著者
松本 文子
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

平成24年度の本研究の成果としては、第一に、アートプロジェクト開催地の住民5名に対して実施したインタビュー調査の結果を、カチナ・キューブというアプリケーションを用いて3次元空間上で空間的な検討を行ったことである。これは前年度にオハイオ州立大学で習得したQualitativeGISという手法である。結果、積極的にアートプロジェクトに参加する人は生活空間において変容があり、新しい空間の利用機会の増加や、それに伴う空間移動の拡大が確認された。これらの特徴は男性に顕著であり、女性においては空間移動には変容はなかったが、アートプロジェクトにおいての「自己実現」的機能があることが挙げられた。「自己実現」は本研究課題で対象とする「創造性」とも結びつく概念であり、さらなる調査により創造性の生成を明らかにできると期待できる。次に、ハワイ州立美術館におけるコミュニティアートへの支援について調査し、芸術の有する社会的価値についての評価は国際的にはいまだ途上であるという現状を確認した。ハワイ州はPercent for Art Lawという、公共建築物への芸術作品設置に関する法律がアメリカ内で初めて制定された州であり、芸術の社会性について1967年という早い時期から認識されていたと考えられる。しかし、現在ソフト事業やコミュニティアートの支援をしているものの、ハード作品の設置や若手アーティストの育成が中心であり、日本のアートプロジェクトのような地域振興的機能はあまり想定されていなかった。また、国際学会Association for Cultural Economicsの年次大会においては、'festival'のセッションにおいて座長をつとめ、海外の研究者と意見交換を行うことができた。この中で得られた共通認識としては、フェスティバルやアートプロジェクトの価値評価は数値評価やインタビューといった量的or質的評価のどちらかに偏りがちであるが、複数の研究者が協力して実施することにより、研究の意義や貢献性を高めることが必要ということであった。
著者
松本 比佐志
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
看護科学研究 (ISSN:24240052)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.24-33, 2014-03

農薬等、汚染物質、金属類、食品添加物などが食品中に高濃度に含まれていると、ヒトに健康障害をもたらすおそれがある。最近(2007〜2011年度)のトータルダイエット分析による摂取量調査によると、PCBや農薬等の1日摂取量推計値(EDI)は、各々の1日摂取許容量(ADI)の6%未満であった。また、ダイオキシン類の食品を介したEDI はその耐容1日摂取量(TDI)の21%であった。金属のPb、Hg、CdのEDIは、それぞれのTDIの10、21、55 %となった。1986〜2000年度に調査された食品添加物のEDIは、多く見積もったとしても対応するADIの10%以下の値であった。従って、これらの化学物質の毒性の強度、ADIやTDIに対する低いEDI、食品での違反検出率の低さなどを考慮すると、食品とともに生体内に取り込まれた物質または化合物間の相互作用により生体への悪影響が生じる可能性は極めて低いと考えられる。
著者
高木 修作 村田 寿 後藤 孝信 市來 敏章 ムナシンハ マデュラ 延東 真 松本 拓也 櫻井 亜紀子 幡手 英雄 吉田 照豊 境 正 山下 浩史 宇川 正治 倉本 戴寿
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.279-290, 2005-09-20
被引用文献数
8

ブリの無魚粉飼料給与による緑肝の発症原因を、タウリン補足量の異なる無魚粉飼料で41週間飼育したブリ稚魚における、飼料タウリン含量と体内のタウリン含量、胆汁色素含量および肝臓のタウリン合成酵素活性の関連から調べた。タウリン無補足区では、飼育成績は劣り、貧血と緑肝が高率にみられ、肝臓のタウリン含量が低く、胆汁色素含量が高かった。タウリン補足区では、これら劣悪な状況は著しく改善した。肝臓のタウリン合成酵素活性は、全区で著しく低かった。ブリのタウリン合成能は著しく低く、無魚粉飼料にはタウリン補足が必要であり、無魚粉飼料給与による緑肝はタウリン欠乏に伴う胆汁色素の排泄低下と、溶血による胆汁色素の過剰産生により発生することが分かった。
著者
田尻 尚士 松本 熊市 友松 和子
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.157-168, 1972-03-15

