著者
守安 由香 森近 貴幸
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E4P2273-E4P2273, 2010

【目的】訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)では、利用者の自宅でリハビリテーションを提供するため、利用者以外の家族とも接する機会が多い。訪問した際に、家族と会話を交わすことも多いため利用者を在宅で介護することの悩みや、家族自身の健康面の不安など様々な話を聞くことがある。身体的、精神的に追い詰められているケースも少なくない。そこで、利用者を対象に現状の問題点を調査し、理学療法分野における家族ケアの必要性と訪問リハの可能性を見出すこととした。<BR>【方法】当院訪問リハ利用者のうち、家族ケアが必要であると考えられた2症例について検討を行った。<BR>ケース1:脳梗塞後遺症、慢性心不全、呼吸不全で在宅酸素療法を実施している80歳代女性。夫と二人暮らしで、家事はほぼ夫が行っている。FIM72点。HDS-R22点。うつ傾向があり精神科通院中。夫への依存、暴言があるが、通所サービスは本人が拒否しており、夫は介護負担感あり。このケースに対しては、夫の介護負担感が増加しており夫自身の健康面の不安も多くなってきていることから、通所サービス利用に向けて訪問する度に話し合いを設けた。利用者の生活リズムの構築、他者との交流という目的と、夫が自由に使うことができる時間(通院など)の確保という点から通所サービスを利用することの重要性を説明した。<BR>ケース2:脳梗塞後遺症による左片麻痺の70歳代男性。妻と二人暮らし。FIM84点。妻は利用者を積極的に歩行練習や映画に連れて行っているが、商業施設のハード面の不満などを感じ、障害者を介護することへの孤独感やいらだちを漏らすことが多い。このケースに対しては、介護保険サービスや自治体の制度についての関心も高かったため、それらについての情報提供や説明をその都度行った。訪問した際には妻からの話を聞く時間も取り、また妻への介助方法の指導も行った。<BR>【説明と同意】症例に挙げた利用者および家族に対して本研究について十分説明をした上で納得・同意を得た。また、結果において個人情報が漏れないことを説明し、同意書に署名していただいた。<BR>【結果】当院訪問リハ利用者のうち、一人暮らしではなく家族がいるケースではほぼ何らかの問題を抱えているということが分かった。ケース1については、利用者が通所サービスの利用を強く拒否していたが、利用者、家族、担当PTと話し合いを重ねることで生活リズムを作ること、および夫が自分のために使える時間を確保することの大切さを理解してもらうことができた。夫ともコミュニケーションをしっかりとることで悩みを傾聴した。そして、利用者は通所サービスを利用し始めることができ、夫も自分の時間を持つことができたため息抜きができている。また、訪問リハ以外の日でも夫が進んで利用者の歩行練習を行うようになり、歩行能力の向上が認められた。<BR>ケース2については、妻から行政やデパートなどの施設への不満を話されることが多いため、しっかりと傾聴して各種相談窓口や介護保険についての情報を提供したことで信頼関係を築くことができた。通所サービスへの要望も出てきたため、ケアマネジャー、通所サービススタッフ、担当PTと利用者・妻とでカンファレンスを開催し、情報の共有ができた。<BR>【考察】上記二つのケースを通して、利用者と家族が同居しているケースでは内容は様々ではあるが何らかの問題を抱えていると考えられる。在宅で利用者を介護する家族は相談相手がいない状況も多く、思いつめてしまうことがある。利用者は通所サービスなどで他者との交流があるが、家族はなかなかそのような機会を持つことができていないのが現状である。訪問リハでは、利用者とその利用者を看護・介護する家族等へのサービスの提供も含まれている。サービス提供の対象者は利用者であるが、その家族も含めてケアを行うことで利用者を取り巻く環境に介入することができると考えられる。看護の分野では家族ケアが重要視されているが、これからはリハの分野でも家族ケアが必要になってくると考えられる。利用者の家庭に入っていく訪問リハにおいては特に重要で、家族も含めた家庭全体をみていくことが、利用者一人一人にとってのより良い生活を送ることに繋がると考えられる。<BR>【理学療法学研究としての意義】高齢化が進む中で、在宅で介護を行う家庭は更に増加することが予想される。今後も訪問リハの需要が増加するため理学療法の分野でも家族ケアに関する研究が重要となり、利用者とともにその家族への介入の必要性が高まってくる。
著者
森岡 俊夫 森田 恵美子 鈴木 和雄
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.437-441, 1982
被引用文献数
5

