著者
森田 浩之
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.37-48, 2012-03-25 (Released:2016-09-06)
参考文献数
14

本稿は、東日本大震災後にメディアに表れたスポーツにからむ「物語(ナラティブ)」を検証し、その功罪を検討する。 「未曾有の国難」に沈む日本と被災地を、スポーツとトップアスリートが元気づける──そうした動きと思想は、まずヨーロッパでプレイするサッカー選手3人が出演するACジャパンの公共CMにみられた。「日本の強さは団結力です」「日本がひとつのチームなんです」という選手たちのせりふは何げないものに聞こえるが、そこには日本のメディアスポーツが語りつづけてきた物語が詰まっていた。 メディアが大震災と最も強く結びつけた大ニュースが、「なでしこジャパン」の愛称で知られるサッカー日本女子代表のワールドカップ優勝だった。ひとつは国家的悲劇であり、もうひとつは国民的慶事と、対照的にみえるふたつの出来事が、メディアによって強く接合された。なでしこジャパンは被災地から「元気」をもらったとされ、なでしこが世界一になったことで被災地も「元気」をもらったとされた。それらの物語はどのメディアをとっても均質的、類型的であり、東北出身の選手や東京電力に勤務したことのある選手には特別な役回りを担わせていた。しかもメディアが意図したかどうかにかかわらず、「あきらめない心」や「粘り強さ」といったなでしこジャパンの特徴とされるものは、3.11後の「日本人」に求められる心性と重なっていた。 このような均一化された物語の過剰は、「絆」ということばが3.11後のキーワードになることに加担した。被災地との「絆」がつねにあるかのように語られることで、現実には存在する非・被災地との分断が覆い隠されるおそれもある。
著者
森田 明雄 小西 茂毅 中村 順行 清水 絹恵 横田 博実
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.1-9, 2004 (Released:2004-03-18)
参考文献数
18
被引用文献数
2 4

日本で育成された緑茶用品種の中から29品種を選び,それぞれ一番茶生育期前(3月1日)の成葉と摘採適期の一番茶新芽を採取し,全窒素,全遊離アミノ酸,テアニン,タンニン,カフェイン,ビタミンC含量を近赤外分光法により測定した.その結果,一番茶では,育成年と茶の滋味に関係する全窒素,遊離アミノ酸並びにテアニン含量との間に正の相関が認められた.つまり,育成年が新しい品種ほどそれらの窒素成分含量が高かった.しかし,同じ窒素化合物でも,苦味成分であるカフェイン含量には育成年の新旧に応じた差はなく,また渋味成分であるタンニン含量は反対に育成年との間に負の相関が認められた.一方,一番茶生育期前に採取した成葉でも,一番茶と同様に育成年と全窒素,遊離アミノ酸,テアニン含量との間に正の相関が認められ,育成年の新しい品種ほどこれらの窒素成分含量が高かった.しかし,成葉においては,育成年とタンニン含量との間に有意な相関はみられなかった.また,一番茶と一番茶生育前の成葉の全遊離アミノ酸含量同士の間に正の相関が示された. 次に,上述の煎茶用品種の中から1960年以降に育成された10品種を選び,一番茶摘採前期,後期,終期に相当する5月4日,14日,17日の3回,一心五葉芽の一心三葉部分のみを採取し,全窒素含量と可溶性窒素(全遊離アミノ酸に相当)含量を分析した.その結果,いずれの収穫日においても,摘採適期に収穫した場合と同様に,育成年と全窒素並びに可溶性窒素含量との間に高い正の相関を示した. これらの結果から,チャの育種では,近年の栽培等の技術の進展を背景に,滋味成分である窒素成分含量が高く,渋味成分であるタンニン含量の少ない茶葉をもつ個体が選抜されたことが示された.また,摘採適期に収穫した一番茶以外でも,一番茶生育期前の成葉または摘採期前期から終期までの新芽の一心三葉部分のみを試料に用いた成分分析値も,チャの成分育種の効率化に有効な資料として活用できることが示された.
著者
森田 二郎 大浦 良三 関根 純二郎 ハッサム エルディン モハメド カメル
出版者
Japanese Society of Sheep Science
雑誌
日本緬羊研究会誌 (ISSN:03891305)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.30, pp.22-24, 1993

めん羊および山羊の飲水量の違い, ならびに年間を通じての飲水の供給日量を推定する目的であん羊3頭および山羊3頭の年間を通じての飲水量の調査を行った。給与飼料の種類は異なるが, 乾物摂取量は, めん羊でほぼ700g/日程度, 山羊で, 900g/日程度であった。飲水量の平均日量はめん羊が山羊よりやや少ないが, 両種とも冬季に少なく, 夏季に多くなる変化を示し, 気温の変化のパターンと同じであった。乾物摂取量あたりの飲水量は, 両種ともほぼ同じであった。乾物摂取量あたりの飲水量の5日間の移動平均値による解析から, 日平均気温が15℃以下の時期では2.5~3.0g/乾物g, 15℃以上25℃以下の時期では4.0~6.0g/乾物g, 25℃以上の時期では7.0~8.0g/乾物g程度の飲水量が必要となると推察した。
著者
川邉 千津子 石井 洋平 藤木 僚 小路 純央 森田 喜一郎
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.451-461, 2013-10-15

