著者
藤田 恒夫 桑原 厚和 金澤 寛明 岩永 敏彦
出版者
新潟大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

1.腸の分泌に関係する細胞要素としては、消化管に広範囲に分布するEC細胞とVIP含有神経が最も重要である。二重染色の結果は、EC細胞とVIP神経が密接な位置関係にあることを示した。2.イヌの十二指腸を用いたin vivoの生理実験で、セロトニンとVIPは単独投与により、腸の分泌が亢進した。同時投与により、分泌は飛躍的に増大した。セロトニン投与により門脈中のVIP濃度が上昇することと考え併せると、下痢はEC細胞から分泌されたセロトニンが近傍のVIP神経に局所ホルモンとして作用しVIPの放出を招く結果、セロトニンとVIPの相乗効果により腸分泌が強く刺激された状態と理解される。3.PACAP(Pituitary Adenylate Cyclase-Activating Polypeptide)が腸上皮のイオン輸送を強く刺激することがわかった。PACAPによる塩素イオンの分泌亢進は、コリン作動性および非コリン作動性神経の刺激を介した間接作用である。PACAPにはVIP放出作用があることから、この分泌反応の最終信号物質はVIPであると思われる。4.セロトニンによる腸分泌に関する受容体のタイプを特異的な拮抗薬を用いて検討し、5-HT3と5-HT4であることを示した。5.黄色ブドウ球菌が産生する毒素であるStaphylococcal enterotoxin(SEA)は、激しい嘔吐を起こすことが知られている。本研究ではSEAの腸管内投与が下痢を起こすことを示し、この分泌反応にはEC細胞が関与する可能性を示した。
著者
桑原 牧子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.82, 2009

タヒチ社会では西欧人接触以前から現在に至るまで、生物学的には男性として生まれたが、家事や子育てなど、女性としての役割を担うマフ(mahu)と呼ばれる性を生きる人々がいる。近年になり、このマフに加えて、女装や化粧をする人々に対してラエラエ(raerae)という呼び名も使われるようになった。本発表では、そのようなマフとラエラエの名称の呼び名の使われ方をタヒチ島とボラボラ島の事例を比較して分析する。
著者
桑原 徹 植下 協 板橋 一雄
出版者
土質工学会
雑誌
土質工学会論文報告集
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, 1979

この報告は, 濃尾平野の地盤沈下の近況と解析を主体にして述べている。すなわち, 濃尾平野の地盤構造, 地盤沈下の経年変化と現況, 地下水位の経年変化, 深層土質調査結果, 深層の横方向載荷試験結果, 地盤沈下量の解析と将来予測, 地盤沈下と温泉との関係について述べている。地下水の状況については, 多くの単層取水井の水位資料を用いて, 過去の地下水位と水位低下速度を推定し, 平面分布を示している。深層土質については, 飛鳥観測井設置時に得た不かく乱サンプルにより, 物理特性及び力学特性を明らかにしている。また, 横方向載荷試験により, 深度と地盤の変形係数との関係も明らかにしている。地盤沈下の解析では, シフマンの定率漸増荷重の場合の圧密式を用い, 地下水位の低下傾向を実測値に基づき仮定し, 地盤沈下経過を計算しており, 実測値と良く一致した結果を得ている。
著者
矢吹 朗彦 木村 晋亮 桑原 惣隆
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.p1681-1686, 1978-12

著者は,無脳症の発生要因として,遺伝的因子を基盤に,サイトメガロウイルス(CMV)とコクサッキーウイルスB (Cox B)の重複感染が関与する可能性について報告を行つて来た.本稿では,正常児妊娠母体と無脳症妊娠母体に於ける両ウイルス抗体保有の比較,及び無脳症娩出後再妊娠経過中の母体血中の両ウイルス抗体価の推移と分娩結果について検討した. 無脳症妊娠母体群のCMVとCox Bタイプ4及び5 (Cox B-4,5)の補体結合反応(CF)抗体保有率は,各々92.3%と76.9%であり,両ウイルス抗体同時保有率は69.2%であつた.一方,正常児妊娠母体群に於ける上記抗体保有率は,各々52.5%,12.5%及び5.0%であり,2群には明らかな差が認められた. 無脳症娩出後非無脳児を出産した母体3例に於ける血中CMV抗体は,妊娠経過での追跡調査で,CMV潜伏性持続感染を裏ずける価を持続していた.しかしながら,Cox B抗体は陰性化し,再妊娠経過中,本ウイルス感染が胎芽に影響を及ぼした事実は認められなかつた. 以上の結果から,持続感染,即ちヒト染色体上に組み込まれたCMV遺伝子が,妊娠及びCox Bらのウイルス感染の条件下で誘発活性化され,無脳症発生の共通baseとして共存するgenomeと結びつく時,宿主細胞をteratogenicな方向へtransformする能力を有して来ると推定された.
著者
垣迫 健二 桑原 亮彦 多田 出 森本 章生 小林 迫夫
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.2097-2101, 1993-08-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
22
被引用文献数
1

