著者
小林 敏雄 高木 清 大島 まり
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

低温体療法は脳の一部に血液が流れなくなる虚血性血管障害型の脳卒中に有効であり、1980年代より試みられている。虚血性血管障害が起きると欠血により脳内温度が40度近くに上昇し、このため神経障害が起こり、最悪の場合には死に至る。低温体療法を用いて体を冷やすことで脳の温度を2度から3度下げることにより、発病後の回復経過が良好である症例が報告されている。しかし、現在行われている低温療法は全身を長時間にわたって冷やすため、患者の体力負担が増大し、かえって危険になる場合が起こり得る。そこで、頭と頸部だけを冷やすことにより効果的かつ患者の負担が軽減できるような選択的脳冷却療法が模索されている。本研究では脳内温度の調節のメカニズムを把握すると同時に効率的な選択的脳冷却療法の指針を構築するため、脳内の熱輸送のモデリングおよび数値解析を行った。以上より、本研究では以下の3つのテーマに重点を置いて研究を行った。(1)脳内熱輸送のモデリング(2)数値解析システムの開発(3)医用画像および臨床データとの比較・検証(1)では脳血管網において熱交換を行っていると考えられている、内頸動脈の海綿静脈洞を模擬した同軸円管における対向流型熱交換について、直円管モデルと屈曲管モデルでの数値解析を行った。(2)数値解析にはFIDAPを用い、動脈・静脈の入口に50mmの導入部を設けて安定化を図っている。それぞれの密度・比熱は血液および血管壁で等しく、伝熱方程式に熱拡散係数を与えることで温度の計算を行う。(3)実際の脳冷却を行う際には0.2℃から0.3℃の温度低下が必要とされ、今回の解析でその条件を満たすことが確認された。屈曲管は2次流れの影響により直円管よりも伝熱量が増加し、また拍動流入を与えることで温度境界層が壁面近傍だけでなくなり、より動脈の冷却が促進されることが分かった。
著者
矢野 久子 小林 寛伊
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.40-43, 1995-10-20
被引用文献数
8

病院感染防止対策のうえで, 手洗いの重要性が強調されているにもかかわらず十分な衛生学的手洗いが行われていないという指摘がある. 今回, 気管内吸引前後の看護婦の手洗い行動の観察と手指の細菌学的状態を調べた.<BR>126回の気管内吸引前後における手洗い行動の観察結果では, 吸引前後に手洗いを行ったのは1回 (0.8%) であった. 吸引前後に手洗いをしないで素手で吸引, または吸引に際して手袋の着脱をしなかったのは25回 (19.8%) であった. 観察した全手洗い時間の平均は5.6秒 (標準偏差3.1) であり, 手洗い行動の不十分な現状が明らかになった.<BR>吸引前, 直後の看護婦の手指からはmethicillin resistant <I>Staphylococcus aureus</I> (MRSA), <I>Serratia marcescens, Klebsiella pgumoniae</I>が検出された. 気管内吸引後, 8-12秒の4w/v%手洗い用クロルヘキシジンによる手洗いを行った後では, ほとんど細菌は検出されなかった.<BR>手洗いの不十分な現状とともに手洗いをまず行うことの重要性が明らかになった.
著者
佐伯 潤 山本 精治 矢部 眞人 長崎 淳一 林 健一
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.135-140, 2015-02-20 (Released:2015-03-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1

狂犬病予防法は91日齢未満の幼齢犬にワクチン接種義務を課していない.このようなワクチン未接種幼齢犬は,移行抗体による防御免疫を有する場合もあるが,その消失に伴い免疫を失うと考えられる.狂犬病発生時,幼齢犬が本病の拡大や人への伝播に関与する可能性もあるが,国内での抗体保有状況に関する報告は少なく,その実態は明らかではない.そのため,91日齢未満の幼齢犬における狂犬病中和抗体の保有状況を調査し,狂犬病発生時を考え,家庭で飼育されている幼齢犬の狂犬病ワクチン接種後の中和抗体価の推移を調査した.その結果,中和抗体価8倍以上の幼齢犬は,216頭中34頭と少なかった.幼齢犬への狂犬病ワクチン接種後の中和抗体価は,一時的な上昇にとどまるか,十分に上昇しなかった.しかし,その後の追加接種により感染防御が可能な有効抗体価が得られた.
著者
小林 弘幸 大村 卓矢 山本 知仁
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.233-239, 2015 (Released:2015-04-15)
参考文献数
17
被引用文献数
4

Speech dialogue systems, such as Apple's “Siri,” have gradually become more widespread, and in the near future, a greater number of general users will have the opportunity to communicate with such systems. To facilitate this, it is necessary for the system to communicate more naturally with users, and to realize that both verbal and nonverbal information must be taken into consideration. In this research, using an available speech recognition platform, we have developed simple dialogue system that consider utterance timing and evaluated it. As a result, it is clarified that the mean error of generated pause duration is controlled within 20msec, and the proper fixed pause duration is turned to be 600msec in this system. Moreover, the evaluation of generative models of pause duration showed that the model that synchronized the utterance duration weakly or fixed pause duration (600msec) model tended to get best results.
著者
池田 彩夏 小林 哲生 板倉 昭二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.412, pp.89-94, 2013-01-17

