬ではCa拮抗薬を第一次薬とするものが大部分でありACE阻害薬がこれに次いだ. 一方, サイアザイド, β遮断薬, α1遮断薬を第一次薬とするものは少数であった. 合併症を有する場合の降圧目標や選択降圧薬は疾患によりきめ細かく考慮され, 脳梗塞慢性期, 閉塞性動脈硬化症, 腎障害合併症は70歳代, 80歳代で154~159/89~90, 160~164/90~91mmHgとやや高め, 脳出血慢性期, 虚血性心疾患, 糖尿病, 高脂血症では各々152~153/88, 158~159/89mmHgとやや低めに設定している. Ca拮抗薬はいずれの合併症にもよく用いられ, とくに腎障害, 閉塞性動脈硬化症で高頻度に用いられる. 腎障害ではACE阻害薬が用いられる頻度が低い. β遮断薬は虚血性心疾患で用いられる以外は一般的に用いられない. サイアイド, α1遮断薬は一般的に合併症のある場合にあまり用いられていない. 本邦においても長期介入試験によりこれらを正当化する証明が待たれる.
著者
小竹 武 松本 優里香 塚本 あゆみ 井上 知美 石渡 俊二 草薙 みか 坂野 千賀 大里 恭章 伊藤 吉將 長井 紀章
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.786-792, 2015-11-10 (Released:2016-11-10)
参考文献数
6

We investigated whether the component in cataplasm transmitted into hemorrhoid ointment in the combined storage of hemorrhoid ointment and non-steroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs) cataplasm. The NSAIDs cataplasm was used as a commercially available methyl salicylate (MS reishippu “TAIHO”, MS cataplasm) and indomethacin (Catlep®, IMC cataplasm) cataplasm. In addition, the hemorrhoid ointment was in a polyethylene container with (Neriproct® ointment, DFV-L ointment) or without aluminum laminate (Posterisan® forte, HC ointment). As for the methyl salicylate, 5.68 mg / pieces in HC ointment were detected at 40 weeks of combined storage with MS cataplasm. The methyl salicylate concentration in DFV-L ointment was lower than that in HC ointment under the same conditions. On the other hand, no contamination of indomethacin in HC and DFV-L ointment was observed in the combined storage with IMC cataplasm. These results show that the methyl salicylate in cataplasm passed the polyethylene container, and provide significant information on the risk of contamination by the combined storage of cataplasm and hemorrhoid ointment.
著者
阿部 隼人 松本 一穂 谷口 真吾
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p> 本研究では沖縄島北部の亜熱帯常緑広葉樹林における炭素循環プロセス解明の一環として、地上部における枯死有機物(葉・枝・粗大木質有機物)の量と供給量、分解量について調査した。</p><p> 枯死有機物量は枯死有機物の種類とサイズに応じて調査地(0.25 ha)の全域もしくは一部区画内の枯死有機物の乾燥重量から求めた。供給量はリタートラップ法や毎木調査のほか、あらかじめ枯死有機物を除去しておいた一部区画内の枯死有機物量を再調査することで評価した。分解量は林内に設置したイタジイ(優占樹種)の枯死有機物サンプルの重量減少量から推定し、併せてこれらの微生物分解呼吸量の計測も行った。</p><p> 調査の結果、2019年6~9月における地上部の枯死有機物量は1746 g C m<sup>-2</sup>であった。また、2019年の枯死有機物の年間供給量は337 g C m<sup>-2</sup>、年間分解量は594 g C m<sup>-2</sup>(このうち、微生物分解呼吸量は465 g C m<sup>-2</sup>)であった。これらの結果から,本森林では年によっては分解量が供給量を上回るほど大きく、枯死有機物内の炭素の大部分は微生物の分解呼吸によって大気へ放出されるため、枯死有機物から土壌への炭素の移入量は非常に少ないと考えられた。</p>