要旨:「神経衰弱」実施による脳機能の精神生理学的評価および治療効果の検証へと繋げるため,高次脳機能障害(患者)群と健常群を対象に,前頭極部,前頭葉背外側部,頭頂葉前中部の酸素化ヘモグロビン変動量を近赤外分光法を用い検討した.結果は,患者群は健常群と比較し有意な低下(前頭極部,前頭葉背外側部,頭頂葉前中部いずれもp<0.001)を認めた.また酸素化ヘモグロビンは,健常群では時間経過に伴う増加や左前頭葉背外側部と右頭頂葉前中部で対側と比較し増加を認めたが,患者群では時間経過に伴う増加や左右差を認めなかった.患者群は「神経衰弱」の遂行に関与するワーキングメモリーを司る部位が十分に賦活されていないことが確認された.
著者
北村 直彰 森田 紘平
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-22, 2019-12-30 (Released:2020-06-20)
参考文献数
27

Ontic structural realism (hereafter OSR) is one of the most significant ontological attitudes toward modern physics. On close examination, OSR can be classified into several versions in terms of the relative ontological status of objects and relations. Previous studies have not carefully dealt with the differences among the several versions of OSR, mainly because the meanings of some metaphysical concepts are ambiguous. Among them, one way to formulate OSR is to appeal to the idea of identity. However, “identity” can be regarded as either numerical identity or essence. In this article, the derivations of OSR’s minimal statements from the cases in quantum theory give a clear-cut explanation about relationships between metaphysical and scientific statements and show that the formulation of OSR should be based on essence.
著者
森田 栄伸 高橋 仁 金子 栄 千貫 祐子 東儀 君子 髙垣 謙二 辻野 佳雄 三原 祐子 石飛 朋子 福代 新治 山田 義貴
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.607-615, 2014-12-01 (Released:2015-04-16)
参考文献数
11

島根県下 5 医療施設を受診した慢性蕁麻疹患者のうち,フェキソフェナジン塩酸塩の通常量 (120 mg/day) の服用にて効果不十分であった 24 例の患者を対象に,フェキソフェナジン塩酸塩の増量 (240 mg/day) 群 (フェキソフェナジン増量群:12 例) あるいはオロパタジン塩酸塩の通常量 (10 mg/day) への変更群 (オロパタジン変更群:12 例) の 2 群に無作為に割付,その後 4 週間の臨床症状を蕁麻疹重症度スコア,蕁麻疹活動性スコア,改変した蕁麻疹活動性スコア (modified Urticaria Activity Score : mUAS) により解析した。蕁麻疹重症度スコアは,フェキソフェナジン増量群では最終評価時に有意なスコア低下を認め,オロパタジン変更群では割付 4 週後および最終評価時に有意な低下を認めた。mUAS は,フェキソフェナジン増量群で 0∼1 週,2∼3 週,3∼4 週,最終評価時において有意な低下を認め,オロパタジン変更群で 1∼2 週においてのみ有意な低下を認めた。以上の結果からフェキソフェナジン通常量投与で効果不十分な慢性蕁麻疹に対してフェキソフェナジン倍量の増量投与は症状の改善に有効であり,さらにオロパタジン通常量への変更も効果はやや劣るものの有効であると結論した。フェキソフェナジンの倍量投与に要する費用の観点からは,抗ヒスタミン作用の高いオロパタジンへの変更も選択肢となり得ることが示唆される。(本論文は第 76巻4号〔2014年8月号〕p.p.372-380 に掲載されたものを一部訂正し,再掲載したものである。訂正箇所は下線にて表示している。)
著者
森田 匡俊 奥貫 圭一 塩出 志乃
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.85, no.6, pp.608-617, 2012-11-01 (Released:2017-11-16)
参考文献数
16
被引用文献数
1

高齢化に関して,都市部における老年人口の多さが社会的問題になりつつある.ところが,高齢化率のみを見ると,都市部では総人口も多いために問題を過小評価する可能性がある.そこで本稿では,愛知県を対象地域として,老年人口密度の分布を考慮した高齢化率の空間的分布パターンの把握を試みた.まず,高齢化率と老年人口密度についての階級区分図から,両値の空間的分布パターンを比較検討した.次に,2変量ローカル・モラン統計量を用いて両値の空間的相関関係に基づく地区の類型化を行った.その結果,老年人口密度の高い都市部における高齢化と,高齢化率のみが高い農山村部における高齢化とを,その性質の違いを踏まえて同時に把握できた.そのほか,都市部における高齢化を二つのタイプに分けて把握できた.また,可変地区単位問題による分析結果への影響を考察した結果,愛知県では,1 kmメッシュデータの利用が有効であった.
著者
森田 匡俊
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.179-196, 2008-05-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
18
被引用文献数
1

私たちが道路ネットワークデータを取り扱うとき, 高速道路や国道などの主要道路のみを整備したもの, 主要道路に県道や市道を含めて整備したものといった具合に, 同じ地域でも詳しさの違うデータがある場合が多い. 詳しさが違うと, 道路ネットワークの総延長距離が異なったり, 道路ネットワーク上の任意の2点間の最短経路が異なったりする. 本稿では, このネットワークの詳しさを詳細度と呼び, その違いが空間分析に与える影響を考えた. 具体的には, 空間分析法の中でもネットワークK関数法を取り上げ, ネットワークの詳細度によってその分析結果が異なってしまう問題を検討した. まず, ネットワークK関数値の振る舞いを放射ネットワークについてモデル化して, ネットワークの詳細度との関係を検討した. 次いで, 実際の道路ネットワークを利用して, ネットワークK関数値の振る舞いとネットワークの詳細度との関係を明らかにした. その結果, ネットワークK関数値にはネットワークの詳細度によらない下限値のあることがわかり, その下限値を利用すればネットワークの詳細度によらず分析結果を一意に解釈できる場合のあることがわかった.

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著者
森田 愛子
出版者
日本読書学会
雑誌
読書科学 (ISSN:0387284X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3-4, pp.113-123, 2015-03-31 (Released:2017-01-28)
参考文献数
14