著者
森田 章夫 小野山 裕彦 宮崎 直之 斎藤 洋一
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.1560-1565, 1992-07-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
19

胆嚢摘出術の功罪について検討する目的で,最近10年間に経験した胆石症例で胆嚢摘出術のみを施行した276例を対象として,術後合併症およびアンケート調査に基づいた遠隔成績より胆嚢摘出後症候群について検討した.術前の症状や併存疾患の有無と,術後合併症および遠隔時愁訴との間に関連性は認めなかった.術後合併症は37例(13.4%)にみられたがほとんどが一過性の軽度なものであった.アンケートは229例(82.8%)について回収し26例(11.4%)に遠隔時愁訴を認めた. 26例のうち18例に対し追跡調査を行い,慢性肝炎2例を除く16例の画像診断および血液検査上異常は認めなかった.遠隔時愁訴で最多の腹痛は14例(6.1%)に認められたが,術後5年以上経過した症例には認めなかった.以上より,胆嚢摘出術は術後合併症,遠隔成績ともに極めて満足すべきものであり,その根治性や癌合併の危険性を考慮すると手術療法が治療の原則であると思われた.
著者
松田 外志朗 栗原 敏修 浅沼 博司 中江 晴彦 冨吉 浩雅 森田 正則 嶋津 岳士 平出 敦
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical journal of Kinki University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1-2, pp.71-79, 2012-03-01

[抄録] 糖尿病患者の増加及び高齢化に伴い, 低血糖症例は増加している.重症症例は, 意識障害などのため他者の援助を必要とし, 救急搬送されることが多い.低血糖症例にいかに対応するかは救急医療の現場において重要な問題である.近畿大学医学部附属病院では, 低血糖症例のほとんどが救急診療部門(ER)において初期治療がなされている.当院ERにおいて, 2008年4月から2010年3月までの2年間で84回の低血糖によるER受診があった.意識障害あるいは意識消失を主訴とする症例が多く, 高齢者の割合も高い.内分泌代謝内科で治療されている症例は半数以下であり, 糖尿病以外の疾患のために他の診療科かかりつけとなっている症例が多かった.低血糖症例に対し適切な初期診療を行うために, 当院における低血糖症例の特徴を検討し, 初期診療において必要な情報について解説する.また, 初期診療において, 注意を要する症例として, 低血糖が10時間以上遷延した7症例, 糖尿病治療を受けていなかった非糖尿病の12症例をとりあげる.さらに, 患者の高齢化や社会的な要因から留意すべき点について考察する.
著者
結城 美佳 数森 秀章 駒澤 慶憲 福原 寛之 山本 俊 雫 稔弘
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.1165-1169, 2009 (Released:2012-07-17)
参考文献数
10

われわれは,経鼻内視鏡検査時の前処置として,鎮痙剤の代替としてのPeppermint Oil Solution(以下POS)の有用性を評価するための検討を行った.健常成人8人(男性3人,女性5人,平均年齢37.9歳)を対象に経鼻内視鏡検査を施行し,POS20mlを前庭部に散布し,その前後それぞれ3分間の蠕動回数を計測した.POS散布後,前庭部の蠕動回数が有意に抑制された.その効果は散布後1分で出現し,3分まで続いた.また同時に測定した血圧,動脈血酸素飽和度,脈拍は検査有意な変動を示さず,特に副作用などは認めなかった.経鼻内視鏡検査時のPOS散布による蠕動抑制は有効であり,今後POS使用により経鼻内視鏡検査では鎮痙剤を使用せずとも,安全に十分な観察が可能である可能性が示唆された.
著者
玉川 裕夫 齊藤 孝親 江島 堅一郎 佐々木 好幸 鈴木 一郎 多貝 浩行 冨山 雅史 日高 理智 森本 徳明 紀 山枚 岡峯 栄子 遠藤 明
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.183-195, 2014 (Released:2016-04-20)
参考文献数
74

