著者
森田 学 鶴見 真由美 平岩 弘 坂田 真理子 岸本 悦央 近藤 充宏 渡邊 達夫
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.205-210, 1987-03-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
21
被引用文献数
3 2

歯口清掃による歯の動揺度の改善を, より客観的に評価することを日的として, 動揺度測定装置 (TMC-01) を考案し, 臨床応用を試みた。この装置は, 歯を水平方向に移動させるのに必要な荷重を連続量 (g) で表示するものである。外来患者20名 (被検歯総数216本) を対象に, 来院時毎に, 徹底した歯口清掃と歯間部の清掃を主日的とした刷掃指導を行った。動揺度は, 初診時, 2週, 4週, 8週後にTMC-01を用いて測定し, 同時にプラーク付着状態も診査した。その結果, (1) 動揺歯の荷重平均は, 初診時101g, 2週後141g, 4週後147g, 8週後157gであり, 短期間のうちに著明な改善が認められた。 (2) 2週後で74%, 8週後で85%の動揺歯に改善が認められた。 (3) 初診時, 79g以下の力で動揺を示した歯は, 2週以後の改善傾向が減少したが, 809以上の力で動揺を認めた歯は, 期間全体を通じて改善した。以上より今回用いた装置は, 動揺度の測定に応用できる可能性が示唆された。
著者
中村 節子 森田 佐加枝 井上 浩一 広田 保蔵 小林 瑛児 磯山 恵一 山田 耕一郎 石川 昭
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.481-488, 1992-10-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
28

未熟児貧血の存在はよく知られているがその成因は充分に解明されたとは言い難い.赤血球系造血因子であるエリスロポエチン (Epo) がいかに未熟児貧血に関与しているかを知る目的で早期新生児の血清Epo濃度の測定を行った.被検対象は成熟児42例 (出生体重2, 558~3, 9469, 在胎日数245~295日) , 未熟児28例 (出生体重1, 450~2, 4509, 在胎日数224~266日) であり, 検体採取は日齢5に行った.また, 貧血発症を早期新生児期のEpo濃度より予測し得るか否かを知る目的で, 日齢6以内の未熟児38例について生後12週までに貧血 (Hb<10g/dlとする) を発症した群17例と非発症群21例に分けてEpo濃度を測定し, 検討した.臨床的に明らかな異常の認められるものは対象から除外した.Epo測定はラジオイムノアッセイにより行い, Epoと同時にヘモグロビン (Hb) , ヘマトクリット (Ht) も測定した.日齢5の成熟児群のHb値は17.02±1.739/dl, Ht値は52.41±5.33%であり, 未熟児群のHb値は15.96±2.359/dl, Ht値は48.80±6.99%であった.Hb値, Ht値いずれも未熟児で有意に (P<0.05) 低値を呈した.これに対して, 日齢5のEpo値は成熟児群で9.83±3.14mU/ml, 未熟児群で10.02±3.48mU/mlでありいずれも健康成人の正常値下限に分布したものの, 両群問において有意差は認められなかった.すなわち, 未熟児群では成熟児群に比し, Hb, Htが低値にもかかわらず, Epo値は高値を示さなかった.また, 日齢6以内の未熟児で貧血発症群のEpo値は11.37±4.92mU/ml, 非発症群は9.17±3.10mU/mlであり, 貧血発症群でやや高値を示したが, 統計学的有意差は認められなかった.したがって, 早期新生児期のEpo値から将来の貧血発症を予測することは, 今回の結果からは困難であった.未熟児のHbとEpo濃度の関係についても検討したが, 相関は認められなかった.未熟児における赤血球系計測値は出生体重や在胎期間の影響をうけ, 一般に成熟児より低値を示す.Epoについてこれらの影響を検討したが出生体重, 在胎期間いずれとも相関を示さなかった.
著者
木村 和孝 皆川 輝彦 森田 真理 長谷部 行健
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.77, no.8, pp.2106-2110, 2016 (Released:2017-02-28)
参考文献数
16