オノマトペとは、音、動き、質感など様々な感覚表現を表す言葉であるが、その一部に複数の感覚に由来するものが存在する。例えば、「ざらざら」は視覚と触覚の両方のイメージを喚起するが、このことを幼児も大人と同じように理解できるかはよくわかっていない。本研究では、視触覚表現を表すオノマトペを対象に、日本人4歳児がオノマトペの示す視覚表現及び触覚表現をどの程度理解しているかをクロスモーダルマッチング法を用いて検討した。その結果、4歳児はオノマトペと視覚及び触覚のマッチング課題に成功し、両課題に正答する幼児も多かった。また課題成績は対象年齢内でも月齢とともに上昇し、その個人差は幼児の語彙力や母親の言語入力との関連を示した。これらの結果から、4歳児はオノマトペの示す視触覚表現とそのクロスモーダルな表現をすでに理解しているが、この時期にそれらの理解をより精緻なものに向上させていることが示唆された。
著者
林 信行 前刀 禎明 外村 仁
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネスassocie (ISSN:13472844)
巻号頁・発行日
vol.9, no.18, pp.132-135, 2010-11-02

外村 それにしてもiPhoneはうますぎた。「アップルが電話を再発明する」というコピーも良かったけど、そこにいく流れが見事。「今日は革命的な製品を1つではなく3つ紹介する。1つ目はタッチ機能があるワイドスクリーンのiPod。2つ目が革命的な携帯電話。3つ目は画期的なインターネット機器だ」と。
著者
小林 洋介
出版者
早稲田大学史学会
雑誌
史觀 (ISSN:03869350)
巻号頁・発行日
no.153, pp.一-二一, 2005-09-26
著者
小林多喜二 著
出版者
戦旗社
巻号頁・発行日
1930
著者
鈴木 啓助 石井 吉之 兒玉 裕二 小林 大二 Jones H.G.
出版者
北海道大学
雑誌
低温科学. 物理篇 (ISSN:04393538)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.93-108, 1993-03
被引用文献数
6

融雪におよぼす森林の影響を検討するために,カナダ東部北方針葉樹林地において,融雪水の流出機構に関する調査を行なった。森林内外に気象・融雪に関する観測機器を設置し,その他の測定方法も内外で同一にして調査を行なった。その結果,森林内外の降水中のNH_4^+とNO_3^-の窒素化合物濃度については林内で林外より低濃度になっており,生物活動による化学変化および消費が推察された。また,積雪下面融雪水中の溶存物質濃度は,林外でのみ日変化が明瞭であり,日変化のパターンはH^+とNO_3^-が同じで,Ca^2^+とSO_4^2-はそれと逆の変動パターンを示す。林外での積雪下面融雪水の水量とH^+濃度による流出成分分離の結果,各融雪日の融雪初期には,積雪下層の積雪内部融雪水が,押し出し流によって流出し,その後に積雪表面から供給された当日の融雪水が流出すると考えられる。
著者
時下 進一 時下 祥子 志賀 靖弘 太田 敏博 小林 道頼 山形 秀夫
出版者
日本陸水学会
雑誌
日本陸水学会 講演要旨集 日本陸水学会第69回大会 新潟大会
巻号頁・発行日
pp.145, 2005 (Released:2005-09-21)

淡水圏の食物連鎖において重要な位置を占めている枝角目甲殻類(ミジンコ類)は、低酸素に応答するヘモグロビンの顕著な増加と体色の赤化、環境悪化に応答する単為生殖から両性生殖への転換、捕食者の出す化学物質に応答する形態変化など、特異で興味深い環境応答を示す。また飼育が容易で多数の遺伝的に均一な個体が得られるなど、実験材料として優れた性質を備えている。本発表ではミジンコ類の環境応答および形態形成機構について我々が行なっている分子生物学的研究の概要を紹介するとともに、6種類見いだされたヘモグロビンサブユニット鎖の構造と分子進化、それらの遺伝子のクラスター構造と発現調節について詳しく報告する。
著者
中瀬 明男 小林 正樹
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, 1979-03-15

錦江湾及び広島空港の軟弱粘性土地盤におけるサンドドレーン工事の2例について圧密現象とその解析について報告したものである。まず前者については, 間隙水圧の消散, 沈下〜時間曲線ともに標準圧密試験より求めた鉛直方向排水による圧密係数c_vを用いて計算するとよく観測値と一致し, c_vの6倍程度大きい。水平方向排水の圧密係数c_hを用いることはできない。また強度増加についても現地観測より求めたc_u/Pと室内実験で求めた値とがよく一致した。一方後者は地盤がc_vの異なる各層よりなっているが, 無処理区間においては各層の平均のc_vを用いたもの, 各層異なるc_vを用いたときも過少な沈下量の値が計算されるが, サンドドレーン区間においては, 水平及び鉛直方向の圧密度を合成すると, かなり観測値とよい一致を示す。以上のことからサンドドレーンにおいては標準圧密試験のc_vが実際上適用されること, 一次元圧密においては標準圧密によって地盤全体のc_vを過少評価することを指向し, それらの原因について検討している。