Chilaiditi症候群は,右横隔膜と肝臓の間に消化管の一部が嵌入した総称であるが,本症候群には特有の症状がなく,偶然に発見されることが多いと言われている.今回われわれは,右横隔膜下に回腸が嵌入し,絞扼性イレウスを呈した症例を経験した.症例は67歳男性で,右季肋部痛を主訴に近医により紹介され入院となった.腹部所見,腹部X線検査, CT検査などの結果,絞扼性イレウスを合併したChilaiditi症候群と診断し,緊急手術を施行した.肝右葉と腹膜との間に既往の肝炎によると思われる索状物を認め,同部に回腸の一部が嵌入,絞扼し壊死を伴っていた.小腸型のChilaiditi症候群は稀な疾患であり,文献検索上,本例では13例を数えるに過ぎないが,そのうち7例で絞扼性イレウスが認められた.小腸型のChilaiditi症候群では,絞扼性イレウスを合併することが多く,注意が必要であると考えられる.
著者
渡辺 直明 桑原 誠 桑原 繁
出版者
東京農工大学
雑誌
フィールドサイエンス (ISSN:13473948)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.31-35, 2003-03-25

FM草木のヒダナシタケ目菌類の調査記録をまとめた。FM草木内で採集され,FM大谷山施設棟に保管された標本は21科59属88種であった。西田(1963)や群馬県立自然史博物館(1998)の菌類リストの報告と比較すると,未記録のものが11種あった。
著者
桑原 一歌
出版者
同志社大学
雑誌
同志社国文学 (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
vol.75, pp.1-13, 2011-12

『枕草子』「五月ばかり、月もなういと暗きに」段では、当意即妙の応答に成功したかに見える清少納言が、竹の異名「この君」を知らなかったと言い続ける様が描かれる。「この君」の元となった王徽之による「此君」の故事には、俗物への皮肉が込められていた。知的な応答を試みるあまり故事の世界に肉薄しすぎた清少納言が、貴族の美意識から逸脱することを懸念しつつ描き出したのが当章段であると考え、かなの散文作品による表現方法として位置づけた。
著者
大島 悦男 佐藤 秀幸 小場瀬 宏之 内村 達雄 桑原 隆 小林 智
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.2552-2554, 1992-09-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
8
被引用文献数
2 6

(Z)-11-[3-(Dimethlamino)propylidene]-2-(methoxycarbonyl)methyl-6, 11-dihydrodibenz[b, e]oxepin-9-acrylic acid (5) was prepared for application to the radiommunoassay of KW-4679 (1, (Z)-11-[3-(dimethylamino)propylidene]-6, 11-dihydrodibenz[b, e]oxepin-2-acetic acid hydrochloride). The acrylic acid moiety in the 9-position of 5 was employed for coupling with an amino group of bovine serum albumin (BSA) to provide 17. Subsequently, the conjugate 17 was treated with aquenus NaOH to hydrolyze the terminal methoxycarbonyl group in the 2-position of the BSA conjugated 5. Antiserum raised against the antigenic BSA-conjugate 4 finally obtained was specific for 1.
著者
大島 美紀 粟屋 幸一 藤井 隆之 小泊 好幸 桑原 正雄
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.412-419, 2000
参考文献数
16
被引用文献数
2

Chlamydia pneumoniae感染の急性気管支炎や気管支喘息の発症, 増悪における関与を検討した.対象は1週間以上咳, 痰が持続した当科外来患者131例(急性気管支炎患者(AB)60例, 気管支喘息患者(BA)71例)とコントロールとしての健常人(NP)20例とした.血清を用いてChlamydia抗体価をELISA法にて測定し, 喀痰細菌検査を行った.抗体保有例はAB88.4%, BA73.3%, NP60%でABが有意に高率であった.IgA抗体価はABが, NPおよびBAと比較して有意に高値であった.急性感染例はAB20%, BA15.5%, NP10%で有意差は認めなかったC.pneumoniae急性感染症例のうち急性気管支炎例では58%, 気管支喘息例では36%がS.pneumoniaeとの混合感染であった.以上より, C.pneumoniaeは急性気管支炎の発症に関与している可能性が示唆された.また急性気管支炎と気管支喘息のC.pneumoniae急性感染症例のなかで高率に細菌(特にS.pneumoniae)との混合感染を認め, 症状の増悪に関与していると考えられた.
著者
小玉 一徳 桑原 宏明
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.63, 2016