症例は79歳,女性.現病歴:BMI36と肥満のある患者.排便をしようといきんだところ,右側臍部から便が出たとのことで,近医を受診し入院加療,手術目的に当院紹介となった.臍部に手拳大の膨隆を認め,一部皮膚壊死を起こした部位より便汁の流出が認められた.腹部CT上,臍部にヘルニアを認め,ヘルニア門は35×80mm,ヘルニア内容は小腸,大腸,および大網で,ヘルニア嚢内にfree airを認めた.ヘルニア嵌頓に伴う消化管穿孔の診断にて手術となった.手術は皮膚瘻の創を延長するように正中切開を行った.ヘルニア嚢を皮下より全周性に剥離し,開放すると大網がヘルニア嚢に癒着しており,大網の間隙から横行結腸が脱出し嵌頓,穿孔していた.小腸は虚血の所見なく,臍ヘルニア自体による絞扼は認めなかった.穿孔部位を切除し,end GIAを用いてfunctional end-to-endにて吻合した.汚染創であるためメッシュは用いず,単閉鎖にてヘルニア修復とした.術後経過は良好で20病日目に退院となった.
著者
壁谷 英則 藤田 雅弘 森田 幸雄 横山 栄二 依田 清江 山内 昭 村田 浩一 丸山 総一
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.70-74, 2008-01-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

全国23都道府県のペットのグリーンイグアナについてSalmonella, PastemllaおよびStaphylococcusの保菌状況を検討した.Salmonellaは, 98頭中17頭 (17.3%) の糞便から分離された. 分離株49株中47株は, 生物群IVのS. enterica subsp. houtenaeであり, わが国のイグアナが原因と思われる乳児サルモネラ症の原因となった血清型45: g, Z51:-が3株, 生物群IのS. enterica subsp.entericaも2株分離された. 陽性個体17頭由来の17株中9株 (52.9%) はstreptomycin耐性株であり, また, すべての株は上皮細胞侵入因子 (invA) およびエンテロトキシン (stn) 両遺伝子を保有していた.P. multocidaは89頭中3頭 (3.4%) から, また, S. aureusは18頭 (20.2%) の口腔からそれぞれ分離された.
著者
森田 十誉子 山崎 洋治 湯之上 志保 細久保 和美 武儀山 みさき 藤井 由希 石井 孝典 高田 康二 冨士谷 盛興 千田 彰
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.255-264, 2012-08-31 (Released:2018-03-15)
参考文献数
34

目的:集団健診における歯周病のスクリーニングには,CPIが通常用いられているが,検査に時間を要し,受診者の負担も大きいことから,簡易な検査法が求められている.本研究では,検査紙を用いた唾液検査と自覚症状を尋ねる質問紙調査との組合せによる歯周病スクリーニング法の有効性を検討した.材料および方法:対象は,某事業所の歯科健診を受診した成人のうち,本試験への参加に同意が得られた468名(平均年齢36.6歳,男性362名,女性106名)とした.唾液検査に用いた試料は,蒸留水で軽く洗口した後の吐出液とし,検査指標はヘモグロビン,タンパク質,白血球および濁度とした.ヘモグロビン,タンパク質および白血球は,検査紙を用いて専用反射率計により測定し,濁度は660nmの吸光度により求めた.質問紙調査項目としては,自覚症状(12項目),喫煙習慣および年齢とした.歯周病の臨床検査はCPI測定により行い,歯周ポケットの有無により分類し評価した.各唾液検査指標については,t検定により歯周ポケット有無との関連性を検討し,さらに,ROC曲線から感度,特異度を算出して検出感度(感度+特異度)の高い唾液検査指標を検討した.自覚症状の項目については,χ2検定により歯周ポケット有無と関連がある項目を検討した.さらに,唾液検査と質問紙調査を組合せたときの感度および特異度を算出することにより,最適な組合せを検索した.結果:1.唾液検査指標のヘモグロビン,タンパク質,白血球および濁度のいずれにも歯周ポケット有無と有意な関連性が認められ,ヘモグロビンが最も高い検出感度を示した.2.自覚症状12項目のうち,「歯をみがくと歯ぐきから血がでることがある」「歯ぐきが赤っぽい,または黒っぽい」「歯と歯の間に食べものがはさまりやすい」「ぐらぐらする歯がある」「固いものが噛みにくい」の5項目を組合せることにより高い検出感度を認めた.さらに,喫煙習慣,年齢を加えることにより検出感度は高まった.3.唾液検査と質問紙調査の組合せでは,ヘモグロビンが陽性,または,自覚症状5項目,喫煙習慣,年齢の計7項目のうち,4項目以上該当の場合に最も高い検出感度を示した.結論:検査紙を用いた唾液検査と自覚症状を尋ねる質問紙調査の組合せは,産業歯科保健活動の現場で活用できる簡易な歯周病スクリーニング法として有効であることが示唆された.
著者
森田 渉 清水 武彦 前田 隆秀
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.511-516, 2008-12-25
参考文献数
18