本研究はQ-スウィッチを付けたNd-YAGレーザーを用いることにより歯石・歯垢を含む歯面付着物や歯質着色が安全に, かつ容易に除去しうるかどうか研索したものである。これらの付着物や着色の除去は予防歯科学領域での関心事である。<BR>エネルギー密度1.2~2.7J/cm<SUP>2</SUP>/パルスのレーザー光を歯面着色, 歯質着色, 歯石・歯垢付着, 小窩裂溝内容物を有するヒトの抜去歯牙39歯のエナメル質に照射すると, 付着物や着色の部位や種類により除去の難易性に若干の差異はあるが, これらの物質は有機性窩溝内容物を含めいずれも除去された。また臼歯部の小窩裂溝についても, 有機性の窩溝内容物は除去され, 窩溝壁や深部が部分露出した。Q-スウィッチを使用しないノーマル発振の同レーザー光では, このような結果は得られなかった。除去後のエナメル質表面を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で調べると, 歯面の照射部位にチョーク様のスポットやクレーターは認められなかった。これらの結果からQ-スウィッチを付けたNd-YAGレーザーを歯石・歯垢などの歯面付着物, 歯面・歯質着色および小窩裂溝内容物除去の目的に臨床的に用いうる可能性が示唆された。
著者
五十嵐 世津子 森 圭子
出版者
Japan Academy of Midwifery
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.64-70, 2005-06-30
参考文献数
6

<b>目的</b><br>不妊治療を受ける多くの女性は, 様々な思いを内面に抱えながらも, 時々に折り合いをつけながら対処し生活をしていると考える。この研究の目的は, どのように自分を納得させ対処しているのか, 彼女らの「語り」を通して知ることである。<br><b>対象と方法</b><br>研究対象者は, 婦人科クリニックで一般不妊治療を定期的に受けている女性4名である。非構成的面接を行い, 不妊であることに起因して自分の思いを語っている部分に着目し, 周囲からの圧力などに対し, 自分の感情・行動を納得させている, あるいはコントロールしている内容を, 不妊治療を受けている女性の『対処』と考え, 分析のデータとして抽出した。さらに類似の内容をまとめテーマをつけた。<br><b>結果</b><br>周囲から「聞かれる」けれども【聞き流す/言わない】, 「落ち込む」けれども【落ち込まないように】, 「深刻になる」けれども【深刻に考えないように】, 「自分だけ」と思うが【自分だけでない】, 「このまま・頑張る」けれども【できないかもしれない】という『対処』の仕方が見いだされた。<br><b>結論</b><br>【聞き流す/言わない】ことは, 日常の生活の中で人間関係に軋轢を生じさせないための方策の一つと言える。そして, 「落ち込み」「深刻」「自分だけ」と, 自分を追い詰めてしまいそうな孤独の中で, 【落ち込まないように】【深刻に考えないように】【自分だけでない】と思うことは, 自分自身の心の「均衡を保つ」対処であり, 「傷つかない」ための方策となっている。
著者
森下 浩二 横川 三津夫 宇野 篤也 石原 卓 金田 行雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告計算機アーキテクチャ(ARC)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.17, pp.1-5, 2014-12-02

現在日本最速のスーパーコンピュータである 「京」 を用いて,一様等方性乱流の超大規模直接数値シミュレーション (DNS) を実現するために,地球シミュレータ向けに開発された,フーリエ・スペクトル法に基づく一様等方性乱流の DNS コードの 「京」 への移植,及び最適化を行った.移植の際には,従来の 1 次元分割によるデータ分散手法から,より効率的な All-to-all 通信が可能であると考えられる 2 次元分割による手法へと変更を行った.その結果,「京」 の 192×128 ノードを用いて最大格子点数 122883 の超大規模 DNS の実現に成功した.これはプロダクトランとしては世界最大の一様等方性乱流の DNS である.ピーク性能比として,格子点数 61443,81923,122883 の DNS でそれぞれ 3.84%,3.14%,2.24% の実効性能が得られた.また,コードの更なる高効率化のために,乱流 DNS 特有のアルゴリズムに対する最適化を試み,その性能評価を行った.
著者
森 俊男 芳賀 脩光 松田 光生
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.46-56, 1990-03-31 (Released:2012-11-27)
参考文献数
27