本論文は,歯科・口腔外科領域の標準化に関する経緯と現状を,具体的な例とともに整理した総論である.歯科医療情報の電子的交換が広がりつつあるなか,国際的な状況も含めて読者の理解を得ることを目的とした. 歯科の標準病名マスターは,齊藤らによってとりまとめられ,医科の標準病名集とともに一般財団法人医療情報システム開発センターでメンテナンスされて,保健医療情報分野の厚生労働省標準規格の一つとなっている.歯式は,標準病名とあわせて歯科・口腔外科領域の病院情報システムに欠かせないことから,日本の歯式表記の特徴を述べ,国際的な表記の具体例を挙げて比較した.また,SNOMEDとISO/TR 13668(矯正歯科領域の規約)を例に,診療情報交換の場で歯式がどのように扱われているかを解説した.そして,現在使われているその他の指標について紹介し,最後に,歯科領域の標準化に関する今後の課題を考察した.

2 0 0 0 HPRT欠損症

著者
藤森 新
出版者
医学書院
雑誌
臨床検査 (ISSN:04851420)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.283-286, 1993-03-15

はじめに ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(hypoxanthine-guanine phospho-ribosyltransferase;HPRT)は,プリン塩基のヒポキサンチン,グアニンをそれぞれのプリンヌクレオチドであるIMP,GMPに変換するプリン体の再利用酵素である.本酵素の完全欠損症は自傷行為とアテトーゼ性脳性麻痺を特徴とするLesch-Nyhan症候群を起こすことで有名であり,早くから分子レベルの解析が進み,すでに100例近い患者において遺伝子変異が明らかにされている.また最近では,遺伝子治療の達成に向けて精力的に基礎的研究が進められている.
著者
八反地 剛 森脇 寛
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
日本地すべり学会誌 : 地すべり = Journal of the Japan Landslide Society : landslides (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.45-51, 2011-01-25
参考文献数
21
被引用文献数
3

神奈川県・静岡県の丹沢地域および箱根地域の地すべり地形分布図を用いて地すべり斜面の地形解析を行ない, 各地域の等価摩擦係数 (以下H/Lとする) , 土塊の拡散性の違いについて議論した。いずれの地域においても, 地すべりの規模 (発生域の面積) とH/Lの関係は不明瞭で, H/Lは発生域の斜面勾配に比例する傾向が明瞭であった。また, 箱根地域における斜面勾配とH/Lの比例関係から得られたH/Lの予測下限値が, 箱根地域で発生した早雲山地すべりのH/Lの実測値とよく一致し, 地すべり地形分布図から得られるH/Lの予測下限値の有用性を確認した。地すべり地形斜面の発生域と流下堆積域を含む全体の面積と発生域の面積の比 (土塊拡散率) は多くの地すべりで1. 0から2. 0の範囲にあったが, 箱根地域では2. 0を超える地すべりが3例あった。箱根地域は丹沢地域に比べてH/Lが小さくなりやすく土塊拡散率が高いことから, 地すべり災害が発生した場合被害が拡大しやすいことが予想される。
著者
楠 あかね 森脇 志織 神原 知佐子
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.211-218, 2022 (Released:2022-04-01)
参考文献数
23

中規模病院に勤務する管理栄養士・栄養士の職務満足度およびワーク・ライフ・バランス(WLB)の現状を把握し、それらに関連する要因を検討することを目的として、アンケート調査を行った。152施設396人(うち97.5%が管理栄養士)から回答を得た。中規模病院に勤務する管理栄養士はおおむね健康な状態で、業務の内容・量をある程度負担と感じながらも、同僚や患者との関係性が良好であり、仕事が自分の能力を生かし、向上できるものであると感じていた。職務満足度の中央値(四分位範囲)は70.0(50.0~80.0)/100点で、重回帰分析の結果、最も影響を与えていた項目は「現在の仕事は、能力向上の機会になっている」であった。WLB満足度の中央値(四分位範囲)は60.0(40.0~80.0)/100点で、最も影響を与えていた項目は「職務満足度」であった。職務満足度とWLB満足度は相互に影響を与える関係にあることが示唆された。
著者
上島 幸枝 北村 清一郎 巽 哲男 合田 光男 尾崎 朋文 森 俊豪 松岡 憲二 金田 正徳 竹下 イキ子 西崎 泰清 熊本 賢三
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.317-328, 1994-12-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13