[Author abstract]The most important point of jelly making is a rate of combination of pectin, acid and sugar, also temperature of heating and the period of heating time. A jelly of good quality is made by the heating of 103°~105℃, and 20~30 minutes of time. The conbination of optinum condition is said to be as folows; Sugar:65~70%,total Acidj0.5~1.0% as pH 3.0-3.4.and 0.5~1.0% of Pection. The heating temperature and the heating time have influenced on the rate of conbination of sugar, acid and pectin. In case of high concentration of sugar, jelly coagulate in a short time but lack in flexibility and become opaque uneven, more over, if sugar is saturated in the solution, sugar crystal will be found in jelly. In low sugar concentration, the jelly will coagulate after long heating and as the result of the product would be caramelized. In high concentration of acid jelly is clear, transparent and elastic but it has high acid taste, if low acid concentration jellying is slow and the product is cloudy. In high concentration of pectin, the action of coaguration is promoted but product is opaque and lacking in flavour and flexibility, and some what jam like. If low concen tration of both acid and pection, jellying is difficult. A good quality of jelly is made at about pH3.4 and low as pH 2.0 and less, a jelly shows coagulation but after few month syneresis will occur. Moisture content in good jelly is about 43%.[要約]ゼリー製造において最も大切なことは、糖、酸、ペクチンの配合割合である。良質のゼリーを得るには、加熱温度:103~105℃、加熱時間:20~30分、糖:65~70%、酸:0.5~1.0、ペクチン:0.5~1.0%が最適条件である。加熱温度と時間は、糖、酸、ペクチンの配合割合とJelly-Stock中の水分含有量によって左右される。特に糖濃度によって大きく影響される。温度と時間は逆比例の関係となる。糖添加量が高いと、短時間で凝固するが、製品は弾力性に乏しく、不透明な不均質ゼリーとなる。若し、砂糖が飽和点以上に達すると、ショ糖の結晶が現出する。糖濃度が低い場合、高温、長時間をかけても凝固せず、Jelly-Stockはカラメル状となる。酸濃度が高い場合、透明で鮮明な、弾力性に富んだゼリーとなるが、やや酸味が強い。酸濃度が低い場合、ゼリー化が困難で、濃縮に長時間が必要となり、鮮明度の低い、弾力性に乏しいゼリーとなる。ペクチン濃度か高いと、ゼリー凝固は促進されるが、不透明、弾力性に乏しく、風味、芳香不良なジャム状のゼリーとなる。酸、ペクチン濃度が低い場合、特に酸濃度が低い場合、ゼリー化は困難で、長時間の加熱が必要である。糖濃度が高ければ、ペクチン、酸濃度がやや不足しても、ゼリー化は不能であるが、弾力性に乏しく、不透明なゼリーとなる。最良のゼリーを製造するには、加熱温度105℃、加熱時間25分、糖65%、酸1.0%、ペクチン1.0%位の製品となるよう、ゼリー基液を調整することが最良であると思われる。 pHは3.4前後が良質ゼリーの特長で、pH2以下では、酸味が強く感じられる。水分含有量は、34%前後が最良である。
著者
松本照敬著
出版者
春秋社
巻号頁・発行日
1991
著者
平岩 裕康 竹内 義則 松本 哲也 工藤 博章 劉 詠梅 大西 昇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.710, pp.195-202, 2002-03-07
参考文献数
14

本報告では,ノートPCとCCDカメラを利用して,視覚障害者が周囲環境を理解するのを支援するシステムを提案する.視覚障害者が周囲環境を理解する上で必要な情報として,本研究では文字情報を扱うこととした.本手法は,ノートPCに取り付けたカメラから静止画像を撮影し,文字および文字列の有する一般的特徴を利用することにより,文字領域を画像内から抽出する.次に,抽出した画像をOCRに入力することによって音声化し,視覚障害者に画像内にある文字情報を伝える.実環境で撮影した400枚の画像に対して実験を行ったところ,全文字列の67.9%が完全に抽出された.また,25.7%の文字列は一部欠けていたが,文字認識されたときに,人間の知識で補うことができる程度の欠落であった.さらに,地下鉄の駅構内においてフィールド実験を行い,有効な情報が提供できることを確認した.
著者
新澤 秀則 大島 堅一 高村 ゆかり 橋本 征二 島村 健 羅 星仁 久保 はるか 松本 泰子 亀山 康子 亀山 康子
出版者
兵庫県立大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