EL/Seaマウスは100%の頻度で第三臼歯を欠如しており,ヒトにおける先天性欠如歯の原因解明に有用なモデルマウスである.EL/Seaマウスにおける歯の欠如は常染色体劣性遺伝性であると報告されているが,歯の欠如の原因遺伝子は未だ明らかにされていない.著者らは過去にEL/Seaマウスの第三臼歯先天性欠如の原因遺伝子を探求し,EL/Seaマウス第3番染色体の123.1から136.9メガベースペア(Mbp)間に野生型MSM/Msマウスの染色体を導入したコンジェニックマウスを作製し,当該領域に欠如歯の原因遺伝子が存在することをin vivoにて証明し,この遺伝子をabsence of the third molars(am3)としたことを報告している.今回,この第9世代のコンジェニックマウス(N9マウス)を用いて交配実験を行い,MSM由来の染色体の導入領域をさらに限局したマウスを作製し,第三臼歯の欠如率を評価することで,am3の存在領域をさらに狭い範囲まで限定し,候補遺伝子を選定することを目的とした.コンジェニックマウスの第三臼歯欠如の頻度と遺伝子型の結果から,マウス第3番染色体の130.7から131.7メガベースペア(Mbp)間の領域に第三臼歯欠如の遺伝要因が存在することが明らかとなった.この領域内に存在するLef1,Hadh,Cyp2u1,Sgms2,Papss1の5遺伝子が候補であることが示唆された.
著者
森田 慎一 杉谷 想一 小林 由夏 原 弥子 野中 雅也 藤原 真一 堀 高史朗 飯利 孝雄
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.104, no.4, pp.573-578, 2007 (Released:2007-04-05)
参考文献数
10
被引用文献数
1

症例は51歳女性。原発性アミロイドーシスにともなう著明な肝腫大により腹痛が出現。モルヒネの投与を行ったが効果不十分であったため腹腔神経叢ブロックを施行し、有効な除痛を得ることができた。腹腔神経叢ブロックは内臓痛の緩和を目的として施行されるが、手技的に簡便であり重篤な合併症も少ない。腹腔神経叢ブロックは良性疾患および腹部悪性腫瘍にともなう難治性疼痛に対し重要な除痛手段の1つであると考える。
著者
森岡 慎一郎 森 雅紀 鈴木 知美 横道 麻理佳 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.241-247, 2016 (Released:2016-10-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1 3