著者
松本 一穂 速水 眞誉 谷口 真吾 安宅 未央子 大橋 瑞江
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>沖縄島北部の亜熱帯常緑広葉樹林では、国内最大級の土壌呼吸量が観測され、その空間変動も大きいことが確認されている。本研究では土壌呼吸量の空間変動を特徴づけている要因を解明するために、土壌呼吸量と様々な要因との関係を検討した。2018年9月に調査地(1250m<sup>2</sup>)内の9箇所において、土壌呼吸量と環境要因(地温,土壌水分,土壌密度)を調べた。また、土壌呼吸量の構成要素として、根呼吸量と微生物呼吸量を調査した。なお、土壌中の微生物呼吸量は土壌呼吸量から根呼吸量とリターの微生物呼吸量を差し引くことで推定した。このほか、これらの呼吸量の規定要因として、根量や易分解性の有機物量、基質誘導呼吸法に基づく微生物活性の指標も測定した。調査の結果、土壌呼吸量の空間変動と各環境要因との間に明瞭な関係は認められなかった。一方、根呼吸量と土壌呼吸量との間には有意な正の相関関係が認められた。リターの微生物呼吸量は一様に小さく、土壌中の微生物呼吸量は場所によっては量的に大きな寄与を示した。なお、本調査ではリターの除去によって土壌呼吸量が増加する現象もみられ、非攪乱に近い状態での検討には技術的な課題があることも示された。</p>
著者
坂本 幸志郎 松本 一穂 谷口 真吾
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>沖縄島北部の「やんばる」と呼ばれる地域の亜熱帯常緑広葉樹林は、生物多様性の高い生態系として知られている。本研究ではやんばるの森林において、植物が生産する有機物量(純一次生産量,NPP)を積み上げ法に基づいて評価した。NPPは一定期間における植物の成長量と枯死脱落量、被食量の和として求められる。本研究では2013, 2016, 2019年に琉球大学与那フィールド内の調査地(2500m<sup>2</sup>)において毎木調査を行い、各年のバイオマス量を見積もり、それらの差から成長量を求めた。また、調査地内の6箇所のリタートラップで採取したリターと虫糞から、それぞれ枯死脱落量と被食量を求めた。調査の結果、2016~2019年の間には台風攪乱等による樹木の先折れによって成長量は負の値(-61.5 g C m<sup>-2</sup> yr<sup>-1</sup>)を示した。枯死脱落量と被食量はそれぞれ350,27 g C m<sup>-2</sup> yr<sup>-1</sup>であった。その結果、NPPは315 g C m<sup>-2</sup> yr<sup>-1</sup>であると見積もられた。これらの結果から、本森林では年によっては植物によって生産された有機物の殆どが枯死脱落したり被食されることで、植物自身の成長が低く抑えられていることが分かった。</p>
著者
渡辺 彰 佐藤 博 常石 英作 松本 光人 滝本 勇治
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.935-941, 1992-09-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
14

牛の屠殺方法が各種筋肉のpHおよびATP-関連化合物(ATP,アデノシン三りん酸;ADP,アデノシン二りん酸;AMP,アデノシン一りん酸;IMP,イノシン酸;Ado,アデノシン;Ino,イノシン;Hyp,ヒポキサンチン;Xan,キサンチン)の死後変化に与える影響を調べた.子牛9頭を供試し,麻酔処置により筋肉を採取したA区,屠殺時に延髄•脊髄破壊したP区および破壊処理なしに放血のみで屠殺したN区の3区に3頭ずつ分けた.採取した筋肉は胸最長筋(LD筋),大腰筋(PM筋)および大腿二頭筋(BF筋)で,採取後37°Cに保温して,pHおよびATP-関連化合物の経時変化を測定した.pH変化について,LDおよびBF筋では,処理による有意差は認められなかった.PM筋では,極限pHに到達するまで,pH値は,A区,N区,P区の順で高く推移し,屠殺1,3および4時間後では,A区がP区およびN区よりも有意(P<0.05)に高かった.また,ATP-関連化合物の分解程度をKa=(IMP+Ino+Hyp+Xan)/(ATP+ADP+AMP+IMP+Ino+Hyp+Xan)とすれば,PM筋のKaでは,屠殺1時間後でP区がN区よりも有意(P<0.01)に高かった,LD筋では2時間後にP区がN区よりも高い傾向があった.BF筋では,3時間以内で処理間に差異は認められなかった.これらのことよりPM筋は屠殺時の延髄•脊髄破壊の影響を強く受けてATPの分解が進んでいることが明らかとなった.