気候変動枠組条約や京都議定書の締約国会議や補助機関会合にオブザーバー参加することによって, 交渉の進捗をつぶさに, かつ総合的に把握し, 合意の評価と, 今後の課題とその選択肢の比較評価をリアルタイムに提示することに一定の貢献をした。京都議定書の運用, 欧州連合, ドイツ, アメリカの政策動向を調査分析し, 国際枠組みに対する意味合いを考察した。政府以外のアクターとして, 欧州連合, 自治体, NGOを取り上げ, 条約交渉や合意したことの実施に関して果たす役割を, 具体的な事例にもとづいて明らかにすることができた。
著者
瀬川 亜希子 大下 智彦 三好 美智恵 越智 一秀 大槻 俊輔 郡山 達男 松本 昌泰
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.11, pp.2794-2796, 2008-11-10

ムコ多糖症は,通常ほとんどが乳幼児~青年期に肝脾腫,ガーゴイル様顔貌,臍ヘルニア,関節拘縮,巨舌等の所見により診断される.今回,50歳代で初めて撮像した頭部MRIで,多数の血管周囲腔拡大像などの特徴的な所見によりムコ多糖症を疑われScheie病の診断に至った姉妹例につき,鑑別診断上の意義を含め報告する.<br>
著者
松本 光広
巻号頁・発行日
2011

筑波大学博士 (工学) 学位論文・平成23年3月25日授与 (甲第5689号)
著者
林部 祐太 小町 守 松本 裕治
雑誌
研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.10, pp.1-8, 2011-05-09

文脈情報と格構造の類似度を用いた日本語文間述語項構造解析手法を提案する.センタリング理論に基づく局所文脈情報と述語と項候補の共起頻度といった意味的情報という大まかには2つの情報を用いて従来の文間述語項構造解析は行われてきた.ところが,いずれの手法を用いても,「Xを逮捕した」という文をもとに「自首した」のガ格項がXであると判定することはできなかった.そこで本論文では,格構造の類似度と述語項構造解析の履歴を用いることで,文章全体の文脈情報(大域文脈情報)から文間述語項構造解析を行うことを提案する.We improve Japanese inter-sentential predicate argument structure analysis with contextual information and similarity between case structures. Two types of clues have been often used in previous work. One is local contextual information based on centering theory, and the other is semantic information such as co-occurrences between a predicate and an argument candidate. However, those approaches fail to identify the nominative argument in the sentence "He turned himself in to police", even if the document has a sentence like "The police arrested him." Thus, we propose a new method using global contextual information and similarity between case structures in order to exploit global contextual information over a document.
著者
新垣 雅人 児嶋 哲文 平口 悦郎 村上 貴久 松本 譲 寺本 賢一
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.1577-1581, 2006-10-01
被引用文献数
4

横隔膜ヘルニアの1型であるまれな傍裂孔ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は70歳の女性で,固形物摂取時の嚥下困難と嘔吐を主訴に,当院を受診した.上部消化管内視鏡検査とバリウム検査にて,食道裂孔ヘルニアの傍食道型と術前診断した.手術は腹腔鏡下に行い,食道胃接合部および胃上部付近を剥離し,後縦隔内に入り込んでいた胃穹隆部を整復したところ,ヘルニア門は左横隔膜にあり食道裂孔との間には横隔膜脚が介在していた.横隔膜ヘルニア(傍裂孔ヘルニア)と判断し,ヘルニア門を閉鎖した後,食道胃接合部付近剥離による逆流を考慮してToupet法を施行した.術後経過は良好で,11日目に退院した.本症はまれな病態で,かつ術前診断が困難であることより術式の選択に迷うが,本例ではヘルニア門の閉鎖とToupet法を施行し良好な結果を得ることができたことから,本疾患に対し,状況に応じてToupet法などを用いることは有用と考えられる.
著者
浅原 正幸 松本 裕治
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.1442-1450, 2004-05-15