終末期がん患者が発熱を呈した際,どのような検査や治療を重視するかという意向は医療者間で異なり,葛藤を引き起こしうる.本研究は,感染症診療に関する医療者間の意向の差異に繫がる要因や葛藤が生じる状況を同定することを目的に,終末期がん患者の診療に携わる医師,看護師20名を対象に半構造化面接を行った.意向の差異に繫がる要因としては,「予測される予後による」「検査・治療が患者の苦痛を伴うか否か」「医師の指示内容を受け入れられるか否か」などの要因のほか,「患者・家族が検査・治療を望んでいるか否か」「検査・治療による患者のメリットがあるか否か」などのカテゴリーが得られた.また,医師・看護師ともにお互いの認識のズレがある時や,相手の意図・指示が理解できない際に葛藤を感じていた.感染症診療に関する意向の差異がなぜ生じるのかを認識することで,終末期がん患者に対するチーム医療の質の向上に繫げられると考えられる.
著者
中野 泰至 下条 直樹 森田 慶紀 有馬 孝恭 冨板 美奈子 河野 陽一
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.117-122, 2010-02-28 (Released:2017-02-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1

【目的・方法】今回小児牛乳アレルギー患者における主要アレルゲンを明らかにすることを目的として後方視的な解析を行った.牛乳特異IgE値陽性で牛乳摂取により何らかの即時型症状を呈した115名の患者を対象としてBLG,カゼインに対する感作率を解析した.特異IgEがクラス2以上を陽性とした.また牛乳アレルギーの主要抗原と他の食物アレルゲン,吸入抗原への感作の違い,寛解との関連についても解析を行った.【結果】牛乳特異IgE値がもっとも高値であった血清でのカゼイン特異IgE値は,BLG特異IgE値よりも有意に高値であった.カゼイン特異IgE陽性者は107人(97.3%),BLG特異IgE陽性者は51人(46.4%),両方とも陽性だった者は48人(43.6%)であり,カゼイン単独感作群(C群)とカゼイン,BLG両方感作群(C/B群)に大別された.C群とC/B群での鶏卵への感作率を比較すると,C群とC/B群では差がなかったが,特異IgE値はC/B群の方が有意に高かった.吸入抗原に関しては両群で感作率,特異IgE値ともに差は認められなかった.C群に比べてC/B群は,3歳の時点での牛乳アレルギーの寛解が有意に少なかった.【結語】今回の解析から,本邦の牛乳アレルギーにおいても主要アレルゲンはBLGよりもむしろカゼインであると考えられた.複数の牛乳アレルゲン感作は,経消化管感作の起こりやすさを反映する可能性が考えられた.また複数の牛乳アレルゲンへの感作は牛乳アレルギーの寛解のしづらさとも関与していると考えられた.
著者
森田 章夫 小野山 裕彦 宮崎 直之 斎藤 洋一
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.1560-1565, 1992-07-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
19

胆嚢摘出術の功罪について検討する目的で,最近10年間に経験した胆石症例で胆嚢摘出術のみを施行した276例を対象として,術後合併症およびアンケート調査に基づいた遠隔成績より胆嚢摘出後症候群について検討した.術前の症状や併存疾患の有無と,術後合併症および遠隔時愁訴との間に関連性は認めなかった.術後合併症は37例(13.4%)にみられたがほとんどが一過性の軽度なものであった.アンケートは229例(82.8%)について回収し26例(11.4%)に遠隔時愁訴を認めた. 26例のうち18例に対し追跡調査を行い,慢性肝炎2例を除く16例の画像診断および血液検査上異常は認めなかった.遠隔時愁訴で最多の腹痛は14例(6.1%)に認められたが,術後5年以上経過した症例には認めなかった.以上より,胆嚢摘出術は術後合併症,遠隔成績ともに極めて満足すべきものであり,その根治性や癌合併の危険性を考慮すると手術療法が治療の原則であると思われた.
著者
松田 外志朗 栗原 敏修 浅沼 博司 中江 晴彦 冨吉 浩雅 森田 正則 嶋津 岳士 平出 敦
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical journal of Kinki University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1-2, pp.71-79, 2012-03-01