著者
松本 龍児 櫻井 良祐 ●●● ●●● 唐沢 かおり
出版者
人間環境学研究会
雑誌
人間環境学研究 (ISSN:13485253)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.113-117, 2014 (Released:2014-12-25)

In the present research, we examined the effects of belief in free will on interpersonal aggression. Baumeister et al. (2009) demonstrated disbelief in free will promoted aggression toward an innocent target. However, our aggressive behavior is not limited to such non-retributive aggression. For instance, people often attack a person who has shown aggression against them in order to defend themselves or take sanctions. The strength of such aggressive behavior is proportional to perceived responsibility of the transgressor (Ohbuchi, 1987). It has been shown that belief in free will has strong relation to the attribution of responsibility and punishment. Thus, we predicted belief in free will would promote aggression against a transgressor. Forty-five undergraduates participated in the study and they were randomly assigned to one of the three conditions (free will, determinism, or control). After free will manipulation, participants conducted the competitive reaction time game against a fictitious participant. In the task, participants and a hypothetical opponent repeatedly delivered the blast of white noise to each other. The intensity of the blast of white noise specified by participants was the measure of aggression. The results indicated believing in free will increased aggression among participants high in trait aggression. The finding raise the possibility that belief in free will of self and that of others differently influence aggressive behavior.
著者
片江 祐二 島田 佳宏 松本 康二郎 近藤 秀臣 森 俊陽 西田 茂喜 安田 学 花桐 武志
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.189-190, 2018-03-25 (Released:2018-05-21)
参考文献数
5

【目的】当科を初診した転移性骨腫瘍症例の特徴と必要な検査について検討した.【対象と方法】2012年からの5年間に新小倉病院で転移性骨腫瘍と診断され,カルテベースで後方視的に調査しえた132例のうち,悪性腫瘍の既往がなく整形外科受診時に転移性骨腫瘍が明らかになった9例(全例男性,60-88歳[中央値76歳])を対象にした.検討項目は,①初診時の主訴,②罹患骨,③腫瘍原発巣,④原発腫瘍検索方法,⑤原発腫瘍同定率である.【結果】①初診時の主訴は腰痛・背部痛が7例,②罹患骨は脊椎が8例で最も多かった.③腫瘍原発巣は前立腺癌4例,肺癌3例であった.④⑤原発腫瘍検索は,体幹部CT検査が9例で,その同定率は77.8%であった.【考察】整形外科を初診する70歳以上の男性では転移性骨腫瘍の可能性を念頭におく必要があり,原発腫瘍の検索には体幹部CT検査(造影含む)が簡便かつ非侵襲的で考慮すべき検査と考えた.
著者
久原 有貴 関口 道彦 小鴨 治鈴 松本 信吾 七木田 敦 杉村 伸一郎 中坪 史典 上田 毅 松尾 千秋
出版者
広島大学学部・附属学校共同研究機構
雑誌
学部・附属学校共同研究紀要 = The Annals of educational research (ISSN:13465104)
巻号頁・発行日
no.43, pp.25-33, 2014

昨今,子どもの健康問題から,幼児期の身体活動の重要性が注目されている。本研究は,森の中で遊びを中心とした保育を行っている森の幼稚園(広島大学附属幼稚園)での身体活動量と体力・運動能力との関係を明らかにした。研究1では5歳児クラスの幼児を対象に歩数という指標を用いて身体活動量を測定した。その結果,森の幼稚園の幼児は一般的な幼稚園の幼児よりも保育時間中に多く歩いたり走ったりしていた。研究2では3~5歳児クラスの幼児を対象にMKS幼児運動能力検査を用いて体力・運動能力を測定し,また,身体活動量と体力・運動能力との関係を調べた。その結果,森の幼稚園の幼児の体力・運動能力は平均的であり,歩数が多い幼児ほど瞬発力とスピードが高かった。研究3では,森の幼稚園の卒園児の体力・運動能力を調べた。その結果,森の幼稚園出身の児童の体力・運動能力は,1年生の時点では平均的で,2年生以降になってから平均よりも高くなっていた。このことから,森の幼稚園という保育環境は幼児期に多くの身体的活動を行うことを促し,それが心情面などへの影響を媒介として,小学校入学以降の体力・運動能力に影響を及ぼす可能性があることが示唆された。
著者
鈴木 克洋 露口 一成 松本 久子 新実 彰男 田中 栄作 村山 尚子 網谷 良一 久世 文幸
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.187-192, 1997-04-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
10

Fifty six clinical isolates of Mycobacterium tuberculosis were tested for drug susceptibility in Mycobacteria Growth Indicator Tube (MGIT) containing 0.1μg/ml of INH, 1.0μg/ml of RFP, 3.5μg/ml of EB and 0.8μg/ml of SM. These results were compared with those obtained by testing the same M.tuberculosis isolates by the absolute concentration method using 1% Ogawa egg slant containing 0.1μg/ml of INH, 10μg/ml of REP, 2.5μg/ml of EB and 20μg/ml of SM. Fifty six isolates consisted of 18 pansensitive strains, 27 multidrug resistant strains and 11 single drug resistant strains. The results for individual drugs showed excellent agreement between the MGIT and the Ogawa methods, and overall agreement rate of the two methods were 96.4%. The results were just the same for all drugs in 48 out of 56 strains studied. The drug resistance could be observed much earlier by the MGIT method (mean 5.9 days) than by the Ogawa method (more than 21 days). In conclusion, the MGIT system could be a promising new drug susceptibility test which might become available in Japan replacing the Ogawa method.