The purpose of this study was to investigate the cardiac dimensions and the influences of Kyudo practice in the function of the left ventricle and responses of cardiac function during shooting. The subjects were 14 shooters whose ages were 63-85 years (the average 68.8 years old) and even now they take part in formal Kyudo matches. Total body fat was assessed by the skinfold caliper method. The left venticular structure and function were measured using M-mode echocardiography and ECG during shooting were measured by the telemeter method. Results obtained were as follows.Subjects averaged 161.9 cm in height,59.7 kg in weight and 123.4 mmHg in systolic blood pressure. Time for shooting was about 30 seconds on the average, but the shortest time was 15 seconds, and the longest was 50 seconds. There were arrhythmia in 3 subjects at rest ECG. However, there were no differences in the ecocardiographic data between shooters and normal subjects. Arrhythmia disappeared in two subjects during shooting. The heart rate during shooting averaged 110 b/min, but one shooter recorded 180 b/min at maximal level.In summary, Kyudo practice is not so hard for old age shooters, but there is possibility that it builds up blood pressure, because it needs strong muscle activity during shooting. Therefore, old shooters must always take care of their medical condition.
著者
関根 純二郎 ハッサム エルディン モハメド カメル 森田 二郎 大浦 良三
出版者
Japanese Society of Sheep Science
雑誌
日本緬羊研究会誌 (ISSN:03891305)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.30, pp.17-21, 1993

乾草の種類がめん羊の飲水量に及ぼす影響を明らかにする目的で, 4頭のめん羊にイタリアンライグラス乾草 (IR), バーミューダグラス乾草 (BE), スーダングラス乾草 (SU) およびアルファルファ乾草 (AL) をラテン方格法により給与した。日平均飲水量は, BEおよびAL給与でIRおよびSU給与より多くなったが, 乾物摂取量あたりの飲水量は, 乾草の種類による違いはなく, 3.2~3.9g/乾物gの範囲にあった。しかし, 個体間の乾物摂取量あたりの飲水量には有意な違いが認められた。個体間の飲水量の変動の要因についての解析から環境温度以外の要因も関与していることが示唆された。
著者
大森 義夫
出版者
日本法政学会
雑誌
法政論叢 (ISSN:03865266)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.209-218, 2016-02-25

It is a serious defect that the Constitution of Japan lacks the provisions responding to emergency situations from the viewpoint of national function. Such provisions are indispensable for not only dealing with national security issues but also controlling the large-scale natural disasters which are currently frequent. Therefore, it is necessary for the Cabinet or the Prime Minister to be authorized to impose a state of emergency. Although a crisis management system has practically and legislatively been established and improved in recent years in Japan, the problem relating to a creation of the authentic and authoritative intelligence unit remains. This is an urgent issue. In this paper, I will consider the social and historical conditions and background surrounding the establishment of such an intelligence unit in Japan.
著者
森川 宏二 橋本 繁輝 岩永 裕氏 山内 利栄 山崎 光雄
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Supplement2-Base, pp.265-283, 1988-06-30 (Released:2011-08-04)
参考文献数
15

NY-198の中枢神経系および呼吸・循環器系に対する薬理作用を検討した。1. 100~1000mg/kgの経口投与でマウスは抑制症状を, 300mg/kg以上の経口投与でラットも抑制症状を示した。また, 300mg/kg以上でマウスの自発運動量の減少, hexobarbital睡眠時間の延長および協調運動抑制作用が現れたが, 懸垂抑制作用は認められなかった。2. 300mg/kg以上の経口投与でマウスおよびラットで鎮痛抗炎症作用, 300~1000mg/kgの経口投与でマウス, ラットおよびウサギの正常体温ならびにラットのyeast発熱体温を下降させた。3. 30mg/kgの静脈内投与でもウサギの急性脳波パターンに影響はなかったが, 30mg/kgの静脈内投与によりネコの脊髄単シナプス反射電位と後根反射電位は抑制された。4. 300mg/kg以上の経口投与でマウスの電撃およびpentetrazol痙攣は増強され, また100mg/kgの経口投与で無麻酔ビーグル犬の脳波に発作発射と間代性痙攣が発現した。5. 無麻酔ラットの血圧, 心拍数にほとんど影響はみられず, 麻酔イヌにおいて3mg/kg以上の静脈内投与で血圧の下降, 大腿動脈抵抗の減少が, 10mg/kg以上の静脈内投与で呼吸数の増加, 心拍数の増加あるいは減少が現れたが, 腎動脈抵抗には著明な影響を与えず, 摘出モルモット心房標本にも著明な影響は認められなかった。
著者
金谷 重彦 森田 晶 大橋 美名子 小野 直亮 黄 銘
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第39回ケモインフォマティクス討論会 浜松
巻号頁・発行日
pp.O14, 2016 (Released:2016-09-22)
参考文献数
11

料理の健康への寄与を体系的に理解することを目的とした料理レシピ・データベースを設計し開発した。現在までに1,539種の薬膳を格納した。これらの薬膳において、468種の食材、221種の効能情報が含まれている。本発表では、料理とヒトの健康への寄与の関係を集めたデータをもとに体系的に整理する。