13遺体の26側を用い, 鎖骨, 胸鎖乳突筋, および前頸部下半の4経穴 (気舎, 欠盆, 水突, 天鼎) と, 胸膜頂の体表投影部位との関連を明確にした。胸膜頂の上端は鎖骨より上方 (頭方) に突出した。上端は, 内外方向には胸鎖乳突筋胸骨頭起始部の外側端(CL3)と鎖骨頭起始部外側端(CL5)の間にあり, 上下方向には水突穴より下方 (尾方) で鎖骨頭起始部内側端(CL4)より上方 (頭方) に位置した。胸膜頂の外側端は鎖骨上縁より下方 (尾方) にあった。外側端は, 内外方向にはCL4と欠盆穴の間にあり, 上下方向にはCL5より下方 (尾方) で鎖骨胸骨端上端(CL2)より上方 (頭方) に位置した。胸膜頂の内側端は, 両方向ともにCL2と胸骨上点の間に位置した。一方, 鎖骨より上方 (頭方) に突出する胸膜頂の体表投影域は, 全例で水突穴, 水突穴からおろした垂線と正中線との交点, 胸骨上点, 鎖骨の半肩幅内側1/3 (CL5にほぼ対応) の4点をつなぐ四角領域に含まれた。
著者
上島 幸枝 北村 清一郎 巽 哲男 合田 光男 永瀬 佳孝 尾崎 朋文 森 俊豪 松岡 憲二 金田 正徳 竹下 イキ子 西崎 泰清 堺 章
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.212-220, 1989-06-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
14

17遺体を用い, 天突穴, あるいは天突―肩峰間線を基準にした胸膜頂の体表投影部位を調べた。天突―肩峰間線の実長は左右共に平均185mm, 上方への角度は右22度, 左23度, 後方への角度は右が23度, 左が25度であった。右側胸膜頂は, 天突穴を通る前額面上で, 最大限には天突穴の外方0~58mm, 上方へは44mmより下方に存在した。左側ではこれらの値は各々5~58mmおよび49mmであった。一方, 天突―肩峰間線を基準にすると, 胸膜頂はその内側約1/3の範囲に含まれ, 上端は天突穴から約1/4離れた位置で, 最大限にはその上方35 (右) または32mm (左) の高さにあった。

2 0 0 0 OA コキン法以前

著者
森 まゆみ
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.26, no.11, pp.11_7-11_8, 2021-11-01 (Released:2022-03-25)
著者
森藤 雅史 伊藤 恭子 市川 聡美 大庭 知慧 北出 晶美
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.19-22, 2022 (Released:2022-02-23)
参考文献数
12

皮膚は, 水分の喪失を防ぐ, 微生物や物理化学的な刺激から生体を守るなど, 生命を維持するためになくてはならない様々な機能をもっている。それゆえ, 常に皮膚機能を高めておくことが必要であり, その方法として日々の食生活の改善や機能性を有する食品素材の継続的な摂取が効果的である。我々は, 様々な食品素材の中から, 「SC-2乳酸菌」「コラーゲンペプチド」「スフィンゴミエリン」の3成分に着目し, 吸収動態, 有効性評価, メカニズム解析をすすめた。また, これら3成分を配合した新たな食品を開発した。臨床試験において, 3成分を配合した被験食品を摂取することにより, 対照食品を摂取したときと比べ, 紫外線刺激から肌を保護するのを助けること, 肌の潤いを保ち, 肌の乾燥を緩和することが示された。本技術により, 食べることによって人において皮膚機能を高めることが可能となり, 人々の健康の維持・増進に貢献できると考える。