一般的に日本語固有表現抽出で提案されている手法は形態素解析とチャンキングの組合せによる.形態素解析出力結果をそのままチャンカの入力にすると,形態素解析結果より小さい単位の固有表現を抽出することは困難である.そこで,文字単位でチャンキングを行う手法を提案する.まず,統計的形態素解析器で入力文を冗長的に解析を行う.次に,入力文を文字単位に分割し,文字,字種および形態素解析結果のn 次解までの品詞情報などを各文字に付与する.最後に,これらを素性として,サポートベクトルマシンに基づいたチャンカにより決定的に固有表現となる語の語境界を推定する.CRL 固有表現データを用いて評価実験(交差検定5-fold )を行った結果,F 値0.87 という高精度の結果が得られた.
著者
浅原 正幸 松本 裕治
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.4(2002-NL-153), pp.49-56, 2003-01-20

一般的に日本語固有表現抽出で提案されている手法は形態素解析とチャンキングの組み合わせによる.形態素解析出力結果をそのままチャンカーの入力にすると,形態素解析結果より小さい単位の固有表現を抽出することは困難である.そこで,文字単位でチャンキングを行う手法を提案する.まず,統計的形態素解析器で入力文を冗長的に解析を行う.次に,入力文を文字単位に分割し,文字,字種および形態素解析結果のn次解までの品詞情報などを各文字に付与する.最後に,これらを素性として,サポートベクトルマシンに基づいたチャンカーにより決定的に固有表現となる語の語境界を推定する.この手法により,1次解のみを用いる場合より豊かな素性をチャンカーに与えることができ,固有表現抽出の精度を向上させることができた.CRL 固有表現データを用いて評価実験(交差検定 5-fold)を行った結果,F 値約 88% という高精度の結果が得られた.
著者
花田 英夫 岩田 隆浩 菊池 冬彦 劉 慶会 松本 晃治 浅利 一善 石川 利昭 石原 吉明 野田 寛大 鶴田 誠逸 Petrova Natalia Goossens Sander 原田 雄司 佐々木 晶 並木 則行 河野 裕介 岩館 健三郎 亀谷 收 寺家 孝明 柴田 克典 田村 良明 矢作 行弘 増井 亘 田中 孝治 前島 弘則 洪 暁瑜 平 勁松 艾力 玉〓甫 Ellingsen Simon Schlüter Wolfgang
出版者
The Geodetic Society of Japan
雑誌
測地学会誌 (ISSN:00380830)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.203-221, 2009-07-25
被引用文献数
5

The Japanese lunar explorer SELENE (KAGUYA), which has been launched on Sep. 14th, 2007, utilizes VLBI observations in lunar gravimetry investigations. This can particularly improve the accuracy of the low degree gravitational harmonics. Combination of ground based VLBI observations and Doppler measurements of the spacecrafts enable three dimensional orbit determinations and it can improve the knowledge of the gravity field near the limb. Differential VLBI Radio sources called VRAD experiment involves two on-board sub-satellites, Rstar (Okina) and Vstar (Ouna). These will be observed using differential VLBI to measure the trajectories of the satellites with the Japanese network named VERA (VLBI Exploration of Radio Astrometry) and an international VLBI network.<BR>Two new techniques, a multi-frequency VLBI method and the same-beam VLBI method, are used to precisely measure the angular distance between the two sub-satellite radio sources Okina and Ouna. The observations are at three frequencies in S-band, 2212, 2218 and 2287 MHz, and one in X-band, 8456 MHz. We have succeeded in making VLBI observations of Okina/Ouna with VERA and the international network, and have also succeeded in correlating of signals from Okina/Ouna, and obtained phase delays with an accuracy of several pico-seconds in S-band.