[抄録] 糖尿病患者の増加及び高齢化に伴い, 低血糖症例は増加している.重症症例は, 意識障害などのため他者の援助を必要とし, 救急搬送されることが多い.低血糖症例にいかに対応するかは救急医療の現場において重要な問題である.近畿大学医学部附属病院では, 低血糖症例のほとんどが救急診療部門(ER)において初期治療がなされている.当院ERにおいて, 2008年4月から2010年3月までの2年間で84回の低血糖によるER受診があった.意識障害あるいは意識消失を主訴とする症例が多く, 高齢者の割合も高い.内分泌代謝内科で治療されている症例は半数以下であり, 糖尿病以外の疾患のために他の診療科かかりつけとなっている症例が多かった.低血糖症例に対し適切な初期診療を行うために, 当院における低血糖症例の特徴を検討し, 初期診療において必要な情報について解説する.また, 初期診療において, 注意を要する症例として, 低血糖が10時間以上遷延した7症例, 糖尿病治療を受けていなかった非糖尿病の12症例をとりあげる.さらに, 患者の高齢化や社会的な要因から留意すべき点について考察する.
著者
今井 正 出濱 和弥 坂見 知子 高志 利宣 森田 哲男 今井 智 岡 雅一 山本 義久
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.93-100, 2021 (Released:2022-03-20)
参考文献数
21

本研究の目的は長期間,硝化作用を有する熟成状態のろ材を保存するための安定状態を評価することである。密封して保湿状態にしたろ材のアンモニア酸化活性に及ぼす保存温度の影響を調査した。ろ材のアンモニア酸化活性を25℃で測定した後,これらを海水から取り出してジッパー付き袋に入れて,1~35℃の8段階の温度で180日間管理した。1℃で保存したろ材のアンモニア酸化活性は最初と同様であった。加えて,アンモニア酸化古細菌とアンモニア酸化細菌の現存量は,それぞれ14%と10%でわずかな減少であった。5~20℃で保存したろ材の活性は約50%まで減少した。活性のさらなる減少は25℃以上で保存したろ材で認められた。また,1℃で約3年間保存した場合でも,ろ材の活性が33%残っていることが示された。ゆえに,硝化作用を有する熟成ろ材の長期間保存のためのアンモニア酸化微生物の保持は,設定温度温度内では1℃で最も高かった。
著者
大野 政人 黒川 貞生 森田 恭光
出版者
明治学院大学教養教育センター
雑誌
明治学院大学教養教育センター紀要 : カルチュール = The MGU journal of liberal arts studies : Karuchuru (ISSN:18818099)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.37-42, 2008-03-31

Many people have experienced muscle cramps during sports activity. It has been suggested that muscle fatigue, dehydration, and electrolyte imbalance are potential factors of cramp. Stretching of affected muscles, intake of water and electrolytes are well-known preventions for cramp. However, few studies have experimentally investigated the effects of these factors and preventions on cramp. We reported that dehydration by repeated exposures to sauna increased cramp of the hamstrings which were not fatigued. Another study showed that increase in daily intake of water and salt reduced cramp during a tennis match. Thus, it is possible that fluid and sodium intake is effective for prevening cramp during exercise in some people.
著者
尾崎 庄一郎 秋山 隆彦 森田 剛夫 久米川 昌浩 長瀬 敏夫 上原 宣昭 星 昭夫
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.3164-3166, 1990-11-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
17
被引用文献数
12 12

Various kinds of 5'-O-unsaturated acyl 5-fluorouridines were synthesized to obtain 5-fluorouridine derivatives with low toxicity and high antitumor activity. Antitumor activity of the compounds against L-1210 leukemia in mice was examined, and the 5'-O-4-opentenoyl derivative showed the highest antitumor activity.
著者
森田 浩之
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.37-48, 2012