本稿は、2015年10月10日(土)-11月23日(月)に開催されたのせでんアートライン妙見の森2015において、設計制作した鉄道沿線を舞台にした移動型インスタレーション作品の実施報告であった。設計制作のねらいとしては、「沿線を移動する」「場面を作る」「人を呼ぶ &minus;駅スタンプ&minus;」という3つのキーワードがあった。実際に設計制作したのは、キャスターのついた箱型のもので、内部に駅スタンプを設置させた装置であった。実際の運用においては、安全面の配慮から、電車の乗車や駅構内の設置場所に制限があったが、仮設の装置が場を変容させ人々に何らかの働きかけを促すことが確認された。 今後も、小さな建築・家具による仮設装置によって、人と空間の関係がどう変化し何を生むのか、設置される場所の力をどう引き出すのか、などその効果ついて実施・検証していきたい。<br>
著者
桑原 智美 藤田 智子 倉持 清美 阿部 睦子 菊地 英明
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, 2017

【研究目的】<br /><br />厚生労働省の2016年食中毒統計資料によるとノロウィルス、カンピロバクター、植物性自然毒などの食中毒の患者総数が多く挙げられている。小学校家庭科の調理実習で作ったカレーのジャガイモのソラニンによる食中毒(2015年読売新聞)や、高校における冷やし中華によるカンピロバクター食中毒(1992年)なども報告されている。後者では鶏肉に付着したカンピロバクターが手指、器具などを介して調理食品を汚染する二次汚染が発生要因として推定(群馬県伊勢崎保健所)されている。このように調理実習で生じる食中毒は度々報告されており、衛生に関する授業開発は喫緊の課題である。学校現場での衛生管理の問題点を明らかにするために調理室や手洗い後の細菌検査を行った研究(石津、大竹、藤田他 2016)はあるが、生徒の食材の扱い方や食材管理上のリスクついては十分に検討されていない。本研究では、まず、調理実習で使用する食材に付着する菌について調べ、教師が食材管理上気を付ける点を整理する。次に、生徒の食材の扱い方の実態を把握し、衛生面についてどのような指導が必要なのかを明らかにする。生徒が衛生を意識した行動をとれているのかも検討する。<br /><br />【研究方法】<br /><br />1.食材調査:小学校、中学校、高校の教員9名に、調理実習時に使用する食材、衛生面で気になる点について調査した。それを基に、頻回に使われる食材について、培地を使用し菌の発生を調査した。<br /><br />2.調理実習時の生徒の食材の扱い方:都内S中学校、第3学年4クラスで、バナナケーキ調理時にバナナの皮を触った手で、そのまま触る場所を調査した。バナナは皮に菌が付着していることが多いため食材として選定した。2016年11月家庭科の授業(50分)で行った。実習グループ4人のうち1人は、バナナの皮を触った生徒が、その後に触れた箇所を、調理器具や調理台など17箇所を写真で示したチェックシートにシールを用いてチェックした。もう1人はバナナの皮を触った生徒の動きをiPadで録画した(アプリケーションソフト「ロイロ・ノート」使用)。バナナの皮を触った生徒が皮を捨てて手を洗った時点で記録の終了とした。<br /><br />【結果と考察】<br /><br />食材管理の観点から、食材配布時のトレーおよび食材について細菌検査を行った結果、肉には細菌が付着していることが明らかになったが、他の食材については結果にばらつきがあった。食材購入時にすでに細菌が付着している可能性があると考えられ、教員は細菌付着の可能性を踏まえたうえで食材管理をすることを再認識する必要があるだろう。また、細菌検査の結果を、他の教員および児童・生徒向けの教材として用いることは有効ではないかと考えられた。<br /><br />調理実習時の生徒の食材の扱い方について、バナナに触れた38名が、手を洗わないまま触った箇所は、17箇所のうち、0~15箇所、平均は6.9箇所であった。触ったのべ回数は、0~68回、平均は22.2回であった。バナナを触った直後に皮を捨てて手を洗った生徒もいれば、手を洗わずに多くの箇所を触る生徒もいるといったように、個人差が大きかった。触る回数が多い箇所は、蛇口、カップ側面、まな板、カップ内側、包丁であった。食材を触った手で様々なものに触れる生徒もおり、食中毒予防には生徒側の衛生に関する理解が必要であると考えられた。生徒の衛生面に関する配慮は個人差があると推察され、安全に調理実習を行うためには、教育の必要性が再認識された。また食材の扱い方調査において、記録をした生徒の衛生意識が高まっていることが授業後の感想から見て取れた。生徒たちの実態把握の方法としてだけでなく、授業方法としても今回のシールと映像を使った記録方法の有効性が示唆された。<br /><br />なお、本研究は東京学芸大学平成28年度教育実践研究推進経費「特別開発研究プロジェクト」の研究成果の一部である。