著者
松本 伸一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-243_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに】 肩関節疾患において、夜間痛は頻繁に遭遇する臨床所見である。三笠らは6~7割にみられるとしており、夜間痛による睡眠障害をきたすことは、患者QOLを低下させると考えられる。また、睡眠障害は慢性疼痛のリスクを高める要因とされており、局所の炎症が減退したのちも、痛覚過敏や患側の不活動を惹起することで治療の妨げになる恐れがある。 檜森らは、夜間痛による中途覚醒を伴う患者において睡眠の質・量ともに低下していることを示唆しているが、中途覚醒が臨床症状へ及ぼす影響については言及していない。また、対象となっている例は手術適応となる腱板断裂損傷例が主であり、肩関節周囲炎患者の臨床像との違いが考えられる。 そこで今回、肩関節周囲炎患者において夜間による中途覚醒の有無が、疼痛・睡眠・精神情緒面に与える影響を調査することを目的とした。【方法】 対象は2017年4月~2018年5月の間に当整形外科クリニックで肩関節周囲炎の診断により理学療法が処方された52症例のうち、両側肩関節周囲炎6例を除外した46例46肩を対象とし(年齢54.4±10.6歳、男性14名、女性32名)、夜間痛による中途覚醒の有無2群に分類した。 測定項目は,精神情緒面としてHospital Anxiety and Depression Scale(以下HADS,不安尺度:HADS-A,抑うつ尺度:HADS-D),安静時・動作時・夜間それぞれの疼痛の強度と睡眠の熟睡阻害感をVisual Analog Scale(以下VAS)を用いて測定した。熟睡阻害度は十分睡眠がとれていると感じる場合は0,全く睡眠がとれないと感じる場合は100とした。Mann-Whitney U検定と対応のないt検定を用いて,2群間の比較を行った。【結果】 覚醒なし群18名、覚醒あり群28名であった。 覚醒なし群HADS-A:4.0±3.0点、HADS-D:7.1±3.7点、安静時痛VAS:7.11±11.2㎜、動作時痛VAS:65.6±15.6㎜、夜間痛VAS:24.7±25.6㎜、熟睡阻害度VAS:12.0±15.9㎜。 覚醒あり群HADS-A:6.0±3.7点、HADS-D:6.5±3.7点、安静時痛VAS:13.3±19.4㎜、動作時痛VAS:68.5±24.5㎜、夜間痛VAS:43.9±29.8点、熟睡阻害度VAS:35.7±27.0㎜となった。 HADS-A、夜間痛VAS、熟睡阻害度VASにて2群間に統計学的有意差がみられた。【結論】 肩関節周囲炎患者の初回理学療法評価時において、夜間痛による中途覚醒がある例では、不安傾向が高く、夜間痛が強く、熟睡が妨げられていることが示唆された。 Chulらは肩痛が持続することで睡眠障害・不安・抑うつ傾向が高まることを、Poulらは睡眠障害と慢性疼痛の関連を報告している。このことから、疼痛に晒される期間や、睡眠障害が持続することは痛覚過敏や不活動性、機能障害の悪化など、慢性疼痛へ移行するリスクを高めると考えられる。早期から夜間痛による覚醒の有無を聴取し、ポジショニング指導や疼痛管理などの対応を検討していく重要性が示唆された。【倫理的配慮,説明と同意】 本研究は、ヘルシンキ宣言に則った文書および口頭にて対象者に対して説明を行い、書面にて同意を得た。