本稿は、東日本大震災後にメディアに表れたスポーツにからむ「物語(ナラティブ)」を検証し、その功罪を検討する。<br> 「未曾有の国難」に沈む日本と被災地を、スポーツとトップアスリートが元気づける──そうした動きと思想は、まずヨーロッパでプレイするサッカー選手3人が出演するACジャパンの公共CMにみられた。「日本の強さは団結力です」「日本がひとつのチームなんです」という選手たちのせりふは何げないものに聞こえるが、そこには日本のメディアスポーツが語りつづけてきた物語が詰まっていた。<br> メディアが大震災と最も強く結びつけた大ニュースが、「なでしこジャパン」の愛称で知られるサッカー日本女子代表のワールドカップ優勝だった。ひとつは国家的悲劇であり、もうひとつは国民的慶事と、対照的にみえるふたつの出来事が、メディアによって強く接合された。なでしこジャパンは被災地から「元気」をもらったとされ、なでしこが世界一になったことで被災地も「元気」をもらったとされた。それらの物語はどのメディアをとっても均質的、類型的であり、東北出身の選手や東京電力に勤務したことのある選手には特別な役回りを担わせていた。しかもメディアが意図したかどうかにかかわらず、「あきらめない心」や「粘り強さ」といったなでしこジャパンの特徴とされるものは、3.11後の「日本人」に求められる心性と重なっていた。<br> このような均一化された物語の過剰は、「絆」ということばが3.11後のキーワードになることに加担した。被災地との「絆」がつねにあるかのように語られることで、現実には存在する非・被災地との分断が覆い隠されるおそれもある。
著者
山本 圭吾 松島 健 吉川 慎 井上 寛之 手操 佳子 園田 忠臣 波岸 彩子 堀田 耕平 市村 美沙 森田 花織 小池 碧 古賀 勇輝 渡邉 早姫 大倉 敬宏
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

平成26年度より開始された「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」における課題「桜島火山におけるマグマ活動発展過程の研究」の一環として,昨年度に引き続き,2017年11月に桜島火山において一等水準測量の繰返し観測を実施した.本講演では,この測量の結果について報告し,2016年11月に実施した前回測量以降の桜島火山の地盤上下変動について議論する. 水準測量を実施した路線は,桜島西部山腹のハルタ山登山路線,北部山腹の北岳路線の2路線である.路線総延長は約24 kmであった.これらの路線を,2017年11月1日~13日の期間において測量に当たった.測量方法は,各水準点間の往復測量で,その往復差は一等水準測量の許容誤差を満たすようにした.近年の水準儀は測量精度も向上しており,これらの器材を用いて注意深く測量を行った結果,測量における誤差は,1 km当りの平均自乗誤差が,ハルタ山登山路線および北岳路線においてともに±0.22 mm/km,水準環閉合差はハルタ山登山路線において時計回りに0.9 mm(許容誤差7.6 mm)となり,高精度の一等水準測量を行うことができた. 桜島西岸の水準点BM.S.17を不動点(基準)とし,各水準点における比高値を,前回の2016年11月に行われた測量結果(山本・他,2017)と比較することで,2016年11月から2017年11月の期間の約1年間における地盤上下変動量を計算した. 計算された地盤上下変動量から,桜島北部付近の水準点において,地盤隆起(最大で4.5 mm)が生じていることが確認された.前々回から前回測量までの2015年8月・9月から2016年11月の期間においては,1年2~3ヶ月間と多少1年間よりも期間が長いものの,北岳路線のこの付近の水準点において15 mm程度の地盤隆起が測定されていた.このことを考えると,2017年11月までの1年間の桜島北部付近の隆起速度は,それ以前の1年間に比べて減少していると考えられる.一方で,桜島中央部付近においては,若干の地盤沈降(最大で-2.6 mm)が認められる. 茂木モデルに基づき,得られた上下変動量データから圧力源の位置を求めた.測量を実施した水準点の空間分布が限られているため試行的な結果であるが,桜島北方の姶良カルデラの地下約10 kmの深さに増圧源が,また南岳地下の浅部に減圧源が推定された.2016年11月~2017年11月の期間,姶良カルデラ地下のマグマ溜まりにおいて引き続きマグマの貯留が進行していることを示していると考えられる.一方で,南岳直下のマグマ溜りにおいては減圧傾向が示唆される.